今回は平成18年度 機械科目 A問題11を解説します。物体と外界との熱の移動を担う対流と放射、対流による熱流の式I=αStで登場する熱伝達係数αとその逆数である表面熱抵抗率に関する空所補充問題です。
物体と外界の熱の移動は対流と放射によって行われ、温度差が比較的小さいときは対流が主になります。比例定数αは熱伝達係数と呼ばれ、その逆数1/αは表面熱抵抗率と呼ばれます。電気加熱19・20で学んだ熱抵抗と同じ発想の量です。
平成18年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電気加熱】 平成18年度 A問題11
物体とその周囲の外界(気体又は液体)との間の熱の移動は,対流と(ア)によって行われる.そのうち,表面と周囲の温度差が比較的小さいときは対流が主になる.
いま,物体の表面積をS〔m²〕,周囲との温度差をt〔K〕とすると,物体から対流によって伝達される熱流I〔W〕は次式となる.
I=αSt〔W〕
この式で,αは(イ)と呼ばれ,単位は〔W/(m²・K)〕で表される.この値は主として,物体の周囲の流体及び流体の流速によって大きく変わる.また,αの逆数1/αは(ウ)と呼ばれる.
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか.
(ア) (イ) (ウ) (1) 放射 熱伝達係数 表面熱抵抗率 (2) 伝導 熱伝達係数 表面熱抵抗率 (3) 伝導 熱伝導率 体積熱抵抗率 (4) 放射 熱伝達係数 体積熱抵抗率 (5) 放射 熱伝導率 表面熱抵抗率
(ア) 物体と外界の熱移動は2つ
物体の表面から周囲の空気や液体へ熱が移るとき——働くのは対流と放射です。
| 伝わり方 | 仕組み | 物質が必要か |
| 熱伝導 | 物質の中を分子から分子へ | ★必要(物質は動かない) |
| ★対流 | 流体が動いて熱を運ぶ | ★必要(流体が動く) |
| ★放射 | 電磁波として飛ぶ | ★不要(真空でも伝わる) |
「物体と外界(気体又は液体)との間」——相手が流体なので、熱伝導ではなく対流になります。だから(ア)は伝導ではなく放射です。
問題文の「温度差が比較的小さいときは対流が主」——放射は温度の4乗に比例するので、温度が低いうちは対流のほうが大きいのです。逆に高温になると放射が支配的になります。

(イ)(ウ) 熱伝達係数と表面熱抵抗率
この式を熱抵抗の形に書き直してみましょう——電気回路の見方に合わせるのです。
★θ=ΦR の形
面積S を含む
★単位面積あたり
「率」が付くと単位面積あたり——面積を掛ける前の値です。電気の「抵抗率」と「抵抗」の関係と同じと考えてください。
| 名称 | 記号 | 単位 | 面積を含むか |
| 熱伝達係数 | α | W/(m2·K) | 含まない |
| ★表面熱抵抗率 | 1/α | m2·K/W | ★含まない |
| 表面熱抵抗 | 1/(αS) | K/W | ★含む |
選択肢の「体積熱抵抗率」は存在しない用語——表面での熱の受け渡しなのですから、体積ではなく面積です。単位[m2·K/W]に m2 が入っていることからも分かります。

