過渡現象21【電験3種 理論】L-R直列回路に方形波を加えたときの抵抗電圧の波形を求める!平成21年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 平成21年度 A問題10 方形波を加えたLR回路!抵抗の電圧波形は?

今回は平成21年度 理論科目 A問題10を解説します。L-R直列回路に振幅E・パルス幅T₀の方形波電圧viを加えたときの、抵抗の端子電圧vRの波形を選ぶ問題です(時定数L/R≪T₀)。

抵抗出力のL-R回路はローパス特性。投入直後はコイルが電流を妨げvR=0から始まり、τ=L/RでEへ上昇。L/R≪T₀なので素早くEに達し、T₀で入力が0になると素早く0へ戻ります。

目次

平成21年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

方形波を入れたとき、抵抗の電圧とコイルの電圧では波形がまったく違います。本問が聞いているのは抵抗の電圧——電流と同じ形になる側です。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 平成21年度 A問題10 問題文
平成21年度 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成21年度 A問題10

 図1のようなインダクタンスL〔H〕のコイルとR〔Ω〕の抵抗からなる直列回路に、図2のような振幅E〔V〕、パルス幅T₀〔s〕の方形波電圧vi〔V〕を加えた。このときの抵抗R〔Ω〕の端子間電圧vR〔V〕の波形を示す図として、正しいのは次のうちどれか。ただし、図1の回路の時定数L/R〔s〕はT₀〔s〕より十分小さく(L/R≪T₀)、方形波電圧の電源の内部インピーダンスは0〔Ω〕、コイルに流れる初期電流は0〔A〕とする。

上の図(1)〜(5)から、抵抗の端子電圧vRの波形として正しいものを一つ選べ。

図1 L・Rの直列回路(v_R出力)(問題図)
図1 L・Rの直列回路(v_R出力)(問題図)

出題のポイント:どこの電圧を聞かれているかで波形がまったく違う

L-R直列回路に方形波を入れる問題です。抵抗の電圧を聞かれているのか、コイルの電圧を聞かれているのか——これを取り違えると、正反対の波形を選んでしまいます。

出力を取る場所波形の特徴フィルタとしての性質
抵抗 R から(本問)方形波に追従し、縁だけがなまるローパスフィルタ(低い周波数を通す)
コイル L から立上りと立下りで正負のスパイクハイパスフィルタ(高い周波数を通す)

本問は抵抗の電圧 \(v_R\)です。そして \(v_R=Ri\) ——抵抗電圧は電流の定数倍なので、電流の波形をそのまま縦に伸縮したものになります。形も符号も電流と同じです。

つまり「電流がどう変化するか」だけ考えればよいということ。コイルは電流の急変を妨げるので、電流はなまる——だから \(v_R\) もなまります。

公式の直列L-R回路、入力方形波、抵抗電圧vRが電流と同じ形になる関係、時定数L割るRがパルス幅T0より十分小さい条件を説明
抵抗電圧は0からEへ上昇し、E付近で平らになった後、正のまま0へ減衰します。

τ ≪ T₀ という条件が意味すること

問題文は「時定数 \(L/R\) はパルス幅 \(T_0\) より十分小さい」と指定しています。この条件が波形の見た目を決めます

条件パルス中に起きること波形
τ ≪ T₀(本問)すぐEに達し、長い平坦部ができる方形波にほぼ追従(縁だけなまる)
τ ≒ T₀Eに届く前にパルスが終わる三角に近い丸まった山
τ ≫ T₀ほとんど立ち上がれない小さな三角波(ほぼ積分波形)

数値例(E=10 V、R=100 Ω、L=10 mH、τ=0.1 ms、T₀=1 s)で確認すると、\(T_0/\tau=10\,000\) 倍。パルス幅に対して時定数が極端に短いので、グラフ上では立上りが垂直に見えるほど速いことになります。

時刻\(v_R\)\(v_L\)和(=入力)
t=00 V10 V10 V
t=τ6.32 V3.68 V10 V
t=3τ9.50 V0.50 V10 V
t=5τ9.93 V0.07 V10 V
t=0.5 s(=5000τ)10.00 V0.00 V10 V

5τ(0.5 ms)で99.3 %に到達し、あとはパルスが終わる1秒まで平坦です。だから波形の大部分はまっすぐな台地になります。

問題の解説:立下り後も「正のまま」であることが最大の急所

使う公式:L-R直列回路の抵抗電圧
$$v_R=Ri,\qquad v_i=L\frac{di}{dt}+Ri,\qquad \tau=\frac{L}{R}$$

\(v_R\) は電流と完全に相似。電流が正なら \(v_R\) も正です。

STEP1 立ち上がり(t=0)

$$i(0)=0\;\Rightarrow\;v_R(0)=0\;[\mathrm{V}]$$
❶ コイルが電流を妨げる
0から出発する
$$v_R(t)=E\left(1-e^{-t/\tau}\right)$$
❷ 指数的に上昇
τでEの63.2 %

STEP2 パルス中

τ ≪ T₀ なので、パルスが終わるずっと前に \(v_R\approx E\) に達し、そのまま平坦を保ちます。このときコイルの電圧はほぼ0 V——コイルは短絡と同じ状態です。

