電子回路41【電験3種 理論】帰還増幅回路の発振条件(正帰還・ループ利得Aβ≧1)を理解する!平成18年度 A問題13 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成18年度 A問題13 帰還が生む発振!ループ利得はどこまで必要?

今回は平成18年度 理論科目 A問題13を解説します。帰還回路を含む増幅回路が発振するための条件(入力電圧と帰還電圧の位相関係、増幅度Aと帰還率βの条件式、回路の名称)の空欄を補充する問題です。

発振の条件(バルクハウゼンの条件)は、位相条件(帰還電圧が入力と同相=正帰還)と振幅条件(ループ利得Aβ≧1)の2つです。発振を持続させるにはAβ=1ですが、発振を開始させるにはAβ≧1が必要です。

目次

平成18年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成18年度 A問題13 問題文
平成18年度 理論科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成18年度 A問題13

 帰還回路を含む増幅回路(増幅度A、帰還率β)の発振条件について、増幅回路の入力電圧Viと帰還回路の出力電圧Vfの位相関係(ア)、AとβのAβに関する条件(イ)、及びこの回路の名称(ウ)の空欄に当てはまる組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

増幅度Aの増幅回路と帰還率βの帰還回路からなる回路について、増幅回路の入力電圧Viと帰還回路の出力電圧Vfが(ア)で、AとβがAβについて(イ)の関係にあるとき、この回路は発振する。このような回路を(ウ)増幅回路という。空欄(ア)〜(ウ)の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)
(1)同相Aβ≧1正帰還
(2)逆相Aβ≦1負帰還
(3)同相Aβ=1負帰還
(4)逆相Aβ≧1正帰還
(5)同相Aβ≦1正帰還

解説①:発振は信号が一周して元に戻る

GPT Image 2で作成した正帰還ループと発振の位相条件・振幅条件の図
信号が同相で戻り、ループ利得Aβが1以上なら発振が始まります。

発振には、帰還信号が入力と同相で戻る位相条件と、一周後に振幅が減らないAβ≧1の振幅条件が必要です。同相で戻して加える方式が正帰還なので、空欄は(ア)同相、(イ)Aβ≧1、(ウ)正帰還となり、正解は(1)です。

解説②:ループ利得Aβの意味

GPT Image 2で作成したループ利得Aβによる減衰・持続・成長の比較図
Aβが1未満なら減衰し、1なら持続し、1より大きければ発振が立ち上がります。
空欄答え根拠
(ア)同相一周して位相が0°に戻る=強め合う
(イ)\(A\beta\geq1\)一周して振幅が減らない
(ウ)正帰還同相で戻すのが正帰還

(イ)の不等号の向きに注意してください。\(A\beta\geq1\)(1以上)です。\(A\beta\lt 1\) だと振動が少しずつ小さくなって止まってしまいます

ちょうど \(A\beta=1\) が持続発振の境界です。実際の回路では最初 \(A\beta\gt 1\) にして振動を育て、振幅が大きくなると飽和して \(A\beta=1\) に落ち着きます

答え(ア) 同相、(イ) \(A\beta\geq1\)、(ウ) 正帰還 → 選択肢(1)

解説③:3つの空欄を選択肢と照合

GPT Image 2で作成した発振条件3空欄と5選択肢の照合表
同相、Aβ≧1、正帰還の組合せは選択肢(1)です。
選択肢(ア)(イ)(ウ)判定
(1)同相\(A\beta\geq1\)正帰還
(2)逆相\(A\beta\leq1\)負帰還×(増幅器の話)
(3)同相\(A\beta=1\)負帰還×((ウ)が矛盾)
(4)逆相\(A\beta\geq1\)正帰還×((ア)が矛盾)
(5)同相\(A\beta\leq1\)正帰還×((イ)が誤り)

(2)は完全に「負帰還増幅回路」の説明です。逆相で戻し、ループ利得を抑える——増幅器を安定させる設計で、発振とは正反対の目的です。

(3)と(4)は用語が矛盾しています。「同相なのに負帰還」「逆相なのに正帰還」——定義に反するので、内容を知らなくても消せます

⚠️ よくある間違い
「正帰還=同相、負帰還=逆相」は定義です。この対応が崩れている選択肢は、それだけで誤り——(3)(4)がまさにそのパターンです。

☝️ ひっかけの作り方:(5)の \(A\beta\leq1\) にも注意してください。不等号の向きが逆——1以下では発振が持続しません用語が正しくても、不等号1つで誤りになります

深掘り①:発振の2条件を物理的に理解する

信号が回路を一周する様子を追えば、2つの条件が必要な理由が見えてきます。

$$\dot V_i\ \xrightarrow{\ \text{増幅}\ A\ }\ \dot V_o=A\dot V_i\ \xrightarrow{\ \text{帰還}\ \beta\ }\ \dot V_f=A\beta\dot V_i$$
❶ 一周する
$$\dot V_f=\dot V_i\ \Rightarrow\ A\beta=1\ \text{かつ同相}$$
❷ 元に戻る条件
2つ同時に
$$A\beta\gt 1\ \Rightarrow\ \text{振動が育つ}\qquad A\beta\lt 1\ \Rightarrow\ \text{減衰して止まる}$$
❸ 大小で決まる

