過渡現象18【電験3種 理論】S₂投入後も電源電流が変わらない理由を見抜く!平成24年度 A問題9 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 平成24年度 A問題9 コイルを順につないでいく!電流は階段状に?

今回は平成24年度 理論科目 A問題9を解説します。E電源に2つのR-L枝(S₁側・S₂側)を接続する回路で、t₁でS₁、十分時間後t₂でS₂を閉じたときの電源電流iの波形を選ぶ問題です。

RL回路の電流は時定数τ=L/Rで0からE/Rへ近づきます。S₁でE/Rへ達した後は、第1コイルが分岐点を0 Vに保つため、S₂を閉じても第2枝は励磁されず、電源電流はE/Rのままです。

目次

平成24年度 理論科目 A問題9:問題文と選択肢

スイッチを2つ、時間差で閉じます。ところが2つ目を閉じても電流はまったく変化しません。「つながったのに流れない」——その理由を電位から読み解きます。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 平成24年度 A問題9 問題文
平成24年度 理論科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題9

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成24年度 A問題9

 図のように、直流電圧E〔V〕の電源、R〔Ω〕の抵抗、インダクタンスL〔H〕のコイル、スイッチS₁とS₂からなる回路がある。電源の内部インピーダンスは零とする。時刻t=t₁でS₁を閉じ、その後、時定数L/Rより十分に時間が経過した時刻t=t₂でS₂を閉じる。このとき、電源から流れ出る電流i〔A〕の波形を示す図として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

上の図(1)〜(5)から、電源電流iの波形として最も適切なものを一つ選べ。

図 E電源とS₁-R-L・S₂-R-Lの2枝の回路(問題図)
図 E電源とS₁-R-L・S₂-R-Lの2枝の回路(問題図)

出題のポイント:2つ目のスイッチを閉じても、何も起きない

スイッチが2つあり、時間差で閉じます。普通に考えれば、2つ目を閉じたときに電流が増えそう——ところが本問ではまったく変化しません。その理由を見抜けるかが問われています。

鍵は「1つ目のコイルが、分岐点の電圧を0 Vに固定してしまう」ことです。

時刻回路の状態電源電流 i
t=t₁(S₁投入)第1のR-L枝が通電を開始0 から E/R へ立ち上がる(τ=L/R)
t₁ < t < t₂第1コイルの電流が増え、コイルは短絡へ近づくE/R に漸近
t=t₂(S₂投入)第2枝がつながるが、両端の電圧が0 VE/R のまま変化なし
t > t₂第2枝に電流を流す電圧がないE/R で一定
S1とS2の三つの状態を分け、共通直列抵抗、第1コイルによる0 Vクランプ、第2枝電流0、電源電流E/R維持を回路図で説明
第1コイルが分岐点を0 Vに保つため、S₂を閉じても第2枝は励磁されず、電源電流はE/Rのままです。

なぜ第2枝に電流が流れないのか

順を追って確認します。t₂の時点では、第1コイルはすでに定常状態に達しています。

$$i_{L1}=\frac{E}{R}\;(\text{一定})\;\Rightarrow\;\frac{di_{L1}}{dt}=0$$
❶ 定常状態
電流が変化しなくなった
$$v_{L1}=L\frac{di_{L1}}{dt}=0\;[\mathrm{V}]$$
❷ コイルの端子電圧が0
直流的には短絡と同じ
$$v_{\text{第2枝}}=v_{L1}=0\;[\mathrm{V}]$$
❸ 第2枝は第1コイルと並列
かかる電圧が0 V
$$i_2=0\;[\mathrm{A}]$$
❹ 電圧0なら電流も0
励磁する起電力がない

「回路がつながった=電流が流れる」ではありません。電流を流すには電位差が必要です。第1コイルが短絡として振る舞い、分岐点を接地側と同じ0 Vに引き下げているため、第2枝の両端には電位差がまったくありません。

さらに重要なのは、この状態がすでに平衡だということです。「S₂を閉じた瞬間の状態」と「S₂を閉じて十分後の状態」がどちらも \(i_1=E/R,\;i_2=0\) で一致します。初期状態=最終状態なら、その間に過渡現象は起きません——だから波形は完全に水平のままです。

問題の解説:2段階に分けて追う

使う公式:RL回路のステップ応答と定常状態
$$i(t)=\frac{E}{R}\left(1-e^{-t/\tau}\right),\qquad \tau=\frac{L}{R},\qquad \text{定常では}\;v_L=0$$

