今回は平成24年度 理論科目 A問題13を解説します。抵抗R₁とダイオードからなるクリッパ回路に負荷R₂(=2R₁)を接続した回路で、入力電圧VとR₁に流れる電流Iの関係(V-I特性)を表すグラフを選ぶ問題です。
ダイオードが導通するか遮断するかで回路の合成抵抗が変わり、V-I特性の傾きが折れ曲がります。V>0ではダイオードが導通してI=V/R₁、V<0では遮断されてI=V/(R₁+R₂)=V/3R₁となる点がポイントです。
平成24年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成24年度 A問題13
図は、抵抗R₁[Ω]とダイオードからなるクリッパ回路に、負荷となる抵抗R₂[Ω](=2R₁[Ω])を接続した回路である。入力直流電圧V[V]とR₁[Ω]に流れる電流I[A]の関係を示す図として、最も近いものを選ぶ。
ただし、順電流が流れているときのダイオードの電圧は0[V]とし、逆電圧が与えられているダイオードの電流は0[A]とする。
入力直流電圧V[V]とR₁[Ω]に流れる電流I[A]の関係を示す図(V-I特性)として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、順電流が流れているときのダイオードの電圧は0[V]、逆電圧が与えられているときのダイオードの電流は0[A]とする。
(1)原点を通る1本の直線(正負とも同じ傾き)。
(2)V<0ではI=0(横軸に沿う)、V>0では正の傾きの直線。
(3)原点から左右とも上昇するV字形(|V|に比例)。
(4)V<0で急な傾き、V>0で緩やかな傾きの折れ線。
(5)V<0で緩やかな傾き、V>0で急な傾きの折れ線。

出題のポイント:ダイオードのON・OFFで回路が2通りになる
ダイオードは「導通」か「遮断」かの2状態しかありません。入力電圧の符号でどちらになるかが決まり、そのたびに回路の形が変わります——だから \(V\)-\(I\) 特性は折れ線になります。
回路は \(R_1\) が直列、その先の節点に \(R_2\) とダイオードが並列という構成です。ダイオードはアノードが節点側——節点が正のときに導通します。
ダイオードが導通すると節点が0 Vにクランプされます。すると \(R_2\) には電圧がかからず、電流も流れません——\(R_2\) が回路から消えたのと同じです。

解説:正負2つの場合に分けて計算する
傾き \(1/R_1\)(急)
傾き \(1/(3R_1)\)(緩やか)
正側の傾きは負側の3倍です。\(1/R_1\) と \(1/(3R_1)\)——原点を通り、第一象限が急・第三象限が緩い折れ線になります。
\(R_1=100\ \Omega\) として数値で確かめると、\(V=+100\ \mathrm{V}\) で \(I=1\ \mathrm{A}\)、\(V=-100\ \mathrm{V}\) で \(I=-0.33\ \mathrm{A}\)——確かに3倍の差です。


