今回は平成20年度 機械科目 A問題5を解説します。電機子抵抗と同期リアクタンスを考慮した内部誘導起電力を求める問題です。
誘導起電力の一般式 \(\dot{E}_0=\dot{V}+(r_a+jX_s)\dot{I}\) に素直に代入し、複素数の大きさを求めます。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
定格容量3 300 kV・A,定格電圧6 600 V,星形結線の三相同期発電機がある。この発電機の電機子巻線の一相当たりの抵抗は0.15 Ω,同期リアクタンスは12.5 Ωである。この発電機を負荷力率100 %で定格運転したとき,一相当たりの内部誘導起電力[V]の値として,最も近いのは次のうちどれか。ただし,磁気飽和は無視できるものとする。
(1) 3 050 (2) 4 670 (3) 5 280 (4) 7 460 (5) 9 150
出題のポイント:抵抗を無視しない珍しい問題
同期機の計算問題では「電機子巻線抵抗は無視する」と書かれるのが普通です。ところが本問は抵抗0.15 Ω が与えられ、無視してよいとは書かれていません——抵抗込みで計算する必要があります。
力率100 %なので、電流は端子電圧と同相です。抵抗降下 raI は電流と同相なので端子電圧と同じ向き、リアクタンス降下 xsI は90°進んだ向き——だから「(V+raI) と xsI の直角三角形」になります。

必要な値をそろえる
三相の定格電流
約289 A
星形結線なので1相分は線間の 1/√3
問われているのが「一相当たりの内部誘導起電力」である点に注意します。だから端子電圧も1相分(相電圧)に直してから計算します——最後に √3 を掛ける必要はありません。
電流と同相
電流より90°進み
抵抗降下43 V に対してリアクタンス降下は3 609 V——83倍もの差があります。同期機で「抵抗は無視できる」と言われるのは、この桁違いの差があるからです。
三平方の定理で求める
直角三角形の斜辺
実軸3 854、虚軸3 609
それぞれ2乗する
足し合わせる
選択肢の5 280に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(5) 9 150 Vは答えを線間電圧に直してしまった値(5 280×√3≒9 145)です。問われているのは「一相当たり」——最後に余計な √3 を掛けてはいけません。
(4) 7 460 Vはベクトルではなく単純に足し算した値(3 811+43+3 609=7 463)です。(1) 3 050 Vは正解をさらに √3 で割った値——√3 を掛けるか割るかで迷った跡が選択肢に残されています。
「相か線間か」で3つの答えが作れる——3 050(÷√3)、5 280(正解)、9 150(×√3)という3段構えです。問題文の「一相当たりの」という5文字を読み落とさないことが、この問題の実質的な勝負どころになっています。
抵抗を無視したらどうなるか
raI を落として計算
実軸が43 V 小さくなる
正解との差は約31 V(0.6 %)
抵抗を無視しても5 249 V で、正解5 280 V との差は0.6 %——選択肢が(2)4 670 と(3)5 280 のように離れている本問では、どちらでも正解にたどり着けます。
つまり本問は、抵抗を含めても含めなくても答えが変わらない作りになっています。時間がないときは抵抗を無視して概算し、選択肢に近いものがあればそれを選ぶ——これも本番では有効な戦術です。ただし %Z が小さい機械や低圧の機械では抵抗の影響が無視できなくなるので、常に無視してよいわけではありません。
⏱️ 本番での進め方
① In=S/(√3Vn)、V=Vn/√3 を先に出す。
② 力率1なら E=√((V+raI)2+(xsI)2)。
③ 抵抗降下は43 V とごく小さい。概算なら無視してよい。
④「一相当たり」なら最後に √3 を掛けない。3 050・5 280・9 150 の3段構えに注意。
💡 覚え方
「抵抗は電流と同相、リアクタンスは90°進み」——だから力率1では (V+raI) と xsI の直角三角形。抵抗を足す先が「V の側」だと分かっていれば、式を丸暗記する必要はありません。

求めた誘導起電力から電圧変動率が出る
誘導起電力が分かれば、この発電機の電圧変動率もすぐに計算できます。励磁を変えずに負荷を切れば、端子電圧は誘導起電力の値になるからです。
求めた E と相電圧 V
差は約1 469 V
負荷を切ると約4割上がる
約39 %という値は、この機械の百分率同期インピーダンスと整合します。Zs≒12.5 Ω、In≒289 A、V≒3 811 V から %Z≒95 %——力率1なら \( \sqrt{1+0.95^{2}}-1\fallingdotseq 0.38 \) となり、ほぼ同じ値が出ます。
2つの道筋で同じ答えが出るかを確かめる——これは計算問題の検算として非常に有効です。本問のように途中で求めた量(E)が別の量(ε)につながっているとき、その関係を使えば自分の答えを裏づけられます。
電圧変動率が39 %もあるということは、負荷の増減で端子電圧が大きく振れるということです。実機では自動電圧調整装置が界磁電流を絶えず調整し、この変動を打ち消しています——計算で出た数字が、なぜAVRが必要なのかを説明してくれるのです。
まとめ
| 定格電流 | \(I_n=P/(\sqrt{3}V)=288.7\,\mathrm{A}\) |
| 誘導起電力 | \(\dot{E}_0=3\,853.8+j3\,608.5\,\mathrm{V}\) |
| 大きさ | \(E_0=\sqrt{3853.8^2+3608.5^2}\fallingdotseq5\,280\,\mathrm{V}\) |
| 答え | (3) |
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