単相交流46【電験3種 理論】誘導性負荷に並列接続した抵抗の値を電流から求める!平成23年度 A問題8 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(単相交流) 平成23年度 A問題8 誘導性負荷に抵抗を並列!電流から抵抗値を逆算

今回は平成23年度 理論科目 A問題8を解説します。E=140Vの電源に力率0.6の誘導性負荷(電流37.5A)を接続し、さらに抵抗Rを並列接続すると電源電流が50Aになったときの、抵抗R〔Ω〕を求める問題です。

誘導性負荷の電流を有効分(同相)と無効分(遅れ)に分けます。並列の抵抗Rには電圧と同相の電流が加わるので、有効分だけが増えます。合成電流の大きさが50Aになる条件からRを求めます。

目次

平成23年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問8)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 単相交流 平成23年度 A問題8 問題文
平成23年度 理論科目 A問題8 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成23年度 A問題8

 図の交流回路において、電源電圧をĖ=140∠0°〔V〕とする。いま、この電源に力率0.6の誘導性負荷を接続したところ、電源から流れ出る電流の大きさは37.5〔A〕であった。次に、スイッチSを閉じ、この誘導性負荷と並列に抵抗R〔Ω〕を接続したところ、電源から流れ出る電流の大きさが50〔A〕となった。このとき、抵抗R〔Ω〕の大きさとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)3.9 (2)5.6 (3)8.0 (4)9.6 (5)11.2〔Ω〕

図 Ė電源・力率0.6の誘導性負荷・スイッチS・抵抗Rの回路(問題図)
図 Ė電源・力率0.6の誘導性負荷・スイッチS・抵抗Rの回路(問題図)

出題のポイント:電流を有効分と無効分に分ける

電流はベクトルなので、単純に引き算できません\(50-37.5=12.5\;\mathrm{A}\) としてしまうと誤りです。必ず有効分(電圧と同相)と無効分(90°遅れ)に分解してください。

抵抗 \(R\) を並列に入れると、電圧と同相の電流が加わりますつまり有効分だけが増え、無効分は変わりません——この性質が計算の鍵になります。

電流の分解
$$I_{\text{有効}}=I\cos\phi\qquad I_{\text{無効}}=I\sin\phi$$

力率0.6 なら \(\sin\phi=0.8\)(3:4:5 の三角形)。\(\cos^2+\sin^2=1\) から求まります。

平成23年度理論問8の出題ポイント。誘導性負荷電流を同相分22.5アンペアと遅れ成分30アンペアに分け、並列抵抗電流17.5アンペアから抵抗8オームと正解3を示す図
並列抵抗は同相成分だけを22.5 Aから40 Aへ増やします。

解説:分解して、増えるほうだけを追う

$$I_{\text{有効}}=37.5\times0.6=22.5\;\mathrm{A}$$
❶ 負荷の有効分
$$I_{\text{無効}}=37.5\times0.8=30\;\mathrm{A}$$
❷ 負荷の無効分
\(R\) を入れても変わらない
$$(22.5+I_R)^2+30^2=50^2\;\Longrightarrow\;(22.5+I_R)^2=1\,600$$
❸ 合成電流の条件
\(2500-900=1600\)
$$22.5+I_R=40\;\Longrightarrow\;I_R=17.5\;\mathrm{A}$$
❹ 抵抗の電流
$$R=\frac{E}{I_R}=\frac{140}{17.5}=8.0\;\Omega$$
❺ 抵抗値

\(\sqrt{1600}=40\) ときれいに開けます。\(40:30:50=4:3:5\)——ここでも3:4:5 の三角形です。電験の問題は、この比になるよう数値が選ばれています

検算:合成電流は \(\sqrt{40^2+30^2}=50\;\mathrm{A}\) ✓。\(R\) を入れた後の力率は \(40/50=0.8\)——0.6 から0.8 に改善しています。

