半導体21【電験3種 理論】ダイオードのクリッパ回路の電圧-電流特性(V-Iグラフ)を判別する!平成24年度 A問題13 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(半導体等) 平成24年度 A問題13 ダイオードで波形を切る!V-I特性はどのグラフ?

今回は平成24年度 理論科目 A問題13を解説します。抵抗R₁とダイオードからなるクリッパ回路に負荷R₂(=2R₁)を接続した回路で、入力電圧VとR₁に流れる電流Iの関係(V-I特性)を表すグラフを選ぶ問題です。

ダイオードが導通するか遮断するかで回路の合成抵抗が変わり、V-I特性の傾きが折れ曲がります。V>0ではダイオードが導通してI=V/R₁、V<0では遮断されてI=V/(R₁+R₂)=V/3R₁となる点がポイントです。

目次

平成24年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 半導体等 平成24年度 A問題13 問題文
平成24年度 理論科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13

電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成24年度 A問題13

 図は、抵抗R₁[Ω]とダイオードからなるクリッパ回路に、負荷となる抵抗R₂[Ω](=2R₁[Ω])を接続した回路である。入力直流電圧V[V]とR₁[Ω]に流れる電流I[A]の関係を示す図として、最も近いものを選ぶ。

 ただし、順電流が流れているときのダイオードの電圧は0[V]とし、逆電圧が与えられているダイオードの電流は0[A]とする。

入力直流電圧V[V]とR₁[Ω]に流れる電流I[A]の関係を示す図(V-I特性)として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、順電流が流れているときのダイオードの電圧は0[V]、逆電圧が与えられているときのダイオードの電流は0[A]とする。

(1)原点を通る1本の直線(正負とも同じ傾き)。
(2)V<0ではI=0(横軸に沿う)、V>0では正の傾きの直線。
(3)原点から左右とも上昇するV字形(|V|に比例)。
(4)V<0で急な傾き、V>0で緩やかな傾きの折れ線。
(5)V<0で緩やかな傾き、V>0で急な傾きの折れ線。

図 抵抗R₁とダイオードのクリッパ回路に負荷R₂(=2R₁)を接続した回路(問題図)
図 抵抗R₁とダイオードのクリッパ回路に負荷R₂(=2R₁)を接続した回路(問題図)

出題のポイント:ダイオードのON・OFFで回路が2通りになる

ダイオードは「導通」か「遮断」かの2状態しかありません入力電圧の符号でどちらになるかが決まり、そのたびに回路の形が変わります——だから \(V\)-\(I\) 特性は折れ線になります。

回路は \(R_1\) が直列、その先の節点に \(R_2\) とダイオードが並列という構成です。ダイオードはアノードが節点側——節点が正のときに導通します。

理想ダイオードの2状態
$$\text{順方向}:V_D=0\ (\text{短絡})\qquad\text{逆方向}:I_D=0\ (\text{開放})$$

問題文の「順電流が流れているときの電圧は0 V」「逆電圧のときの電流は0 A」が、まさにこの定義です。

ダイオードが導通すると節点が0 Vにクランプされます。すると \(R_2\) には電圧がかからず、電流も流れません——\(R_2\) が回路から消えたのと同じです。

平成24年度理論問13の理想ダイオード回路について、Vが正ならダイオードONでI=V/R1、Vが負ならOFFでI=V/(3R1)となる理由を元回路とともに示す解説
入力電圧の符号でダイオードの状態が切り替わり、有効な合成抵抗がR1と3R1に変わるため、V-Iグラフの傾きも変わります。

解説:正負2つの場合に分けて計算する

$$V>0:\text{ダイオード導通}\ \Rightarrow\ \text{節点}=0\ \mathrm{V}\ \Rightarrow\ I=\frac{V}{R_1}$$
❶ 正のとき
傾き \(1/R_1\)(急)
$$V<0:\text{ダイオード遮断}\ \Rightarrow\ R_1\ \text{と}\ R_2\ \text{の直列}$$
❷ 負のとき
$$I=\frac{V}{R_1+R_2}=\frac{V}{R_1+2R_1}=\frac{V}{3R_1}$$
❸ 傾きを計算
傾き \(1/(3R_1)\)(緩やか)

正側の傾きは負側の3倍です。\(1/R_1\) と \(1/(3R_1)\)——原点を通り、第一象限が急・第三象限が緩い折れ線になります。

\(R_1=100\ \Omega\) として数値で確かめると、\(V=+100\ \mathrm{V}\) で \(I=1\ \mathrm{A}\)\(V=-100\ \mathrm{V}\) で \(I=-0.33\ \mathrm{A}\)——確かに3倍の差です。

Vが正のとき理想ダイオードを短絡に置き換え、節点電圧0V、R2電流0A、KVLからI=V/R1を導く等価回路付き解説
V>0ではダイオードが順方向でONとなり、節点を0Vへクランプします。R2には電圧がかからず、電流はR1だけで決まります。
Vが負のとき理想ダイオードを開放に置き換え、R1とR2の直列回路からI=V/(3R1)を導き、節点電圧でOFF仮定を確認する解説
V<0ではダイオードが逆方向でOFFとなります。R2=2R1を代入すると合成抵抗は3R1で、負側の傾きは正側の3分の1です。
答え原点を通り、\(V>0\) で急・\(V<0\) で緩やかな折れ線 → 選択肢(5)

