磁気・電磁力54【電験3種 理論】磁気誘導・常磁性体・反磁性体とは?平成19年 A問題2 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 平成19年度 A問題2 磁石に引かれる物質と逃げる物質!常磁性と反磁性

今回は平成19年度 理論科目 A問題2を解説します。物質を磁界中に置いたときに磁気を帯びる現象(磁化)と、比透磁率による物質の分類(常磁性体・反磁性体・強磁性体)に関する空欄補充問題です。

本問は、外部磁界によって物質が磁化される磁気誘導と、常磁性・反磁性・強磁性の違いを問います。弱い線形磁性体では、磁化Mの向きと磁化率χmの符号を使うと、常磁性体はχm > 0、反磁性体はχm < 0と整理できます。強磁性体は非線形な磁化特性を持つため、同じ一定の比透磁率だけで扱わないことが大切です。

目次

平成19年度 理論科目 A問題2:問題文と選択肢

問題図では外部磁界Hが上向きです。図1の上N・下Sは誘導磁化Mが上向き、図2の上S・下NはMが下向きであることを表します。ここで逆向きなのは反磁性体の磁化Mであり、通常の全磁束密度Bまで下向きになるわけではありません。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 平成19年度 A問題2 問題文
平成19年度 理論科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成19年度 A問題2

 磁界中に物質を置くと、その物質の性質によって図1又は図2に示されるような磁極が現われるものがある。このように物質を磁界中にもってきたために磁気を帯びるようになることを磁化されたといい、この現象を(ア)という。磁化によって、図1のように磁界と同じ向きの磁束を物質中に生じる磁極が現われる物質の比透磁率は1より大きく、これは(イ)と名付けられている。一方、図2のように磁界と逆向きの磁束を生じる磁極が現われる物質の比透磁率は1より小さく、これは(ウ)といわれる。特に強く磁化される物質は強磁性体といわれるが、これには(エ)のような物質がある。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる語句の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)電磁誘導常磁性体反磁性体鉄,ニッケル
(2)電磁誘導反磁性体常磁性体銅,銀
(3)相互誘導常磁性体反磁性体鉄,ニッケル
(4)磁気誘導常磁性体反磁性体鉄,ニッケル
(5)磁気誘導反磁性体常磁性体銅,銀

出題のポイント:「磁気誘導」と「電磁誘導」を混同しない

(ア)で問われているのは「磁界中に置かれた物質が磁化される現象」です。これは磁気誘導——電磁誘導(磁束の変化で起電力が生じる)とはまったく別の現象です。

選択肢のうち2つが「電磁誘導」、1つが「相互誘導」としています。「誘導」という言葉が付く現象は電磁気に4つあり、どれも別物です。ここを整理しておけば、(ア)だけで3肢が消えます。

比透磁率による物質の分類
$$\mu_r>1\;\text{:常磁性体}\qquad\mu_r<1\;\text{:反磁性体}\qquad\mu_r\gg1\;\text{:強磁性体}$$

基準は「1」です。真空の比透磁率が1なので、それより大きいか小さいかで分類します。

外部磁界で磁化される磁気誘導、常磁性体と反磁性体の磁化方向および比透磁率、強磁性体の代表例から正答4を選ぶ出題ポイント図
外部磁界で物質が磁化される現象は磁気誘導です。弱い線形磁性体ではMがHと同方向なら常磁性体、逆方向なら反磁性体で、強磁性体の代表例は鉄・ニッケルです。

紛らわしい「誘導」4種を整理する

用語何が起きるか関連する法則
磁気誘導磁界中の物質が磁化される(本問)
電磁誘導磁束の変化で起電力が生じるファラデー・レンツ
相互誘導一方のコイルの電流変化が他方に起電力を生む相互インダクタンス
静電誘導電界中の導体に電荷が偏る

本問は「磁気を帯びるようになること」と書いてあります。起電力の話ではないので、電磁誘導でも相互誘導でもありません物質が磁石のようになる現象=磁気誘導です。

用語を4つ並べて比べると、混同しにくくなります。「誘導」は「外から与えられて、それに応じて何かが生じる」という共通の意味を持ちますが、生じるものが磁化なのか起電力なのか電荷の偏りなのかが違います

常磁性体・反磁性体・強磁性体の3分類

分類比透磁率 \(\mu_r\)磁化の向き代表的な物質
反磁性体1より小さい磁界と逆向き銅、銀、水、ビスマス、金
常磁性体1より大きい(わずか)磁界と同じ向きアルミニウム、白金、空気
強磁性体1よりはるかに大きい磁界と同じ向き(強い)鉄、ニッケル、コバルト

図1(磁界と同じ向きの磁束)が常磁性体、図2(逆向き)が反磁性体です。比透磁率が1より大きいか小さいかと、磁化の向きは対応しています。

常磁性体と反磁性体は、どちらも効果が非常に弱い点も押さえてください。比透磁率は 1.00001 とか 0.99999 といったレベルで、日常的にはほとんど磁石に反応しないように見えます。強磁性体だけが桁違いに強いのです。

