今回は平成22年度 機械科目 A問題1を解説します。他励電動機の速度制御・トルク制御を問う語句選択問題で、【機械】令和2年度A問題1とほぼ同じ知識で解ける定番テーマです。
「比例か反比例か」を3か所で問われますが、判断基準は速度の式とトルクの式の2本だけです。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
直流電動機の速度とトルクを次のように制御することを考える。
損失と電機子反作用を無視した場合,直流電動機では電機子巻線に発生する起電力は,界磁磁束と電機子巻線との相対速度に比例するので,(ア)では,界磁電流一定,すなわち磁束一定条件下で電機子電圧を増減し,電機子電圧に回転速度が(イ)するように回転速度を制御する。この電動機では界磁磁束一定条件下で電機子電流を増減し,電機子電流とトルクとが(ウ)するようにトルクを制御する。この電動機の高速運転では電機子電圧一定の条件下で界磁電流を増減し,界磁磁束に回転速度が(エ)するように回転速度を制御する。このように広い速度範囲で速度とトルクを制御できるので,(ア)は圧延機の駆動などに広く使われてきた。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 直巻電動機 反比例 比例 比例 (2) 直巻電動機 比例 比例 反比例 (3) 他励電動機 反比例 反比例 比例 (4) 他励電動機 比例 比例 反比例 (5) 他励電動機 比例 反比例 比例
出題のポイント:3つの制御をそれぞれ式の「どこを動かすか」で見る
直流電動機の制御は「速度の式と トルクの式のどの文字を動かすか」で整理すると、丸暗記なしで全部答えられます。本問は3つの制御方式が順番に説明されているので、式のどこに対応するかを1つずつ確かめていきます。
(ア)を決めるのは「界磁電流一定、すなわち磁束一定条件下で電機子電圧を増減し」という文です。界磁と電機子を別々に動かせるのは、両者が電気的に独立している他励電動機だけ。直巻は界磁巻線と電機子が直列につながっているので、電機子電流を変えれば界磁電流も必ず一緒に変わってしまい、この操作は原理的に不可能です。

3つの制御を1つの表にまとめる
| 制御方式 | 固定するもの | 動かすもの | 結果 | 使う速度域 |
| 電機子電圧制御 | φ(界磁電流) | V(電機子電圧) | n ∝ V(比例) | 0 〜 基底速度 |
| トルク制御 | φ(界磁電流) | Ia(電機子電流) | T ∝ Ia(比例) | 全域 |
| 界磁制御(弱め界磁) | V(電機子電圧) | φ(界磁電流) | n ∝ 1/φ(反比例) | 基底速度 〜 高速 |
この表がそのまま(イ)(ウ)(エ)の答えです。(イ)=比例、(ウ)=比例、(エ)=反比例。式に代入した結果を日本語にしただけで、覚えるべきことは何もありません。
なぜ「反比例」だけ1つ違うのかも式を見れば明らかです。n=E/(kEφ) で φ は分母にいるので、φ を小さくすれば n は大きくなります。「弱め界磁で高速化」という言い方は、この分母を小さくすることを指しています。

なぜ2段階の制御になるのか
問題文が「高速運転では電機子電圧一定の条件下で」と断っているのは、電機子電圧には上限があるからです。定格電圧まで上げきってしまうと、それ以上 V を大きくすることはできません。
そこで定格電圧に達した点(基底速度)から先は、磁束を弱めて速度を伸ばすという第2段階に移ります。この2段階の運転は、直流機に限らずインバータ駆動の誘導電動機でもまったく同じ形で現れます(V/f 一定制御 → 定電圧・弱め界磁制御)。
| 低速域(0〜基底速度) | 高速域(基底速度〜) | |
| 動かすもの | 電機子電圧 V | 界磁磁束 φ(弱める) |
| 磁束 | 一定(最大) | 減っていく |
| 取り出せるトルク T=kφIa | 一定(定トルク領域) | φ が減るぶん低下 |
| 出力 P=ωT | 速度に比例して増加 | ほぼ一定(定出力領域) |
低速域は「定トルク」、高速域は「定出力」——この呼び分けは頻出です。圧延機のように、厚い材料を低速で強く押し、薄くなったら高速で送る、という運転にはこの特性がぴったり合います。問題文の最後に「圧延機の駆動などに広く使われてきた」とあるのはそのためです。

