過渡現象8【電験3種 理論】RL回路のスイッチ投入後のコイル電流の波形を求める!令和3年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 令和3年度 A問題10 RL回路の立ち上がり!時定数で決まる波形はどれ?

今回は令和3年度 理論科目 A問題10を解説します。RL回路でスイッチを閉じたときのコイル電流iLの波形について、R=1Ωのとき図2の波形(点線)が得られたとき、R=2Ωの波形(実線)を選ぶ問題です。

RL回路の過渡現象は、時定数τ=L/Rで最終値V/Rに近づく指数関数です。Rを2倍にすると最終値は半分、時定数も半分(速く立ち上がる)になります。

目次

令和3年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

抵抗を2倍にすると、波形は「低く、速く」なります。最終値も時定数も半分——しかし出発の傾きだけは変わりません。この3点で波形が一意に決まります。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 令和3年度 A問題10 問題文
令和3年度 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和3年度 A問題10

 開放電圧がV〔V〕で出力抵抗が十分に低い直流電圧源と、インダクタンスがL〔H〕のコイルが与えられ、抵抗R〔Ω〕が図1のようにスイッチSを介して接続されている。時刻t=0でスイッチSを閉じ、コイルの電流iL〔A〕の時間に対する変化を計測して、波形として表す。R=1Ωとしたところ、波形が図2であったとする。R=2Ωであればどのような波形となるか、波形の変化を最も適切に表すものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、選択肢の図中の点線は図2と同じ波形を表し、実線はR=2Ωのときの波形を表している。

上の図(1)〜(5)から、R=2Ωのときの実線の波形として最も適切なものを一つ選べ。

図1 V・R・LとスイッチSのRL回路(問題図)
図1 V・R・LとスイッチSのRL回路(問題図)

出題のポイント:Rを変えると波形の「高さ」と「速さ」が同時に変わる

この問題は計算ではなく波形の読み取りが問われます。抵抗Rを1 Ωから2 Ωへ増やしたとき、波形の何がどう変わるか——変わる要素は2つ同時です。

使う公式:RL直列回路の投入応答
$$i_L(t)=\frac{V}{R}\left(1-e^{-t/\tau}\right),\qquad \tau=\frac{L}{R}$$

最終値 \(V/R\) にも時定数 \(L/R\) にも、どちらにもRが入っているのがポイントです。

要素R=1 ΩR=2 Ω変化
最終値(高さ)\(V/R\)3.0 A1.5 A半分
時定数(速さ)\(L/R\)1.0 s0.5 s半分=速く立ち上がる
初期の傾き\(V/L\)3.0 A/s3.0 A/s変わらない

「低く、速く」——これが答えの形です。到達点は下がるのに、そこへ行く速さは上がる。一見矛盾しそうですが、時定数が半分になったぶん、低い目標へ素早く落ち着くと考えれば自然です。

直流電圧源V、スイッチS、抵抗R、コイルLのRL直列回路で、Rを1Ωから2Ωへ変えたときの定常値、時定数、初期傾きを比較する解説
Rを2倍にすると定常値V/Rと時定数L/Rはともに半分ですが、投入直後の傾きV/Lは変わりません。

見落とされがちな第3の事実:出発の傾きは変わらない

最終値と時定数が両方とも半分になる——ここまでは多くの解説に書かれています。しかしもう一つ、波形を選ぶうえで決定的な性質があります。

$$i_L(t)=\frac{V}{R}\left(1-e^{-t/\tau}\right)$$
❶ 電流の式
$$\frac{di_L}{dt}=\frac{V}{R}\cdot\frac{1}{\tau}e^{-t/\tau}=\frac{V}{R}\cdot\frac{R}{L}e^{-t/\tau}$$
❷ 微分する
\(1/\tau=R/L\) を代入
$$\left.\frac{di_L}{dt}\right|_{t=0}=\frac{V}{L}$$
❸ t=0を代入
Rが約分で消えた

投入直後の立ち上がりの傾きは \(V/L\) で、Rによらないのです。理由も明快で、t=0では電流が0なので抵抗の電圧降下も0——電源電圧の全部がコイルにかかるため、\(V=L\,di/dt\) から傾きが決まります。抵抗の出番がありません。

したがって正しい波形は、点線とまったく同じ角度で出発し、途中で分かれて低い値へ早く水平になる形です。出発点の角度が違う図は、それだけで誤りと判定できます。

問題の解説:与えられた波形からVとLを読み取る

STEP1 R=1 Ωの波形(点線)から回路定数を求める

グラフは条件を教えてくれる情報源です。2つの値を読み取ります。

$$\frac{V}{R}=3\;[\mathrm{A}],\;R=1\;\Rightarrow\;V=3\;[\mathrm{V}]$$
❶ 最終値から電源電圧
グラフが水平になる高さ
$$\tau=\frac{L}{R}=1\;[\mathrm{s}],\;R=1\;\Rightarrow\;L=1\;[\mathrm{H}]$$
❷ 時定数からインダクタンス
最終値の63.2 %=1.90 Aに達する時刻

時定数の読み取り方:グラフから最終値の63.2 %に達する時刻を探すのが正攻法です。もう一つ、原点での接線を引いて最終値と交わる時刻も τ になります(接線の傾きが \(V/L\) だから)。

STEP2 R=2 Ωの最終値と時定数を計算する

$$\frac{V}{R}=\frac{3}{2}=1.5\;[\mathrm{A}]$$
❸ 新しい最終値
半分に下がる
$$\tau=\frac{L}{R}=\frac{1}{2}=0.5\;[\mathrm{s}]$$
❹ 新しい時定数
半分=速くなる
$$i_L(t)=1.5\left(1-e^{-2t}\right)\;[\mathrm{A}]$$
❺ 波形の式
指数の肩が \(-t/0.5=-2t\)

