今回は平成19年度 理論科目 A問題2を解説します。物質を磁界中に置いたときに磁気を帯びる現象(磁化)と、比透磁率による物質の分類(常磁性体・反磁性体・強磁性体)に関する空欄補充問題です。
本問は、外部磁界によって物質が磁化される磁気誘導と、常磁性・反磁性・強磁性の違いを問います。弱い線形磁性体では、磁化Mの向きと磁化率χmの符号を使うと、常磁性体はχm > 0、反磁性体はχm < 0と整理できます。強磁性体は非線形な磁化特性を持つため、同じ一定の比透磁率だけで扱わないことが大切です。
平成19年度 理論科目 A問題2:問題文と選択肢
問題図では外部磁界Hが上向きです。図1の上N・下Sは誘導磁化Mが上向き、図2の上S・下NはMが下向きであることを表します。ここで逆向きなのは反磁性体の磁化Mであり、通常の全磁束密度Bまで下向きになるわけではありません。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成19年度 A問題2
磁界中に物質を置くと、その物質の性質によって図1又は図2に示されるような磁極が現われるものがある。このように物質を磁界中にもってきたために磁気を帯びるようになることを磁化されたといい、この現象を(ア)という。磁化によって、図1のように磁界と同じ向きの磁束を物質中に生じる磁極が現われる物質の比透磁率は1より大きく、これは(イ)と名付けられている。一方、図2のように磁界と逆向きの磁束を生じる磁極が現われる物質の比透磁率は1より小さく、これは(ウ)といわれる。特に強く磁化される物質は強磁性体といわれるが、これには(エ)のような物質がある。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる語句の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 電磁誘導 常磁性体 反磁性体 鉄,ニッケル (2) 電磁誘導 反磁性体 常磁性体 銅,銀 (3) 相互誘導 常磁性体 反磁性体 鉄,ニッケル (4) 磁気誘導 常磁性体 反磁性体 鉄,ニッケル (5) 磁気誘導 反磁性体 常磁性体 銅,銀
出題のポイント:「磁気誘導」と「電磁誘導」を混同しない
(ア)で問われているのは「磁界中に置かれた物質が磁化される現象」です。これは磁気誘導——電磁誘導(磁束の変化で起電力が生じる)とはまったく別の現象です。
選択肢のうち2つが「電磁誘導」、1つが「相互誘導」としています。「誘導」という言葉が付く現象は電磁気に4つあり、どれも別物です。ここを整理しておけば、(ア)だけで3肢が消えます。

紛らわしい「誘導」4種を整理する
| 用語 | 何が起きるか | 関連する法則 |
| 磁気誘導 | 磁界中の物質が磁化される(本問) | — |
| 電磁誘導 | 磁束の変化で起電力が生じる | ファラデー・レンツ |
| 相互誘導 | 一方のコイルの電流変化が他方に起電力を生む | 相互インダクタンス |
| 静電誘導 | 電界中の導体に電荷が偏る | — |
本問は「磁気を帯びるようになること」と書いてあります。起電力の話ではないので、電磁誘導でも相互誘導でもありません。物質が磁石のようになる現象=磁気誘導です。
用語を4つ並べて比べると、混同しにくくなります。「誘導」は「外から与えられて、それに応じて何かが生じる」という共通の意味を持ちますが、生じるものが磁化なのか起電力なのか電荷の偏りなのかが違います。
常磁性体・反磁性体・強磁性体の3分類
| 分類 | 比透磁率 \(\mu_r\) | 磁化の向き | 代表的な物質 |
| 反磁性体 | 1より小さい | 磁界と逆向き | 銅、銀、水、ビスマス、金 |
| 常磁性体 | 1より大きい(わずか) | 磁界と同じ向き | アルミニウム、白金、空気 |
| 強磁性体 | 1よりはるかに大きい | 磁界と同じ向き(強い) | 鉄、ニッケル、コバルト |
図1(磁界と同じ向きの磁束)が常磁性体、図2(逆向き)が反磁性体です。比透磁率が1より大きいか小さいかと、磁化の向きは対応しています。
常磁性体と反磁性体は、どちらも効果が非常に弱い点も押さえてください。比透磁率は 1.00001 とか 0.99999 といったレベルで、日常的にはほとんど磁石に反応しないように見えます。強磁性体だけが桁違いに強いのです。
(エ)の「鉄、ニッケル」が強磁性体です。選択肢(2)(5)の「銅、銀」は反磁性体——まったく逆の性質の物質を挙げています。