誤答の正体:どちらの側が急か
| 選択肢 | グラフの形 | 何が誤りか |
| (1) | 原点を通る1本の直線 | ダイオードの働きが反映されていない |
| (2) | 片側だけ電流が流れる | 逆側でも \(R_1+R_2\) を通って電流は流れる |
| (3) | V字形(左右とも上昇) | 負の電圧で正の電流は流れない |
| (4) | \(V>0\) で緩やか | 急・緩が逆 |
| (5) | \(V>0\) で急・\(V<0\) で緩やか | 正解 |
(4)が最も惜しい誤答です。折れ線になることは分かっているのに、急と緩が逆——「導通したほうが抵抗が小さいから傾きが急」と考えれば間違えません。
(3)のV字形は物理的にあり得ません。負の電圧をかけて正の電流が流れる——それは電源になってしまいます。受動回路では第一象限と第三象限しか通りません。
⚠️ よくある間違い
「ダイオードが導通すると抵抗が減る」——だから電流が流れやすく、傾きが急になります。遮断すると \(R_2\) が直列に加わるので抵抗が増え、傾きは緩やかです。
☝️ ひっかけの作り方:\(R_2=2R_1\) という条件を使い忘れないでください。これがあるから「3倍」という具体的な比が出ます。\(R_2\) の値が違えば傾きの比も変わります。
深掘り①:数値で \(V\)-\(I\) 特性を作ってみる
\(R_1=100\ \Omega\)、\(R_2=200\ \Omega\) として、表を作ってみましょう。グラフの形が数字で確認できます。
| \(V\)〔V〕 | ダイオード | 有効な抵抗 | \(I\)〔A〕 |
| +300 | 導通 | \(R_1=100\ \Omega\) | +3.00 |
| +100 | 導通 | \(R_1=100\ \Omega\) | +1.00 |
| 0 | 境界 | — | 0 |
| −100 | 遮断 | \(3R_1=300\ \Omega\) | −0.33 |
| −300 | 遮断 | \(3R_1=300\ \Omega\) | −1.00 |
同じ大きさの電圧でも、正のときは3倍の電流が流れます。\(+100\ \mathrm{V}\) で1 A、\(-100\ \mathrm{V}\) で0.33 A——この非対称性がダイオードの働きです。
グラフは原点で「折れる」——2本の直線がつながった形です。不連続ではなく、傾きだけが変わります。
深掘り②:クリッパ回路とは何か
クリッパ(clipper)は「波形を切り取る」回路です。ダイオードを使って、電圧のある部分だけを通したり止めたりします。
| 回路 | 働き | 用途 |
| クリッパ(リミッタ) | 波形の一部を切り取る | 過大入力の保護・波形整形 |
| クランパ | 波形の位置(直流分)を移動 | 直流レベルの復元 |
| 整流回路 | 交流を直流にする | 電源回路 |
クリッパは「形が変わる」、クランパは「位置だけ移動して形は同じ」——この違いで区別します。
本問の回路は、正の入力に対して出力(節点電圧)を0 Vに抑えます。入力波形の正の部分を切り取る——まさにクリッパの動作です。
実際の保護回路では、この構造で「機器に過大電圧がかからないようにする」のに使われます。入力保護のダイオードは、あらゆる電子機器に入っています。
深掘り③:理想ダイオードと実際のダイオード
本問は「順方向の電圧は0 V」という理想ダイオードで計算しました。実際にはどうなるかを知っておくと、実務につながります。
| 理想ダイオード | 実際のダイオード | |
| 順方向電圧 | 0 V | Si:約0.6〜0.7 V/Ge:約0.3 V/SBD:約0.3 V |
| 逆方向電流 | 0 A | 数 µA〜数 nA(漏れ電流) |
| 切り替わり | 0 Vできっぱり | なだらかな指数関数 |
実際のシリコンダイオードなら、\(V\) が約0.7 Vを超えてから導通します。グラフの折れ点が原点から少しずれる——ただし電験3種では理想として扱うのが普通です。
問題文が「順電流が流れているときのダイオードの電圧は0 V」と明記しているのは、この理想化を宣言しているからです。但し書きは必ず読んでください。
⏱️ 本番での進め方
❶ ダイオードのON・OFFで場合分け——2つの回路を別々に計算。
❷ 導通すると節点が0 Vにクランプ——\(R_2\) が消える。
❸ 抵抗が小さいほど傾きが急——導通側が急。
❹ 受動回路は第一・第三象限のみ——V字形の(3)は即消し。
💡 覚え方
「導通=短絡、遮断=開放」——理想ダイオードは0 Ωか∞Ωかの2択です。その2通りで回路を描き直せば、あとは単なる直流回路になります。
出題履歴:ダイオード回路は毎年のように出る
ダイオードを含む回路の動作を問う出題は、半導体分野の定番です。「導通か遮断かを判定して、回路を描き直す」——この手順さえ確実なら、どんな回路でも解けます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成30年度A問題13(ダイオードのクリッパ回路と波形)
まとめ
| V>0 | ダイオード導通・I=V/R₁(急) |
| V<0 | ダイオード遮断・I=V/3R₁(緩) |
| グラフ | V>0急・V<0緩の折れ線 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・各種ダイオードのバイアス(半導体8):【理論】令和4年度下期 A問題11

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