同期機23【電験3種 機械】同期電動機のベクトル図と負荷角!平成24年 B問題16 完全解説

電験3種 機械科目 同期機 平成24年度 B問題16 同期電動機の負荷角!ベクトル図で読み解く

今回は平成24年度 機械科目 B問題16を解説します。同期電動機の内部誘導起電力と負荷角を、ベクトル図と出力式から求める2問構成です。

電動機では \(\dot{E}_0=\dot{E}-jx\dot{I}\)、出力は \(P=\dfrac{3E_0E}{x}\sin\delta\) を使います。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16

 三相同期電動機が定格電圧3.3 kVで運転している。ただし,三相同期電動機は星形結線で1相当たりの同期リアクタンスは10 Ωであり,電機子抵抗,損失及び磁気飽和は無視できるものとする。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 負荷電流(電機子電流)110 A,力率 cosφ=1 で運転しているときの1相当たりの内部誘導起電力[V]の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 1 100 (2) 1 600 (3) 1 900 (4) 2 200 (5) 3 300

(b) 上記(a)の場合と電圧及び出力は同一で,界磁電流を1.5倍に増加したときの負荷角(電動機端子電圧と内部誘導起電力との位相差)を δ′ とするとき,sinδ′ の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 0.250 (2) 0.333 (3) 0.500 (4) 0.707 (5) 0.866

出題のポイント:(b)は「出力一定」が効いてくる

(a)は力率1の素直な三平方(b)は界磁を1.5倍にしたときの負荷角——(b)で使うのは「電圧と出力が同一」という条件です。

円筒形同期機の出力(1相分)

\( P_o=\dfrac{VE}{x_s}\sin\delta \)

V と xs が変わらないなら、\( E\sin\delta \) が一定——これが(b)の骨格です。

界磁を強めれば E は大きくなり、\( E\sin\delta \) を保つために δ は小さくなる——計算する前に、答えが0.5より小さくなることが予想できます

同期電動機の端子相電圧と内部誘導起電力と同期リアクタンス降下のベクトル関係
電動機ではE0=Vφ-jXsIとなり、力率1では3つの大きさが直角三角形を作ります。

(a) 内部誘導起電力を求める

\( V_p=\dfrac{3\,300}{\sqrt{3}}\fallingdotseq 1\,905\ [\mathrm{V}] \)
相電圧
星形結線なので √3 で割る
\( x_s I=10\times110=1\,100\ [\mathrm{V}] \)
降下
同期リアクタンス×電機子電流
\( E=\sqrt{1\,905^{2}+1\,100^{2}} \)
力率1
直角三角形の斜辺
\( \phantom{E}=\sqrt{3\,630\,000+1\,210\,000}=\sqrt{4\,840\,000} \)
計算
足し合わせる
\( \phantom{E}\fallingdotseq 2\,200\ [\mathrm{V}] \)
誘導起電力
ちょうど2 200 V
答え(a)の正解は (4) 2 200 Vです。1 905:1 100:2 200 は、およそ √3:1:2 の比——30-60-90 の直角三角形になっており、この時点で負荷角が30°だと分かります

⚠️ よくある間違い
(3) 1 900 V相電圧1 905 V をそのまま答えたもの、(1) 1 100 Vリアクタンス降下そのものです。
(2) 1 600 V\( \sqrt{1\,905^{2}-1\,100^{2}}\fallingdotseq 1\,556 \) ——斜辺と他辺を取り違えて引き算したときの値です。電動機でも力率1なら E は V より大きい——2乗して足す側だと固定して覚えてください

(b) 界磁1.5倍のときの負荷角

界磁電流を1.5倍にすると、磁気飽和がなければ誘導起電力も1.5倍になります。問題文が「磁気飽和は無視できる」と断っているのは、この比例を使わせるためです。

\( E’=1.5\times2\,200=3\,300\ [\mathrm{V}] \)
新しい E
界磁に比例して増える
\( \sin\delta=\dfrac{x_s I\cos\varphi}{E}=\dfrac{1\,100}{2\,200}=0.5 \)
(a)の負荷角
力率1なので分子はそのまま xsI
\( E\sin\delta=2\,200\times0.5=1\,100 \)
不変量
出力が同じならこの積が一定
\( \sin\delta’=\dfrac{1\,100}{E’}=\dfrac{1\,100}{3\,300} \)
新しい負荷角
積を新しい E で割る
\( \phantom{\sin\delta’}\fallingdotseq 0.333 \)
答え
選択肢の0.333に一致
平成24年機械B問題16の内部誘導起電力と負荷角の計算および正解を示す図
内部誘導起電力は2200 Vで(a)(4)、界磁1.5倍後はsinδ′=0.333で(b)(2)です。
答え(b)の正解は (2) 0.333です。E が1.5倍になったので、sin δ は 1/1.5=0.667 倍——0.5×0.667=0.333 という、それだけの関係です。