選択肢の構造で絞り込む
| 段階 | 根拠 | 残る選択肢 |
| (ア)を決める | 界磁と電機子を独立に制御できるのは他励のみ | (1)(2)が消えて(3)(4)(5) |
| (イ)を決める | φ 一定で V を増やせば n も増える ⇒ 比例 | (3)が消えて(4)(5) |
| (ウ)を決める | T=kφIa で φ 一定 ⇒ 比例 | (5)が消えて(4)に確定 |
(エ)を検討するまでもなく(4)に決まります。穴埋め問題は自信のある空欄から順に消していくのが鉄則で、全部を悩む必要はありません。逆に、最後まで残った空欄は答えが決まったあとの検算に使えます——(エ)=反比例が n∝1/φ と一致することを確認して終わりです。
直巻では、なぜこの制御ができないのか
選択肢(1)(2)が示す直巻電動機では、界磁巻線と電機子巻線が1本の道でつながっています。流れる電流は1種類しかないので、「界磁電流を一定に保ったまま電機子電流だけを増やす」ということが物理的にできません。
直巻の速度制御は、直列抵抗を入れて電圧を落とすか、界磁巻線の一部を短絡して磁束を減らす(分路界磁)といった、より粗い方法に限られます。他励が「圧延機のように精密な制御が要る用途」に使われてきたのは、この自由度の差によるものです。
⏱️ 本番での進め方
① n=(V−IaRa)/(kEφ) と T=kTφIa を余白に書く。ここから全部読める。
② φ が分母にいることを確認 ⇒ 界磁を触る話なら必ず反比例。
③ (ア)は「独立に制御できるか」だけで決まる ⇒ 他励。これで2肢消える。
④ 残りは「分子にあるものは比例、分母にあるものは反比例」で機械的に埋まる。
💡 覚え方
他励=界磁と電機子が別電源=独立に制御できる。φ 一定なら n∝V・T∝Ia(どちらも比例)、V 一定なら n∝1/φ(反比例)。低速は電圧制御で定トルク、高速は弱め界磁で定出力——この2段階はインバータ駆動の誘導機でもまったく同じ構図なので、機械科目全体で使えます。
⚠️ よくある間違い
(ア)を直巻としてしまうのが典型(→(1)(2))。「速度もトルクも制御できる」と聞くと直巻の可変速性を思い浮かべがちですが、独立して制御できるかどうかが判断基準です。また(エ)を比例としてしまう誤り(→(3)(5))は、φ が分母にあることを確認すれば防げます。
基底速度から先で「トルクが下がる」のはなぜ困らないのか
弱め界磁の領域に入ると T=kTφIa の φ が小さくなるので、出せるトルクは速度に反比例して落ちていきます。一見すると性能が落ちているように見えますが、実際の負荷ではこれで困らないことがほとんどです。
理由は負荷そのものが要求するトルクも高速では小さくなるから。圧延機なら厚い材料を噛み込む最初は低速・大トルク、薄く延びてからは高速・小トルクという運転になります。巻取機も同じで、巻き始めは直径が小さく大トルクが要り、巻き太るほど速度は落として張力を保つ——どちらも「低速で強く、高速で軽く」という形です。
| 低速域(電圧制御) | 高速域(界磁制御) | |
| 電機子電圧 V | 0 から定格まで可変 | 定格で固定 |
| 磁束 φ | 最大で固定 | 定格から弱めていく |
| 出せるトルク | 一定(定トルク領域) | 速度に反比例して低下 |
| 出力 P=ωT | 速度に比例して増加 | ほぼ一定(定出力領域) |
| 電機子電流の上限 | 定格で頭打ち | 定格で頭打ち |
どちらの領域でも電機子電流の上限は同じだという点が本質です。銅損 Ia2Ra による発熱が機械の限界を決めるので、「電流をこれ以上流せない」という制約は速度によらず一定。その制約のもとで、低速では φ を最大にしてトルクを稼ぎ、高速では φ を削って速度を稼いでいるわけです。
弱め界磁には限界もあります。磁束を減らしすぎると、同じトルクを出すのに大きな電機子電流が必要になり、電機子反作用による整流の悪化や制御の不安定化が起こります。実機では基底速度の2〜3倍程度が上限とされます。「界磁を切れば無限に速くなる」わけではない——直巻電動機が無負荷で暴走するのと同じ現象の裏返しです。
まとめ
| (ア) | 界磁を独立制御できる=他励電動機 |
| 電圧制御 | \(n\propto V\)(比例)…基底速度まで |
| トルク制御 | \(T\propto I_a\)(比例) |
| 界磁制御 | \(n\propto 1/\phi\)(反比例)…高速域 |
| 答え | (4) |
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