STEP3 立ち下がり(t=T₀)——ここが分かれ目

入力が0 Vに落ちます。電源の内部インピーダンスは0 Ωなので、電源は導線(短絡)と同じになります。

$$i(T_0^+)=i(T_0^-)\approx\frac{E}{R}$$
❸ コイル電流は連続
同じ向きに流れ続ける
$$v_R=Ri>0$$
❹ 電流が正なら抵抗電圧も正
負にはならない
$$v_R(t)=E\,e^{-(t-T_0)/\tau}$$
❺ 正のまま0へ減衰
τで36.8 %
$$v_L=-v_R<0$$
❻ コイル電圧だけが負になる
入力0なので \(v_R+v_L=0\)

「入力が0になったのだから出力も一気に0」ではありません。コイルが電流を維持しようとするため、しばらく抵抗に電流が流れ続けます。ただし時定数が短いので、あっという間に0へ落ちます

入力Eの立上り区間でKVLを使い、電流と抵抗電圧が時定数L割るRで0から指数上昇する式を初期値と最終値から導出
立上り区間ではv_R(t)=E{1−exp(−t/τ)}となり、τ後に約0.632E、十分時間後にEへ近づきます。
答え0から立ち上がってEで平坦、T₀後は正のまま0へ減衰(縁だけなまった方形波) → 選択肢(5)
時定数とパルス幅を比較し、約5時定数で抵抗電圧がEの99.3パーセントに達して長い平坦区間ができる理由と電圧分担を説明
T₀≫τなので、入力が終わる前にコイル電圧はほぼ0、抵抗電圧はほぼEとなります。
入力が0になった後の電流連続性、自然応答、抵抗電圧が正のまま減衰する式、負になるコイル電圧、磁気エネルギーの流れを説明
立下り後もコイル電流は同じ向きに流れ、v_RはE付近から正のまま0へ指数減衰します。
公式の五つの波形選択肢を初期値、E付近の平坦部、T0後の符号と減衰で比較し、選択肢5を正解と判定
初期値0、長いEの台地、立下り後も正という三条件を満たす公式正答は選択肢(5)です。

誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか

描かれている波形何を間違えたか見破り方
立上り・立下りで正負のスパイクコイル電圧 \(v_L\) の波形と混同\(v_R=Ri\) は電流と同じ形
立下り後に負へ振れる電流の向きが反転すると誤解コイル電流は同じ向きに流れ続ける
Eから始まる投入直後にコイルが短絡と誤解コイルは最初は開放、\(v_R\) は0から
三角波(Eに届かない)τ ≪ T₀ の条件を見落とした5τでほぼ到達=長い平坦部ができる
完全な方形波(縁が垂直)過渡現象を無視した必ず指数的になまる

最も多いのは「正負のスパイク」を選ぶ誤りです。これはコイル電圧の波形——実際に \(v_L\) は t=0 で+E、t=T₀ で −E となるスパイクになります。「過渡現象といえばスパイク」というイメージが強いと、こちらを選んでしまいます。

\(v_R\) と \(v_L\) を足すと必ず入力になる(\(v_R+v_L=v_i\))ので、2つの波形は表裏一体です。どちらを聞かれているかを問題文で確認してから選んでください。

フィルタとして見ると理解が深まる

この回路はフィルタそのものです。方形波は「多くの周波数成分の重ね合わせ」なので、どの成分が通るかで出力波形が決まります。

抵抗出力(本問)コイル出力
通る成分低い周波数高い周波数
方形波のどの部分に対応するか平坦な部分(ゆっくりした変化)立上り・立下りの縁(急な変化)
出力波形なまった方形波スパイク
回路の呼び名ローパス(積分回路)ハイパス(微分回路)

コイルは高い周波数ほどインピーダンスが大きい(\(Z_L=j\omega L\))ため、高周波成分がコイル側に多く分配されます。残った低周波成分が抵抗に現れる——だから抵抗出力はローパスになります。

実務では、ノイズ除去にローパス、エッジ検出にハイパスという使い分けをします。この問題は「同じ回路でも、どこから出力を取るかで役割が変わる」ことを教えてくれます。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
抵抗電圧か、コイル電圧かを問題文で必ず確認する
\(v_R=Ri\)——電流と同じ形・同じ符号。電流だけ考えればよい
抵抗出力=なまった方形波、コイル出力=スパイクと対で覚える
τ ≪ T₀ なら長い平坦部ができる(5τで99 %到達)
⑤ 立下り後もコイル電流は同じ向き——\(v_R\) は負にならない

💡 覚え方
「R出力はなまる、L出力は尖る」。抵抗は電流に比例するので方形波を追いかけ、コイルは変化率に比例するので縁だけを拾います。\(v_R+v_L=v_i\) なので、2つを足すと元の方形波に戻ります。

⚠️ よくある間違い
コイル電圧のスパイク波形を選ぶのが最頻出です。聞かれているのは抵抗電圧——電流と同じ形です。また立下り後に負へ振れると考えるのも誤りで、コイル電流は同じ向きに流れ続けるため \(v_R\) は正のまま減衰します。

まとめ

t=0vR=0から上昇
パルス中≒E(L/R≪T₀)
T₀0へ減衰
答え(5)

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