今回は令和5年度上期 機械科目 A問題13を解説します。R-L回路に単位階段状のステップ電圧を加えたときの電流i(t)の過渡応答波形から、抵抗R、インダクタンスL、周波数伝達関数G(jω)を求める問題です。★平成18年度A問題13(自動制御14)と全く同じ回路・数値の問題で、実質的な再出題にあたります。
電流の最終値i(∞)からRを求め、時定数(63.2%点に達する時刻)からLを求め、最後にG(jω)=1/(R+jωL)の形に整理するという3段階の手順で解きます。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成18年度A問題13 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度上期 機械科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13
電験3種 機械科目 【自動制御】 令和5年度上期 A問題13
図1に示すR-L回路において,端子a,a’間に単位階段状のステップ電圧v(t)[V]を加えたとき,抵抗R[Ω]に流れる電流をi(t)[A]とすると,i(t)は図2のようになった。この回路のR[Ω],L[H]の値及び入力をa,a’間の電圧とし,出力をR[Ω]に流れる電流としたときの周波数伝達関数G(jω)の式として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
R[Ω] L[H] G(jω) (1) 10 0.1 0.1/(1+j0.01ω) (2) 10 1 0.1/(1+j0.1ω) (3) 100 0.01 1/(10+j0.01ω) (4) 10 0.1 1/(10+j0.01ω) (5) 100 0.01 1/(100+j0.01ω)

出題のポイント:波形から2つ、式へ1つ
波形から R と L を読み、伝達関数へ組み立てる——3段階の手順です。選択肢は3つの値の組合せなので、1つ確実に出せれば絞れます。
定常ではリアクトルが短絡と同じ
★L=RT
分母分子を10で割った標準形
R=10 で絞ると、残るのは(1)(2)(4)。L=0.1 でさらに(1)(4)まで絞れます——最後は伝達関数の形で決着です。



答えをボード線図で確かめる
求めた伝達関数がどんな特性を表しているか——ボード線図に直すと、波形との対応が見えてきます。
| 項目 | 値 | 波形との対応 |
| 低域ゲイン | 0.1(=−20 dB) | ★1 V で0.1 A=最終値 |
| 時定数 | 0.01 s | 63.2 %点の時刻 |
| 折れ点角周波数 | 100 rad/s | 時定数の逆数 |
| 高域の傾き | −20 dB/dec | 速い変化には追従できない |
低域ゲインの0.1 は、直流を加えたときの電流——まさに最終値そのものです。時間領域の「最終値」と周波数領域の「低域ゲイン」は同じものを見ています。
時定数と折れ点も同じ関係。時定数が小さい=速く応答する=高い周波数まで追従できる——時間と周波数は表裏一体だと分かります。
「立ち上がりが速い波形なら折れ点は高い」——このつながりを押さえておくと、どちらの形式で問われても対応できます。
最終値の定理という便利な道具
伝達関数から最終値を求める公式もあります。周波数伝達関数なら、ω→0 とするだけです。
★これが単位ステップに対する最終値
単位ステップ(1 V)を加えたのだから、最終値は直流ゲインそのもの——0.1 Aです。波形から読んだ値と一致しました。
これは検算に使えます。求めた伝達関数に ω=0 を代入して、波形の最終値と合うか——合わなければどこかで間違えているのです。
選択肢(4)で確かめてみましょう。1/(10+j0.01ω) に ω=0 を入れると0.1——じつは最終値は合っています。違うのは時定数のほう——だから2つとも確認する必要があるわけです。
⏱️ 本番での進め方
① 最終値0.1 A から R=1/0.1=10 Ω。
② 63.2 %点0.01 s が時定数。L=RT=0.1 H。
③ G=1/(10+j0.1ω)=0.1/(1+j0.01ω)。
④ ω=0 で0.1 になるか、jω の係数がL/R か——2つとも確認。
💡 覚え方
「最終値=直流ゲイン、時定数の逆数=折れ点」——時間領域と周波数領域は同じことを別の言葉で言っている。だから片方から片方が求まるのです。
出題履歴:平成18年度と完全に同一
本問は平成18年度 B問題13と、回路も数値も選択肢も完全に同一です(自動制御:R-L回路のステップ応答と伝達関数)。17年ぶりに、まったく手を加えずに再出題されました。
ここまで同じ問題が出る——過去問を解いておく価値がはっきり分かる例です。自動制御は出題パターンが限られているので、過去問の反復が最も効率のよい対策になります。

R-L回路の過渡現象をもう一段深く
本問のステップ応答は、理論科目の過渡現象そのものです。微分方程式から導かれる——公式の背景を確認しておきましょう。
t=0 では電流が0——リアクトルが電流の変化を妨げるからです。このとき電圧はすべてリアクトルにかかり、di/dt=V/L で立ち上がります。
| 時点 | 電流 | リアクトルの電圧 | 抵抗の電圧 |
| t=0 | 0 | ★V(すべて) | 0 |
| t=T | 0.632V/R | 0.368V | 0.632V |
| t→∞ | V/R | 0 | ★V(すべて) |
電圧の分担が、リアクトルから抵抗へ移っていく——これが過渡現象の中身です。その移り変わりの速さを表すのが時定数になります。
L が大きいほど電流が立ち上がりにくく、R が大きいほど早く落ち着く——T=L/R という形がそれを表しています。本問なら T=0.1/10=0.01 sです。
リアクトルに蓄えられるエネルギーは (1/2)Li2——最終値0.1 A なら 0.5×0.1×0.01=0.5 mJ。このエネルギーを蓄えるのに時間がかかる——それが「遅れ」の物理的な正体だと考えると腑に落ちます。
まとめ
| R | 10 Ω |
| 時定数τ=L/R | 0.01 s |
| L | 0.1 H |
| G(jω) | 0.1/(1+j0.01ω) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・R-L回路のステップ応答(平成18年度の同一問題):【機械】平成18年度A問題13
・L-R1-R2直列回路のステップ応答から回路定数と伝達関数を求める:【機械】令和元年度A問題13

コメント