今回は令和5年度上期 理論科目 A問題12を解説します。異なる2種類の金属A・Bで閉回路を作り、二つの接合点を異なる温度に保ったときに何が生じるか、またその現象を何効果というかを問う穴埋め問題です。
異種金属の閉回路で接合点に温度差を与えると熱起電力が発生し、閉回路なので電流が流れます。この熱電現象がゼーベック効果で、熱電対(温度センサ)の原理です。
令和5年度上期 理論科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題12
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 令和5年度上期 A問題12
図のように、異なる2種類の金属A、Bで一つの閉回路を作り、その二つの接合点を異なる温度に保てば、(ア)。この現象を(イ)効果という。
上記の記述中の空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (1) 電流が流れる ホール (2) 抵抗が変化する ホール (3) 金属の長さが変化する ゼーベック (4) 電位差が生じる ペルチェ (5) 起電力が生じる ゼーベック

出題のポイント:現象と名前を結びつける
異なる2種類の金属で閉回路を作り、2つの接合点に温度差を与える——何が起きて、それを何と呼ぶかを答える問題です。
選択肢には「ホール効果」「ペルチェ効果」も並んでいます。紛らわしい3つの効果をきちんと区別できているかが問われています。
閉回路なので電流も流れますが、現象の本質は「起電力が生じる」ことです。回路を開いても起電力は発生しています——電流が流れないだけです。

解説:2つの空欄を埋める
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | 起電力が生じる | 温度差が電圧を生む |
| (イ) | ゼーベック | この現象の名前 |
選択肢(1)の「電流が流れる」も、閉回路なら結果的に正しいのですが、効果名が「ホール」で誤りです。2つの空欄が両方正しい組合せは1つだけ——それが(5)です。
(3)の「金属の長さが変化する」は熱膨張のことで、電気的な現象ではありません。効果名だけ合っていても不正解です。


