今回は平成19年度 機械科目 A問題1を解説します。テーマは「直巻電動機はなぜ無負荷で使ってはいけないのか」という、直巻の最重要知識を問う論説問題です。
結論は「無負荷では磁束が消えて回転速度が暴走するから」。回転数の式に直巻の磁束 \(\phi\propto I\) を代入すると一発で見えてきます。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
直流直巻電動機は,供給電圧が一定の場合,無負荷や非常に小さい負荷では使用することができない。この理由として,正しいのは次のうちどれか。
(1) 界磁電流と電機子電流がともに大きくなるので,界磁巻線や電機子巻線を焼損する危険性がある。
(2) 界磁電流が大きくなりトルクが非常に増大するので,駆動軸や電機子巻線を破損する危険性がある。
(3) 電機子電流が小さくなるので回転速度が減少し,回転が停止する。
(4) 界磁磁束が増大して回転速度が減少し,回転が停止する。
(5) 界磁磁束が小さくなって回転速度が非常に上昇するので,電機子巻線を破損する危険性がある。
出題のポイント:直巻は「負荷電流が磁束を作る」
直巻電動機のいちばんの特徴は、界磁巻線が電機子と直列につながっていることです。つまり負荷電流がそのまま界磁電流になる——この一点から、直巻のすべての性質が導かれます。
負荷が軽くなれば電流が減り、電流が減れば磁束も減ります。ところが回転速度は磁束に反比例するので、磁束が減るぶん速度は上がる。無負荷では磁束がほとんど消え、速度が際限なく上がってしまう——これが「無負荷で使ってはいけない」理由です。

式で確かめる:n は I の逆数で効く
この式の形が決定的です。分母に I があるので、I → 0 のとき n → ∞。分子は V に近づいて有限のままなので、分母だけがゼロへ向かい、速度は発散します。実際の機械では鉄心の残留磁気や機械損があるので本当に無限にはなりませんが、定格の数倍という危険な速度には容易に達します。
分巻や他励と比べると違いがはっきりします。分巻は界磁巻線が端子に並列なので、端子電圧が一定なら磁束も一定。式の分母は定数で、負荷が変わっても速度はほとんど動きません(定速度電動機)。直巻だけが「磁束が負荷で動く」のです。
| 分巻・他励 | 直巻 | |
| 界磁の接続 | 電機子と並列(他励は別電源) | 電機子と直列 |
| 磁束 φ | 端子電圧で決まる ⇒ ほぼ一定 | 負荷電流に比例(未飽和域) |
| トルク T=kφI | I に比例(1乗) | I2 に比例(2乗) |
| 無負荷の速度 | ほぼ定格速度のまま安全 | 暴走(危険) |
| 向いている用途 | 定速度が要る負荷(工作機械など) | 大きな始動トルクが要る負荷(電車・クレーン) |

5つの選択肢を1つずつ検証する
(1) 界磁電流と電機子電流がともに大きくなる → 誤り
無負荷では負荷が要求するトルクが小さいので、T=kφI から電流はむしろ小さくなります。電流が大きくなるという前提そのものが逆です。
☝️ ひっかけの作り方:「焼損する危険」という結論だけを見ると正しそうに聞こえるのが罠。直巻の事故は焼損ではなく過速度による機械的な破損です。「電流が増える」と書いてある肢は、この問題では全部誤りだと即断できます。
(2) 界磁電流が大きくなりトルクが非常に増大する → 誤り
(1)と同じ前提の誤りです。加えて無負荷なのにトルクが増大するという主張自体が成り立ちません。負荷が要求しないトルクを電動機が出し続けることはできず、つり合ったところで運転されます。
(3) 電機子電流が小さくなるので回転速度が減少し、回転が停止する → 誤り
前半は正しく、後半だけが逆という、いちばん惜しい肢です。電機子電流が小さくなるのはその通り。しかし電流が減ると磁束が減り、速度は上がります。「電流が減る=力が出ない=止まりそう」という日常感覚が裏切られるところです。
☝️ ひっかけの作り方:正しい前半でうなずかせ、後半でひっくり返すという定番の作り方。論説問題では文を「〜ので」で切って、前半と後半を別々に判定すると引っかかりません。
(4) 界磁磁束が増大して回転速度が減少し、回転が停止する → 誤り
磁束の動く向きが逆です。直巻の磁束は φ=kfI なので、電流が減れば磁束も減ります。なお「磁束が増えれば速度が減る」という部分は n∝1/φ から正しいので、因果の入口だけが間違っている形になっています。
(5) 界磁磁束が小さくなって回転速度が非常に上昇するので、電機子巻線を破損する危険性がある → 正しい
磁束の減少 → 速度の上昇 → 遠心力による破損という因果がすべて正しく並んでいます。電機子巻線はスロットの中でくさびやバンドで押さえられているだけなので、遠心力(回転速度の2乗に比例)が設計値を超えると巻線が飛び出し、機械を壊します。

実務ではどう防いでいるか
この危険があるため、直巻電動機はベルトやチェーンで負荷につないではいけないとされています。ベルトが切れたり外れたりした瞬間に無負荷になり、そのまま暴走するからです。歯車や直結軸で、負荷が外れない構造にするのが原則です。
それでも直巻が使われ続けてきたのは、始動トルクが桁違いに大きいからです。T∝I2 なので、始動時に定格の2倍の電流を流せばトルクは4倍出ます。電車・クレーン・巻上機のように「重い物を静止から動かす」用途では、この性質が何よりも効きます。電車は必ず乗客という負荷があるので、無負荷になる心配がないという事情もありました。
直巻発電機の話とは分けて覚えてください。発電機のほうは無負荷だと電流が流れず磁束も立たないので、そもそも電圧が発生しません(自励できない)。電動機は「暴走」、発電機は「電圧が立たない」——どちらも「電流がないと磁束がない」という同じ原因から出ていますが、現れ方が正反対です。
⏱️ 本番での進め方
① 直巻の問題を見たら、まず φ=kfI と紙の端に書く。ここから全部が出る。
② 選択肢を「〜ので」で前半・後半に切る。片方だけ正しい肢が必ず混ぜてある。
③ 「電流が増える」と書いてある肢は、無負荷の問題では即座に消せる。
④ 残った肢は速度の向きだけで決着する。磁束↓なら速度↑(n∝1/φ)。
💡 覚え方
直巻は「電流が磁束をつくる」。だから無負荷=磁束なし=速度無限大。式にすると n={V−(ra+rf)I}/(k kf I) で分母に I。トルクは T∝I2 で始動に強い代わりに、無負荷では暴走する——長所と短所が同じ理由から出ていると理解すると忘れません。
⚠️ よくある間違い
「電流が減る=速度も減る」と直感で答えてしまうのが最大の落とし穴(→(3))。直流電動機の速度を決めるのは逆起電力と磁束の比 n=E/(kφ) であって、電流の大小ではありません。電流が減ると磁束が減り、同じ逆起電力を作るためにより速く回る必要がある——この筋道で考えてください。
まとめ
| 直巻の磁束 | \(\phi=k_fI\):負荷電流がつくる |
| 回転数 | \(n=\dfrac{V-(r_a+r_f)I}{k_nk_fI}\):Iが小さいほど高速 |
| 無負荷 | \(I\to0\) で \(n\to\infty\)(暴走・危険) |
| 答え | (5) |
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