(エ)の「鉄、ニッケル」が強磁性体です。選択肢(2)(5)の「銅、銀」は反磁性体——まったく逆の性質の物質を挙げています。

外部磁界H、磁化M、磁束密度Bを区別し、常磁性体ではMがHと同方向でBが少し強く、反磁性体ではMが逆方向でも全BはHと同方向のまま少し弱くなることを示す解説図
線形・等方な物質ではM=χmH、μr=1+χm、B=μ0(H+M)です。反磁性体で逆向きなのは誘導磁化Mであり、通常0<μr<1なので全磁束密度BはHと同方向のまま少し小さくなります。
答え(ア)磁気誘導 (イ)常磁性体 (ウ)反磁性体 (エ)鉄,ニッケル → 選択肢(4)
磁気誘導、弱い線形磁性体の常磁性と反磁性、強磁性体の鉄とニッケルを順に確定して平成19年度の正答4へ進む解説図
磁気誘導、常磁性体、反磁性体、鉄・ニッケルの4項目がすべて一致する選択肢は(4)です。電磁誘導や相互誘導とは現象が異なります。

選択肢の消し方

(ア)(イ)(ウ)(エ)判定
(1)電磁誘導 ×常磁性体反磁性体鉄,ニッケル(ア)だけ誤り(惜しい)
(2)電磁誘導 ×反磁性体 ×常磁性体 ×銅,銀 ×すべて誤り
(3)相互誘導 ×常磁性体反磁性体鉄,ニッケル(ア)だけ誤り(惜しい)
(4)磁気誘導常磁性体反磁性体鉄,ニッケル◎ 正解
(5)磁気誘導反磁性体 ×常磁性体 ×銅,銀 ×3か所誤り

(1)と(3)は(ア)だけが違う惜しい肢です。「磁気誘導」という用語を知っているかどうかだけで決まります比較的なじみの薄い用語なので、意識して覚えておいてください

⚠️ よくある間違い
「電磁誘導」は最もよく聞く用語なので、つい選んでしまいます。しかし電磁誘導は「磁束が変化したときに起電力が生じる」現象です。本問は静止した物質が磁化される話で、起電力はどこにも出てきません

💡 覚え方
「磁気誘導=磁石にくっつくようになること」と具体的にイメージすると忘れません。クリップが磁石に引き寄せられ、そのクリップにさらに別のクリップがくっつく——あの現象が磁気誘導です。

⏱️ 本番での進め方
❶ 「誘導」4種を書き出す。磁気・電磁・相互・静電。本問は磁気誘導。
❷ \(\mu_r\) と1の大小。大きければ常磁性、小さければ反磁性。
❸ 強磁性体は鉄・ニッケル・コバルト。銅・銀は反磁性体。
❹ 惜しい肢が2つある。(ア)で決着するので、そこに集中する。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

深掘り:3つの磁性体は何が違うのか

常磁性・反磁性・強磁性の違いは、物質を構成する原子の「磁石としての性質」で決まります。electron の軌道運動とスピンが、それぞれ小さな磁石として振る舞うためです。

分類原子レベルの状態外部磁界を加えると磁界を取り去ると
反磁性体原子が磁石になっていない打ち消す向きの磁化が誘導されるすぐ消える
常磁性体原子は磁石だがバラバラの向きわずかに向きがそろうすぐ消える
強磁性体原子の磁石が集団で同じ向き(磁区)磁区が大きく成長する一部が残る(残留磁気)

反磁性はすべての物質が持つ性質です。外部磁界が加わると、それを打ち消す向きに電流が誘導される——レンツの法則と同じ理屈です。ただし効果は非常に弱く、常磁性や強磁性がある物質では、そちらに隠れて見えなくなります

強磁性体だけが「磁区」という構造を持ちます原子の磁石が集団で同じ向きにそろった領域が磁区で、磁界を加えると、都合のよい向きの磁区が大きくなっていきますこれが比透磁率が数千にもなる理由です。

磁界を取り去っても磁区の並びが完全には戻らない——これが残留磁気であり、ヒステリシス曲線が生じる原因でもあります。常磁性体や反磁性体にはヒステリシスがありません

強磁性体が磁性を失う温度

強磁性体を加熱していくと、ある温度で磁性を失って常磁性体になります。この温度をキュリー点(キュリー温度)といいます。

物質キュリー点の目安
約770 ℃
ニッケル約360 ℃
コバルト約1 130 ℃

熱運動が激しくなると、磁区の秩序が壊れてしまう——これがキュリー点の正体です。電動機や変圧器の鉄心が異常に高温になると、磁気特性が劣化するのはこのためです。

実務では温度上昇の管理が重要になります。キュリー点に達することは通常ありませんが、温度が上がるにつれて透磁率は徐々に低下していきます。絶縁物の劣化と並んで、機器の温度制限を決める要因のひとつです。

💡 覚え方
「強磁性体は鉄・ニッケル・コバルトの3つ」——電験ではこの3つを覚えておけば十分です。いずれもキュリー点を持ち、それを超えると常磁性体になります

まとめ

(ア)現象磁気誘導
(イ)常磁性体MはHと同方向、χm > 0、μr > 1
(ウ)反磁性体MはHと逆方向、χm < 0、通常0 < μr < 1
(エ)強磁性体鉄・ニッケル(ほかにコバルト)
答え(4)

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・磁性体・比透磁率の関連問題:【理論】平成18年度A問題4

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