今回は平成23年度 理論科目 B問題16を解説します。100Vに充電された静電容量C=300μFのコンデンサとL=30mHのコイルの回路で、スイッチを閉じて放電したときの振動電流について、(a)波形と(b)最大値・周期を求めるB問題です(回路の抵抗は無視)。
抵抗のないLC回路はエネルギーがCとLの間を往復し、正弦波状の振動電流が流れます。電流は0から始まり(コイルが急変を妨げる)、最大値Imax=V√(C/L)、周期T=2π√(LC)です。
平成23年度 理論科目 B問題16:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問16)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・波形選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成23年度 B問題16
図のように、電圧100〔V〕に充電された静電容量C=300〔μF〕のコンデンサ、インダクタンスL=30〔mH〕のコイル、開いた状態のスイッチSからなる回路がある。時刻t=0〔s〕でスイッチSを閉じてコンデンサに充電された電荷を放電すると、回路には振動電流i〔A〕(図の矢印の向きを正とする)が流れる。このとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、回路の抵抗は無視できるものとする。
(a)振動電流iの波形を示す図として、正しいものを上の図(1)〜(5)から一つ選べ。
(b)振動電流の最大値〔A〕及び周期〔ms〕の値の組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
最大値〔A〕 周期〔ms〕 (1) 1.0 18.8 (2) 1.0 188 (3) 10.0 1.88 (4) 10.0 18.8 (5) 10.0 188


出題のポイント:抵抗がないLC回路は永久に振動する
抵抗がないので、エネルギーが失われません。コンデンサの静電エネルギーとコイルの磁気エネルギーが往復し続ける——減衰しない正弦波の振動電流が流れます。
電流は0から始まります。コイルが電流の急変を妨げるからです。スイッチを閉じた瞬間、電流はまだ流れていません——この一点で波形が決まります。

(a) の解説:電流は0から始まる
コイルには「電流を急に変えられない」という性質があります。\(v=L\,di/dt\) なので、電流が瞬時に変わると無限大の電圧が必要になってしまうからです。
| 時刻 | コンデンサの電圧 | 電流 | エネルギーの所在 |
| \(t=0\) | 100 V(最大) | 0 | すべてコンデンサ |
| \(t=T/4\) | 0 | 最大(10 A) | すべてコイル |
| \(t=T/2\) | −100 V | 0 | すべてコンデンサ(逆極性) |
| \(t=3T/4\) | 0 | 最大(逆向き) | すべてコイル |
電流が \(\sin\) 型、電圧が \(\cos\) 型になります。1/4周期ずつずれながらエネルギーが往復——振り子の運動とまったく同じ構造です。
したがって波形は「0から始まって山を描く正弦波」です。最初から最大値になっている波形や、指数関数的に減衰する波形は誤りになります。

(b) の解説:エネルギー保存と共振周期
エネルギー保存から
\(C/L=300\times10^{-6}/30\times10^{-3}=0.01\)——その平方根が0.1です。\(LC=9\times10^{-6}\) で \(\sqrt{LC}=3\times10^{-3}\)——どちらもきれいに開けます。
別解として \(I_{\max}=V/(\omega L)\) でも求まります。\(\omega=1/\sqrt{LC}=333.3\;\mathrm{rad/s}\)、\(100/(333.3\times0.03)=10\;\mathrm{A}\) ✓——同じ答えです。

誤答の正体:\(\sqrt{}\) の向きと \(2\pi\)
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢との対応 |
| \(\sqrt{L/C}\) と逆にする | \(100\sqrt{100}\) | 1 000 A | 桁違い |
| \(2\pi\) を忘れる | \(\sqrt{LC}\) | 3.0 ms | (3)1.88 に近い誤り |
| 正しい計算 | \(V\sqrt{C/L}\)、\(2\pi\sqrt{LC}\) | 10 A、18.8 ms | (4) ◎ |
選択肢は最大値が「1.0」か「10.0」、周期が「1.88」「18.8」「188」という組合せです。桁を1つ間違えると必ず外れます。指数計算を慎重に進めてください。
⚠️ よくある間違い
\(\sqrt{C/L}\) と \(\sqrt{L/C}\) を取り違えると、答えが100倍ずれます。「電流を求めるのだから、\(C\) が大きいほど電流も大きい」——\(C\) が分子だと考えれば間違えません。
深掘り①:振り子との対応
LC振動は、力学の単振動とまったく同じ数式で表されます。対応を知っておくと、直感的に理解できます。
| 電気 | 力学(ばね振り子) | 対応 |
| 電荷 \(q\) | 変位 \(x\) | 位置に相当 |
| 電流 \(i=dq/dt\) | 速度 \(v=dx/dt\) | 変化の速さ |
| インダクタンス \(L\) | 質量 \(m\) | 慣性(変化を妨げる) |
| \(1/C\) | ばね定数 \(k\) | 復元力の強さ |
| \(\omega=1/\sqrt{LC}\) | \(\omega=\sqrt{k/m}\) | 同じ形 |
「コイルは電気の慣性」と考えると分かりやすいでしょう。質量が大きいほどゆっくり振動するように、\(L\) が大きいほど振動が遅くなります。
抵抗は摩擦に相当します。本問は「抵抗を無視」なので、摩擦のない理想的な振り子——永久に振動し続けます。実際の回路では抵抗があるので、振動は徐々に減衰します。
深掘り②:エネルギーの往復を数値で追う
すべてコンデンサに
すべてコイルに ◎一致
1.5 J が \(C\) と \(L\) の間を往復しています。合計は常に1.5 J で一定——エネルギー保存則です。
この関係から \(I_{\max}=V\sqrt{C/L}\) が導けます。\(\frac12CV^2=\frac12LI^2\) を \(I\) について解くだけ——公式を覚えていなくても、エネルギー保存から作れます。
💡 覚え方
「電流0から始まり、1/4周期で最大」——コイルが電流の急変を妨げるからです。逆にコンデンサの電圧は最大から始まって1/4周期でゼロ——常に1/4周期ずれています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 電流は0から始まる。コイルは電流の急変を妨げる。
❷ \(I_{\max}=V\sqrt{C/L}\)。\(C\) が分子。エネルギー保存から作れる。
❸ \(T=2\pi\sqrt{LC}\)。\(2\pi\) を忘れない。
❹ 指数計算を慎重に。選択肢は桁違いで並んでいる。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (a)波形 | 0から正に立上がる正弦波…(1) |
| Imax | V√(C/L)=100×0.1=10A |
| 周期T | 2π√(LC)≒18.8ms |
| 答え | (a)(1)・(b)(4) |
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