今回は平成24年度 理論科目 A問題10を解説します。R₁・R₂・C・Lからなる回路で、f=10Hzとf=10MHzのときにR₁を流れる電流の比I10Hz/I10MHzを求める問題です。
2つの周波数での回路の様子がポイント。f=10HzはちょうどLCの並列共振(ZL=ZC)で並列部が開放、f=10MHzはコンデンサがほぼ短絡になります。
平成24年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問10)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・回路図・選択肢は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成24年度 A問題10
図のように、R1=20〔Ω〕とR2=30〔Ω〕の抵抗、静電容量C=1/(100π)〔F〕のコンデンサ、インダクタンスL=1/(4π)〔H〕のコイルからなる回路に周波数f〔Hz〕で実効値V〔V〕が一定の交流電圧を加えた。f=10〔Hz〕のときにR1を流れる電流の大きさをI10Hz〔A〕、f=10〔MHz〕のときにR1を流れる電流の大きさをI10MHz〔A〕とする。このとき、電流比I10Hz/I10MHzの値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.4 (2)0.6 (3)1.0 (4)1.7 (5)2.5

出題のポイント:2つの周波数で回路が別物になる
この問題は「計算」というより「回路を読み替える」問題です。10 Hz と 10 MHz では、コイルとコンデンサの振る舞いがまったく違います。
10 Hz はちょうどLC並列共振の周波数で、並列部が開放になります。10 MHz ではコンデンサがほぼ短絡——並列部が短絡されます。この2つの極端な状態を見抜けば、あとは単純な直流回路の計算です。

\(f=10\;\mathrm{Hz}\) のとき:LC並列共振
\(X_L\) と一致=並列共振
\(X_L=X_C\) なので、LC並列部は共振状態です。並列共振ではアドミタンスがゼロ=インピーダンスが無限大——この部分に電流は流れません。
したがって電流は \(R_1\) と \(R_2\) の直列を流れます。\(Z=20+30=50\;\Omega\)、\(I_{10\mathrm{Hz}}=V/50\) です。
問題の数値がきれいに \(1/(100\pi)\) と \(1/(4\pi)\) になっているのは、\(\pi\) が約分されて共振がぴったり10 Hz になるように作られているからです。この形を見たら、共振を疑ってください。
\(f=10\;\mathrm{MHz}\) のとき:コンデンサが短絡
10 Hz の100万倍
短絡と同じ
開放と同じ
コンデンサがほぼ短絡なので、並列部全体が短絡されます。\(R_2\) もコイルも、短絡された経路にバイパスされて意味をなしません。
したがって回路は \(R_1\) だけ——\(I_{10\mathrm{MHz}}=V/20\) です。
\(V\) が約分される


誤答の正体:比を逆に取る
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢 |
| 比を逆に取る | \(50/20\) | 2.5 | (5) |
| 両方とも同じと考える | — | 1.0 | (3) |
| 正しい計算 | \(20/50\) | 0.4 | (1) ◎ |
(5)の2.5 は「比を逆に取った」値です。問題文は \(I_{10\mathrm{Hz}}/I_{10\mathrm{MHz}}\)——10 Hz が分子です。どちらが分子かを問題文で指差し確認してください。
感覚でも確かめられます。10 Hz のほうがインピーダンスが大きい(50 Ω)ので、電流は小さい——比は1未満になるはずです。この判断だけで(3)(4)(5)が消えます。
⚠️ よくある間違い
「10 Hz でも並列部が短絡」と考えてしまうと、両方とも \(R_1\) だけになって比が1.0(選択肢(3))になります。10 Hz では共振で開放——ここが本問の山場です。
深掘り①:並列共振と直列共振で「開放と短絡」が逆
共振には2種類あり、インピーダンスの振る舞いが正反対です。混同すると本問のような回路で判断を誤ります。
| 直列共振(LとCが直列) | 並列共振(LとCが並列) | |
| 共振条件 | \(\omega L=1/(\omega C)\) | 同じ |
| インピーダンス | 最小(\(=R\)) | 最大(理想では無限大) |
| 電流 | 最大 | 最小(理想ではゼロ) |
| 回路としての姿 | 短絡に近い | 開放に近い |
| 別名 | 電圧共振 | 電流共振・反共振 |
本問のLCは並列なので、共振時は開放です。もし直列だったら短絡になり、答えがまったく変わります。回路図でLとCが直列か並列かを最初に確認してください。
並列共振が「開放」になる理由は、コイルとコンデンサの間で電流が循環するだけで、外部には流れ出ないからです。内部では大きな電流が回っていますが、電源から見ると電流ゼロ——不思議に見えますが、これが電流共振です。
深掘り②:フィルタとしての働き
この回路は、周波数によって電流の流れ方が変わる「フィルタ」とみなせます。10 Hz では電流が小さく、10 MHz では大きい——高周波を通しやすい特性です。
| 周波数 | 並列部の状態 | 回路のインピーダンス | 電流 |
| 10 Hz(共振) | 開放 | 50 Ω(最大) | 小さい |
| 中間の周波数 | 有限のインピーダンス | 20〜50 Ω | 中間 |
| 10 MHz | 短絡(Cによる) | 20 Ω(最小) | 大きい |
並列共振回路を直列に入れると、その周波数だけを阻止するフィルタになります。「トラップ回路」「ノッチフィルタ」と呼ばれ、特定の妨害周波数を除去するのに使われます。
実務では、高調波対策のフィルタがこの原理です。第5高調波を除去したいなら、その周波数で並列共振する回路を線路に直列に入れます。逆に、除去したい周波数で直列共振する回路を線路と大地の間に入れる(吸収させる)方法もあります。
💡 覚え方
「並列共振は開放=通さない、直列共振は短絡=通す」——この対比さえ押さえれば、フィルタの構成も理解できます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 極端な周波数で素子を読み替える。低周波はコイル短絡・コンデンサ開放、高周波は逆。
❷ \(\pi\) を含むきれいな値は共振を疑う。約分されて整数になる。
❸ LとCが直列か並列かを確認。共振時の姿が正反対になる。
❹ どちらが分子かを指差し確認。比を逆に取ると(5)に着地する。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| f=10Hz | 並列共振でR2のみ→I=V/50 |
| f=10MHz | C短絡→I=V/20 |
| 比 | (V/50)/(V/20) |
| 答え | 0.4 …(1) |
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