並列抵抗をつなぐ前後で同相分、遅れ成分、電流の大きさを比較し、抵抗電流17.5アンペアを導くポイント解説図
抵抗を加えても遅れ成分30 Aは変わらず、同相成分だけが増えます。
答え\(R=8.0\;\Omega\) → 選択肢(3)
平成23年度理論問8の問題解説。負荷電流の分解、合成電流50アンペアの同相分、抵抗電流と抵抗値を順に計算し、正解3を示す図
抵抗電流は17.5 Aとなり、R=140/17.5=8 Ωなので正答は(3)です。

誤答の正体:電流を単純に引く

誤り方計算選択肢との対応
電流を単純に引く\(140/(50-37.5)=140/12.5\)11.2 Ω(5) と一致
有効分だけで考える\(140/(50-22.5)=140/27.5\)5.1 Ω(2) に近い
正しい計算\(140/17.5\)8.0 Ω(3) ◎

選択肢(5)の11.2 Ω は「電流を単純に引いた」答えにぴったり一致します。\(140/12.5=11.2\)——この誤りを拾うために用意されていると考えてよいでしょう。

電流がベクトルであることを忘れると、必ずここに落ちます「大きさだけ与えられている量は、方向も考えて合成する」——交流回路の鉄則です。

⚠️ よくある間違い
「力率0.6 の \(\sin\phi\) は0.8」を間違えないでください。\(\sin\phi=\sqrt{1-0.6^2}=\sqrt{0.64}=0.8\)——3:4:5 の三角形です。0.4 としてしまうと、以降がすべて狂います

深掘り①:ベクトル図で見ると一目瞭然

電圧を基準(右向き)にして、電流ベクトルを描いてみましょう並列回路なので電圧が共通です。

ベクトル有効分(横)無効分(縦)大きさ
負荷の電流(\(R\) 追加前)22.5 A−30 A(遅れ)37.5 A
抵抗の電流17.5 A017.5 A
合成電流40 A−30 A50 A

抵抗の電流は横方向にしか伸びません縦方向(無効分)は30 A のまま変わらない——これがベクトル図で見ると明らかになります

合成電流は37.5 A から50 A へ増えています抵抗を追加したのだから、電流が増えるのは当然です。減らしたいなら、コンデンサ(無効分を打ち消す)を入れる必要があります

深掘り②:これは「力率改善」ではない

力率は0.6 から0.8 に上がっていますが、これは力率改善とは呼びません電流も電力も増えているからです。

抵抗を並列に追加(本問)コンデンサを並列に追加(力率改善)
有効分増える(22.5→40 A)変わらない
無効分変わらない(30 A)減る
合成電流増える(37.5→50 A)減る
力率上がる(0.6→0.8)上がる
有効電力増える変わらない

どちらも力率は上がりますが、中身がまったく違います抵抗を足すのは「仕事をする負荷を増やした」——電力を余計に消費しています

力率改善とは「同じ仕事をするのに、流す電流を減らすこと」です。コンデンサは無効分を打ち消すだけで、有効電力を増やしません——だから電流が減ります

💡 覚え方
「力率が上がった=改善した」とは限らない——電流が減ったかどうかを見るのが本質です。本問では電流が増えているので、経済的にはむしろ悪化しています。

⏱️ 本番での進め方
❶ 電流を有効分と無効分に分ける。単純な引き算は不可。
❷ 力率0.6 なら \(\sin\phi=0.8\)。3:4:5 の三角形。
❸ 抵抗は有効分だけを増やす。無効分は変わらない。
❹ 単純に引いた値が選択肢にある。11.2 Ω は罠。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

負荷有効分37.5×0.6=22.5A
負荷無効分37.5×0.8=30A
合成条件√((22.5+140/R)²+30²)=50
答え140/R=17.5→R=8Ω …(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型の並列負荷の問題:【理論】令和7年度上期A問題9

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