誤答の正体:紛らわしい3つの効果
| 選択肢 | (ア) | (イ) | 何が誤りか |
| (1) | 電流が流れる | ホール | ホール効果は磁界と電流の現象 |
| (2) | 抵抗が変化する | ホール | 両方誤り |
| (3) | 金属の長さが変化する | ゼーベック | 熱膨張のことで電気現象ではない |
| (4) | 電位差が生じる | ペルチェ | 効果名が誤り(逆の現象) |
| (5) | 起電力が生じる | ゼーベック | 正解 |
(4)が最も惜しいです。「電位差が生じる」は起電力とほぼ同じ意味——ところが効果名がペルチェで誤りです。ペルチェは電流を流したときに熱が出入りする現象です。
ホール効果は「磁界中の導体に電流を流すと、横方向に電位差」——温度とは無関係です。磁界センサやキャリヤ濃度の測定に使われます。
⚠️ よくある間違い
3つの効果は「何を入れて何が出るか」で区別します。ゼーベック=温度差→電圧、ペルチェ=電流→温度差、ホール=磁界+電流→横方向の電圧——この3行で完結します。
☝️ ひっかけの作り方:効果の名前は人名です。ゼーベック(Seebeck)、ペルチェ(Peltier)、ホール(Hall)、トムソン(Thomson)——意味から推測できないので、現象とセットで暗記するしかありません。
深掘り①:3つの熱電気現象を対比する
熱と電気が関わる現象を、まとめて整理しておきましょう。ホール効果は磁気の現象なので、この表には入りません。
| 効果 | 内容 | 向き | 用途 |
| ゼーベック効果 | 温度差 → 起電力 | 熱 → 電気 | 熱電対(温度測定)・熱電発電 |
| ペルチェ効果 | 電流 → 熱の吸収・発生 | 電気 → 熱 | ペルチェ素子(電子冷却) |
| トムソン効果 | 温度勾配のある1本の導体に電流 → 熱の吸収・発生 | 電気 → 熱 | — |
ゼーベックとペルチェは可逆です。同じ素子を、温度差を与えれば発電機、電流を流せば冷却器として使えます——入出力を入れ替えるだけです。
トムソン効果は1本の導体で起きるのが特徴です。2種類の金属が要らない——温度勾配のある導体に電流を流すと熱が出入りします。
深掘り②:ホール効果とは何か
選択肢に出てきたホール効果も、電験では別の切り口で問われることがあります。混同しないよう、内容を確認しておきましょう。
| ゼーベック効果 | ホール効果 | |
| 必要なもの | 2種類の金属+温度差 | 導体(半導体)+電流+磁界 |
| 生じるもの | 起電力(回路を1周する向き) | 横方向の電圧 |
| 主な用途 | 温度測定・熱電発電 | 磁界センサ・キャリヤ判定 |
ホール効果は半導体のキャリヤの種類を判定できます。n形(電子)とp形(正孔)で、生じる電圧の符号が逆になるからです。半導体研究の基本的な測定手法です。
深掘り③:なぜ2種類の金属が必要なのか
1種類の金属では、温度差があっても起電力が測れません。なぜ2種類必要なのかを考えておくと、原理の理解が深まります。
金属の中では、温度が高いほうから低いほうへ電子が拡散します。その結果、両端に電位差が生じます——これは1種類の金属でも起きています。
ところが同じ金属で回路を作ると、両側で同じ電位差が生じて打ち消し合います。違う金属なら電位差の大きさが違うので、差が残る——これが熱起電力の正体です。
| 条件 | 結果 |
| 同じ金属で閉回路 | 電位差が打ち消し合って起電力ゼロ |
| 違う金属で閉回路 | 差が残って起電力が生じる |
| 2つの接合点が同じ温度 | 起電力ゼロ(温度差が必要) |
だから熱電対は「異なる2種類の金属」「2つの接合点に温度差」の両方が必要です。問題文がこの2つを明記しているのは、条件を確認させるためです。
⏱️ 本番での進め方
❶ 3つの効果を「入力→出力」で区別——ゼーベック(熱→電)、ペルチェ(電→熱)、ホール(磁+電→横電圧)。
❷ 空欄が2つとも正しい組合せは1つだけ——片方だけ合う選択肢に注意。
❸ 「金属の長さが変化」は熱膨張——電気現象ではない。
❹ 効果名は人名——意味から推測できないので暗記。
💡 覚え方
「ゼーベックで測って、ペルチェで冷やす」——温度計とクーラーボックスを思い浮かべれば、2つの向きを取り違えません。
出題履歴:効果の名前は繰り返し問われる
ゼーベック・ペルチェ・ホール・トムソン——これらの効果名は、数年に一度は必ず出題されます。4つとも「何を入れて何が出るか」で整理しておけば、どの組合せで聞かれても対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和3年度A問題5(熱電対と温接点・冷接点)
深掘り④:ゼーベック効果はなぜ起きるのか
金属の中の自由電子は、温度が高いほど激しく動き回ります。温度差があると、高温側の電子のほうが動きが活発——その結果、低温側へ拡散していきます。
1種類の金属でも起きる
これが熱起電力
同じ金属で回路を作ると、両側で同じ電位差ができて打ち消し合います。違う金属なら電位差の大きさが違うので、差が残る——だから2種類必要なのです。
| 条件 | 結果 |
| 同じ金属・温度差あり | 起電力ゼロ(打ち消し合う) |
| 違う金属・温度差あり | 起電力が生じる ✓ |
| 違う金属・温度差なし | 起電力ゼロ |
「異なる2種類の金属」と「2つの接合点に温度差」の両方が必要——問題文がこの2条件を明記しているのは、そこが本質だからです。
半導体でもゼーベック効果は起きます。むしろ金属より係数が大きいので、熱電発電素子(ペルチェ素子と同じ構造)には半導体が使われます。ビスマステルルなどが代表的です。
💡 覚え方
「熱い側の電子が逃げていく」——だから熱い側が正、冷たい側が負になります。金属によって逃げやすさが違うので、2種類つなぐと差が残る——これがゼーベック効果の正体です。
まとめ
| (ア) | 起電力が生じる |
| (イ) | ゼーベック効果 |
| 関連 | 熱電対の原理 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・ホール効果(半導体6):【理論】令和5年度上期 A問題11

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