今回は平成19年度 機械科目 A問題5を解説します。無負荷試験と短絡試験の結果から同期インピーダンスを求める問題です。
ポイントは「無負荷電圧は界磁電流に比例する(磁気飽和無視)」こと。短絡試験時の界磁電流に対応する無負荷電圧を換算してから割ります。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
定格速度,励磁電流480 A,無負荷で運転している三相同期発電機がある。この状態で,無負荷電圧(線間)を測ると12 600 Vであった。つぎに,96 Aの励磁電流を流して短絡試験を実施したところ,短絡電流は820 Aであった。この同期発電機の同期インピーダンス[Ω]の値として,最も近いのは次のうちどれか。ただし,磁気飽和は無視できるものとする。
(1) 1.77 (2) 3.07 (3) 15.4 (4) 44.4 (5) 76.8
出題のポイント:同じ界磁電流でそろえてから割る
同期インピーダンスは「無負荷電圧÷短絡電流」で求めます。ただし両者は同じ界磁電流のもとでの値でなければなりません——本問は界磁電流が480 A と96 A でばらばらに与えられており、そろえる一手間が要ります。
「磁気飽和は無視できる」という但し書きが、そろえるための道具です。飽和がなければ短絡電流は界磁電流に比例するので、96 A のときの820 A から、480 A のときの短絡電流を比例計算で出せます。

短絡電流を480 A の界磁にそろえる
界磁電流が5倍なら短絡電流も5倍
480÷96=5
励磁480 A のときの値
480÷96=5 ときれいに割り切れるのは、この比例計算をさせるための出題側の配慮です。割り切れる数字が出てきたら、そこが計算の本筋だという合図と考えてよいでしょう。
相電圧に直して割る
無負荷「線間」電圧を √3 で割る
12600÷1.732
1相分の電圧÷短絡電流
選択肢の1.77に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
この問題は、2つの前処理それぞれの「やり忘れ」を選択肢に用意しています。
| 選択肢 | どんな計算をしたか | 抜けている前処理 |
| (1) 1.77 ← 正解 | 7275÷4100 | なし |
| (2) 3.07 | 12600÷4100 | 線間→相の換算 |
| (3) 15.4 | 12600÷820 | 両方(換算も界磁そろえも) |
| (4) 44.4 | 7275÷164 | 比例を逆にした(820×96/480=164) |
| (5) 76.8 | 12600÷164 | 比例が逆+線間のまま |
5つの選択肢すべてに、明確な「誤り筋」が割り当てられていることが分かります。裏を返せば、どの値を選んでも「それらしい」ので、勘では当たりません——前処理を2つとも正しく踏むことだけが正解への道です。
☝️ ひっかけの作り方:比例の向きを逆にする((4)(5))のは意外に多い誤りです。「界磁電流を増やせば短絡電流も増える」——480 A は96 A より大きいのだから、短絡電流も820 A より大きくなる。この当たり前の向きを確認するだけで、(4)(5)は排除できます。
別解:単位法で考える
定格容量や定格電流が与えられていれば、単位法(p.u.)で解く手もあります。ただし本問は定格容量が与えられていないので、オーム値で素直に計算するのが唯一の道です。
与えられていない量に気づくことも、解法選択の一部です。「定格容量がないから単位法は使えない」と判断できれば、迷わずオーム値の計算に入れます——本番では、この見極めが時間短縮につながります。
⏱️ 本番での進め方
① 界磁電流をそろえる。480/96=5 倍 → 短絡電流も5倍の4100 A。
② 無負荷電圧は「線間」。√3 で割って7275 V。
③ Zs=7275/4100≒1.77 Ω。
④ 選択肢が1.77・3.07(√3倍)と並んでいたら、相電圧への換算を確認する。
💡 覚え方
「同期インピーダンスは、同じ界磁電流での“相電圧÷短絡電流”」。「同じ界磁電流で」と「相電圧で」の2つが条件——この2語を口に出してから計算に入ると、前処理を飛ばしません。
関連問題:短絡比とは表裏一体
同期インピーダンスと短絡比は、単位法で見れば互いの逆数です。令和4年上期 A問題5では短絡比そのものが問われています(同期機9:持続短絡電流から短絡比を求める)。
本問はオーム値、あちらは比の値——同じ試験(無負荷試験と短絡試験)から、何を取り出すかの違いだけです。2問を並べて解くと、同期機の特性試験の全体像がつかめます。

同期インピーダンスの中身は何でできているか
同期インピーダンスは1つの部品ではなく、性質の違う3つの要素の合計です。中身を知っておくと、なぜこれほど大きな値(本問なら1.77 Ω)になるのかが納得できます。
| 要素 | 正体 | 大きさの目安 |
| 電機子巻線抵抗 ra | 銅線そのものの抵抗 | とても小さい(通常は無視) |
| 漏れリアクタンス xℓ | 回転子に届かず漏れる磁束の分 | 小さい |
| 電機子反作用リアクタンス xa | 電機子磁束が界磁磁束を打ち消す作用を、リアクタンスとして表したもの | 大きい(主成分) |
同期インピーダンスの大部分は、電機子反作用をリアクタンスに置き換えたものです。実在するコイルの誘導性ではなく、磁束の打ち消し合いという現象を等価回路に押し込んだ量——だから変圧器の漏れリアクタンスなどに比べて桁違いに大きくなります。
本問で無視してよいとされている電機子巻線抵抗は、この3つのうち最も小さい要素です。同期機の問題で「巻線抵抗は無視する」と繰り返し書かれるのは、無視しても誤差がほとんど出ないから——手抜きではなく、妥当な近似なのです。
そして電機子反作用が主成分だということは、同期インピーダンスの大小が電機子反作用の強さそのものを表していることを意味します。電機子反作用の小さい機械=同期インピーダンスが小さい=短絡比が大きい=鉄機械——同期機の用語がすべて1本の線でつながっているのが見えてきます。
まとめ
| 電圧換算 | \(V_{96}=12\,600\times96/480=2\,520\,\mathrm{V}\) |
| 同期インピーダンス | \(Z_s=(2\,520/\sqrt{3})/820\fallingdotseq1.77\,\Omega\) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同期インピーダンス→短絡比:【機械】令和4年度下期A問題5
・短絡試験の同期インピーダンス:【機械】平成25年度A問題6

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