今回は令和7年度下期 理論科目 A問題10を解説します。RL回路でスイッチを閉じたときのコイル電流iLの波形について、R=1Ωのとき図2の波形(点線)が得られたとき、R=2Ωの波形(実線)を選ぶ問題です。
RL回路の過渡現象は、時定数τ=L/Rで最終値V/Rに近づく指数関数です。Rを2倍にすると最終値は半分、時定数も半分(速く立ち上がる)になります。
令和7年度下期 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
抵抗を2倍にすると、波形は「低く、速く」なります。最終値も時定数も半分——しかし出発の傾きだけは変わりません。この3点で波形が一意に決まります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和7年度下期 A問題10
開放電圧がV〔V〕で出力抵抗が十分に低い直流電圧源と、インダクタンスがL〔H〕のコイルが与えられ、抵抗R〔Ω〕が図1のようにスイッチSを介して接続されている。時刻t=0でスイッチSを閉じ、コイルの電流iL〔A〕の時間に対する変化を計測して、波形として表す。R=1Ωとしたところ、波形が図2であったとする。R=2Ωであればどのような波形となるか、波形の変化を最も適切に表すものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、選択肢の図中の点線は図2と同じ波形を表し、実線はR=2Ωのときの波形を表している。
上の図(1)〜(5)から、R=2Ωのときの実線の波形として最も適切なものを一つ選べ。

出題のポイント:Rを変えると波形の「高さ」と「速さ」が同時に変わる
抵抗Rを1 Ωから2 Ωへ増やしたとき、波形の何がどう変わるか——変わる要素は2つ同時です。そして変わらない要素も1つあります。
| 要素 | 式 | R=1 Ω | R=2 Ω | 変化 |
| 最終値(高さ) | \(V/R\) | 3.0 A | 1.5 A | 半分 |
| 時定数(速さ) | \(L/R\) | 1.0 s | 0.5 s | 半分=速く立ち上がる |
| 初期の傾き | \(V/L\) | 3.0 A/s | 3.0 A/s | 変わらない |
「低く、速く」——これが答えの形です。到達点は下がるのに、そこへ行く速さは上がる。時定数が半分になったぶん、低い目標へ素早く落ち着くと考えれば自然です。

見落とされがちな第3の事実:出発の傾きは変わらない
最終値と時定数が両方とも半分になる——ここまでは多くの解説にあります。しかし波形を選ぶうえで決定的なもう一つの性質があります。
\(1/\tau=R/L\) を代入
Rが約分で消えた
投入直後の立ち上がりの傾きは \(V/L\) で、Rによらないのです。理由も明快で、t=0では電流が0なので抵抗の電圧降下も0——電源電圧の全部がコイルにかかるため、\(V=L\,di/dt\) から傾きが決まります。抵抗の出番がありません。
したがって正しい波形は、点線とまったく同じ角度で出発し、途中で分かれて低い値へ早く水平になる形です。出発点の角度が違う図は、それだけで誤りと判定できます。
問題の解説:グラフから回路定数を読み取る
STEP1 R=1 Ωの波形(点線)からVとLを求める
グラフは条件を教えてくれる情報源です。2つの値を読み取ります。
グラフが水平になる高さ
最終値の63.2 %=1.90 Aに達する時刻
時定数の読み取り方は2通りあります。①最終値の63.2 %に達する時刻を探す。②原点で接線を引き、最終値の水平線と交わる時刻を読む(接線の傾きが \(V/L\) だから、必ずτで交わります)。
STEP2 R=2 Ωの最終値と時定数
半分に下がる
半分=速くなる
指数の肩が \(-t/0.5=-2t\)
STEP3 2つの波形を数値で比べる
| 時刻 t [s] | R=1 Ω(点線) | R=2 Ω(実線) | 様子 |
| 0 | 0 | 0 | 同じ点から出発 |
| 0.10 | 0.286 A | 0.272 A | ほぼ重なっている(同じ傾き) |
| 0.25 | 0.664 A | 0.590 A | 実線が離れ始める |
| 0.50 | 1.180 A | 0.948 A | 実線が下を通る |
| 1.00 | 1.896 A | 1.297 A | 実線は1.5 Aに近づく |
| 2.00 | 2.594 A | 1.473 A | 実線はほぼ水平/点線はまだ上昇中 |
| 3.00 | 2.851 A | 1.496 A | 実線は完全に飽和 |
t=0.1 sではほぼ重なっているのが数値でも確認できます。出発の傾きが同じだからです。グラフの左端では見分けがつかないことを知っておくと、図の読み取りで迷いません。



誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか
| 描かれている波形 | 何を間違えたか | 見破り方 |
| 最終値1.5 A・点線と同じ速さ | 最終値だけ変えて時定数を変え忘れた | \(\tau=L/R\) にもRが入っている |
| 最終値3 Aのまま・速さだけ変化 | 時定数だけ変えて最終値を変え忘れた | \(V/R\) にもRが入っている |
| 最終値1.5 A・点線より遅い | \(\tau=LR\) と誤解 | τはRで割る |
| 最終値6 A(2倍) | 「Rを2倍にすれば電流も2倍」と誤解 | オームの法則は反比例 |
| 出発の傾きが違う | 初期傾きがRによると誤解 | \(di/dt\vert_0=V/L\) はRによらない |
最も多いのは「片方だけ変えた」誤りです。最終値と時定数の両方にRが入っていることを見落とすと、必ずどちらかを変え忘れます。
「遅くなる」波形も要注意です。「抵抗が大きい=電流が流れにくい=ゆっくり」という直感は、RC回路(\(\tau=RC\))では正しいのですが、RL回路では逆(\(\tau=L/R\))です。
| 回路 | 時定数 | Rを大きくすると |
| RC回路 | \(\tau=RC\) | 遅くなる(τが増える) |
| RL回路 | \(\tau=L/R\) | 速くなる(τが減る) |
なぜRL回路は抵抗が大きいほど速いのか——同じ勢い(傾き \(V/L\))で走り出して、ゴール(\(V/R\))が手前にあるから先に着く、と考えると腑に落ちます。
この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています
本問は令和3年度 理論科目 A問題10と同一の問題です。回路・条件・グラフ・選択肢の並び順まですべて同一で、正答もどちらも(4)です。
電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に過渡現象の定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。
ただし「答えは(4)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。
あわせて解いておきたい記事:令和3年度 理論科目 A問題10
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① RL回路でRを変える問題は、最終値 \(V/R\) と時定数 \(L/R\) の両方が変わると即断
② Rを2倍 → 最終値も時定数も半分(どちらも「低く・速く」)
③ 初期の傾き \(V/L\) はRによらない。出発角度が違う図は即座に消せる
④ グラフから定数を読むときは最終値→V、63.2 %到達時刻→τの順
⑤ RCは \(\tau=RC\)(Rで遅く)、RLは \(\tau=L/R\)(Rで速く)——逆向きなので必ず区別
💡 覚え方
「RLでRを増やすと、低く・速く」。最終値も時定数も \(1/R\) に比例するので2つセットで半分。そして出発の傾きだけは不変(\(V/L\))——この3点セットで波形が一意に決まります。
⚠️ よくある間違い
最頻出は最終値と時定数の片方だけを変える誤りです。両方にRが入っていることを確認してください。次に多いのが「抵抗が大きいと遅くなる」という思い込み。それはRC回路の話で、RL回路では \(\tau=L/R\) なので速くなります。
まとめ
| R=1Ω | 最終3A・τ=1s |
| R=2Ω最終値 | V/R=1.5A |
| R=2Ω時定数 | L/R=0.5s |
| 答え | 低く速い実線 …(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・RL回路の関連問題:【理論】令和7年度上期A問題10

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