今回は令和4年度下期 理論科目 A問題4を解説します。10cm間隔の正三角形の頂点に3本の直線導体を置き、同一方向に7Aを流したとき、各導体1m当たりに働く力の合力F0を求める問題です。
まず2本間の単位長さ当たりの力F=(2I2/r)×10−7を求めます。1本の導体が他の2本から受ける同じ大きさFの引力は60°をなすため、合力はF0=2Fcos30°=√3Fです。
令和4年度下期 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、令和4年度下期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和4年度下期 A問題4
図のように、無限に長い3本の直線状導体が真空中に10cmの間隔で正三角形の頂点の位置に置かれている。3本の導体にそれぞれ7Aの直流電流を同一方向に流したとき、各導体1m当たりに働く力の大きさF0〔N/m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、無限に長い2本の直線状導体をr〔m〕離して平行に置き、2本の導体にそれぞれI〔A〕の直流電流を同一方向に流した場合、各導体1m当たりに働く力の大きさF〔N/m〕は、F=2I2/r×10-7で与えられるものとする。
(1)0 (2)9.80×10-5 (3)1.70×10-4 (4)1.96×10-4 (5)2.94×10-4

出題のポイント:力は2本ぶん。ただし「ベクトルで足す」
力の大きさを求める式は問題文に書いてあります。勝負どころは「3本のうち自分以外は2本、その2つの力を60°の角度で合成する」という一点です。

解説:まず1組ぶんの力を出す
\(I=7\;\mathrm{A}\)、\(r=0.1\;\mathrm{m}\)(10 cm)
これが2本の間に働く力
10 cm を 0.1 m に直すのを忘れないでください。cm のまま代入すると答えが10分の1になります。
2つの力を60°で合成する
正三角形の頂点にある1本の導体は、他の2本のそれぞれから大きさ \(F\) の引力を受けます。2つの力は相手の導体を向いているので、そのなす角は正三角形の内角である60°です。
合力は2力のちょうど真ん中を向くので、それぞれを \(\cos(60^\circ/2)\) 倍して2つ足す
合力は \(\sqrt3\) 倍
大きさの等しい2つの力を角度 \(\theta\) で合成すると \(2F\cos(\theta/2)\)——これはひし形の対角線を考えれば導けます。60°なら \(\sqrt3F\)、90°なら \(\sqrt2F\)、0°なら \(2F\) です。


誤答の正体:選択肢が「誤りの見本市」になっている
| 誤り方 | 計算 | 値〔N/m〕 | 選択肢 |
| 対称だから打ち消すと考える | — | 0 | (1) |
| 1組ぶんの力だけ答える | \(F\) | \(9.80\times10^{-5}\) | (2) |
| 正しい計算 | \(\sqrt3F\) | \(1.70\times10^{-4}\) | (3) ◎ |
| 角度を無視してそのまま足す | \(2F\) | \(1.96\times10^{-4}\) | (4) |
| 3本ぶんと考える | \(3F\) | \(2.94\times10^{-4}\) | (5) |
5つの選択肢すべてが典型的な誤りに対応しています。とくに(4)は「ベクトルであることを忘れて単純に足した」答え、(5)は「導体が3本だから3倍」という数え違いです。
⚠️ よくある間違い
(1)の「0」を選ぶ誤解——「正三角形で対称だから力は打ち消し合う」と考えてしまうケースです。打ち消し合うのは3つの力がある場合で、自分自身は自分に力を及ぼさないので、受ける力は2つだけ。2つの力は打ち消し合いません。
💡 覚え方
合力の向きは「三角形の中心(重心)に向かう」と覚えてください。3本とも同じ向きの電流なので互いに引き合い、3本とも中心へ引き寄せられます。向きが分かれば、大きさは \(2F\cos30^\circ\) で計算できます。
深掘り:この力は実務でどう効くか
三相の送電線や母線は、まさにこの配置です。正三角形配置(三角配列)は実際の架空送電線でよく使われます。
平常時の電流なら力はごくわずかですが、短絡事故時には数十kAが流れます。力は電流の2乗に比例するので、電流が1 000倍になれば力は100万倍です。
7 A で \(9.8\times10^{-5}\) N/m
1 m あたり約10 kgf
これが「短絡電磁力」です。母線を支えるがいしや支持金具は、この力に耐えるように設計されます。電流の向きが同じなら引き合い、逆なら反発するので、三相回路では相ごとに力の向きが変わり、複雑な振動が生じます。
「なぜ電磁力の計算を学ぶのか」の答えがここにあります。機器の機械的強度を決める設計値だからです。
⏱️ 本番での進め方
❶ 単位を先に直す。10 cm → 0.1 m。ここを忘れると桁が1つずれる。
❷ 「自分以外は2本」と口に出す。3本だから3倍、という数え違いを防ぐ。
❸ 等しい2力の合成は \(2F\cos(\theta/2)\)。60°なら \(\sqrt3F\)。この形は何度も出る。
❹ 答えの目安:\(F\) と \(2F\) の間に入る。\(\sqrt3=1.73\) 倍なので \(1.7\times10^{-4}\) 付近。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 距離 | 10 cm=0.10 m |
| 2本間の力F | 9.80×10−5 N/m |
| 2力の角度 | 60° |
| 合力 | F0=√3F=1.70×10−4 N/m |
| 答え | (3) |
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