「一周して元と同じ信号になれば、入力を切っても振動が続く」——これが発振の本質です。大きさも位相も揃う必要があるので、2つの条件になります。

ブランコを漕ぐのと同じです。タイミングが合っていて(位相条件)、押す力が摩擦より大きければ(振幅条件)、揺れは続きます

深掘り②:正帰還と負帰還の使い分け

帰還には正と負があり、目的がまったく違います同じ技術が、使い方次第で正反対の働きをします。

正帰還負帰還
戻す位相同相逆相
効果信号を強め合う信号を打ち消す
増幅度大きくなる小さくなる
安定性不安定(発振する)安定
ひずみ・雑音増える減る
帯域幅狭くなる広くなる
用途発振回路増幅回路の安定化

負帰還は増幅度を犠牲にして、それ以外のすべてを改善します。安定性・ひずみ・雑音・帯域幅——だから実用の増幅器はほぼすべて負帰還です。

増幅回路で意図せず正帰還がかかると発振してしまいます配線の回り込みや電源を通じた結合——実務では厄介な問題になります。

深掘り③:代表的な発振回路

発振回路は「周波数を決める要素」で分類できます。どれも位相条件と振幅条件を満たすよう設計されています。

方式周波数を決めるもの特徴用途
ハートレー発振\(L\) を分割したLC共振高周波向きラジオ・無線
コルピッツ発振\(C\) を分割したLC共振安定性がよい無線・信号源
移相形CR発振CR回路で位相を \(180^\circ\) 回す低周波向きオーディオ
ウィーンブリッジ発振CRブリッジひずみが少ない測定用信号源
水晶発振水晶振動子非常に安定時計・クロック

帰還回路が「特定の周波数だけを同相で戻す」ように作られています。その周波数でだけ位相条件が満たされる——だからその周波数で発振します。

水晶発振が最も安定です。水晶の機械的共振を使うので、温度や電圧が変わってもほとんどずれません——クォーツ時計の精度の源です。

深掘り④:発振回路と増幅回路は同じ構造

発振回路は「増幅回路+帰還回路」です。部品構成は増幅回路とほとんど同じ——違うのは帰還の位相だけです。

構成要素発振回路での役割増幅回路での役割
増幅回路(\(A\))損失を補って振動を維持信号を大きくする
帰還回路(\(\beta\))同相で戻す(正帰還)逆相で戻す(負帰還)
入力信号不要(雑音から立ち上がる)必要
出力一定周波数の正弦波入力を拡大した波形

発振回路に入力信号は要りません電源を入れた瞬間の雑音の中から、条件を満たす周波数成分だけが育っていく——これが発振の始まりです。

だから「入力がないのに出力が出る」——不思議に見えますが、電源からエネルギーをもらっているので、エネルギー保存には反しません。

⏱️ 本番での進め方
❶ 発振=位相条件(同相)+振幅条件(\(A\beta\geq1\))——2つセット。
❷ 同相=正帰還、逆相=負帰還——定義なので矛盾する選択肢は即消し。
❸ 不等号の向きに注意——\(A\beta\geq1\)(1以上)。
❹ 負帰還は増幅度以外のすべてを改善——安定・低歪み・広帯域。

💡 覚え方
「一周して元と同じ信号になれば振動は続く」——大きさが同じ以上(\(A\beta\geq1\))で、向きも同じ(同相)ブランコを漕ぐタイミングと同じです。

★参考:令和4年度下期にも同じ内容が出題された

令和4年度下期A問題13も、本問とほぼ同じ内容です。発振の2条件と正帰還を問う——問題文の書き方が違うだけで、答えはどちらも(1)です。

本問(平成18年度 A問題13)令和4年度下期 A問題13
(ア) 位相同相同相
(イ) 振幅\(A\beta\geq1\)\(A\beta\geq1\)
(ウ) 名称正帰還正帰還
正答番号(1)(1)

16年の間隔で、ほぼ同じ問題が再出題されました。発振条件が電子回路の最重要論点だという証拠です。

⚠️ よくある間違い
同じ問題が繰り返し出るテーマは、それだけ重要ということです。「同相・\(A\beta\geq1\)・正帰還」の3語は、確実に暗記しておきましょう。

出題履歴:発振条件は電子回路の入口

発振の2条件は、電子回路分野の基本中の基本です。負帰還との対比まで押さえておけば、どちらを問われても対応できます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度下期A問題13(同じ内容の発振条件)【理論】令和元年度A問題13(負帰還増幅回路の性質)

まとめ

(ア)位相条件VfがViと同相
(イ)振幅条件ループ利得Aβ≧1
(ウ)回路名正帰還増幅回路
発振条件同相・Aβ≧1・正帰還→(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・変成器結合電力増幅回路の動作点と巻数比(電子回路40):【理論】平成19年度 B問題18

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次