過渡現象10【電験3種 理論】定常状態で直流電源を流れる電流の式を求める!令和元年度 A問題7 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 令和元年度 A問題7 十分に時間が経った回路!電源電流を式で表す

今回は令和元年度 理論科目 A問題7を解説します。3つの抵抗R₁・R₂・R₃、コイルL、コンデンサCが接続された回路にV〔V〕の直流電源をつないだとき、定常状態で直流電源を流れる電流の大きさの式を求める問題です。

定常状態ではコンデンサは開放、コイルは短絡とみなせます。C+R₁の枝は開放(電流0)、L+R₂の枝はR₂だけ、R₃の枝はそのまま。よって電源はR₂とR₃の並列を見ます。

目次

令和元年度 理論科目 A問題7:問題文と選択肢

3本の枝が並列に並んでいますが、直流定常状態で電流が流れるのは2本だけです。どの枝が生きているかを判定できれば、あとは並列合成するだけ。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 令和元年度 A問題7 問題文
令和元年度 理論科目 A問題7 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題7

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和元年度 A問題7

 図のように、三つの抵抗R₁〔Ω〕、R₂〔Ω〕、R₃〔Ω〕とインダクタンスL〔H〕のコイルと静電容量C〔F〕のコンデンサが接続されている回路にV〔V〕の直流電源が接続されている。定常状態において直流電源を流れる電流の大きさを表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)V/R3 (2)V÷{1/(1/R1+1/R2)} (3)V÷{1/(1/R1+1/R3)} (4)V÷{1/(1/R2+1/R3)} (5)V÷{1/(1/R1+1/R2+1/R3)}

図 C+R₁・L+R₂・R₃の並列回路とV電源(問題図)
図 C+R₁・L+R₂・R₃の並列回路とV電源(問題図)

出題のポイント:定常状態では「生きている枝」だけを数える

3本の枝が並列に並んでいますが、直流定常状態で電流が流れるのは2本だけです。どの枝が生きていて、どの枝が死んでいるか——それを判定できれば答えが出ます。

中身定常状態での扱い電流は流れるか
C+R₁コンデンサと抵抗の直列Cが開放流れない(0 A)
L+R₂コイルと抵抗の直列Lが短絡 → R₂だけが残るV/R₂
R₃抵抗のみそのままV/R₃

R₁は答えに一切登場しません。Cが開放になった時点でその枝は切れているので、直列につながっているR₁も無関係になります。「回路図に描いてある抵抗は全部使うはず」という思い込みが、この問題の最大の敵です。

逆にR₂は残ります。Lが短絡になっても、それは「コイル部分が導線になる」というだけで、直列のR₂は生きたままだからです。Cは枝ごと殺し、Lは自分だけ消える——この違いが決定的です。

CとR1の直列枝、LとR2の直列枝、R3枝が並列につながる回路を、直流定常状態でC開放・L短絡へ置き換える解説
十分時間後の直流ではC枝は開放、Lは導線となり、電源から見える負荷はR2とR3の並列です。

なぜCは開放でLは短絡なのか

この置き換えは暗記事項ではなく、2つの素子の定義式から必然的に出てきます

$$i_C=C\frac{dv}{dt}=0$$
❶ 定常状態のコンデンサ
電圧が一定なら \(dv/dt=0\) → 電流が流れない=開放
$$v_L=L\frac{di}{dt}=0$$
❷ 定常状態のコイル
電流が一定なら \(di/dt=0\) → 電圧が0=短絡

「定常状態」とはすべての量が変化しなくなった状態のこと。変化がゼロなら微分もゼロ——それだけのことです。理由まで押さえておけば、CとLを取り違えることはありません。

なおこれは「電流と電圧を求めるための置き換え」であって、素子が消えたわけではありません。定常状態でもコンデンサは電圧を、コイルは電流を保持し、エネルギーを蓄えています(平成29年度A問題6がまさにそのテーマです)。

コイル Lコンデンサ C
急変できない量電流電圧
スイッチ投入直後(初期電流・初期電荷が0なら)開放と同じ短絡と同じ
直流定常状態短絡開放
時定数\(\tau=L/R\)\(\tau=RC\)
蓄積エネルギー\(\frac12LI^2\)(電流で決まる)\(\frac12CV^2\)(電圧で決まる)

問題の解説:合成抵抗を求めて電源電流を出す

使う公式:直流定常状態の置き換えと並列合成
$$\text{定常時:}\;C\to\text{開放},\quad L\to\text{短絡}\qquad R_{\text{並列}}=\frac{1}{\dfrac{1}{R_a}+\dfrac{1}{R_b}}$$

Cは枝ごと切断、Lは自分だけ導線化。直列相手の抵抗が残るかどうかが変わります。

STEP1 3本の枝を1本ずつ判定する

$$I_{C+R_1}=0\;[\mathrm{A}]$$
❶ C+R₁枝
Cが開放なので枝ごと死ぬ。R₁も無関係に
$$I_{L+R_2}=\frac{V}{R_2}$$
❷ L+R₂枝
Lが短絡でR₂だけ残る
$$I_{R_3}=\frac{V}{R_3}$$
❸ R₃枝
元から抵抗だけ

STEP2 電源から見た負荷を求める

生きている2本は電源に対して並列なので、

$$R_{\text{eq}}=R_2\parallel R_3=\frac{1}{\dfrac{1}{R_2}+\dfrac{1}{R_3}}$$
❹ 並列合成
R₁は入らない

