今回は令和7年度下期 理論科目 A問題11を解説します。可変容量ダイオード・定電圧ダイオード・レーザダイオードについて、pn接合に加える電圧が順方向か逆方向かを判別する穴埋め問題です。
ポイントは各ダイオードの動作原理です。可変容量ダイオードは逆方向電圧で空乏層の幅(=静電容量)を変える。定電圧ダイオード(ツェナー)は逆方向の降伏現象を利用する。レーザダイオードは順方向で電子と正孔を再結合させて発光します。
令和7年度下期 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 令和7年度下期 A問題11
次の文章は、それぞれのダイオードについて述べたものである。
a. 可変容量ダイオードは、通信機器の同調回路などに用いられる。このダイオードは、pn接合に(ア)電圧を加えて使用するものである。
b. pn接合に(イ)電圧を加え、その値を大きくしていくと、降伏現象が起きる。この降伏電圧付近では、流れる電流が変化しても接合両端の電圧はほぼ一定に保たれる。定電圧ダイオードは、この性質を利用して所定の定電圧を得るようにつくられたダイオードである。
c. レーザダイオードは光通信や光情報機器の光源として利用され、pn接合に(ウ)電圧を加えて使用するものである。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (1) 順方向 順方向 逆方向 (2) 逆方向 逆方向 順方向 (3) 逆方向 順方向 逆方向 (4) 順方向 逆方向 順方向 (5) 逆方向 逆方向 逆方向
出題のポイント:「光るものだけ順方向」
3種類のダイオードに、順方向と逆方向のどちらの電圧を加えるかを問う問題です。それぞれが何の現象を使っているかを考えれば、迷わず決まります。
覚え方は「光るものだけ順方向」——レーザダイオードは順方向、可変容量ダイオードと定電圧ダイオードは逆方向です。これで3つとも決まります。
降伏(ブレークダウン)は逆方向でしか起きません。問題文の「その値を大きくしていくと降伏現象が起きる」——これは逆電圧の話です。

解説:3つのダイオードを順に判定する
| ダイオード | バイアス | 理由 | |
| a | 可変容量ダイオード | 逆方向 | 空乏層の幅を電圧で変え、容量として使う |
| b | 定電圧ダイオード | 逆方向 | 降伏領域で電圧がほぼ一定になる性質を使う |
| c | レーザダイオード | 順方向 | 電流を流して電子と正孔を再結合させ発光 |
aは「同調回路に用いる」という記述がヒントです。電圧で容量を変えて共振周波数を変える——そのためには電流を流さない逆方向で使います。
bは「降伏電圧付近で電圧がほぼ一定」——降伏は逆方向の現象です。順方向には降伏という概念がありません。
cは「光源として利用」——発光には電流が必要なので順方向です。逆方向では電流が流れず、光りようがありません。


誤答の正体:どれを順方向にしてしまうか
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | 順方向 | 順方向 | 逆方向 | ×(全部逆) |
| (2) | 逆方向 | 逆方向 | 順方向 | ◎ |
| (3) | 逆方向 | 順方向 | 逆方向 | × |
| (4) | 順方向 | 逆方向 | 順方向 | ×((ア)が誤り) |
| (5) | 逆方向 | 逆方向 | 逆方向 | ×((ウ)が誤り) |
(5)が最も惜しい誤答です。(ア)(イ)は正しいのに、(ウ)まで逆方向——「特殊なダイオードはすべて逆方向」という思い込みでしょう。
(4)は(ア)だけ順方向としています。可変容量ダイオードを順方向で使うと電流が流れてしまい、コンデンサとして機能しません。
⚠️ よくある間違い
「発光するものは順方向」——電流を流さないと再結合が起きないからです。LED・レーザダイオードは必ず順方向——この一点で(ウ)が決まります。
☝️ ひっかけの作り方:フォトダイオードは逆方向です。「光」がつくから順方向と早合点しないでください。光を【出す】のがLED・LD(順方向)、光を【受ける】のがフォトダイオード(逆方向)です。
深掘り①:主なダイオードを一覧で整理する
ダイオードは種類が多いので、「何をさせたいのか」で分類すると覚えやすくなります。
| ダイオード | バイアス | 使う現象 | 用途 |
| 整流ダイオード | 順方向で通す | 整流作用 | 電源回路 |
| 可変容量ダイオード | 逆方向 | 空乏層の幅=静電容量 | 同調回路・PLL |
| 定電圧ダイオード | 逆方向 | 降伏 | 基準電圧・保護 |
