今回は平成20年度 理論科目 B問題15を解説します。6Ω+8ΩのY結線負荷と抵抗rのΔ結線負荷が並列の三相回路で、Y負荷の電流I₁とΔ負荷(r)の電流I₂が等しいとき、(a)抵抗rと(b)全消費電力を求めるB問題です。
(a)Y負荷は|Z|=√(6²+8²)=10Ω、相電圧=200/√3。I₁=(200/√3)/10。Δ負荷のrは線間電圧200Vを受けI₂=200/r。I₁=I₂からr。(b)電力=Y負荷+Δ負荷。
平成20年度 理論科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題15
電験3種 理論科目 【電気回路(三相交流)】 平成20年度 B問題15
図のように、抵抗6Ωと誘導性リアクタンス8ΩをY結線し、抵抗r〔Ω〕をΔ結線した平衡三相負荷に、200Vの対称三相交流電源を接続した回路がある。抵抗6Ωと誘導性リアクタンス8Ωに流れる電流の大きさをI₁〔A〕、抵抗r〔Ω〕に流れる電流の大きさをI₂〔A〕とする。電流I₁とI₂の大きさが等しいとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)抵抗rの値〔Ω〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)6.0 (2)10.0 (3)11.5 (4)17.3 (5)19.2〔Ω〕
(b)回路が消費する電力の値〔kW〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2.4 (2)3.1 (3)4.0 (4)9.3 (5)10.9〔kW〕

出題のポイント:Y負荷とΔ負荷を別々に扱う
1つの電源に、Y結線の負荷とΔ結線の負荷が並列につながっている回路です。並列なので、それぞれ独立に計算して最後に足せばよい——これが基本方針になります。
Y負荷にかかるのは相電圧 \(200/\sqrt3\fallingdotseq115.5\ \mathrm{V}\)、Δ負荷にかかるのは線間電圧そのままの200 Vです。この違いが本問の急所になります。
問題文は「抵抗 \(r\) に流れる電流」と書いています。これはΔの相電流であって、線電流ではありません。読み取りを間違えると \(\sqrt3\) 倍ずれます。

(a) の解説:2つの電流を等しいと置く
3:4:5
相電圧を使う
線間電圧を使う
❶で6と8から10が出るのはおなじみの3:4:5です。\(\sqrt{36+64}=\sqrt{100}=10\)——電験では頻出の組合せなので瞬時に出せるようにしておきましょう。
❹の答えは \(10\sqrt3\) というきれいな形になります。Y負荷の \(|\dot Z|=10\) に対して \(\sqrt3\) 倍——Δ負荷には \(\sqrt3\) 倍の電圧がかかるので、同じ電流を流すには \(\sqrt3\) 倍の抵抗が必要という理屈です。

(b) の解説:2つの負荷の電力を足す
電力は「電流の合成」を経由せずに、それぞれの負荷で計算して足せます。有効電力はスカラー量なので、位相を気にせず単純な足し算でよいのです。
リアクタンスは消費しない
\(I_1=I_2=20/\sqrt3\) なので \(I^{2}=400/3\fallingdotseq133.3\) です。どちらの負荷も同じ電流が流れているので、電力の比は抵抗の比 \(6:10\sqrt3\fallingdotseq6:17.3\) になります。
Δ負荷のほうが約2.9倍も電力を消費しています。同じ電流でも抵抗が大きいほうが多く消費する——\(P=I^{2}R\) の素直な結果です。