⚠️ よくある間違い
熱伝導率λ と熱伝達係数α を混同する——これが最も多い誤りです。
| 熱伝導率 λ | 熱伝達係数 α | |
| どこの話か | ★物質の内部 | ★表面と流体の間 |
| 単位 | W/(m·K) | ★W/(m2·K) |
| 決まるもの | 材料で決まる | ★流体の種類と流速で変わる |
単位を見れば区別できます——m か m2 か。問題文が「単位は[W/(m2·K)]で表される」と親切に書いてくれているので、そこで判断できます。
熱伝達係数はどれくらいの値か
α は「主として物体の周囲の流体及び流体の流速によって大きく変わる」——問題文のとおり、条件で桁が変わります。
| 条件 | α の目安[W/(m2·K)] |
| 空気の自然対流 | ★5〜25 |
| 空気の強制対流(送風) | ★10〜300 |
| 水の自然対流 | 50〜1,000 |
| 水の強制対流 | 500〜10,000 |
| 沸騰・凝縮 | ★2,500〜100,000 |
扇風機を当てると涼しく感じるのは、α が数倍に上がるから——気温は変わっていないのに、熱が奪われる速さが変わるのです。
水は空気の数十倍——同じ温度でも水のほうが冷たく感じる理由がここにあります。沸騰させればさらに桁が上がるので、冷却装置では相変化を使うのです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア) 物体と流体の間は対流と放射。伝導ではない。
②(イ) Φ=αSt のα が熱伝達係数[W/(m2·K)]。
③(ウ) 1/α が表面熱抵抗率[m2·K/W]。
④★λ は W/(m·K)、α は W/(m2·K)。単位で区別。
💡 覚え方
「λ は物の中、α は表面」——単位のm と m2 で見分けられます。「率」が付けば単位面積あたり——電気の抵抗率と抵抗の関係と同じです。
熱回路の対応表は令和2年度 A問題13にあります(電気加熱:電気系と熱系の対応表)。

壁全体の熱の通り道
本問の表面熱抵抗は、実際の断熱計算で欠かせない要素です——壁を通る熱は3つの区間を直列に通ります。
| 区間 | 伝わり方 | 熱抵抗 |
| ①室内空気→壁の内面 | ★対流+放射 | 1/(α1S) |
| ②壁の中 | 熱伝導 | L/(λS) |
| ③壁の外面→外気 | ★対流+放射 | 1/(α2S) |
屋外側のα は風の影響で大きく変わります——風が強いほどα が大きく、熱抵抗は小さくなる。風の強い日に建物が冷えやすいのはこのためです。
建築の計算では、室内側0.11、屋外側0.04 m2·K/Wといった標準値が使われます——まさに本問の「表面熱抵抗率」そのものです。
単位[m2·K/W]で与えられるので、面積で割る必要がありません——「率」で扱うほうが実務では便利なのです。
放射伝熱はどう扱うか
(ア)で出てきた放射——対流と違って温度の4乗に比例します。
ここでは必ず絶対温度——℃ のまま4乗してはいけません。温度差のときは℃ でもK でも同じでしたが、絶対値が要る場面では換算が必須です。
| 表面の状態 | 放射率 ε | 放射のしやすさ |
| 黒体(理想) | 1.0 | 最大 |
| 黒く塗った面 | 0.9〜0.95 | ★よく放射する |
| 酸化した金属 | 0.6〜0.8 | 中程度 |
| 磨いた金属 | ★0.02〜0.1 | ★ほとんど放射しない |
魔法瓶の内面が鏡のように磨かれているのは、放射率を下げて熱の出入りを抑えるため——真空にして対流と伝導を止め、鏡面で放射も止めるという仕組みです。
本問が「温度差が比較的小さいときは対流が主」とするのも、T4 の差は温度が低いと小さいから。高温の炉では、逆に放射が支配的になります。
空欄を1つずつ潰して絞る
3つの空欄に5つの選択肢——確実に分かる欄から手をつけましょう。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (イ) | 熱伝達係数 | ★(1)(2)(4) |
| (ア) | 放射 | ★(1)(4) |
| (ウ) | 表面熱抵抗率 | ★(1)に確定 |
(イ)は問題文に単位[W/(m2·K)]が書かれているので確実——熱伝導率なら[W/(m·K)] です。ここで2つ落とせます。
次に(ア)——相手が気体・液体なので伝導ではない。これでさらに1つ落ちて、残りは(1)と(4)。違いは(ウ)だけです。
「体積」熱抵抗率という語は、表面での熱移動には合いません——面積で受け渡すのですから表面。3手で確定できます。
まとめ
| (ア) | 放射 |
| (イ) | 熱伝達係数 |
| (ウ) | 表面熱抵抗率 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電気系と熱系の対応表(電気加熱19の再出題):【機械】令和2年度A問題13
・熱電温度計・抵抗温度計・放射温度計の測温方式の穴埋め問題:【機械】平成19年度A問題12

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