過渡現象14【電験3種 理論】RC放電回路の性質に関する記述の正誤を判定する!平成28年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 平成28年度 A問題10 放電カーブの性質を総点検!誤りはどれ?

今回は平成28年度 理論科目 A問題10を解説します。E・S・R・CのRC回路で、コンデンサを充電後にスイッチを2側(放電側)へ切り換えたとき、放電に関する記述の誤りを選ぶ問題です。

RC放電では時定数τ=RCでvC=E·e−t/τ、i=(E/R)e−t/τ。時定数はRとCの積、初期電流はE/R(Cに無関係)である点がポイントです。

目次

平成28年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。急所は「時定数にはCが入るが、初期電流にはCが入らない」——この区別だけで決着します。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 平成28年度 A問題10 問題文
平成28年度 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成28年度 A問題10

 図のように、電圧E〔V〕の直流電源、スイッチS、R〔Ω〕の抵抗及び静電容量C〔F〕のコンデンサからなる回路がある。この回路において、スイッチSを1側に接続してコンデンサを十分に充電した後、時刻t=0〔s〕でスイッチSを1側から2側に切り換えた。2側に切り換えた以降の記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、自然対数の底は、2.718とする。

(1)回路の時定数は、Cの値〔F〕に比例する。

(2)コンデンサの端子電圧vC〔V〕は、Rの値〔Ω〕が大きいほど緩やかに減少する。

(3)時刻t=0から回路の時定数だけ時間が経過すると、vC〔V〕は電源電圧E〔V〕の0.368倍に減少する。

(4)抵抗の端子電圧vR〔V〕の値は負である。

(5)時刻t=0における回路の電流i〔A〕は、Cの値〔F〕に関係する。

図 E電源・S(1/2)・R・CのRC回路(問題図)
図 E電源・S(1/2)・R・CのRC回路(問題図)

出題のポイント:τはCに比例するが、初期電流はCに無関係

5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。すべての記述がRC放電の基本式に対応しているので、式さえ書ければ機械的に判定できます。

RC放電回路の3つの基本式
$$v_C(t)=E\,e^{-t/\tau},\qquad i(t)=\frac{E}{R}e^{-t/\tau},\qquad \tau=RC$$

時定数にはCが入るが、初期電流 \(E/R\) にはCが入らない——本問の急所です。

この「Cが入る式と入らない式」の区別が、そのまま正解の分かれ目になっています。

Rを変えるとCを変えると
時定数 τ\(RC\)比例して変わる比例して変わる
初期電圧 \(v_C(0)\)\(E\)変わらない変わらない
初期電流 \(i(0)\)\(E/R\)反比例して変わる変わらない

Cは「どれだけ長く流れるか」を決め、「どれだけ強く流れ始めるか」は決めません。容量が大きいほど蓄えた電荷が多いので長く放電しますが、流れ出す勢いは抵抗だけで決まります。

スイッチを1側で充電した後2側へ切り換えるRC放電回路で、電流と抵抗電圧の基準方向、時定数、初期電流を説明
切換直後もコンデンサ電圧はEを保ち、時定数はRC、基準電流の初期値はマイナスE割るRです。

なぜ初期電流にCが入らないのか

放電が始まる瞬間、回路にあるのは「2E」ならぬ「電圧E に充電されたコンデンサ」と「抵抗R」だけです。

$$v_C(0^+)=E\;[\mathrm{V}]$$
❶ 電圧は急変できない
充電時の電圧をそのまま引き継ぐ
$$i(0^+)=\frac{v_C(0^+)}{R}=\frac{E}{R}$$
❷ オームの法則
Cはどこにも現れない

この瞬間、コンデンサは「電圧Eの電池」と同じ振る舞いをします。電池の内部抵抗が0なら、流れる電流は外部抵抗Rだけで決まる——それと同じことです。容量が大きかろうと小さかろうと、電圧がEなら初期電流はE/Rです。

違いが出るのはその後です。容量が大きいほど電荷の蓄えが多いので、電圧の下がり方がゆっくりになり、電流も長く流れ続けます。「出発の勢いは同じ、続く時間が違う」——これがCの役割です。

問題の解説:5つの記述を1つずつ検証する

実際に数値(E=100 V、R=1 kΩ、C=10 μF)を入れ、RやCを変えたときの変化を確かめました。

条件τ初期電流 \(i(0)\)
基準(R=1 kΩ、C=10 μF)0.01 s0.100 A
Cを10倍(100 μF)0.1 s(10倍)0.100 A(変わらない)
Rを10倍(10 kΩ)0.1 s(10倍)0.010 A(1/10)

記述(1)〜(3):基本式そのまま

記述内容根拠判定
(1)時定数はCに比例する\(\tau=RC\) はCの1次式正しい
(2)Rが大きいほど \(v_C\) は緩やかに減少\(\tau=RC\) がRに比例 → 減衰が遅くなる正しい
(3)t=τ で \(v_C\) はEの0.368倍\(e^{-1}=0.3679\)正しい

(3)の0.368は「1時定数で36.8 %に減る」という指数関数の定義そのものです。問題文が「自然対数の底は2.718とする」とわざわざ断っているのは、\(1/2.718=0.368\) を計算させるためです。

