今回は平成22年度 機械科目 A問題12を解説します。マイクロ波加熱の特徴に関する記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。★電気加熱15(平成26年度A問題11)と同一の発熱量の公式P=KfE²εtanδを用いる対の問題です。
マイクロ波加熱の発熱量Pは誘電損失係数εtanδに比例します。石英ガラスやポリエチレンなどは誘電損失係数が0.001以下と非常に小さいため、マイクロ波では加熱が困難であるという点が本問の急所です。
平成22年度 機械科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12
電験3種 機械科目 【電気加熱】 平成22年度 A問題12
マイクロ波加熱の特徴に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか.
(1)マイクロ波加熱は,被加熱物自体が発熱するので,被加熱物の温度上昇(昇温)に要する時間は熱伝導や対流にはほとんど無関係で,照射するマイクロ波電力で決定される.
(2)マイクロ波出力は自由に制御できるので,温度調節が容易である.
(3)マイクロ波加熱では,石英ガラスやポリエチレンなど誘電体損失係数の小さい物も加熱できる.
(4)マイクロ波加熱は,被加熱物の内部でマイクロ波のエネルギーが熱になるため,加熱作業環境を悪化させることがない.
(5)マイクロ波加熱は,電熱炉のようにあらかじめ所定温度に予熱しておく必要がなく熱効率も高い.
(1)マイクロ波加熱は,被加熱物自体が発熱するので,被加熱物の温度上昇(昇温)に要する時間は熱伝導や対流にはほとんど無関係で,照射するマイクロ波電力で決定される。
(2)マイクロ波出力は自由に制御できるので,温度調節が容易である。
(3)マイクロ波加熱では,石英ガラスやポリエチレンなど誘電体損失係数の小さい物も加熱できる。
(4)マイクロ波加熱は,被加熱物の内部でマイクロ波のエネルギーが熱になるため,加熱作業環境を悪化させることがない。
(5)マイクロ波加熱は,電熱炉のようにあらかじめ所定温度に予熱しておく必要がなく熱効率も高い。
誤りは(3):誘電損失係数が小さいと加熱できない
発熱量は誘電損失係数に比例——だから小さい材料は温まりません。
石英ガラスやポリエチレンの誘電損失係数は0.001以下——水(数十のオーダー)とは桁が何桁も違います。「加熱できる」とする(3)は誤りです。
むしろ加熱されないことが利点になる
電子レンジの容器に、まさにこれらの材料が使われます——容器が温まらず、中身だけが温まるのが理想だからです。
| 材料 | 誘電損失係数 | マイクロ波での扱い |
| 水(食品) | ★大きい | ★よく発熱する(加熱の対象) |
| 石英ガラス | ★0.001以下 | ★ほぼ発熱しない(容器) |
| ポリエチレン・テフロン | 0.001以下 | ほぼ発熱しない(容器) |
| 金属 | —(導体) | 反射する(使用禁止) |
「加熱できない」ことは欠点ではなく設計上の長所——だから容器として選ばれているのです。逆に言えば、これらを加熱したいならマイクロ波は使えません。


