今回は平成24年度 理論科目 A問題14を解説します。電気計測に関する記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。可動コイル形・可動鉄片形・整流形計器や二電力計法の特徴が問われます。
各計器がどの量(瞬時値・平均値・実効値)に応答するかを整理するのがポイント。可動コイル形は電流に比例するトルク(=平均値応答で直流用)、可動鉄片形・電流力計形は電流の2乗(=実効値応答で交流両用)です。
平成24年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成24年度 A問題14
電気計測に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)ディジタル指示計器(ディジタル計器)は、測定値が数字のディジタルで表示される装置である。
(2)可動コイル形計器は、コイルに流れる電流の実効値に比例するトルクを利用している。
(3)可動鉄片形計器は、磁界中で磁化された鉄片に働く力を応用しており、商用周波数の交流電流計及び交流電圧計として広く普及している。
(4)整流形計器は感度がよく、交流用として使用されている。
(5)二電力計法で三相負荷の消費電力を測定するとき、負荷の力率によっては、電力計の指針が逆に振れることがある。
出題のポイント:可動コイル形は「1乗」だから平均値
誤りは(2)「可動コイル形は電流の実効値に比例するトルク」です。可動コイル形のトルクは電流の【1乗】に比例——だから指示するのは平均値になります。
実効値を指示するのは、トルクが電流の【2乗】に比例する計器です。可動鉄片形・電流力計形・熱電形がそれ——2乗なら向きが変わっても打ち消さないからです。

解説:5つの記述を順に確かめる
(1) ディジタル計器は測定値が数字で表示される → 正しい
定義そのものです。アナログの指針に対して、数字で読める計器——読み取りの個人差が出ません。
(2) 可動コイル形は電流の実効値に比例するトルク → ★誤り
可動コイル形は永久磁石の磁界の中にコイルを置き、フレミングの左手の法則で力を得ます。力は電流に【比例】——1乗です。
交流を流すと、正の半周期と負の半周期で力の向きが逆になります。針は追従できず、平均の位置(=中央)で止まる——これが「交流では0を指す」理由です。
(3) 可動鉄片形は商用周波数の交流計として普及 → 正しい
構造が単純で丈夫、しかも安価です。配電盤の交流電流計・電圧計はほとんどこれ——実効値を指示するので交流測定に適しています。
(4) 整流形は感度がよく交流用 → 正しい
整流形の中身は可動コイル形です。可動コイル形の高い感度をそのまま活かせる——アナログテスタの交流レンジがこの方式です。
(5) 二電力計法では力率によって指針が逆に振れることがある → 正しい
力率が 0.5 を下回ると、片方の電力計の指示が負になります。アナログ計器は負の方向に振れないので、逆振れとして現れます。
誤答の正体:計器の名前と指示値の対応
| 種類 | トルクが比例するもの | 使える電源 | 指示する値 | 主な用途 |
| 可動コイル形 | 電流の1乗 | 直流のみ | 平均値 | 直流電流計・電圧計 |
| 可動鉄片形 | 電流の2乗 | 交流・直流 | 実効値 | 交流電流計・電圧計 |
| 電流力計形 | 2つの電流の積 | 交流・直流 | 実効値 | 電力計 |
| 整流形 | 整流後の電流の1乗 | 交流専用 | 平均値×1.11 | 安価な交流計 |
| 誘導形 | 渦電流と磁界の積 | 交流のみ | 実効値 | 電力量計 |
| 熱電形 | 発熱量(電流の2乗) | 交流・直流 | 実効値 | 高周波電流計 |
「トルクが比例するもの」の列を見れば、指示値が決まります。1乗なら平均値、2乗なら実効値——この対応を覚えれば、どの計器の話でも判定できます。
整流形だけが「平均値×1.11」という特殊な表示です。測っているのは平均値なのに、目盛りは実効値——だから正弦波以外ではずれます。
⚠️ よくある間違い
「実効値」という言葉が正しそうに見えるのが本問の罠です。交流測定では実効値が基本なので、つい○にしてしまいます。可動コイル形は【直流専用】——そもそも交流を測れないのだから、実効値を指示するはずがありません。
深掘り①:なぜ1乗と2乗で分かれるのか
可動コイル形は永久磁石を使います。磁界の向きは一定なので、電流の向きが変われば力の向きも変わります——力は電流に比例(1乗)。
可動鉄片形はコイルが作る磁界で鉄片を磁化し、それを吸引します。電流が反転すると磁界も磁化も両方反転——力の向きは変わりません(2乗)。
正負が打ち消す
常に正なので平均は正
\(\sin^2\) の平均は \(1/2\) なので、\(\overline{i^2}=I^2\)(実効値の二乗)。だから2乗に比例する計器は実効値を指示します。
深掘り②:可動コイル形の長所と使い道
可動コイル形は感度と精度がもっとも高い計器です。永久磁石の強い磁界を使えるので、わずかな電流でも十分なトルクが得られます。
| 項目 | 可動コイル形 | 可動鉄片形 |
| 感度 | 非常に高い | 低い |
| 精度(階級) | 0.5級以上も可能 | 1.5〜2.5級が普通 |
| 目盛り | 等間隔(均等目盛り) | 二乗目盛り(不均等) |
| 消費電力 | 小さい | 大きい |
| 使える電源 | 直流のみ | 交流・直流 |
目盛りが等間隔になるのも1乗に比例するおかげです。2乗に比例する計器は低い側が詰まって読みにくい——これも実用上の大きな差です。
直流専用という制約は、整流器を前に付ければ回避できます。それが整流形——「高感度で交流も測れる」という組合せになります。
深掘り③:脈流を測るとどうなるか
脈流(直流に交流が重なった波形)を可動コイル形で測ると、平均値=直流分を指示します。交流分は平均するとゼロだからです。
可動部の慣性が大きいと、針は細かい変動に追従できず安定します。逆に慣性が小さいと針が振動して読めません——平成19年度B問題16で問われた内容です。
脈流の実効値を知りたいなら、可動鉄片形や熱電形を使います。直流分と交流分の両方を含んだ実効値が読めます。
💡 覚え方
1乗に比例 → 平均値 → 直流専用(可動コイル形)。2乗に比例 → 実効値 → 交直両用(可動鉄片形・熱電形)。積に比例 → 電力 → 交直両用(電流力計形)。この3分類ですべて説明できます。
深掘り④:二電力計法の逆振れをもう一度
\(\theta\) は力率角
力率0.5以下で逆振れ
逆振れした計器の指示は【負の値】として足します。令和5年度上期A問題14ではこれが計算問題として出題されました。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「実効値に比例するトルク」=2乗に比例する計器——可動コイル形ではない。
❷ 可動コイル形は直流専用——交流の実効値を指示できるはずがない。
❸ 1乗=平均値、2乗=実効値、積=電力の3分類で判定する。
❹ 残りの肢が常識的に正しければ、そのまま○でよい。
出題履歴:計器の原理は計測分野の中心
可動コイル形と可動鉄片形の対比は、平成21年度A問題14や令和元年度A問題14でも問われています。「何に比例するトルクか」を押さえておけば、どの切り口でも答えられます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (2)誤り | 可動コイル形は電流の1乗(平均値応答・直流用) |
| (1) | ディジタル計器は数字表示(正) |
| (3) | 可動鉄片形は交流に広く普及(正) |
| (4) | 整流形は交流用・感度良(正) |
| (5) | 二電力計法は力率小で逆振れ(正) |
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・オシロスコープの波形読み取り(電気及び電子計測30):【理論】平成25年度 B問題16

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