定常状態のコイルは短絡——並列につながる枝の電圧を0 Vに固定します。

STEP1 S₁投入後の立ち上がり

第1のR-L直列回路に電圧Eが加わります。コイル電流は0から始まり、時定数 \(L/R\) で \(E/R\) へ近づきます。

数値例(E=10 V、R=5 Ω、L=1 H、τ=0.2 s)で確認しました。

時刻電源電流 i最終値に対して
t=00 A0 %
t=τ(0.2 s)1.264 A63.2 %
t=2.5τ(0.5 s)1.836 A91.8 %
t=5τ(1.0 s)1.987 A99.3 %
t=10τ(2.0 s)2.000 Aほぼ100 %

STEP2 S₂投入——変化なし

問題文は「時定数 \(L/R\) より十分に時間が経過した時刻 t₂」と明記しています。つまりt₂では第1枝はすでに定常です。

$$i_2(t_2^+)=i_2(t_2^-)=0\;[\mathrm{A}]$$
❺ コイル電流は連続
S₂を閉じる前は0、閉じた直後も0
$$i(t)=\frac{E}{R}\;(\text{t}_2\text{以降も一定})$$
❻ 電源電流
段差も第2の立上りも生じない

STEP3 波形を選ぶ

第1段階のRL応答と第2段階の節点電圧・二枝の連立方程式から、S2投入後もi1がE/R、i2が0となることを導出
t₂直後の状態がそのまま第2段階の平衡状態であり、新しい過渡応答は始まりません。
答え0 から E/R へ立ち上がり、t₂以降も E/R のまま水平 → 選択肢(3)
S1投入直後、過渡中、十分時間後のRL等価回路、KVL、時定数L/R、0からE/Rへ上昇する電流波形を説明
第1段階では電源電流が0からE/Rへ指数関数的に上昇し、t₂直前にはほぼE/Rです。
t2直前の第1コイル短絡相当、S2投入直後の電流連続性、節点電圧0 V、第2枝の電力と磁気エネルギーが0のままであることを説明
S₂を閉じても第2枝の電圧は0 Vなので、i₂は0のまま、電源電流iはE/Rを維持します。

誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか

描かれている波形何を間違えたかその値
t₂で2段目の立上りが始まり 2E/R へ2つのR-L枝を独立した並列負荷と誤解\(2E/R\)(数値例なら4.0 A)
t₂で電流が段差でジャンプコイル電流が瞬時に飛べると誤解
t₂から電流が減少第2枝が電流を「奪う」と誤解
t₂で一度落ちてから戻るスイッチ操作で必ず過渡が起きると思い込んだ

圧倒的に多いのが「2E/Rになる」誤りです。「同じR-L枝が2本になったのだから電流も2倍」——部品の数だけを見ると、そう考えるのが自然です。

しかし2本が並列になっているのは電源に対してではありません。第2枝は第1コイルと並列であり、そこには電圧がかかっていない。回路図の接続を、電位という観点で読み直す必要があります。

「スイッチを操作したのだから何か起きるはず」という思い込みも罠です。初期状態と最終状態が一致していれば、スイッチを閉じても何も起きません。変化がないことも立派な答えです。

見抜くための考え方:まず節点の電位を見る

この種の問題は、素子ではなく「節点の電位」から入ると一気に見通しが良くなります。

手順やること本問での結果
スイッチを閉じる直前の各節点の電位を求める分岐点は0 V(第1コイルが短絡)
新しくつながる枝の両端の電位差を計算0 V − 0 V = 0 V
電位差が0なら電流は流れないと判断第2枝の電流は0のまま
初期状態と最終状態が同じなら過渡現象なし波形は水平

②で0 Vが出た時点で答えが決まります。微分方程式も時定数も不要です。「電位差がなければ電流は流れない」——オームの法則の最も基本的な形が、そのまま決め手になります。

なおもし第2枝が電源に直接並列だったら、話はまったく変わります。その場合は第2枝にも電圧Eがかかり、電流が0から \(E/R\) へ立ち上がって、合計は \(2E/R\) になります。「どこに並列につながっているか」が結論を180度変えるのです。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① スイッチが複数ある問題は、各スイッチ操作の直前の節点電位を先に押さえる
定常状態のコイルは短絡——並列につながる枝の電圧を0 Vにしてしまう
電位差0なら電流0。「つながった=流れる」ではない
初期状態=最終状態なら過渡現象は起きない。波形は水平のまま
⑤ 「部品が2倍だから電流も2倍」と数だけで判断しない

💡 覚え方
「短絡したコイルは、その先を0 Vにする」。定常状態のコイルは導線と同じなので、両端が同電位になります。そこに何を並列につないでも電圧が0だから電流も0——スイッチを閉じても無反応です。

⚠️ よくある間違い
最頻出は「2枝あるから最終値は2E/R」とする誤りです。第2枝が電源に直接並列なのか、それとも第1コイルと並列なのかを回路図で必ず確認してください。また「スイッチを閉じたら必ず何か変化する」という思い込みも捨ててください。

まとめ

S₁i:0→E/R
S₂i:E/Rのまま
最終E/R
答え(3)

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