記述(4):符号の話

これが唯一「式」ではなく「向き」の記述です。充電時に定めた電流の基準向きを、放電時もそのまま使うのがルール。

$$i_{\text{充電}}>0\;\Rightarrow\;i_{\text{放電}}<0$$
❸ 向きが逆になる
電流が逆流するため
$$v_R=iR<0$$
❹ 抵抗電圧も負
Rは正なので符号は電流と同じ

「電圧が負」に違和感があるかもしれませんが、これは「基準向きに対して逆」という意味であって、異常なことではありません。基準向きを放電側に取り直せば正になります——記述(4)は「図に描かれた基準向きのまま」の話です。したがって正しい記述です。

記述(5):ここが誤り

$$i(0)=\frac{E}{R}$$
❺ 初期電流の式
E と R だけ。C は入らない

記述(5)は「t=0における電流iはCの値に関係する」と述べていますが、上の式のとおりCは含まれません。よってこれが誤りです。

RとCだけの放電等価回路からノード電位、オームの法則、コンデンサ電流を使って電圧電流式を導く解説
基準方向をそろえると、コンデンサ電圧は正、抵抗電圧と電流は負のまま指数的に0へ近づきます。
答え誤っているのは選択肢(5)(初期電流 \(i(0)=E/R\) はCに無関係)
時定数のC比例、Rによる減衰速度、1時定数後の0.368倍を式と正確な比較グラフで検証する解説
記述1から3はいずれもRC放電式と一致し、正しい記述です。
抵抗電圧の負号と初期電流がCに依存しないことを、ノード電位、独立波形、C大小比較で検証する解説
抵抗電圧は負で記述4は正しく、初期電流はCを含まないため記述5は誤りです。

誤りを選ぶ問題の解き方

「誤っているものを選べ」という設問は、正しいものを選ぶ問題より時間がかかります。4つが正しいことを確認しなければならないからです。効率よく進めるコツがあります。

コツ内容
① 先に式を書く\(v_C=Ee^{-t/\tau}\)、\(i=(E/R)e^{-t/\tau}\)、\(\tau=RC\) を余白に書いてから読み始める
② 記述に出てくる文字を見る「Cに関係する」なら、その式にCが入っているかだけを確認
③ 怪しいものに印確信が持てたら即決。全部読まなくてよい
④ 数値を入れる迷ったら具体的な値でCを2倍にして、変化するか見る

本問では②だけで答えが出ます。記述(1)は「τとC」→ \(\tau=RC\) にCがある → 正しい。記述(5)は「\(i(0)\) とC」→ \(E/R\) にCがない → 誤り。式さえ書いてあれば数十秒で終わります。

放電の全体像を数値で見る

記述の判定だけでなく、放電がどう進むかを一度整理しておくと、他の問題にも応用が効きます。

時刻\(v_C\)\(i\)(大きさ)残っているエネルギー
t=0EE/R\(\frac12CE^2\)(100 %)
t=τ0.368 E0.368 E/R13.5 %(\(0.368^2\))
t=2τ0.135 E0.135 E/R1.8 %
t=5τ0.0067 E0.0067 E/Rほぼ0

電圧と電流は同じ割合で減ります(どちらも同じ指数関数)。一方エネルギーは電圧の2乗なので、はるかに速く減ります。t=τの時点で電圧はまだ36.8 %残っていますが、エネルギーは13.5 %しか残っていません

この違いは実務でも意識されます。高電圧機器の放電では「電圧が安全域まで下がったか」を見る——エネルギーが減っていても、電圧が残っていれば感電の危険があるからです。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 「誤りを選べ」の問題は、先に基本式を余白に書く。読みながら照合する
② 記述に出てくる文字(RかCか)が、その式に入っているかだけを見る
τ=RC にはCが入る/\(i(0)=E/R\) にはCが入らない——本問の核心
0.368=\(e^{-1}\)、0.632=\(1-e^{-1}\) は暗記事項
⑤ 符号の記述は「図の基準向きに対して」と読む。負でも異常ではない

💡 覚え方
「Cは長さを決め、Rは強さを決める」。容量が大きいと長く流れる(τ=RCが大きい)が、流れ始める強さはE/Rで抵抗だけが決めます。Rは両方に効く点にも注意してください。

⚠️ よくある間違い
「Cが大きいほど初期電流も大きい」という直感が最大の落とし穴です。電荷はたくさん蓄えていますが、出口の広さ(抵抗)が同じなら流れ出す勢いは同じ。「大きなタンクでも、蛇口が同じなら最初の勢いは同じ」とイメージしてください。

この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています

本問は令和5年度下期 理論科目 A問題10同一の問題です。回路・条件・5つの記述の文言・並び順まですべて同一で、正答もどちらも(5)です。

電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に過渡現象の定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。

ただし「答えは(5)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。

あわせて解いておきたい記事:令和5年度下期 理論科目 A問題10

まとめ

(1)時定数τ=RC→Cに比例・正しい
(3)t=τ0.368E・正しい
(5)初期電流E/R→Cに無関係・誤り
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型のRC放電の問題:【理論】令和5年度下期A問題10

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