マイクロ波加熱の短所
本問は長所ばかりが並んでいますが——短所も知っておくと理解が深まります。
| 短所 | 内容 | 対策 |
| ★加熱ムラ | 定在波と浸透深さの制約 | ターンテーブル、攪拌 |
| 材料を選ぶ | ★誘電損失係数が小さいと加熱できない | 他方式との併用 |
| 金属が使えない | 反射して放電する | — |
| 装置が高価 | マグネトロンと電源が必要 | — |
「材料を選ぶ」ことが最大の制約——本問の(3)が指摘している内容そのものです。金属も乾いた紙もセラミックスも加熱できません。
裏を返せば、水分を含むものだけを狙って加熱できる——乾燥や殺菌には理想的です。短所と長所は同じ性質の裏表だと言えます。
熱効率が高い理由
(5)の「熱効率も高い」——被加熱物だけが発熱するからです。
電熱炉では、炉壁や治具も一緒に温めることになります——そこへ行った熱は無駄。マイクロ波なら、その無駄がありません。
正誤判定を速く終わらせる
5つの記述を全部ていねいに読む必要はありません——読み方に強弱をつけましょう。
| 記述の型 | 読み方 | 本問での例 |
| 長所を素直に述べる | ★流し読みでよい | (1)(2)(4)(5) |
| ★具体的な材料名が出る | ★ていねいに読む | ★(3)石英ガラス・ポリエチレン |
| 数値や比較を含む | ていねいに読む | — |
具体名が出てくる記述には、必ず判断すべき内容がある——出題者がそこに仕掛けを置いているからです。
本問なら(3)だけをじっくり検討すれば足ります——「石英ガラスは電子レンジの容器に使う」と思い出せば、「加熱できる」がおかしいと即座に分かるでしょう。
A問題は1問4〜5分——この読み分けができれば1〜2分で片づきます。浮いた時間を計算問題に回せます。
誘電損失係数の大きさを比べる
「小さい」とはどの程度か——数値で見ておきましょう。
| 材料 | εrtanδ の目安 | 加熱の可否 |
| ★水(20 ℃) | ★10 前後 | ★よく加熱される |
| 生肉・野菜 | 数〜十数 | よく加熱される |
| 乾いた木材 | 0.01前後 | 加熱しにくい |
| ★石英ガラス | ★0.0001程度 | ★ほぼ加熱されない |
水と石英ガラスでは、5桁ほどの開き——「小さい」どころではありません。実質的に加熱不能だと言えます。
木材の乾燥にマイクロ波が使われるのは、水分を含む部分だけが加熱されるから——乾いた部分は加熱されないので、自動的に「まだ湿っている場所」を狙って加熱できるのです。
(1)(2)(4)(5) はすべて長所を述べている
本問の選択肢は、(3)を除いてマイクロ波加熱の長所——まとめて理解しておきましょう。
| 選択肢 | 長所 | 理由 |
| (1) | 昇温が速い | ★内部で直接発熱するので熱伝導を待たない |
| (2) | 温度制御が容易 | 電気的に出力を変えられる |
| (4) | 作業環境が良い | ★周囲の空気を熱くしない |
| (5) | 予熱不要・効率が高い | 炉体を温める必要がない |
(1)の「熱伝導や対流にはほとんど無関係」——外部加熱なら表面から中心へ熱が伝わるのを待つのに対し、マイクロ波は最初から内部で発熱しているという意味です。
(4)は工場での実用上とても重要——電熱炉は周囲を暑くしますが、マイクロ波はそうならない。作業者の環境が改善されるのです。
(5)の「予熱不要」も同じ理由——炉の壁やヒータを温める必要がないので、スイッチを入れてすぐ加熱が始まり、無駄なエネルギーも要りません。
⚠️ よくある間違い
(3)を正しいと判断してしまう——比例関係を逆に覚えているのが原因です。
P=KfE2εrtanδ——εrtanδ は分子にあるので、小さければ発熱も小さい。式を思い出せば迷いません。
身近な確認方法もあります——電子レンジで、皿は熱くならないのに食品は熱くなる。皿(陶器・ガラス)の誘電損失係数が小さいからです。
皿が熱いのは食品から伝わった熱——皿自体が発熱しているわけではないと押さえてください。
工業用マイクロ波加熱
家庭用は2.45 GHzですが、工業用には915 MHz も使われます。
| 周波数 | 波長 | 浸透深さ | 用途 |
| 2.45 GHz | 約12 cm | 浅い | ★電子レンジ、小型装置 |
| 915 MHz | 約33 cm | ★深い | ★大型の乾燥・殺菌装置 |
周波数が低いほど浸透深さが大きい——厚みのあるものを均一に加熱したいなら915 MHz が有利です。誘導加熱で深部を加熱するのに低周波を使うのと同じ発想になります。
用途は食品の乾燥・殺菌、木材やセラミックスの乾燥など——「内部から乾かせる」のが決め手です。表面だけ乾いて中に水分が残る、ということが起きません。
⏱️ 本番での進め方
①(3)★誘電損失係数が小さい=加熱できない。比例関係。
②石英ガラス・ポリエチレンは容器に使われる(温まらないから)。
③(1)(2)(4)(5)はいずれも長所。読み飛ばしてよい。
④P=KfE2εrtanδ を思い出せば即断できる。
💡 覚え方
「電子レンジで皿は熱くならない」——誘電損失係数が小さいからです。それは欠点ではなく、容器として選ばれる理由——身近な例で確かめられます。
マイクロ波加熱の原理は平成26年度 A問題11にあります(電気加熱:電子レンジのマイクロ波加熱の原理)。同じ公式を使う対の問題です。

まとめ
| (1)(2)(4)(5) | 正しい記述 |
| (3) | 誘電損失係数の小さい物(石英ガラス等)は「加熱できる」が誤り(実際は困難) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電子レンジのマイクロ波加熱の原理と誘電損失の穴埋め問題:【機械】平成26年度A問題11
・抵抗加熱・アーク加熱・赤外加熱・誘電加熱・誘導加熱の記述の正誤判定:【機械】令和4年度下期A問題12

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