過渡現象6【電験3種 理論】RC放電回路の性質に関する記述の正誤を判定する!令和5年度下期 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 令和5年度下期 A問題10 コンデンサが放電するとき!記述の正誤を判定

今回は令和5年度下期 理論科目 A問題10を解説します。E・S・R・CのRC回路で、コンデンサを充電後にスイッチを2側(放電側)へ切り換えたとき、放電に関する記述の誤りを選ぶ問題です。

RC放電では時定数τ=RCでvC=E·e−t/τ、i=(E/R)e−t/τ。時定数はRとCの積、初期電流はE/R(Cに無関係)である点がポイントです。

目次

令和5年度下期 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。急所は「時定数にはCが入るが、初期電流にはCが入らない」——この区別だけで決着します。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 令和5年度下期 A問題10 問題文
令和5年度下期 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和5年度下期 A問題10

 図のように、電圧E〔V〕の直流電源、スイッチS、R〔Ω〕の抵抗及び静電容量C〔F〕のコンデンサからなる回路がある。この回路において、スイッチSを1側に接続してコンデンサを十分に充電した後、時刻t=0〔s〕でスイッチSを1側から2側に切り換えた。2側に切り換えた以降の記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、自然対数の底は、2.718とする。

(1)回路の時定数は、Cの値〔F〕に比例する。

(2)コンデンサの端子電圧vC〔V〕は、Rの値〔Ω〕が大きいほど緩やかに減少する。

(3)時刻t=0から回路の時定数だけ時間が経過すると、vC〔V〕は電源電圧E〔V〕の0.368倍に減少する。

(4)抵抗の端子電圧vR〔V〕の値は負である。

(5)時刻t=0における回路の電流i〔A〕は、Cの値〔F〕に関係する。

図 E電源・S(1/2)・R・CのRC回路(問題図)
図 E電源・S(1/2)・R・CのRC回路(問題図)

出題のポイント:τはCに比例するが、初期電流はCに無関係

5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。すべての記述がRC放電の基本式に対応しているので、式さえ書ければ機械的に判定できます。

RC放電回路の3つの基本式
$$v_C(t)=E\,e^{-t/\tau},\qquad i(t)=\frac{E}{R}e^{-t/\tau},\qquad \tau=RC$$

時定数にはCが入るが、初期電流 \(E/R\) にはCが入らない——本問の急所です。

Rを変えるとCを変えると
時定数 τ\(RC\)比例して変わる比例して変わる
初期電圧 \(v_C(0)\)\(E\)変わらない変わらない
初期電流 \(i(0)\)\(E/R\)反比例して変わる変わらない

Cは「どれだけ長く流れるか」を決め、「どれだけ強く流れ始めるか」は決めません。容量が大きいほど蓄えた電荷が多いので長く放電しますが、流れ出す勢いは抵抗だけで決まります。

公式のE・切換スイッチS・抵抗R・コンデンサC回路について、1側での充電と2側での放電、実電流と基準電流の逆向きを示す解説
放電直後の電流の大きさはE/R、公式の基準方向ではi(0+)=−E/Rです。Cは初期値ではなく、その後の減衰速度τ=RCに影響します。

なぜ初期電流にCが入らないのか

放電が始まる瞬間、回路にあるのは「電圧Eに充電されたコンデンサ」と「抵抗R」だけです。

$$v_C(0^+)=E\;[\mathrm{V}]$$
❶ 電圧は急変できない
充電時の電圧をそのまま引き継ぐ
$$i(0^+)=\frac{v_C(0^+)}{R}=\frac{E}{R}$$
❷ オームの法則
Cはどこにも現れない

この瞬間、コンデンサは「電圧Eの電池」と同じ振る舞いをします。電池の内部抵抗が0なら、流れる電流は外部抵抗Rだけで決まる——それと同じです。容量が大きかろうと小さかろうと、電圧がEなら初期電流はE/Rです。

違いが出るのはその後です。容量が大きいほど電荷の蓄えが多いので電圧の下がり方がゆっくりになり、電流も長く流れ続けます。「出発の勢いは同じ、続く時間が違う」——これがCの役割です。

問題の解説:5つの記述を1つずつ検証する

実際に数値(E=100 V、R=1 kΩ、C=10 μF)を入れ、RやCを変えたときの変化を確かめました。

条件τ初期電流 \(i(0)\)
基準(R=1 kΩ、C=10 μF)0.01 s0.100 A
Cを10倍(100 μF)0.1 s(10倍)0.100 A(変わらない)
Rを10倍(10 kΩ)0.1 s(10倍)0.010 A(1/10)

記述(1)〜(3):基本式そのまま

記述内容根拠判定
(1)時定数はCに比例する\(\tau=RC\) はCの1次式正しい
(2)Rが大きいほど \(v_C\) は緩やかに減少\(\tau=RC\) がRに比例 → 減衰が遅くなる正しい
(3)t=τ で \(v_C\) はEの0.368倍\(e^{-1}=0.3679\)正しい

(3)の0.368は「1時定数で36.8 %に減る」という指数関数の定義そのものです。問題文が「自然対数の底は2.718とする」と断っているのは、\(1/2.718=0.368\) を計算させるためです。

