磁気・電磁力14【電験3種 理論】磁気回路の磁気抵抗の性質で誤りはどれ?断面積に反比例!令和5年上期 A問題3 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 令和5年度上期 A問題3 磁気抵抗は断面積に反比例!誤りの記述はどれ?

今回は令和5年度上期 理論科目 A問題3を解説します。磁気回路における磁気抵抗に関する記述(1)〜(5)のうち、誤っているものを1つ選ぶ問題です。

磁気抵抗を表す基本式はm=ℓ/(μA)です。磁路長ℓには比例し、透磁率μと断面積Aには反比例します。また、起磁力を磁束で割った量で、単位はH−1です。

目次

令和5年度上期 理論科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、令和5年度上期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 令和5年度上期 A問題3 問題文
令和5年度上期 理論科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和5年度上期 A問題3

 磁気回路における磁気抵抗に関する次の記述のうち、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 磁気抵抗は、磁気抵抗=起磁力/磁束の式で表される。
(2) 磁気抵抗は、磁路の断面積に比例する。
(3) 磁気抵抗は、比透磁率に反比例する。
(4) 磁気抵抗は、磁路の長さに比例する。
(5) 磁気抵抗の単位は、〔H-1〕である。

出題のポイント:磁気抵抗の式を1本書けば、全部の記述が判定できる

この問題は公式を1つ書き出すだけで終わります。5つの記述はすべて、この式から読み取れる内容だからです。

磁気抵抗の基本式
$$R_m=\frac{l}{\mu A}=\frac{l}{\mu_0\mu_r A}\;\mathrm{[H^{-1}]}$$$$NI=R_m\varPhi\qquad(\text{磁気回路のオームの法則})$$

分子に磁路長 \(l\)、分母に透磁率 \(\mu\) と断面積 \(A\)電気抵抗 \(R=\rho l/A\) と同じ形です。

環状磁心の磁路長と断面積を示し磁気抵抗が磁路長に比例し透磁率と断面積に反比例することを示す図
ℛm=ℓ/(μA)より、磁路長ℓには比例し、透磁率μと断面積Aには反比例します。

各記述の判定

記述式のどこを見るか判定
(1)磁気抵抗 = 起磁力 / 磁束\(NI=R_m\varPhi\) を \(R_m\) について解く◎ 正しい
(2)断面積に比例する\(A\) は分母× 誤り。反比例
(3)比透磁率に反比例する\(\mu_r\) は分母◎ 正しい
(4)磁路の長さに比例する\(l\) は分子◎ 正しい
(5)単位は〔H⁻¹〕である\(R_m=NI/\varPhi\) は A/Wb◎ 正しい

断面積 \(A\) は分母にあります太い磁路ほど磁束が通りやすい=抵抗が小さい——日常の感覚どおりです。(2)は式にも感覚にも反しています

コイルの起磁力NIが環状磁心に磁束Φを生じさせる磁気回路と磁気抵抗の定義及び単位を示す図
磁気回路では起磁力NI=磁気抵抗ℛm×磁束Φであり、ℛm=NI/Φ=ℓ/(μA)です。
答え誤っているのは 選択肢(2) (磁気抵抗は断面積に反比例
磁気抵抗に関する五つの記述を式と単位で判定し断面積に比例するとした選択肢2を誤りと示す表
断面積Aはℛm=ℓ/(μA)の分母にあるため、磁気抵抗はAに反比例します。公式正答は(2)です。

なぜ単位が〔H⁻¹〕になるのか

$$R_m=\frac{NI}{\varPhi}\;\Rightarrow\;\frac{\mathrm{A}}{\mathrm{Wb}}$$
❶ 定義から単位を読む
起磁力は〔A〕(アンペアターンだが単位はA)
$$\mathrm{H}=\frac{\mathrm{Wb}}{\mathrm{A}}\;\Rightarrow\;\mathrm{H^{-1}}=\frac{\mathrm{A}}{\mathrm{Wb}}$$
❷ ヘンリーの定義と比べる
\(\varPhi=LI\) より \(L=\varPhi/I\)
$$\therefore\;R_m\;\text{の単位は}\;\mathrm{H^{-1}}$$
❸ 一致
インダクタンスの逆数の単位

磁気抵抗はインダクタンスと逆数の関係にあります。実際 \(L=\dfrac{N^2}{R_m}\) が成り立ち、磁気抵抗が小さいほどインダクタンスは大きくなります