選択肢の消し方
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | 判定 | |
| (1) | 電磁誘導 × | 常磁性体 | 反磁性体 | 鉄,ニッケル | (ア)だけ誤り(惜しい) |
| (2) | 電磁誘導 × | 反磁性体 × | 常磁性体 × | 銅,銀 × | すべて誤り |
| (3) | 相互誘導 × | 常磁性体 | 反磁性体 | 鉄,ニッケル | (ア)だけ誤り(惜しい) |
| (4) | 磁気誘導 | 常磁性体 | 反磁性体 | 鉄,ニッケル | ◎ 正解 |
| (5) | 磁気誘導 | 反磁性体 × | 常磁性体 × | 銅,銀 × | 3か所誤り |
(1)と(3)は(ア)だけが違う惜しい肢です。「磁気誘導」という用語を知っているかどうかだけで決まります。比較的なじみの薄い用語なので、意識して覚えておいてください。
⚠️ よくある間違い
「電磁誘導」は最もよく聞く用語なので、つい選んでしまいます。しかし電磁誘導は「磁束が変化したときに起電力が生じる」現象です。本問は静止した物質が磁化される話で、起電力はどこにも出てきません。
💡 覚え方
「磁気誘導=磁石にくっつくようになること」と具体的にイメージすると忘れません。クリップが磁石に引き寄せられ、そのクリップにさらに別のクリップがくっつく——あの現象が磁気誘導です。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「誘導」4種を書き出す。磁気・電磁・相互・静電。本問は磁気誘導。
❷ \(\mu_r\) と1の大小。大きければ常磁性、小さければ反磁性。
❸ 強磁性体は鉄・ニッケル・コバルト。銅・銀は反磁性体。
❹ 惜しい肢が2つある。(ア)で決着するので、そこに集中する。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:3つの磁性体は何が違うのか
常磁性・反磁性・強磁性の違いは、物質を構成する原子の「磁石としての性質」で決まります。electron の軌道運動とスピンが、それぞれ小さな磁石として振る舞うためです。
| 分類 | 原子レベルの状態 | 外部磁界を加えると | 磁界を取り去ると |
| 反磁性体 | 原子が磁石になっていない | 打ち消す向きの磁化が誘導される | すぐ消える |
| 常磁性体 | 原子は磁石だがバラバラの向き | わずかに向きがそろう | すぐ消える |
| 強磁性体 | 原子の磁石が集団で同じ向き(磁区) | 磁区が大きく成長する | 一部が残る(残留磁気) |
反磁性はすべての物質が持つ性質です。外部磁界が加わると、それを打ち消す向きに電流が誘導される——レンツの法則と同じ理屈です。ただし効果は非常に弱く、常磁性や強磁性がある物質では、そちらに隠れて見えなくなります。
強磁性体だけが「磁区」という構造を持ちます。原子の磁石が集団で同じ向きにそろった領域が磁区で、磁界を加えると、都合のよい向きの磁区が大きくなっていきます。これが比透磁率が数千にもなる理由です。
磁界を取り去っても磁区の並びが完全には戻らない——これが残留磁気であり、ヒステリシス曲線が生じる原因でもあります。常磁性体や反磁性体にはヒステリシスがありません。
強磁性体が磁性を失う温度
強磁性体を加熱していくと、ある温度で磁性を失って常磁性体になります。この温度をキュリー点(キュリー温度)といいます。
| 物質 | キュリー点の目安 |
| 鉄 | 約770 ℃ |
| ニッケル | 約360 ℃ |
| コバルト | 約1 130 ℃ |
熱運動が激しくなると、磁区の秩序が壊れてしまう——これがキュリー点の正体です。電動機や変圧器の鉄心が異常に高温になると、磁気特性が劣化するのはこのためです。
実務では温度上昇の管理が重要になります。キュリー点に達することは通常ありませんが、温度が上がるにつれて透磁率は徐々に低下していきます。絶縁物の劣化と並んで、機器の温度制限を決める要因のひとつです。
💡 覚え方
「強磁性体は鉄・ニッケル・コバルトの3つ」——電験ではこの3つを覚えておけば十分です。いずれもキュリー点を持ち、それを超えると常磁性体になります。
まとめ
| (ア)現象 | 磁気誘導 |
| (イ)常磁性体 | MはHと同方向、χm > 0、μr > 1 |
| (ウ)反磁性体 | MはHと逆方向、χm < 0、通常0 < μr < 1 |
| (エ)強磁性体 | 鉄・ニッケル(ほかにコバルト) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・磁性体・比透磁率の関連問題:【理論】平成18年度A問題4

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