今回は平成20年度 理論科目 A問題4を解説します。同じ環状鉄心に巻かれたコイル1(巻数N、自己インダクタンスL)とコイル2(巻数n、自己インダクタンス4L)について、巻数nを表す式を求める問題です。
ポイントは、同じ鉄心では自己インダクタンスが巻数の2乗に比例することです。ただし、これは漏れ磁束がなく、磁気飽和のない線形領域で、透磁率μが一定とみなせるという問題の条件に基づきます。4倍というインダクタンス比から、巻数比はその平方根の2倍になります。
平成20年度 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
問題文では、鉄心が等断面・等質で、漏れ磁束も磁気飽和もないとされています。この条件により、二つのコイルは同じ磁気抵抗を使って比較できます。図の巻線は模式的に描かれており、描画された線の本数を数えて巻数比を判断するものではありません。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成20年度 A問題4
環状鉄心に二つのコイルが巻かれている。コイル1の巻数はNであり、その自己インダクタンスはL〔H〕である。コイル2の巻数はnであり、その自己インダクタンスは4L〔H〕である。巻数nの値を表す式として、正しいのは次のうちどれか。ただし、鉄心は等断面、等質であり、コイル及び鉄心の漏れ磁束はなく、また、鉄心の磁気飽和もないものとする。
(1)N/4 (2)N/2 (3)2N (4)4N (5)16N
出題のポイント:インダクタンスは巻数の「2乗」に比例する
同じ鉄心に巻かれているので、磁気抵抗 \(R_m\) は共通です。すると \(L=N^2/R_m\) となり、インダクタンスは巻数の2乗に比例します。
したがって、インダクタンスが4倍なら巻数は \(\sqrt4=2\) 倍です。「4倍だから4倍」と考えると選択肢(4)に着地してしまいます。2乗の関係を逆に使うので、平方根を取ることを忘れないでください。

解説:平方根を取る
\(R_m\) が共通なので約分される
4倍のインダクタンス=2倍の巻数
倍率の対応を表にしておくと確実です。インダクタンスが4倍なら巻数は2倍、9倍なら3倍、16倍なら4倍——平方数が出てきたら、その平方根が巻数比です。
| インダクタンスの比 | 巻数の比 | 計算 |
| 4倍 | 2倍 | \(\sqrt4=2\) |
| 9倍 | 3倍 | \(\sqrt9=3\) |
| 16倍 | 4倍 | \(\sqrt{16}=4\) |
| 2倍 | \(\sqrt2\approx1.41\) 倍 | きれいな数にならない |
問題で「4倍」「9倍」といった平方数が選ばれているのは、巻数比がきれいな整数になるようにするためです。逆に、平方数でない倍率が出てきたら、問題の読み違いを疑ってもよいでしょう。


誤答の正体:1乗と2乗の取り違え
| 誤り方 | 考え方 | 答え | 選択肢 |
| \(L\propto N\) と考える | 1乗だと思う | \(4N\) | (4) |
| 2乗をさらに掛ける | \(4^2=16\) | \(16N\) | (5) |
| 逆に使う | 巻数が減ると考える | \(N/2\) | (2) |
| 逆かつ1乗 | — | \(N/4\) | (1) |
| 正しい計算 | \(\sqrt4=2\) | \(2N\) | (3) ◎ |
選択肢が \(N/4\)、\(N/2\)、\(2N\)、\(4N\)、\(16N\) と並んでいるのは、「1乗か2乗か」「掛けるか割るか」の全パターンを網羅しているからです。2乗の関係を正しく使わないと、必ずどれかの誤答に着地します。
常識的な確認も有効です。巻数を増やせばインダクタンスは増えるのですから、\(4L\) のコイル2は、\(L\) のコイル1より巻数が多いはずです。これだけで(1)(2)が消えます。
⚠️ よくある間違い
「巻数の2乗に比例」を知っていても、逆向きに使うときに混乱しやすいものです。「\(L\) が4倍 → \(N\) は \(\sqrt4\) 倍」——2乗の逆は平方根だと、その場で1行書いてから答えてください。
深掘り:なぜ2乗なのか
2乗になる理由は、2つの効果が掛け算になるからです。順を追って見てみましょう。
\(\varPhi=NI/R_m\) なので磁束も \(N\) 倍
\(\varPsi=N\varPhi\) なのでさらに \(N\) 倍
合わせて \(N^2\) 倍
「磁束を作る側」でも \(N\) 倍、「磁束を受け取る側」でも \(N\) 倍——同じコイルが両方の役割をするので、効果が2回効きます。これが2乗の正体です。
相互インダクタンスでは事情が変わります。\(M\propto N_1N_2\)——作る側と受け取る側が別のコイルなので、それぞれの巻数が1回ずつ掛かります。自己インダクタンスで \(N_1=N_2=N\) とすれば \(N^2\) になり、辻褄が合います。
問題文の条件にも意味があります。「等断面・等質」「漏れ磁束なし」「磁気飽和なし」——これらはすべて、2つのコイルで \(R_m\) を共通とみなすための前提です。磁気飽和が起きると \(\mu\) が変わり、\(L\propto N^2\) が成り立たなくなります。
💡 覚え方
「作る側で \(N\) 倍、受け取る側で \(N\) 倍、合わせて \(N^2\)」——この一文で理由まで覚えられます。公式を丸暗記するより、この理屈で押さえたほうが、相互インダクタンスとの違いも整理できます。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(L\propto N^2\) を余白に書く。同じ鉄心という条件がその根拠。
❷ 逆に使うときは平方根。\(L\) が4倍なら \(N\) は \(\sqrt4=2\) 倍。
❸ 常識で2肢消す。\(L\) が大きい=巻数が多い。\(N/4\)・\(N/2\) は除外。
❹ 平方数が出るように作られている。4・9・16 なら整数比になる。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
★令和7年度上期は「9倍版」の同じ問題
令和7年度上期A問題3は、まったく同じ設定で「9倍のインダクタンス」を問う問題です。倍率が違うだけで、解き方は完全に同じです。
| 本問(平成20年度 A問題4) | 令和7年度上期 A問題3 | |
| インダクタンスの比 | 4倍 | 9倍 |
| 巻数の比 | \(\sqrt4=2\) 倍 | \(\sqrt9=3\) 倍 |
| 答え | \(2N\) | \(3N\) |
| 選択肢の並び | \(N/4,\;N/2,\;2N,\;4N,\;16N\) | \(N/9,\;N/3,\;3N,\;9N,\;81N\) |
| 正答番号 | (3) | (3) |
選択肢の並びも「同じパターンで倍率を差し替えた」形になっています。今回はたまたま正答番号がどちらも(3)ですが、これは偶然です。数値が変われば番号も変わり得ます。
当サイトでは、同じ問題で正答番号が変わる実例を磁気分野だけで複数確認しています。番号ではなく解き方で覚える——これを徹底してください。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和7年度上期A問題3
まとめ
| 磁気抵抗 | Rm=ℓ/(μS)(同じ鉄心では共通) |
| 自己インダクタンス | L=N2/Rm=μSN2/ℓ |
| 比の式 | 4L/L=(n/N)2=4 |
| 巻数比 | n/N=√4=2 |
| 答え | n=2N …(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・自己インダクタンスと巻数の関連問題:【理論】令和7年度上期A問題3

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