今回は平成18年度 理論科目 A問題10を解説します。E=10V・R₁=300Ω・R₂=100Ω・C=20μFの回路で、スイッチを①側に閉じてCを充電後、②側に切り換えたときの時定数を求める問題です。
時定数はコンデンサから見た抵抗×C。②側に切り換えると、CはR₂を通して放電するので、Cが見る抵抗はR₂。τ=CR₂で計算します。
平成18年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
スイッチを切り換えた後、コンデンサから見える回路は一変します。時定数は「Cから見た抵抗」×C——切り離された部品は数えません。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成18年度 A問題10
直流電圧E=10V、抵抗R₁=300Ω、R₂=100Ω、静電容量C=20μF、スイッチS(①側・②側に切り換え可能)からなる回路がある。スイッチSを①側に閉じてコンデンサを十分に充電した後、②側に切り換えた。②側の回路における時定数τの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.05μs (2)0.2μs (3)1.5ms (4)2.0ms (5)8.0ms
出題のポイント:時定数は「コンデンサから見た抵抗」で決まる
過渡現象の問題は、回路が複雑に見えても次の一文に集約できます。
本問はこの原則を、スイッチの切り換えという形で試しています。①側にいる間と②側に移った後では、コンデンサから見える景色がまるで違うのです。
| スイッチの位置 | 回路の中身 | Cから見た抵抗 | 時定数 |
| ①側(充電) | E—R₁—C のループ | R₁=300 Ω | \(R_1C=6.0\;\mathrm{ms}\) |
| ②側(放電) | C—R₂ の閉ループ(電源とR₁は切り離される) | R₂=100 Ω | \(R_2C=2.0\;\mathrm{ms}\) |
充電と放電で時定数が違う——これが本問の隠れたテーマです。同じコンデンサでも、経路の抵抗が変われば速さが変わります。問題が聞いているのは②側の時定数なので、R₁は答えに一切関与しません。

「Cから見た抵抗」の見つけ方——3ステップ
複雑な回路でも、次の手順を機械的に踏めば \(R_{\text{eq}}\) が出ます。
| 手順 | やること | 本問での結果 |
| ① | コンデンサを回路から外す(端子だけ残す) | R₂の両端が残る |
| ② | 電圧源は短絡、電流源は開放に置き換える | ②側では電源自体が切り離されている |
| ③ | 残った端子から回路側の合成抵抗を求める | R₂=100 Ωだけ |
②側に切り換えた瞬間、電源EとR₁は物理的に回路から離れます。導線がつながっていないので、電流の通り道になりようがありません。「回路図に描いてある=計算に使う」ではないのです。
もしスイッチがなく、R₁とR₂が両方つながったままなら話は変わります。電圧源を短絡して見れば \(R_1\parallel R_2=75\;\Omega\) となり、τ=1.5 msになります——これがちょうど選択肢(3)です。選択肢は「別の回路の正解」で構成されていると分かります。
問題の解説:放電の式から時定数を読み取る
STEP1 ②側の回路方程式を立てる
②側ではCとR₂だけの閉ループです。キルヒホッフの電圧則を書くと、
放電なので電流の向きに注意
係数 \(R_2C\) がそのまま時定数
指数の分母が時定数
時定数は「指数の肩の分母」です。微分方程式を立てさえすれば、解かなくても \(dv/dt\) の係数を見るだけで τ が読み取れます。
STEP2 数値を代入して単位を揃える
μ=\(10^{-6}\) を必ず書き下す
ms(ミリ秒)のオーダー
桁の目安:「Ω×μF=μ秒」と覚えておくと速いです。\(100\;\Omega\times20\;\mu\mathrm{F}=2000\;\mu\mathrm{s}=2\;\mathrm{ms}\) と暗算できます。
STEP3 放電の様子を確認する
①側で満充電(電流0なのでR₁の降下も0)
R₂だけが電流を制限する
10ミリ秒でほぼ0 Vに



誤答の正体:4つとも「実在する計算」の答え
残り4つの選択肢がどの計算から出るかを実際に確かめました。すべてぴったり一致します。
| 選択肢 | τ | その値が出る計算 | 誤りの種類 | 判定 |
| (1) | 0.05 μs | \(C\div(R_1+R_2)=20\mu/400\) | 割り算+R₁も足した(二重の誤り) | × |
| (2) | 0.2 μs | \(C\div R_2=20\mu/100\) | 掛け算と割り算の取り違え | × |
| (3) | 1.5 ms | \((R_1\parallel R_2)\times C=75\times20\mu\) | R₁とR₂が並列に残ると誤解 | × |
| (4) | 2.0 ms | \(R_2\times C=100\times20\mu\) | 正解 | ○ |
| (5) | 8.0 ms | \((R_1+R_2)\times C=400\times20\mu\) | R₁が直列に残ると誤解 | × |
(3)と(5)が「R₁をどう扱うか」の2つの誤りを、(1)と(2)が「掛けるか割るか」の誤りを担当しています。作問者は、受験者がつまずく2つの軸を選択肢に配置しているわけです。
μsとmsの取り違えにも注意してください。(1)(2)はμsオーダー、(3)(4)(5)はmsオーダーと、桁が1000倍違います。まず「μsかmsか」を単位から絞るだけで、5択が2択・3択に減ります。
充電と放電、どちらが速いか
本問の回路では放電のほうが3倍速いことになります。
| 経路の抵抗 | 時定数 | 5τ(完了の目安) | |
| 充電(①側) | R₁=300 Ω | 6.0 ms | 30 ms |
| 放電(②側) | R₂=100 Ω | 2.0 ms | 10 ms |
この非対称性は実務でよく使われます。たとえばタイマー回路では、充電経路と放電経路にそれぞれ別のダイオードと抵抗を仕込み、「ゆっくり立ち上がって素早く落ちる」といった動作を作ります。本問はその原理そのものです。
なお「十分に充電した後」という文言が重要です。これがあるおかげで放電開始時の電圧が電源電圧10 Vそのものと確定します。もし中途半端な時点で切り換えたなら、その時点の電圧を計算するところから始めなければなりません。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① スイッチが切り換わったら切換え後の回路だけを描き直す。切り離された部品は消してしまう
② τのRは「Cから見た抵抗」。電圧源は短絡して端子から覗く
③ 「Ω×μF=μs」で桁を暗算。\(100\times20\mu=2000\mu\mathrm{s}=2\;\mathrm{ms}\)
④ 選択肢の単位(μs/ms)を先に見て候補を絞る
⑤ 迷ったら \(R_1+R_2\)・\(R_1\parallel R_2\)・\(R_2\) の3通りを計算し、回路図と照合する
💡 覚え方
「切り換えたら描き直す」。②側の図に電源とR₁を描かなければ、そもそも足す誤りが起きません。消しゴムで消すのが最強の対策です。
⚠️ よくある間違い
最頻出はR₁を足して8.0 msとする誤り(選択肢(5))です。「回路図に描いてあるから使うはず」という思い込みが原因ですが、スイッチで切り離された部品に電流は流れません。次に多いのが並列と勘違いして1.5 ms(選択肢(3))。②側でR₁は電源側に取り残されており、Cとつながっていません。
まとめ
| ②側 | CがR₂を通して放電 |
| Cが見る抵抗 | R₂=100Ω |
| τ | CR₂=20μ×100 |
| 答え | 2.0ms …(4) |
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