電気回路との対応表:セットで覚えると忘れない

電気回路磁気回路
起電力 \(E\)〔V〕起磁力 \(NI\)〔A〕
電流 \(I\)〔A〕磁束 \(\varPhi\)〔Wb〕
電気抵抗 \(R=\dfrac{\rho l}{A}\)〔Ω〕磁気抵抗 \(R_m=\dfrac{l}{\mu A}\)〔H⁻¹〕
導電率 \(\sigma=1/\rho\)透磁率 \(\mu\)
オームの法則 \(E=RI\)\(NI=R_m\varPhi\)
直列は足し算、並列は和分の積まったく同じ

\(R=\rho l/A\) と \(R_m=l/(\mu A)\) はそっくりです。抵抗率 \(\rho\) の位置に \(1/\mu\) が入る——つまり透磁率は「磁気の通りやすさ」=導電率にあたる量です。

💡 覚え方
「長さに比例・断面積に反比例」は電気も磁気も同じ長い道は通りにくく、太い道は通りやすい——水道管でも同じことです。この直感さえあれば、(2)は読んだ瞬間におかしいと気づけます。

⚠️ よくある間違い
(3)の「比透磁率に反比例」を誤りと思ってしまうケースがあります。\(\mu=\mu_0\mu_r\) なので\(\mu_r\) も分母——正しい記述です。\(\mu\) と \(\mu_r\) はどちらも分母だと確認しておきましょう。

⏱️ 本番での進め方
❶ まず \(R_m=l/(\mu A)\) を余白に書く。これだけで(2)(3)(4)が同時に判定できる。
❷ 分子か分母かを指で確認する。分子なら比例、分母なら反比例。
❸ 電気抵抗と同じ形だと知っていれば、公式を忘れても \(R=\rho l/A\) から復元できる。
❹ 「誤っているもの」を選ぶ問題。正しい記述に印をつけて消していく。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

磁気回路の使いどころ:エアギャップが支配する

磁気抵抗の考え方が本当に力を発揮するのは、鉄心の一部に空隙(エアギャップ)があるときです。

鉄の比透磁率を1 000、ギャップを空気(1)とすると、同じ長さあたりの磁気抵抗は1 000倍違います。つまりわずか1 mm のギャップが、1 m の鉄心と同じだけ磁束を邪魔することになります。

$$R_{m,\text{鉄}}=\frac{l_{\text{鉄}}}{\mu_0\mu_r A},\qquad R_{m,\text{空隙}}=\frac{l_g}{\mu_0 A}$$
❶ それぞれの磁気抵抗
直列なので単純に足す
$$\frac{R_{m,\text{空隙}}}{R_{m,\text{鉄}}}=\mu_r\times\frac{l_g}{l_{\text{鉄}}}$$
❷ 比を取る
\(\mu_r=1\,000\)、\(l_g/l_{\text{鉄}}=1/1\,000\) なら比は1

「ギャップの長さ×比透磁率」が実質的な鉄心長にあたる——この感覚を持っておくと、磁気回路の計算で何が支配的かが見抜けます。電動機や変圧器の設計でギャップ長が厳しく管理されるのはこのためです。

磁気回路が電気回路と違うところ

対応がきれいなだけに、違う点も押さえておく必要があります。

電気回路磁気回路
漏れ絶縁体でほぼ完全に閉じ込められる漏れ磁束が必ずある(磁気の絶縁体はない)
飽和抵抗率はほぼ一定磁束密度が上がると \(\mu\) が急減する(磁気飽和)
損失電流が流れると必ず発熱直流なら磁束が流れても損失は生じない

とくに「透磁率が一定ではない」点が重要です。\(R_m=l/(\mu A)\) の \(\mu\) 自体が磁束密度によって変わるので、磁気回路の計算は飽和しない範囲でのみ成り立つ近似です。

💡 覚え方
「磁気回路は便利だが、漏れ・飽和・非線形という3つの但し書きがつく」と覚えておいてください。この3点はそのまま論述問題の答案になる知識です。

まとめ

定義式m=NI/Φ=ℓ/(μA)
磁路長ℓ比例
透磁率μ・断面積A反比例
単位H−1(A/Wb)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・磁気回路の関連問題:【理論】平成29年度B問題17

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和5年度下期A問題3(磁気・電磁力11)
【理論】令和4年度上期A問題3(磁気・電磁力19)
【理論】令和4年度上期A問題4(磁気・電磁力20)
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