今回は平成18年度 理論科目 A問題13を解説します。帰還回路を含む増幅回路が発振するための条件(入力電圧と帰還電圧の位相関係、増幅度Aと帰還率βの条件式、回路の名称)の空欄を補充する問題です。
発振の条件(バルクハウゼンの条件)は、位相条件(帰還電圧が入力と同相=正帰還)と振幅条件(ループ利得Aβ≧1)の2つです。発振を持続させるにはAβ=1ですが、発振を開始させるにはAβ≧1が必要です。
平成18年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成18年度 A問題13
帰還回路を含む増幅回路(増幅度A、帰還率β)の発振条件について、増幅回路の入力電圧Viと帰還回路の出力電圧Vfの位相関係(ア)、AとβのAβに関する条件(イ)、及びこの回路の名称(ウ)の空欄に当てはまる組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
増幅度Aの増幅回路と帰還率βの帰還回路からなる回路について、増幅回路の入力電圧Viと帰還回路の出力電圧Vfが(ア)で、AとβがAβについて(イ)の関係にあるとき、この回路は発振する。このような回路を(ウ)増幅回路という。空欄(ア)〜(ウ)の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 同相 Aβ≧1 正帰還 (2) 逆相 Aβ≦1 負帰還 (3) 同相 Aβ=1 負帰還 (4) 逆相 Aβ≧1 正帰還 (5) 同相 Aβ≦1 正帰還
解説①:発振は信号が一周して元に戻る

発振には、帰還信号が入力と同相で戻る位相条件と、一周後に振幅が減らないAβ≧1の振幅条件が必要です。同相で戻して加える方式が正帰還なので、空欄は(ア)同相、(イ)Aβ≧1、(ウ)正帰還となり、正解は(1)です。
解説②:ループ利得Aβの意味

| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | 同相 | 一周して位相が0°に戻る=強め合う |
| (イ) | \(A\beta\geq1\) | 一周して振幅が減らない |
| (ウ) | 正帰還 | 同相で戻すのが正帰還 |
(イ)の不等号の向きに注意してください。\(A\beta\geq1\)(1以上)です。\(A\beta\lt 1\) だと振動が少しずつ小さくなって止まってしまいます。
ちょうど \(A\beta=1\) が持続発振の境界です。実際の回路では最初 \(A\beta\gt 1\) にして振動を育て、振幅が大きくなると飽和して \(A\beta=1\) に落ち着きます。
解説③:3つの空欄を選択肢と照合

| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | 同相 | \(A\beta\geq1\) | 正帰還 | ◎ |
| (2) | 逆相 | \(A\beta\leq1\) | 負帰還 | ×(増幅器の話) |
| (3) | 同相 | \(A\beta=1\) | 負帰還 | ×((ウ)が矛盾) |
| (4) | 逆相 | \(A\beta\geq1\) | 正帰還 | ×((ア)が矛盾) |
| (5) | 同相 | \(A\beta\leq1\) | 正帰還 | ×((イ)が誤り) |
(2)は完全に「負帰還増幅回路」の説明です。逆相で戻し、ループ利得を抑える——増幅器を安定させる設計で、発振とは正反対の目的です。
(3)と(4)は用語が矛盾しています。「同相なのに負帰還」「逆相なのに正帰還」——定義に反するので、内容を知らなくても消せます。
⚠️ よくある間違い
「正帰還=同相、負帰還=逆相」は定義です。この対応が崩れている選択肢は、それだけで誤り——(3)(4)がまさにそのパターンです。
☝️ ひっかけの作り方:(5)の \(A\beta\leq1\) にも注意してください。不等号の向きが逆——1以下では発振が持続しません。用語が正しくても、不等号1つで誤りになります。
深掘り①:発振の2条件を物理的に理解する
信号が回路を一周する様子を追えば、2つの条件が必要な理由が見えてきます。
2つ同時に
「一周して元と同じ信号になれば、入力を切っても振動が続く」——これが発振の本質です。大きさも位相も揃う必要があるので、2つの条件になります。
ブランコを漕ぐのと同じです。タイミングが合っていて(位相条件)、押す力が摩擦より大きければ(振幅条件)、揺れは続きます。
深掘り②:正帰還と負帰還の使い分け
帰還には正と負があり、目的がまったく違います。同じ技術が、使い方次第で正反対の働きをします。
| 正帰還 | 負帰還 | |
| 戻す位相 | 同相 | 逆相 |
| 効果 | 信号を強め合う | 信号を打ち消す |
| 増幅度 | 大きくなる | 小さくなる |
| 安定性 | 不安定(発振する) | 安定 |
| ひずみ・雑音 | 増える | 減る |
| 帯域幅 | 狭くなる | 広くなる |
| 用途 | 発振回路 | 増幅回路の安定化 |
負帰還は増幅度を犠牲にして、それ以外のすべてを改善します。安定性・ひずみ・雑音・帯域幅——だから実用の増幅器はほぼすべて負帰還です。
増幅回路で意図せず正帰還がかかると発振してしまいます。配線の回り込みや電源を通じた結合——実務では厄介な問題になります。
深掘り③:代表的な発振回路
発振回路は「周波数を決める要素」で分類できます。どれも位相条件と振幅条件を満たすよう設計されています。
| 方式 | 周波数を決めるもの | 特徴 | 用途 |
| ハートレー発振 | \(L\) を分割したLC共振 | 高周波向き | ラジオ・無線 |
| コルピッツ発振 | \(C\) を分割したLC共振 | 安定性がよい | 無線・信号源 |
| 移相形CR発振 | CR回路で位相を \(180^\circ\) 回す | 低周波向き | オーディオ |
| ウィーンブリッジ発振 | CRブリッジ | ひずみが少ない | 測定用信号源 |
| 水晶発振 | 水晶振動子 | 非常に安定 | 時計・クロック |
帰還回路が「特定の周波数だけを同相で戻す」ように作られています。その周波数でだけ位相条件が満たされる——だからその周波数で発振します。
水晶発振が最も安定です。水晶の機械的共振を使うので、温度や電圧が変わってもほとんどずれません——クォーツ時計の精度の源です。
深掘り④:発振回路と増幅回路は同じ構造
発振回路は「増幅回路+帰還回路」です。部品構成は増幅回路とほとんど同じ——違うのは帰還の位相だけです。
| 構成要素 | 発振回路での役割 | 増幅回路での役割 |
| 増幅回路(\(A\)) | 損失を補って振動を維持 | 信号を大きくする |
| 帰還回路(\(\beta\)) | 同相で戻す(正帰還) | 逆相で戻す(負帰還) |
| 入力信号 | 不要(雑音から立ち上がる) | 必要 |
| 出力 | 一定周波数の正弦波 | 入力を拡大した波形 |
発振回路に入力信号は要りません。電源を入れた瞬間の雑音の中から、条件を満たす周波数成分だけが育っていく——これが発振の始まりです。
だから「入力がないのに出力が出る」——不思議に見えますが、電源からエネルギーをもらっているので、エネルギー保存には反しません。
⏱️ 本番での進め方
❶ 発振=位相条件(同相)+振幅条件(\(A\beta\geq1\))——2つセット。
❷ 同相=正帰還、逆相=負帰還——定義なので矛盾する選択肢は即消し。
❸ 不等号の向きに注意——\(A\beta\geq1\)(1以上)。
❹ 負帰還は増幅度以外のすべてを改善——安定・低歪み・広帯域。
💡 覚え方
「一周して元と同じ信号になれば振動は続く」——大きさが同じ以上(\(A\beta\geq1\))で、向きも同じ(同相)。ブランコを漕ぐタイミングと同じです。
★参考:令和4年度下期にも同じ内容が出題された
令和4年度下期A問題13も、本問とほぼ同じ内容です。発振の2条件と正帰還を問う——問題文の書き方が違うだけで、答えはどちらも(1)です。
| 本問(平成18年度 A問題13) | 令和4年度下期 A問題13 | |
| (ア) 位相 | 同相 | 同相 |
| (イ) 振幅 | \(A\beta\geq1\) | \(A\beta\geq1\) |
| (ウ) 名称 | 正帰還 | 正帰還 |
| 正答番号 | (1) | (1) |
16年の間隔で、ほぼ同じ問題が再出題されました。発振条件が電子回路の最重要論点だという証拠です。
⚠️ よくある間違い
同じ問題が繰り返し出るテーマは、それだけ重要ということです。「同相・\(A\beta\geq1\)・正帰還」の3語は、確実に暗記しておきましょう。
出題履歴:発振条件は電子回路の入口
発振の2条件は、電子回路分野の基本中の基本です。負帰還との対比まで押さえておけば、どちらを問われても対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度下期A問題13(同じ内容の発振条件)/【理論】令和元年度A問題13(負帰還増幅回路の性質)
まとめ
| (ア)位相条件 | VfがViと同相 |
| (イ)振幅条件 | ループ利得Aβ≧1 |
| (ウ)回路名 | 正帰還増幅回路 |
| 発振条件 | 同相・Aβ≧1・正帰還→(1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・変成器結合電力増幅回路の動作点と巻数比(電子回路40):【理論】平成19年度 B問題18

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