今回は平成20年度 理論科目 A問題11を解説します。太陽電池に光を照射したときに生成されるキャリヤの移動と、電極間に生じる現象を問う穴埋め問題です。
太陽電池はpn接合を利用した素子です。光で電子-正孔対が生成され、接合部の電界で正孔はp形側、電子はn形側へ移動して、電極間に起電力(光起電力)が生じます。
平成20年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成20年度 A問題11
次の文章は、太陽電池に関する記述である。
太陽電池は、pn接合を利用した半導体素子である。半導体に太陽光を照射すると、pn接合付近で電子と正孔が対になって生成される。接合部にできる電界の働きにより、(ア)はp形半導体の側へ、(イ)はn形半導体の側へ移動する。その結果、p形側の電極とn形側の電極との間に(ウ)が発生する。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 電子 正孔 起磁力 (2) 正孔 電子 起電力 (3) 電子 正孔 空間電荷層 (4) 正孔 電子 起磁力 (5) 電子 正孔 起電力
出題のポイント:pn接合の電界がキャリヤを仕分ける
太陽電池はpn接合そのものです。光を当てると電子と正孔が対で生まれ、接合部の電界がそれを左右に振り分けます——その結果、電圧が生じます。
キャリヤの行き先は「多数キャリヤ側へ集まる」と覚えます。電子はn形へ、正孔はp形へ——それぞれが多数派になる側です。
(ウ)は「起電力」です。「起磁力」は磁気回路の用語で、太陽電池とは無関係——選択肢に紛れ込ませてあります。

解説:3つの空欄を順に埋める
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | 正孔 | p形側へ移動する(正電荷なので電界の向きに従う) |
| (イ) | 電子 | n形側へ移動する(負電荷なので電界と逆向き) |
| (ウ) | 起電力 | 電極間に電圧が生じる |
問題文が「(ア)はp形半導体の側へ、(イ)はn形半導体の側へ」と書いています。p形へ行くのは正孔、n形へ行くのは電子——「p=positive=正孔」「n=negative=電子」で決まります。
結果として、p形側が正、n形側が負に帯電します。この電位差が太陽電池の起電力——シリコン太陽電池なら1セル約0.5〜0.6 Vです。


誤答の正体:キャリヤの行き先と「起磁力」
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | 電子 | 正孔 | 起磁力 | ×(全部誤り) |
| (2) | 正孔 | 電子 | 起電力 | ◎ |
| (3) | 電子 | 正孔 | 空間電荷層 | × |
| (4) | 正孔 | 電子 | 起磁力 | ×((ウ)だけ誤り) |
| (5) | 電子 | 正孔 | 起電力 | ×((ア)(イ)が逆) |
(4)と(5)がそれぞれ「半分正しい」誤答です。(4)はキャリヤの行き先が正しいのに(ウ)が起磁力、(5)は(ウ)が正しいのにキャリヤが逆——両方合っているのは(2)だけです。
「起磁力」は磁気回路で使う用語です。\(F=NI\)(アンペアターン)——磁束を生じさせる能力を表します。半導体の話にはまったく出てきません。
(3)の「空間電荷層」は空乏層のことです。これは光を当てなくても常に存在しています——「発生する」ものではありません。
⚠️ よくある間違い
「電子はn形へ、正孔はp形へ」——それぞれが多数キャリヤになる側へ集まると覚えます。逆にすると起電力の向きが逆になってしまいます。
☝️ ひっかけの作り方:問題文の順序に注意してください。「(ア)はp形の側へ、(イ)はn形の側へ」——先にp形が来ているので、(ア)が正孔です。読み違えると(5)を選びます。
深掘り①:太陽電池が発電するまで
光が電気になるまでの流れを、3段階に分けて整理しましょう。
| 段階 | 起きること |
| ❶ 光吸収 | 光子がバンドギャップ以上のエネルギーを持つと、電子正孔対が生成 |
| ❷ 分離 | 空乏層の電界が、電子をn形側へ、正孔をp形側へ引き離す |
| ❸ 取り出し | 両側の電極から外部回路へ電流が流れる |
❷の「分離」がなければ発電しません。生成した電子と正孔がその場で再結合してしまうからです。pn接合の電界が引き離すからこそ、電気として取り出せます。