STEP3 2つの波形を数値で比べる

時刻 t [s]R=1 Ω(点線)R=2 Ω(実線)様子
000同じ点から出発
0.100.285 A0.272 Aほぼ重なっている(同じ傾き)
0.250.664 A0.590 A実線が離れ始める
0.501.180 A0.948 A実線が下を通る
1.001.896 A1.297 A実線は1.5 Aに近づきつつある
2.002.594 A1.473 A実線はほぼ水平(1.5 A)/点線はまだ上昇中

t=0.1 sではほぼ重なっているのが数値でも確認できます。出発の傾きが同じだからです。分かれていくのは時間が経ってから——グラフの左端では見分けがつかないことを知っておくと、図の読み取りで迷いません。

キルヒホッフの第2法則からRL直列回路の微分方程式と指数関数の時間応答を導き、時定数の63パーセント点を説明
V=RiL+LdiL/dtから、iL(t)=(V/R)(1-e^(-t/τ))、τ=L/Rが得られます。
答え最終値1.5 A(点線の半分)、時定数0.5 s(点線より速い)、出発の傾きは点線と同じ → 選択肢(4)
R=1Ωの基準波形の定常値3Aと63パーセント点1.9Aから、電源電圧3V、時定数1s、インダクタンス1Hを読み取る解説
基準の点線波形からV=3V、L=1Hを求め、R=2Ωの応答計算へつなげます。
R=2ΩのRL直列回路について、定常値1.5A、時定数0.5s、時間応答式と代表時刻の電流値を計算する解説
R=2ΩではiL(t)=1.5(1-e^(-2t))Aとなり、同じ初期傾き3A/sで出発して1.5Aへ早く近づきます。

誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか

選択肢は5つの波形の図です。どの性質を間違えるとどんな図になるかを整理すると、消去が速くなります。

描かれている波形何を間違えたか見破り方
最終値1.5 A・点線と同じ速さ最終値だけ変えて時定数を変え忘れた\(\tau=L/R\) にもRが入っている
最終値3 Aのまま・速さだけ変化時定数だけ変えて最終値を変え忘れた\(V/R\) にもRが入っている
最終値1.5 A・点線より遅い\(\tau=LR\) と誤解してRを増やすと遅くなると考えたτはRで割る
最終値6 A(2倍)「Rを2倍にすれば電流も2倍」と誤解オームの法則は反比例
出発の傾きが違う初期傾きがRによると誤解\(di/dt\vert_0=V/L\) はRによらない

最も多いのは「片方だけ変えた」誤りです。最終値と時定数の両方にRが入っていることを見落とすと、必ずどちらかを変え忘れます。

3つ目の「遅くなる」波形も要注意です。「抵抗が大きい=電流が流れにくい=ゆっくり」という直感は、RC回路(\(\tau=RC\))では正しいのですが、RL回路では逆(\(\tau=L/R\))。RCとRLで時定数の形が違うことが、この誤りの根っこにあります。

回路時定数Rを大きくすると
RC回路\(\tau=RC\)遅くなる(τが増える)
RL回路\(\tau=L/R\)速くなる(τが減る)

なぜRL回路は抵抗が大きいほど速いのか

式の上では \(\tau=L/R\) だから——で終わりですが、物理的なイメージを持っておくと忘れません。

コイルは電流の変化に逆らう素子です。抵抗が大きいと、そもそも流せる最終電流 \(V/R\) が小さい。目指す高さが低いのだから、そこへ着くのは早い——そう考えると自然です。

一方で出発の勢い(傾き \(V/L\))は同じ。同じ速さで走り出して、ゴールが手前にあるほうが先に着く——これがRL回路で「抵抗が大きいほど速い」の中身です。

実際、最終値に達するまでの「実質的な時間」は τ で測ります。R=1 Ωなら5τ=5秒、R=2 Ωなら5τ=2.5秒。低い目標に半分の時間で到達する、という結論になります。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① RL回路でRを変える問題は、最終値 \(V/R\) と時定数 \(L/R\) の両方が変わると即断
Rを2倍 → 最終値も時定数も半分(どちらも「低く・速く」)
初期の傾き \(V/L\) はRによらない。出発角度が違う図は即座に消せる
④ グラフから定数を読むときは最終値→V、63.2 %到達時刻→τの順
RCは \(\tau=RC\)(Rで遅く)、RLは \(\tau=L/R\)(Rで速く)——逆向きなので必ず区別

💡 覚え方
「RLでRを増やすと、低く・速く」。最終値も時定数も \(1/R\) に比例するので2つセットで半分。そして出発の傾きだけは不変(\(V/L\))——この3点セットで波形が一意に決まります。

⚠️ よくある間違い
最頻出は最終値と時定数の片方だけを変える誤りです。両方にRが入っていることを確認してください。次に多いのが「抵抗が大きいと遅くなる」という思い込み。それはRC回路の話で、RL回路では \(\tau=L/R\) なので速くなります

この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています

本問は令和7年度下期 理論科目 A問題10同一の問題です。回路・条件・グラフ・選択肢の並び順まですべて同一で、正答もどちらも(4)です。

電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に過渡現象の定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。

ただし「答えは(4)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。

あわせて解いておきたい記事:令和7年度下期 理論科目 A問題10

まとめ

R=1Ω最終3A・τ=1s
R=2Ω最終1.5A・τ=0.5s
波形低く速い実線
答え(4)

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