今回は平成23年度 理論科目 A問題8を解説します。E=140Vの電源に力率0.6の誘導性負荷(電流37.5A)を接続し、さらに抵抗Rを並列接続すると電源電流が50Aになったときの、抵抗R〔Ω〕を求める問題です。
誘導性負荷の電流を有効分(同相)と無効分(遅れ)に分けます。並列の抵抗Rには電圧と同相の電流が加わるので、有効分だけが増えます。合成電流の大きさが50Aになる条件からRを求めます。
平成23年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問8)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成23年度 A問題8
図の交流回路において、電源電圧をĖ=140∠0°〔V〕とする。いま、この電源に力率0.6の誘導性負荷を接続したところ、電源から流れ出る電流の大きさは37.5〔A〕であった。次に、スイッチSを閉じ、この誘導性負荷と並列に抵抗R〔Ω〕を接続したところ、電源から流れ出る電流の大きさが50〔A〕となった。このとき、抵抗R〔Ω〕の大きさとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)3.9 (2)5.6 (3)8.0 (4)9.6 (5)11.2〔Ω〕

出題のポイント:電流を有効分と無効分に分ける
電流はベクトルなので、単純に引き算できません。\(50-37.5=12.5\;\mathrm{A}\) としてしまうと誤りです。必ず有効分(電圧と同相)と無効分(90°遅れ)に分解してください。
抵抗 \(R\) を並列に入れると、電圧と同相の電流が加わります。つまり有効分だけが増え、無効分は変わりません——この性質が計算の鍵になります。

解説:分解して、増えるほうだけを追う
\(R\) を入れても変わらない
\(2500-900=1600\)
\(\sqrt{1600}=40\) ときれいに開けます。\(40:30:50=4:3:5\)——ここでも3:4:5 の三角形です。電験の問題は、この比になるよう数値が選ばれています。
検算:合成電流は \(\sqrt{40^2+30^2}=50\;\mathrm{A}\) ✓。\(R\) を入れた後の力率は \(40/50=0.8\)——0.6 から0.8 に改善しています。


誤答の正体:電流を単純に引く
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢との対応 |
| 電流を単純に引く | \(140/(50-37.5)=140/12.5\) | 11.2 Ω | (5) と一致 |
| 有効分だけで考える | \(140/(50-22.5)=140/27.5\) | 5.1 Ω | (2) に近い |
| 正しい計算 | \(140/17.5\) | 8.0 Ω | (3) ◎ |
選択肢(5)の11.2 Ω は「電流を単純に引いた」答えにぴったり一致します。\(140/12.5=11.2\)——この誤りを拾うために用意されていると考えてよいでしょう。
電流がベクトルであることを忘れると、必ずここに落ちます。「大きさだけ与えられている量は、方向も考えて合成する」——交流回路の鉄則です。
⚠️ よくある間違い
「力率0.6 の \(\sin\phi\) は0.8」を間違えないでください。\(\sin\phi=\sqrt{1-0.6^2}=\sqrt{0.64}=0.8\)——3:4:5 の三角形です。0.4 としてしまうと、以降がすべて狂います。
深掘り①:ベクトル図で見ると一目瞭然
電圧を基準(右向き)にして、電流ベクトルを描いてみましょう。並列回路なので電圧が共通です。
| ベクトル | 有効分(横) | 無効分(縦) | 大きさ |
| 負荷の電流(\(R\) 追加前) | 22.5 A | −30 A(遅れ) | 37.5 A |
| 抵抗の電流 | 17.5 A | 0 | 17.5 A |
| 合成電流 | 40 A | −30 A | 50 A |
抵抗の電流は横方向にしか伸びません。縦方向(無効分)は30 A のまま変わらない——これがベクトル図で見ると明らかになります。
合成電流は37.5 A から50 A へ増えています。抵抗を追加したのだから、電流が増えるのは当然です。減らしたいなら、コンデンサ(無効分を打ち消す)を入れる必要があります。
深掘り②:これは「力率改善」ではない
力率は0.6 から0.8 に上がっていますが、これは力率改善とは呼びません。電流も電力も増えているからです。
| 抵抗を並列に追加(本問) | コンデンサを並列に追加(力率改善) | |
| 有効分 | 増える(22.5→40 A) | 変わらない |
| 無効分 | 変わらない(30 A) | 減る |
| 合成電流 | 増える(37.5→50 A) | 減る |
| 力率 | 上がる(0.6→0.8) | 上がる |
| 有効電力 | 増える | 変わらない |
どちらも力率は上がりますが、中身がまったく違います。抵抗を足すのは「仕事をする負荷を増やした」——電力を余計に消費しています。
力率改善とは「同じ仕事をするのに、流す電流を減らすこと」です。コンデンサは無効分を打ち消すだけで、有効電力を増やしません——だから電流が減ります。
💡 覚え方
「力率が上がった=改善した」とは限らない——電流が減ったかどうかを見るのが本質です。本問では電流が増えているので、経済的にはむしろ悪化しています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 電流を有効分と無効分に分ける。単純な引き算は不可。
❷ 力率0.6 なら \(\sin\phi=0.8\)。3:4:5 の三角形。
❸ 抵抗は有効分だけを増やす。無効分は変わらない。
❹ 単純に引いた値が選択肢にある。11.2 Ω は罠。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 負荷有効分 | 37.5×0.6=22.5A |
| 負荷無効分 | 37.5×0.8=30A |
| 合成条件 | √((22.5+140/R)²+30²)=50 |
| 答え | 140/R=17.5→R=8Ω …(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同型の並列負荷の問題:【理論】令和7年度上期A問題9

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