⚠️ よくある間違い
(3) 0.500(a)のときの負荷角のまま——界磁を変えても負荷角は変わらないと考えたときの答えです。界磁を変えれば E が変わり、出力を保つには δ が変わる——この連動を押さえておきましょう

この操作が意味するもの

(a) 調整前(b) 界磁1.5倍
誘導起電力 E2 200 V3 300 V
負荷角 δ30°約19.5°
出力同じ同じ
力率1.0進み
脱出トルクまでの余裕小さい大きい

界磁を強めると負荷角が小さくなり、脱出トルクまでの余裕が増えます——つまり安定度が上がるのです。系統事故時に界磁を急に強める「速応励磁」が安定度対策になるのは、この理屈によります。

ただし電機子電流は増え、力率は進みに振れますV曲線の右半分(過励磁側)へ移動したということ——安定度と引き換えに、銅損が増えるという関係になっています。

⏱️ 本番での進め方
①(a) 相電圧1 905 V と降下1 100 V で三平方 → 2 200 V。
②(a) 1 905:1 100:2 200=√3:1:2 に気づけば δ=30°も即決。
③(b) 出力一定 ⇒ E sinδ が一定。1.5倍なら sinδ は 1/1.5 倍。
④ 0.5×(1/1.5)=0.333。計算らしい計算は不要。

💡 覚え方
「出力が同じなら E sin δ は不変」——界磁を上げれば δ が下がり、界磁を下げれば δ が上がるこの反比例が分かっていれば、(b)は暗算で終わります

同期電動機の内部誘導起電力2200ボルトと界磁1.5倍後の負荷角を求める計算図
出力一定ではE0 sinδが一定なので、界磁1.5倍後のsinδ′は0.333になります。

界磁を1.5倍にすると、電機子電流はどうなるか

(b)では負荷角だけを問われましたが、同じ操作で電機子電流も変わっていますそちらも計算しておくと、この操作の意味がはっきりします

\( \delta’=\sin^{-1}0.333\fallingdotseq 19.5^{\circ} \)
新しい負荷角
sin δ′=0.333 から
\( \dot{E}’=3\,300(\cos19.5^{\circ}-j\sin19.5^{\circ})=3\,111-j1\,100 \)
新しい E
電動機なので V より遅れる
\( \dot{I}=\dfrac{\dot{V}-\dot{E}’}{jx_s}=\dfrac{-1\,206+j1\,100}{j10} \)
電流
電動機の電圧方程式を電流について解く
\( \phantom{\dot{I}}=110+j121\ [\mathrm{A}] \)
整理
実部が有効分、虚部が無効分
\( I=\sqrt{110^{2}+121^{2}}\fallingdotseq 163\ [\mathrm{A}] \)
大きさ
110 A から163 A へ増えた

有効分(実部)が110 A のまま変わっていない点に注目してください。出力が同じなのだから、電圧と同相の成分は変わりようがない——増えたのは無効分(虚部)だけです。

(a) 界磁1.0倍(b) 界磁1.5倍
電機子電流110 A163 A
有効分110 A110 A(不変)
無効分0 A121 A(進み)
力率1.000.67(進み)
負荷角30°19.5°

これがV曲線の右半分を登る動きそのものです。界磁を強めると、有効電力は変えないまま進み無効電力だけを増やしていく——電流の大きさは増え、力率は悪くなり、銅損も増えます

それでもこの運転をする理由は、系統に進み無効電力を供給できることでした。工場の遅れ力率を打ち消して、受電点の力率を改善する——負荷を回しながら力率改善も担うのが同期電動機の強みです。

まとめ

相電圧\(E=3.3\mathrm{k}/\sqrt3\fallingdotseq1\,905\,\mathrm V\)
内部誘導起電力\(E_0=\sqrt{1\,905^2+1\,100^2}\fallingdotseq2\,200\,\mathrm V\)…(a)(4)
負荷角\(E_0’=3.3\,\mathrm{kV},\ \sin\delta’=\dfrac{10\times0.629}{3\times1.905\times3.3}\fallingdotseq0.333\)…(b)(2)
答え(a) (4)、(b) (2)

▼あわせて解きたい関連問題
・同期発電機のベクトル図:【機械】平成20年度A問題5
・遅れ力率の負荷角:【機械】平成30年度A問題6

📚 次に解くべき関連問題
【機械】令和6年度上期A問題6(同期機24)
【機械】令和2年度A問題5(同期機25)
【機械】平成30年度A問題5(同期機31)
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