誤答の正体:\(\sqrt3\) をどこで使うか
| 選択肢 | (a) \(r\)〔Ω〕 | そのとき \(I_2=200/r\) | どんな誤りか |
| (1) | 6.0 | 33.3 A | Y負荷の抵抗6 Ωをそのまま答える |
| (2) | 10.0 | 20.0 A | \(|\dot Z_Y|=10\) をそのまま答える(相電圧を使い忘れ) |
| (3) | 11.5 | 17.4 A | \(I_1\) の数値11.5をそのまま \(r\) にする |
| (4) | 17.3 | 11.56 A =\(I_1\) | 正解 |
| (5) | 19.2 | 10.4 A | ダミー |
(2)10.0が最も引っかかりやすいです。「Y負荷のインピーダンスが10 Ωだから、同じ電流なら \(r\) も10 Ω」——ところがΔ負荷にかかる電圧は \(\sqrt3\) 倍なので、\(r\) も \(\sqrt3\) 倍でなければ電流が等しくなりません。
(3)11.5は \(I_1\) の数値そのものです。計算の途中で出てくる数字を、そのまま答えにしてしまう典型的なミス——単位が違う(AとΩ)ことに気づけば防げます。
⚠️ よくある間違い
「Δ負荷は線間電圧がそのままかかる」——ここを忘れると全部ずれます。Δ結線は3つの負荷が三角形に並び、その各辺が線間に直接つながっているからです。中性点がないので、相電圧という別の電圧が存在しません。
☝️ ひっかけの作り方:問題文が聞いているのは「抵抗 \(r\) に流れる電流 \(I_2\)」です。Δの線電流なら \(\sqrt3\) 倍の20 Aになります。「\(r\) に流れる」=相電流と正しく読み取ってください。
深掘り①:三相電力の求め方は3通りある
三相の電力は、状況に応じて使いやすい式を選べます。本問で3通りすべてを試してみましょう。
| 方法 | 式 | 使いやすい場面 |
| ❶ 1相分を3倍 | \(P=3V_pI_p\cos\phi\) | 相電圧・相電流が分かるとき |
| ❷ 線間で書く | \(P=\sqrt3V_lI_l\cos\phi\) | 測定値(線間電圧・線電流)から |
| ❸ 抵抗で書く | \(P=3I^{2}R\) | 電流と抵抗が分かるとき(本問) |
最も直接的
力率 \(6/10=0.6\)
Yなので \(I_l=I_1\)
3通りすべてで2400 W——当然ですが一致します。本問のように電流と抵抗が直接分かる場合は❸が最速です。力率を計算する手間が省けます。
Δ負荷は純抵抗なので力率1です。\(P_\Delta=3I_2^{2}r=3\times133.3\times17.32\fallingdotseq6928\ \mathrm{W}\)——あるいは \(\sqrt3\times200\times20\times1\fallingdotseq6928\ \mathrm{W}\)(線電流20 A)でも同じです。
深掘り②:Δ結線の相電流と線電流を区別する
Δ結線でつまずく最大の原因は、相電流と線電流の混同です。図で追ってみましょう。
| Δ結線 | Y結線 | |
| 相電流とは | 三角形の1辺(負荷)を流れる電流 | 各枝を流れる電流 |
| 線電流とは | 電源から出る3本の線の電流 | 同じ(枝=線) |
| 関係 | \(I_l=\sqrt3I_p\) | \(I_l=I_p\) |
| 本問では | \(I_2=11.55\ \mathrm{A}\)、線電流20 A | \(I_1=11.55\ \mathrm{A}\)(どちらも) |
Δの頂点では、2つの相電流が合流して線電流になります。ただし2つの相電流は120°ずれているので、単純に2倍ではなく \(\sqrt3\) 倍——\(2\cos30^\circ=\sqrt3\) という関係です。
本問では偶然 \(I_1=I_2=11.55\ \mathrm{A}\) と等しいのですが、線電流で比べるとY負荷11.55 A、Δ負荷20 A——Δ負荷のほうが1.73倍多く電流を引いています。
だからΔ負荷のほうが電力も大きいのです。2400 Wと6928 Wで約2.9倍——\(\sqrt3\times\sqrt3=3\) に近い比になっているのは偶然ではありません。
深掘り③:なぜ電力は単純に足せるのか
電流はベクトルなので単純に足せませんが、有効電力は足せます。この違いを理解しておくと、計算がぐっと楽になります。
有効電力は「実際に消費されるエネルギー」というスカラー量です。方向を持たないので、単純な足し算で合計できます。Y負荷が2400 W、Δ負荷が6928 Wなら、合わせて9328 W——それだけです。
| 量 | 性質 | 合成のしかた |
| 電流・電圧 | ベクトル(大きさと位相) | ベクトル和(三平方など) |
| 有効電力 \(P\) | スカラー | 単純な足し算 |
| 無効電力 \(Q\) | 符号付きスカラー | 符号を考えて足し算 |
| 皮相電力 \(S\) | 大きさのみ | 足せない(\(\sqrt{P^{2}+Q^{2}}\) で出す) |
皮相電力だけは単純に足せません。\(P\) と \(Q\) をそれぞれ合計してから、\(S=\sqrt{P^{2}+Q^{2}}\) で計算します。本問なら \(Q=3I_1^{2}\times8=3200\ \mathrm{var}\)(Δ負荷は純抵抗で \(Q=0\))——\(S=\sqrt{9328^{2}+3200^{2}}\fallingdotseq9862\ \mathrm{V\!\cdot\!A}\) です。
全体の力率は \(9328/9862\fallingdotseq0.946\)——純抵抗のΔ負荷が加わったおかげで、Y負荷単独の0.6から大幅に改善しています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 電力の式は3通り——\(3I^{2}R\) が使えるなら最速。
❷ Δの相電流と線電流を区別——「負荷に流れる」なら相電流。
❸ 有効電力・無効電力は足せる、皮相電力は足せない。
❹ 6と8から10、\(10\sqrt3=17.3\)——本問の数字はすべてきれいな形。
💡 覚え方
「電流はベクトル、電力はスカラー」——複数の負荷があるとき、電力なら単純に足せると覚えておくと、B問題の後半で時間を大きく節約できます。
★重要:令和4年度下期にそのまま再出題された
令和4年度下期B問題15は、本問と完全に同一の問題です。回路図・数値・選択肢の並び・正答番号(a)(4)(b)(4)まですべて同じ——14年の時を経ての再出題でした。
| 本問(平成20年度 B問題15) | 令和4年度下期 B問題15 | |
| Y負荷 | \(6\ \Omega\) と \(8\ \Omega\) | 完全に同一 |
| Δ負荷 | 抵抗 \(r\) | 完全に同一 |
| 選択肢 (a) | 6.0/10.0/11.5/17.3/19.2 | 並びも同じ |
| 選択肢 (b) | 2.4/3.1/4.0/9.3/10.9 | 並びも同じ |
| 正答番号 | (a)(4) (b)(4) | (a)(4) (b)(4) |
選択肢の並びさえ変えずに出題された——当サイトで確認した「完全同一ペア」の3組目です。多くの同型ペアは番号が動かされるのですが、本組は番号まで一致しています。
⚠️ よくある間違い
「平成20年度は古いから飛ばそう」という判断は危険です。B問題は作問コストが高いため、良問はそのまま再利用されます。10年以上前の過去問こそ、次に出る可能性があると考えてください。
出題履歴:Y・Δ混在は三相の総仕上げ
結線の異なる負荷を並列につなぐ問題は、三相交流の総合力を試すものです。相電圧と線間電圧、相電流と線電流——4つの量を正しく使い分けられれば確実に解けます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度下期B問題15(完全に同一の問題)
まとめ
| Y | |Z|=10,I₁=11.5A |
| r | 200/11.5≒17.3Ω …(a)(4) |
| PY/PΔ | 2400/6928W |
| P | 9.3kW …(b)(4) |
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