だから「pn接合を利用した半導体素子」と問題文が書いているのです。単なる半導体の板では、光を当てても発電しません。
深掘り②:バンドギャップと変換効率
光子のエネルギーがバンドギャップより小さいと、電子正孔対はできません。材料によって使える光の波長が決まります。
| 材料 | バンドギャップ | 限界波長 | 特徴 |
| Si(結晶シリコン) | 1.12 eV | 約1100 nm | 最も普及・変換効率20 %程度 |
| GaAs | 1.42 eV | 約870 nm | 高効率だが高価・宇宙用 |
| アモルファスSi | 1.7 eV | 約730 nm | 薄膜で安価・効率は低め |
バンドギャップが小さいと多くの光を吸収できますが、1個当たりの電圧が低くなります。逆に大きいと電圧は高いが、吸収できる光が減る——トレードオフです。
この兼ね合いから、理論的な最大効率は約33 %(ショックレー・クワイサー限界)とされています。複数の材料を重ねる「多接合型」なら、この限界を超えられます。
深掘り③:pn接合の応用いろいろ
太陽電池はpn接合の応用の1つにすぎません。同じpn接合が、使い方次第でいろいろな素子になります。
| 素子 | 動作 | pn接合の使い方 |
| ダイオード | 一方向にだけ電流を通す | 順方向・逆方向の非対称性 |
| 太陽電池 | 光 → 電気 | 光生成キャリヤを電界で分離 |
| LED | 電気 → 光 | 順方向電流で再結合し発光 |
| フォトダイオード | 光 → 電流(検出) | 逆バイアスで光電流を測る |
| ツェナーダイオード | 一定電圧を保つ | 降伏(ブレークダウン)を利用 |
太陽電池とLEDは、まさに逆の動作です。光を入れて電気を出すのが太陽電池、電気を入れて光を出すのがLED——同じpn接合の裏表です。
実際、LEDに光を当てると微弱な電圧が発生します。効率は悪いですが、原理的には太陽電池として働きます——pn接合の可逆性です。
⏱️ 本番での進め方
❶ 電子はn形へ、正孔はp形へ——多数キャリヤになる側へ。
❷ 「起磁力」は磁気回路の用語——半導体には出てこない。
❸ 「空間電荷層」=空乏層——光がなくても存在する。
❹ 問題文の順序を確認——「p形の側へ」が先なら(ア)は正孔。
💡 覚え方
「n形に電子、p形に正孔」——名前の頭文字どおりです。negative(電子)はn形へ、positive(正孔)はp形へ——覚えることは何もありません。
出題履歴:太陽電池は再生可能エネルギーの主役
太陽電池の原理を問う出題は、理論科目でも電力科目でも登場します。pn接合・電子正孔対・起電力——この3語で説明できるようにしておけば十分です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和3年度A問題11(半導体の基礎知識)
深掘り④:太陽電池の \(I\)-\(V\) 特性と最大電力点
太陽電池は電池といっても、乾電池のように一定電圧を出すわけではありません。取り出す電流によって電圧が変わります——その関係が \(I\)-\(V\) 特性です。
| 動作点 | 電圧 | 電流 | 電力 |
| 開放(無負荷) | 開放電圧 \(V_{oc}\)(約0.6 V) | 0 | 0 |
| 最大電力点 | \(V_{oc}\) の約8割 | \(I_{sc}\) の約9割 | 最大 |
| 短絡 | 0 | 短絡電流 \(I_{sc}\) | 0 |
開放でも短絡でも電力はゼロです。その中間に、電力が最大になる点(最大電力点)がある——ここで運転するのが最も効率的です。
日射量や温度が変われば、最大電力点も動きます。それを自動で追いかける制御が「MPPT(最大電力点追従)」——太陽光発電のパワーコンディショナに必ず入っています。
短絡電流は日射量にほぼ比例しますが、開放電圧は温度が上がると下がります。夏の暑い日は、日射が強くても効率が落ちる——これが太陽光発電の実務上の悩みです。
1セルの電圧は約0.5〜0.6 Vしかないので、実際のモジュールは数十枚を直列にします。さらにモジュールを直並列して、必要な電圧・電流を作る——電力科目でも問われる論点です。
まとめ
| (ア) | 正孔(p形側へ) |
| (イ) | 電子(n形側へ) |
| (ウ) | 起電力(光起電力) |
| 答え | (2) |
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