STEP3 電源電流を2通りで求める

同じ答えに2つの道すじでたどり着けます。どちらでも構いませんが、両方できると検算になります。

$$I=\frac{V}{R_{\text{eq}}}=V\left(\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}\right)$$
❺ 合成抵抗で割る
オームの法則
$$I=I_{L+R_2}+I_{R_3}=\frac{V}{R_2}+\frac{V}{R_3}$$
❻ 枝電流を足す(KCL)
❺と同じ式
R2とR3の並列回路について、枝電流の和と合成抵抗の2通りから電源電流を導く解説
電源電流はKCLでV/R2+V/R3となり、合成抵抗R2並列R3で割る計算とも一致します。
答え\(I=V\div\left\{\dfrac{1}{\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}}\right\}=V\left(\dfrac{1}{R_2}+\dfrac{1}{R_3}\right)\) → 選択肢(4)
上枝CとR1、中枝LとR2、下枝R3を順に判定し、各枝電流と電源電流を求める解説
C+R1枝は0A、L+R2枝はV/R2、R3枝はV/R3なので、電源電流はV/R2+V/R3です。
R2とR3の並列合成抵抗を導き、電源電流を公式選択肢と同じ逆数の和の逆数で表す解説
I=V÷{1/(1/R2+1/R3)}=V(1/R2+1/R3)であり、単位はアンペアです。

誤答の正体:「Cの扱い×Lの扱い」の全パターンが並んでいる

この問題の選択肢は、驚くほど体系的に作られています。CとLをそれぞれ「開放」「短絡」のどちらと扱うかで場合分けすると、5つの選択肢がすべて埋まります

V=100 V、R₁=10 Ω、R₂=20 Ω、R₃=50 Ω として実際に計算し、確認しました。

Cの扱いLの扱い生き残る枝電源から見た負荷I [A]選択肢
開放(正)短絡(正)R₂, R₃R₂∥R₃=14.29 Ω7.00(4) ○
開放(正)開放(誤)R₃のみR₃=50 Ω2.00(1) ×
短絡(誤)開放(誤)R₁, R₃R₁∥R₃=8.33 Ω12.00(3) ×
短絡(誤)短絡(正)R₁, R₂, R₃R₁∥R₂∥R₃=5.88 Ω17.00(5) ×
短絡(誤)短絡(誤)+R₃見落としR₁, R₂R₁∥R₂=6.67 Ω15.00(2) ×

(3)が最も危険です。CとLの役割を完全に入れ替えた——つまり「Cは短絡、Lは開放」と覚え違えた場合の答え。数値としてはもっともらしく、計算ミスではないので気づきにくいのが厄介です。

(5)は「全部の抵抗を使う」パターン。3つの抵抗が与えられているのだから3つとも使うだろう、という発想で選んでしまいます。しかし使わない値があるのが定常状態の問題の特徴です。

(1)は「LもCも開放」と考えた場合。「LとCは特殊な素子だから、どちらも電流を通さないのだろう」という漠然としたイメージが原因です。2つは正反対の振る舞いをすると、対にして覚えてください。

答えの形を見分けるコツ:選択肢が分数だらけのとき

この問題の選択肢は \(V\div\{1/(1/R_a+1/R_b)\}\) という入れ子の分数で書かれていて、それだけで読みづらくなっています。先に整理してから見比べるのが得策です。

$$V\div\left\{\frac{1}{\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}}\right\}=V\times\left(\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}\right)$$
❼ 逆数で割る=逆数を掛ける
一気にすっきりする
$$=\frac{V}{R_2}+\frac{V}{R_3}$$
❽ 分配する
枝電流の和の形になった

整理すると「どの抵抗が登場するか」だけを見ればよいと分かります。R₁が入っている選択肢は全部×、R₂とR₃だけの選択肢が○。式の形ではなく、登場する文字で選ぶ——これが最速の解き方です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 「定常状態」と読んだら即座にC=開放、L=短絡と回路図に書き込む
Cは枝ごと切る、Lは自分だけ消す。直列相手の抵抗が残るかが違う
③ 生きた枝の電流を足す(KCL)ほうが、合成抵抗を計算するより速いことが多い
④ 選択肢が分数の入れ子なら\(V(1/R_a+1/R_b)\) の形に直してから見比べる
⑤ 最後に「登場する抵抗の文字」だけを確認する。R₁が入っていたら誤り

💡 覚え方
「Cは open、Lは short」——定常状態では頭文字が対応します(C↔オープン、L↔ショートではないので注意:Cが開放、Lが短絡)。理由は「変化がゼロ→微分がゼロ」。Cは電流0=開放、Lは電圧0=短絡と、式から毎回導けるようにしておくのが最も確実です。

⚠️ よくある間違い
最頻出はCとLの扱いを逆にするミス(選択肢(3))です。次にR₁を数えてしまうミス(選択肢(2)(3)(5))。Cが開放になれば、その枝に直列のR₁も回路から切り離されます。「Lが短絡=R₂も消える」と考えるのも誤りで、消えるのはコイル部分だけです。

まとめ

C+R₁枝C開放→電流0
L+R₂枝L短絡→R₂
合成R₂∥R₃
答えV÷{1/(1/R₂+1/R₃)} …(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・定常状態のエネルギーの関連問題:【理論】令和6年度下期A問題5

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