記述(4):符号の話

これが唯一「式」ではなく「向き」の記述です。充電時に定めた電流の基準向きを、放電時もそのまま使うのがルール。

$$i_{\text{充電}}>0\;\Rightarrow\;i_{\text{放電}}<0$$
❸ 向きが逆になる
電流が逆流するため
$$v_R=iR<0$$
❹ 抵抗電圧も負
Rは正なので符号は電流と同じ

「電圧が負」に違和感があるかもしれませんが、これは「基準向きに対して逆」という意味であって異常ではありません。基準向きを放電側に取り直せば正になります——記述(4)は「図に描かれた基準向きのまま」の話なので正しい記述です。

記述(5):ここが誤り

$$i(0)=\frac{E}{R}$$
❺ 初期電流の式
E と R だけ。C は入らない

記述(5)は「t=0における電流iはCの値に関係する」と述べていますが、上の式のとおりCは含まれません。よってこれが誤りです。

オームの法則とq=CvからRC放電の微分方程式を立て、vC・基準電流i・抵抗電圧vRの指数関数を導く解説
vC=Ee⁻ᵗ⁄ᴿᶜ、i=−(E/R)e⁻ᵗ⁄ᴿᶜ、vR=−Ee⁻ᵗ⁄ᴿᶜです。負号は公式矢印と実際の放電方向の関係を表します。
答え誤っているのは選択肢(5)(初期電流 \(i(0)=E/R\) はCに無関係)
RC放電の時定数、RとCによる減衰速度、t=τで0.368Eとなることを式と比較グラフで確認する解説
τ=RCなのでCに比例し、Rが大きいほど緩やかに減衰します。t=τではvC=E/e≒0.368Eです。
公式の抵抗電圧が負になる理由と、切換え直後の電流の大きさE/RがCに関係しないことを回路・式・波形で示す解説
vRが負なのは公式の矢印と実際の電位差によります。初期電流の大きさE/RにはCが現れず、Cは時定数RCだけを変えます。

誤りを選ぶ問題の解き方

「誤っているものを選べ」という設問は、正しいものを選ぶ問題より時間がかかります。4つが正しいことを確認しなければならないからです。効率よく進めるコツがあります。

コツ内容
① 先に式を書く\(v_C=Ee^{-t/\tau}\)、\(i=(E/R)e^{-t/\tau}\)、\(\tau=RC\) を余白に書いてから読み始める
② 記述に出てくる文字を見る「Cに関係する」なら、その式にCが入っているかだけを確認
③ 怪しいものに印確信が持てたら即決。全部読まなくてよい
④ 数値を入れる迷ったら具体的な値でCを2倍にして、変化するか見る

本問では②だけで答えが出ます。記述(1)は「τとC」→ \(\tau=RC\) にCがある → 正しい。記述(5)は「\(i(0)\) とC」→ \(E/R\) にCがない → 誤り。式さえ書いてあれば数十秒で終わります。

放電の全体像を数値で見る

時刻\(v_C\)\(i\)(大きさ)残っているエネルギー
t=0EE/R\(\frac12CE^2\)(100 %)
t=τ0.368 E0.368 E/R13.5 %(\(0.368^2\))
t=2τ0.135 E0.135 E/R1.8 %
t=5τ0.0067 E0.0067 E/Rほぼ0

電圧と電流は同じ割合で減ります(どちらも同じ指数関数)。一方エネルギーは電圧の2乗なので、はるかに速く減ります。t=τの時点で電圧はまだ36.8 %残っていますが、エネルギーは13.5 %しか残っていません

この違いは実務でも意識されます。高電圧機器の放電では「電圧が安全域まで下がったか」を見ます——エネルギーが減っていても、電圧が残っていれば感電の危険があるからです。

この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています

本問は平成28年度 理論科目 A問題10同一の問題です。回路・条件・5つの記述の文言・並び順まですべて同一で、正答もどちらも(5)です。

電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に過渡現象の定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。

ただし「答えは(5)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。

あわせて解いておきたい記事:平成28年度 理論科目 A問題10

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 「誤りを選べ」の問題は、先に基本式を余白に書く。読みながら照合する
② 記述に出てくる文字(RかCか)が、その式に入っているかだけを見る
τ=RC にはCが入る/\(i(0)=E/R\) にはCが入らない——本問の核心
0.368=\(e^{-1}\)、0.632=\(1-e^{-1}\) は暗記事項
⑤ 符号の記述は「図の基準向きに対して」と読む。負でも異常ではない

💡 覚え方
「Cは長さを決め、Rは強さを決める」。容量が大きいと長く流れる(τ=RCが大きい)が、流れ始める強さはE/Rで抵抗だけが決めます。Rは両方に効く点にも注意してください。

⚠️ よくある間違い
「Cが大きいほど初期電流も大きい」という直感が最大の落とし穴です。電荷はたくさん蓄えていますが、出口の広さ(抵抗)が同じなら流れ出す勢いは同じ。「大きなタンクでも、蛇口が同じなら最初の勢いは同じ」とイメージしてください。

まとめ

(1)時定数τ=RC→Cに比例・正しい
(3)t=τ0.368E・正しい
(5)初期電流E/R→Cに無関係・誤り
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型のRC放電の問題:【理論】平成28年度A問題10

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