今回は平成18年度 理論科目 A問題4を解説します。巻数N=10のコイルについて、電流は0.1秒間に0.6 A、1ターンを貫く磁束は0.4秒間に1.2 mWbの割合で変化しています。2つの時間区間を分けて扱い、自己インダクタンスL [mH]を求める計算問題です。
1ターンの磁束をφ、Nターン全体の磁束鎖交数をλとすると、漏れ磁束を無視できる本問ではλ=Nφです。誘導起電力はeind=−dλ/dt=−N dφ/dtで、一定Lの線形範囲ではλ=LIよりeind=−L dI/dtとも書けます。負号はレンツの法則による向きを表し、本問では起電力の大きさを等置してLを求めます。
平成18年度 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
問題文の「0.1秒」と「0.4秒」に印を付けてください。同じ時間区間の増分ではないため、NΔφ/ΔIと生の変化量を直接割ることはできません。最初にΔI/ΔtIとΔφ/Δtφを別々に計算します。また、漏れ磁束を無視する条件は、同じφが全10ターンを鎖交してλ=Nφと置けることを意味します。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成18年度 A問題4
巻数N=10のコイルを流れる電流が0.1秒間に0.6〔A〕の割合で変化しているとき、コイルを貫く磁束が0.4秒間に1.2〔mWb〕の割合で変化した。このコイルの自己インダクタンスL〔mH〕の値として、正しいのは次のうちどれか。ただし、コイルの漏れ磁束は無視できるものとする。
(1)0.5 (2)2.5 (3)5 (4)10 (5)20〔mH〕
出題のポイント:「0.1秒」と「0.4秒」は別の時間区間
本問の最大の罠は、電流と磁束で時間区間が違うことです。電流は0.1秒で0.6 A、磁束は0.4秒で1.2 mWb——この2つを直接割ってはいけません。
必ず「変化率」に直してから比べます。\(dI/dt\) と \(d\varphi/dt\) をそれぞれ計算し、そのうえで起電力を等置します。この一手を飛ばすと、答えが4倍ずれて選択肢(5)に着地します。

解説:変化率を別々に計算する
0.1秒で0.6 A
0.4秒で1.2 mWb
=5 mH
「0.1」と「0.4」に印をつけてから計算に入るのが確実な対策です。同じ時間区間だと思い込むと、\(N\Delta\varphi/\Delta I=10\times1.2\times10^{-3}/0.6=20\;\mathrm{mH}\) となり、選択肢(5)に着地します。
問題文の「漏れ磁束は無視できる」という条件は、10ターンすべてに同じ磁束 \(\varphi\) が鎖交するという意味です。だから磁束鎖交数は \(\lambda=N\varphi\) と書けます。


誤答の正体:時間区間を無視すると4倍ずれる
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢 |
| 時間を無視して \(N\Delta\varphi/\Delta I\) | \(10\times1.2\times10^{-3}/0.6\) | 20 mH | (5) |
| 巻数を掛け忘れる | \((d\varphi/dt)/(dI/dt)\) | 0.5 mH | (1) |
| 正しい計算 | \(N(d\varphi/dt)/(dI/dt)\) | 5 mH | (3) ◎ |
時間を無視すると、ちょうど4倍(0.4/0.1)の誤差が出ます。選択肢(5)の20 mH がぴったりその値——この誤りを拾うために用意された肢です。
巻数を掛け忘れると0.5 mH で選択肢(1)になります。両端の選択肢が2つの典型的な誤りに対応している——真ん中の(3)が正解という配置です。
⚠️ よくある間違い
「変化の割合」という表現に注意してください。問題文は「0.1秒間に0.6 Aの割合で」と書いています——これは変化率が \(0.6/0.1=6\;\mathrm{A/s}\) という意味です。時間の記述を読み飛ばすと、単なる変化量だと誤解します。
深掘り:単位で検算する
この計算が正しいかどうかは、単位を追えば確認できます。
ファラデーの法則より \(\mathrm{Wb/s}=\mathrm{V}\)
確かにインダクタンスの単位
\(\mathrm{V\cdot s/A}=\mathrm{Wb/A}=\mathrm{H}\)——「Wb=V·s」を知っていれば、この確認は一瞬です。単位が合わない計算をしていたら、途中で気づけます。
もう一つの検算方法は、\(L=N\varphi/I\) という定義に戻ることです。ただし本問では \(\varphi\) と \(I\) の絶対値が与えられていないので、変化率どうしの比で求めるしかありません。「変化率の比=絶対値の比」が成り立つのは、\(L\) が一定(線形)だからです。
💡 覚え方
「時間が違うなら、必ず変化率に直す」——これは電磁誘導の問題全般に通じる鉄則です。問題文に時間が2つ出てきたら要注意のサインだと思ってください。
⏱️ 本番での進め方
❶ 時間の数値に印をつける。0.1秒と0.4秒が別区間だと最初に確認する。
❷ 変化率を別々に計算。\(6\;\mathrm{A/s}\) と \(3\times10^{-3}\;\mathrm{Wb/s}\)。
❸ 巻数を忘れない。分子は \(N\times(d\varphi/dt)\)。
❹ 単位で検算。\(\mathrm{V}\div(\mathrm{A/s})=\mathrm{H}\)。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 磁束変化率 | 1.2×10−3/0.4=3×10−3 Wb/s |
| 磁束側の起電力 | |e|=10×3×10−3=0.03 V |
| 電流変化率 | 0.6/0.1=6 A/s |
| 電流側の起電力 | |e|=6L V |
| 等置 | 6L=0.03 |
| 答え | L=5×10−3 H=5 mH …(3) |
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