今回は令和6年度上期 機械科目 A問題12を解説します。電圧・電流・電気抵抗・静電容量といった電気系の量と、温度差・熱流・熱抵抗・熱容量という熱系の量の対応表を完成させる空所補充問題です。★電気加熱20(令和2年度A問題13)と問題文・対応表が完全に同一の再出題で、選択肢の並び順のみ異なります。
電圧に対応するのが温度差θ、電流に対応するのが熱流Φです。電気のオームの法則V=RIと同様に熱のオームの法則θ=R_TΦが成り立つので、熱抵抗の単位は〔K/W〕。静電容量に対応する熱容量はQ=Cθの関係から〔J/K〕になります。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和2年度A問題13 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和6年度上期 機械科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12
電験3種 機械科目 【電気加熱】 令和6年度上期 A問題12
熱の伝導は電気の伝導によく似ている.下記は,電気系の量と熱系の量の対応表である.
電気系の量:電圧V〔V〕,電気量Q〔C〕,電流I〔A〕,導電率σ〔S/m〕,電気抵抗R〔Ω〕,静電容量C〔F〕。熱系の量:(ア)〔K〕,熱量Q〔J〕,(イ)〔W〕,熱伝導率λ〔W/(m・K)〕,熱抵抗R_T(ウ),熱容量C(エ)。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 温度差θ 熱流Φ 〔K/W〕 〔J/K〕 (2) 熱流Φ 温度差θ 〔J/K〕 〔K/W〕 (3) 温度差θ 熱流Φ 〔K/J〕 〔J/K〕 (4) 熱流Φ 温度差θ 〔J/K〕 〔J/W〕 (5) 温度差θ 熱流Φ 〔K/W〕 〔J/W〕
「差」の量と「流れ」の量
対応表は、量の役割で分類すると覚えやすくなります——差があるから流れが生じるという構造は共通です。
| 役割 | 電気系 | 熱系 | 単位 |
| ★差(原因) | 電圧V | ★温度差θ | V / K |
| ★流れ(結果) | 電流I | ★熱流Φ | A / W |
| 妨げるもの | 電気抵抗R | 熱抵抗RT | Ω / K/W |
| ためるもの | 静電容量C | 熱容量C | F / J/K |
| 通しやすさ | 導電率σ | 熱伝導率λ | S/m / W/(m·K) |
(ア)は[K]という単位が与えられている——温度の単位なので温度差θです。(イ)は[W]なので熱流Φ——単位を見るだけで決まります。
電圧が「差」の量であるのと同じく、温度も「差」で効きます——絶対的な温度が高くても、差がなければ熱は流れません。電位が高くても、電位差がなければ電流が流れないのと同じです。

(ウ)(エ) 単位は定義式から導く
温度差÷熱流
熱量÷温度差
2本の式を並べれば、単位は自動的に決まります——暗記する必要はありません。選択肢の[K/J]や[J/W]が誤りだと、その場で判断できるようになります。

⚠️ よくある間違い
本問は令和2年度 A問題13 と完全に同一ですが、選択肢の並びが違うため答えの番号が変わります。
令和2年度は(2)、本問は(1)——過去問の番号を覚えていると外します。
(ア)と(イ)を入れ替えた選択肢が(2)(4)——単位[K]と[W]が問題文に書かれているので、そこで判断すれば迷いようがありません。
(エ)を[J/W]とする選択肢(5)は熱量÷熱流——これは時間[s]の次元になってしまいます。次元を確かめれば誤りだと分かります。
導電率と熱伝導率が対応する物理的な理由
この対応は、単に式の形が似ているだけではありません——金属では物理的な裏付けがあります。
金属の中では、自由電子が電気を運びます——ところが同じ自由電子が、熱も運んでいるのです。だから電気をよく通す金属は、熱もよく通すことになります。
| 金属 | 導電率の順位 | 熱伝導率[W/(m·K)] |
| 銀 | ★1位 | ★420 |
| 銅 | 2位 | 400 |
| アルミニウム | 3位 | 230 |
| 鉄 | 下位 | 80 |
順位がぴたりと一致——偶然ではありません。λ とσ の比が温度に比例するという法則(ヴィーデマン・フランツ則)として知られています。
だから「銅は電気をよく通すから、熱もよく通す」と考えてよい——ヒートシンクに銅やアルミが使われるのも、この性質によります。
ただし絶縁物では成り立ちません——電気を通さないガラスやセラミックスでも、熱はある程度伝えるからです。そこでは電子ではなく格子振動が熱を運んでいる——対応関係はあくまで形式的なものだと押さえておきましょう。
⏱️ 本番での進め方
①単位[K]が温度差θ、[W]が熱流Φ。問題文の単位で判断。
②θ=RTΦ から熱抵抗は[K/W]。
③Q=Cθ から熱容量は[J/K]。
④★令和2年度と同一問題だが正解番号は違う((2)→(1))。
💡 覚え方
「差があるから流れる」——電圧と温度差、電流と熱流。そして「電気をよく通す金属は熱もよく通す」——どちらも自由電子が運んでいるからです。
同じ対応表が令和2年度 A問題13で出題されています(電気加熱:電気系と熱系の対応表)。そちらの正解は(2) です。

対応表を使って熱回路を解く
対応が分かれば、電気回路の解法がそのまま使えます——実際の使い方を見ておきましょう。
| 電気回路の技法 | 熱回路での使いどころ |
| 直列合成 | ★多層壁(各層の熱抵抗を足す) |
| 並列合成 | ★壁と窓(熱が分かれて流れる) |
| 分圧の法則 | 層ごとの温度降下 |
| キルヒホッフの法則 | 複雑な熱回路網 |
電流の分流と同じく、熱も抵抗の小さいほうへ多く流れます——だから断熱の弱い窓に熱が集中するのです。
「熱橋(ヒートブリッジ)」という言葉もあります——断熱材を貫く金属部材などが、熱の抜け道になる現象。並列回路で抵抗の小さい経路ができた状態だと考えれば理解できます。
定常と過渡
熱抵抗だけを考えるのは、温度が落ち着いた定常状態——熱容量が効くのは、温度が変化している途中です。
電気回路でも、直流定常なら抵抗だけ、過渡現象ならC やL が効く——まったく同じ構造です。問題文が「定常状態」「一定に保たれている」と書いていれば熱抵抗だけで足ります。
熱伝導率と熱抵抗率
表に出てくる熱伝導率λ——電気の導電率σ に対応します。その逆数どうしも対応しています。
| 電気系 | 単位 | 熱系 | 単位 |
| 導電率 σ | S/m | 熱伝導率 λ | W/(m·K) |
| 抵抗率 ρ=1/σ | Ω·m | ★熱抵抗率 1/λ | m·K/W |
| R=ρL/S | Ω | ★RT=L/(λS) | K/W |
形がまったく同じ——長さに比例、断面積に反比例。だから熱抵抗の公式を別に覚える必要はありません。
電気抵抗の式を思い出して、ρ を1/λ に置き換えるだけ——これが対応表の実用的な使い方です。
表面熱抵抗率との違い
熱抵抗率[m·K/W]と表面熱抵抗率[m2·K/W]——単位が違います。
前者は物質の中を通る話(長さ方向)——後者は表面で受け渡す話(面積あたり)です。単位のm と m2 が、その違いを表していることになります。
まとめ
| (ア) | 温度差θ |
| (イ) | 熱流Φ |
| (ウ) | 〔K/W〕 |
| (エ) | 〔J/K〕 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
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・熱回路のオームの法則で壁を伝わる熱流を計算:【機械】令和6年度下期A問題12

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