| 発光ダイオード(LED) | 順方向 | 再結合による発光 | 照明・表示 |
| レーザダイオード(LD) | 順方向 | 誘導放出 | 光通信・光ディスク |
| フォトダイオード | 逆方向 | 光生成キャリヤ | 光検出 |
順方向は「電流を流して仕事をさせるもの」——整流と発光だけです。残りはすべて逆方向——この2分類で覚えれば迷いません。
深掘り②:降伏はなぜ逆方向で起きるのか
降伏(ブレークダウン)は、逆電圧が空乏層に強い電界を作ることで起きます。2つのしくみがあります。
| 現象 | しくみ | 起きやすい電圧 | 温度係数 |
| ツェナー降伏 | 強電界で共有結合が直接切れる(トンネル効果) | 約6 V以下 | 負 |
| なだれ降伏 | 加速された電子が次々に衝突電離 | 約6 V以上 | 正 |
順方向では空乏層が狭くなり、電界も弱くなります。だから降伏は起きません——ただ素直に電流が流れるだけです。
約6 V付近では2つの温度係数が打ち消し合うので、温度変化に強い基準電圧源が作れます。5〜6 V級のツェナーダイオードがよく使われる理由です。
深掘り③:可変容量ダイオードが同調回路を変える
LC共振回路の周波数は \(f_0=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) です。\(C\) を電圧で変えられれば、周波数も電圧で変えられます。
昔のラジオは可変コンデンサ(バリコン)をつまみで回して選局していました。可変容量ダイオードなら電圧を変えるだけ——ボタン1つで局を切り替えられます。
さらにPLLと組み合わせれば、周波数をデジタルで正確に制御できます。現代の無線機器はほぼすべてこの方式です。
深掘り④:レーザダイオードが光通信を支える
レーザダイオードの「単色性」が、光ファイバ通信を可能にしました。LEDでは代わりになりません。
| LED | レーザダイオード | |
| 波長の広がり | 数十 nm | 数 nm以下 |
| 伝送距離 | 短距離(数百 m) | 長距離(数十〜数百 km) |
| 変調速度 | 数百 Mbps | 数十 Gbps以上 |
波長が広がると「分散」でパルスが崩れます。波長ごとに光ファイバ中の速度が違うためで、長距離を進むほど信号がぼやけるのです。
だから長距離・高速の光通信には、波長のそろったレーザダイオードが不可欠——海底ケーブルも幹線網も、すべてLDです。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「光るものだけ順方向」——3つとも一瞬で決まる。
❷ 降伏は逆方向の現象——順方向には降伏がない。
❸ 可変容量は逆方向——順方向では電流が流れて容量にならない。
❹ フォトダイオードは逆方向——光を受ける側は逆。
💡 覚え方
「出す(発光)は順、受ける・変える・保つは逆」——LED・LDだけが順方向で、フォトダイオード・バリキャップ・ツェナーは逆方向です。
★重要:同じ問題が3回出題されている
この問題は、平成19年度・令和4年度下期・そして本問(令和7年度下期)と3回出題されています。内容はまったく同じで、選択肢の並びだけが変えられています。
| 年度 | 答えの中身 | 正答番号 |
| 平成19年度 A問題11 | 逆・逆・順 | (5) |
| 令和4年度下期 A問題11 | 逆・逆・順(同じ) | (5) |
| 本問(令和7年度下期 A問題11) | 逆・逆・順(同じ) | (2) |
答えの中身は3回とも同じ「逆方向・逆方向・順方向」です。ところが正答番号は (5)(5)(2) と変わっています——選択肢の順序が入れ替えられたためです。
⚠️ よくある間違い
番号で覚えることの危険性を示す決定的な例です。「この問題は(5)だった」と記憶していると、令和7年度では外します。必ず「逆・逆・順」という中身で覚えてください。
出題履歴:ダイオードのバイアスは最頻出
同じ問題が3回出ている——それだけ基本的で重要なテーマだということです。各ダイオードの用途とバイアスの向きを一覧で覚えれば、確実な得点源になります。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成19年度A問題11(同じ問題・正答(5))/【理論】令和4年度下期A問題11(同じ問題・正答(5))
まとめ
| 可変容量D | 逆方向(空乏層で容量可変) |
| 定電圧D | 逆方向(ツェナー降伏) |
| レーザD | 順方向(再結合で発光) |
| 答え | (2) |
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