今回は平成18年度 機械科目 A問題3を解説します。テーマは同期インピーダンスから短絡比を求める計算で、【機械】令和3年度A問題6の%インピーダンスと短絡比を組み合わせた形です。
「短絡比=単位法同期インピーダンスの逆数」――この関係を使うのが最短です。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
定格出力5 MV・A,定格電圧6.6 kV,定格回転速度1 800 min-1の三相同期発電機がある。この発電機の同期インピーダンスが7.26 Ωのとき,短絡比の値として,正しいのは次のうちどれか。
(1) 0.14 (2) 0.83 (3) 1.0 (4) 1.2 (5) 1.5
出題のポイント:使わない条件が混ぜてある
本問には「定格回転速度1 800 min-1」という条件が書かれていますが、短絡比の計算には一切使いません。使わない数値がわざと混ぜてある——「与えられた数字は全部使うはず」という思い込みを試す作りです。
| 与えられた量 | 使うか | 理由 |
| 定格出力 5 MV・A | 使う | 基準容量になる |
| 定格電圧 6.6 kV | 使う | 基準電圧になる |
| 同期インピーダンス 7.26 Ω | 使う | 単位法に直す対象 |
| 定格回転速度 1 800 min-1 | 使わない | 短絡比は回転速度に依存しない |
回転速度が書かれていると、つい周波数や極数を求めたくなります(1 800 min-1 なら60 Hz・4極)。しかしその値は短絡比の式のどこにも現れません——「求めた量が式に入るかどうか」を先に確認するのが、時間を無駄にしないコツです。

単位法に直して逆数を取る
S=5 MV・A、Vn=6.6 kV
分子7.26×5×106、分母66002
%Zs≒83.3 %
選択肢の1.2に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(2) 0.83は単位法の同期インピーダンスそのものです。正しく計算したのに、最後の逆数を取り忘れた——最も惜しい間違い方です。
(1) 0.14はオーム値の逆数(1÷7.26≒0.138)——単位法に直さずにいきなり逆数を取ってしまったときの値です。短絡比は無次元の量ですから、オーム値のまま逆数を取っても意味を持ちません。
「単位法に直す」と「逆数を取る」の2手が本問のすべてで、どちらか一方を飛ばした答えが(1)(2)として用意されています。2手とも踏んだかを、答えを選ぶ前に確認してください。
%Z が大きいと何が起きるか
本問の %Zs≒83 % は、「定格電流を流すと定格電圧の83 %の電圧降下が起きる」という意味です。変圧器の %Z が数%であることと比べると、桁違いに大きいことが分かります。
| 機器 | %Z の目安 | 主な内訳 |
| 変圧器 | 3〜15 % | 漏れリアクタンス |
| 同期発電機 | 80〜200 % | 電機子反作用リアクタンスが主成分 |
この差は、%Z の中身が違うからです。変圧器の %Z は実際に漏れる磁束の分だけですが、同期機の同期インピーダンスは電機子反作用——磁束の打ち消し合いをリアクタンスに置き換えたものが主成分になります。
%Z が大きいということは、短絡電流が小さいということでもあります。変圧器の %Z が5 %なら短絡電流は定格の20倍にもなりますが、同期機は %Z が83 %なので定格の1.2倍——短絡比とはまさにこの倍率そのものだったわけです。
⏱️ 本番での進め方
① 使わない条件(回転速度)に惑わされない。式に入らない量は無視。
② Zs[p.u.]=ZsS/Vn2=7.26×5×106/43.56×106≒0.833。
③ 逆数を取って1.2。
④ 選択肢に0.83があったら「逆数を取ったか」の確認サイン。
💡 覚え方
「短絡比と %Z は逆数どうし。Ks×%Zs=100」。本問なら 1.2×83.3≒100——この掛け算で検算できるので、答えを選ぶ前に一度確かめる習慣をつけましょう。
出題履歴:令和4年下期にも同じ型が出ている
同期インピーダンスから短絡比を求める型は、令和4年下期 A問題5でも出題されています(同期機8:同期インピーダンスから短絡比を求める)。8 000 kV・A・6 600 V・4.73 Ω で答えは1.15——数値が違うだけで解法は完全に同じです。
16年の隔たりがあっても、同じ形で出題される——短絡比は電験3種で最も安定した得点源の1つです。2式(ZsS/V2 と その逆数)を覚えるだけで確実に1問取れるのですから、優先して固めておきたいテーマです。

単位法の基準はいつでも「その機器の定格」
単位法でつまずくのは、基準量が何なのかが曖昧なままだからです。基準は常に「その機器自身の定格容量と定格電圧」——それだけを固定すれば混乱しません。
本問の定格値を入れる
分子は66002
この機械の1 p.u. は8.71 Ω
先ほどと同じ値になる
「8.71 Ω が1 p.u.、実際は7.26 Ω だから0.833 p.u.」——こう考えると、単位法が「定格を1とする物差し」であることが直感的に分かります。公式 ZsS/V2 は、この2段階を1本にまとめただけです。
基準容量が変わると値も変わる
系統計算では、複数の機器の %Z を同じ基準容量にそろえる必要があります。単位法の値は基準容量に比例するので、換算は掛け算1回です。
本問の機械(5 MV・A 基準で83.3 %)を10 MV・A 基準に直せば166.6 %になります。同じ機械なのに数字が変わるのは、物差しを変えたからにすぎません。
だから「%Z が何%か」を言うときは、必ず基準容量とセットです。短絡比は容量に依存しない無次元の量——その機械固有の性格を表す数字として、%Z より扱いやすい面があるのです。
まとめ
| 単位法インピーダンス | \(Z_{s\,\mathrm{p.u.}}=SZ/(10V^2)/100=0.833\) |
| 短絡比 | \(K=1/Z_{s\,\mathrm{p.u.}}=1.20\) |
| 注意 | 回転速度はダミー条件 |
| 答え | (4) |
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