誤答の正体:どちらの側が急か

選択肢グラフの形何が誤りか
(1)原点を通る1本の直線ダイオードの働きが反映されていない
(2)片側だけ電流が流れる逆側でも \(R_1+R_2\) を通って電流は流れる
(3)V字形(左右とも上昇)負の電圧で正の電流は流れない
(4)\(V>0\) で緩やか急・緩が逆
(5)\(V>0\) で急・\(V<0\) で緩やか正解

(4)が最も惜しい誤答です。折れ線になることは分かっているのに、急と緩が逆——「導通したほうが抵抗が小さいから傾きが急」と考えれば間違えません。

(3)のV字形は物理的にあり得ません負の電圧をかけて正の電流が流れる——それは電源になってしまいます受動回路では第一象限と第三象限しか通りません

⚠️ よくある間違い
「ダイオードが導通すると抵抗が減る」——だから電流が流れやすく、傾きが急になります。遮断すると \(R_2\) が直列に加わるので抵抗が増え、傾きは緩やかです。

☝️ ひっかけの作り方:\(R_2=2R_1\) という条件を使い忘れないでください。これがあるから「3倍」という具体的な比が出ます。\(R_2\) の値が違えば傾きの比も変わります

深掘り①:数値で \(V\)-\(I\) 特性を作ってみる

\(R_1=100\ \Omega\)、\(R_2=200\ \Omega\) として、表を作ってみましょうグラフの形が数字で確認できます。

\(V\)〔V〕ダイオード有効な抵抗\(I\)〔A〕
+300導通\(R_1=100\ \Omega\)+3.00
+100導通\(R_1=100\ \Omega\)+1.00
0境界0
−100遮断\(3R_1=300\ \Omega\)−0.33
−300遮断\(3R_1=300\ \Omega\)−1.00

同じ大きさの電圧でも、正のときは3倍の電流が流れます。\(+100\ \mathrm{V}\) で1 A、\(-100\ \mathrm{V}\) で0.33 A——この非対称性がダイオードの働きです。

グラフは原点で「折れる」——2本の直線がつながった形です。不連続ではなく、傾きだけが変わります

深掘り②:クリッパ回路とは何か

クリッパ(clipper)は「波形を切り取る」回路です。ダイオードを使って、電圧のある部分だけを通したり止めたりします

回路働き用途
クリッパ(リミッタ)波形の一部を切り取る過大入力の保護・波形整形
クランパ波形の位置(直流分)を移動直流レベルの復元
整流回路交流を直流にする電源回路

クリッパは「形が変わる」、クランパは「位置だけ移動して形は同じ」——この違いで区別します。

本問の回路は、正の入力に対して出力(節点電圧)を0 Vに抑えます入力波形の正の部分を切り取る——まさにクリッパの動作です。

実際の保護回路では、この構造で「機器に過大電圧がかからないようにする」のに使われます。入力保護のダイオードは、あらゆる電子機器に入っています

深掘り③:理想ダイオードと実際のダイオード

本問は「順方向の電圧は0 V」という理想ダイオードで計算しました。実際にはどうなるかを知っておくと、実務につながります。

理想ダイオード実際のダイオード
順方向電圧0 VSi:約0.6〜0.7 V/Ge:約0.3 V/SBD:約0.3 V
逆方向電流0 A数 µA〜数 nA(漏れ電流)
切り替わり0 Vできっぱりなだらかな指数関数

実際のシリコンダイオードなら、\(V\) が約0.7 Vを超えてから導通します。グラフの折れ点が原点から少しずれる——ただし電験3種では理想として扱うのが普通です。

問題文が「順電流が流れているときのダイオードの電圧は0 V」と明記しているのは、この理想化を宣言しているからです。但し書きは必ず読んでください

⏱️ 本番での進め方
❶ ダイオードのON・OFFで場合分け——2つの回路を別々に計算。
❷ 導通すると節点が0 Vにクランプ——\(R_2\) が消える。
❸ 抵抗が小さいほど傾きが急——導通側が急。
❹ 受動回路は第一・第三象限のみ——V字形の(3)は即消し。

💡 覚え方
「導通=短絡、遮断=開放」——理想ダイオードは0 Ωか∞Ωかの2択です。その2通りで回路を描き直せば、あとは単なる直流回路になります。

出題履歴:ダイオード回路は毎年のように出る

ダイオードを含む回路の動作を問う出題は、半導体分野の定番です。「導通か遮断かを判定して、回路を描き直す」——この手順さえ確実なら、どんな回路でも解けます

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】平成30年度A問題13(ダイオードのクリッパ回路と波形)

まとめ

V>0ダイオード導通・I=V/R₁(急)
V<0ダイオード遮断・I=V/3R₁(緩)
グラフV>0急・V<0緩の折れ線
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・各種ダイオードのバイアス(半導体8):【理論】令和4年度下期 A問題11

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