電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成29年度(2017年)A問題7で出題された「三相変圧器の結線と角変位(位相変位)」について、はじめての方でも判断できるように、結線ごとの考え方を整理しながら丁寧に解説します。
この問題は計算ではなく、Δ結線・Y結線・V結線の組合せで一次側と二次側の線間電圧にどれだけ位相差(角変位)が生じるかを問う知識問題です。ポイントはたった一つ、「同じ種類の結線どうしは角変位0、Δ-YやY-Δのように種類が異なると \( \pi/6 \)(30°)ずれる」こと。これまでの【機械】平成27年度A問題8・【機械】平成21年度A問題7・【機械】平成22年度A問題8で学んだ三相結線の総仕上げになります。
平成29年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成29年度 A問題7
図1〜3は、同じ定格の単相変圧器3台を用いた三相の変圧器であり、図4は、同じ定格の単相変圧器2台を用いたV結線三相変圧器である。各図の一次側電圧に対する二次側電圧の位相変位(角変位)の値 [rad] の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、各図において一次電圧の相順は U, V, W とする。

| 図1 | 図2 | 図3 | 図4 | |
| (1) | 進み \(\pi/6\) | 0 | 遅れ \(\pi/6\) | 0 |
| (2) | 遅れ \(\pi/6\) | 0 | 進み \(\pi/6\) | 進み \(\pi/6\) |
| (3) | 遅れ \(\pi/6\) | 0 | 進み \(\pi/6\) | 0 |
| (4) | 進み \(\pi/6\) | 遅れ \(\pi/6\) | 遅れ \(\pi/6\) | 遅れ \(\pi/6\) |
| (5) | 遅れ \(\pi/6\) | 進み \(\pi/6\) | 進み \(\pi/6\) | 進み \(\pi/6\) |
出題のポイント:ルールは1つだけ
4つの図の角変位を答える問題ですが、覚えるべきルールはたった1つです。「同種の結線は0、異種(Δ-Y/Y-Δ)は π/6 ずれる」——これだけ。
| 結線の組合せ | 種類 | 二次側の角変位 |
| Δ-Δ/Y-Y/V-V | 同種 | 0 |
| Δ-Y | 異種 | 進み \( \pi/6 \)(30°) |
| Y-Δ | 異種 | 遅れ \( \pi/6 \)(30°) |
あとは各図がどの結線かを読み取り、表に当てはめるだけです。図を読む作業と、ルールを当てはめる作業を分ける——混ぜて考えると混乱します。

なぜ異種結線だと30°ずれるのか
Y結線とΔ結線では、線間電圧と巻線電圧の関係が違います。この違いが、片側にだけ現れると角変位として残るのです。
| 結線 | 線間電圧と巻線電圧の関係 |
| Δ結線 | 線間電圧=巻線電圧(同相・同じ大きさ) |
| Y結線 | 線間電圧=\( \sqrt{3} \)×相電圧で、相電圧より \( \pi/6 \) 進む |
変圧器の一次巻線と二次巻線は同じ鉄心に巻かれているので、巻線電圧どうしは同相です(減極性なら)。ずれが生じるのは「巻線電圧から線間電圧に変換するとき」だけ——だからその変換が一次と二次で違えば、差が残ります。
| 結線 | 一次側の変換 | 二次側の変換 | 残る角変位 |
| Δ-Y | 0(Δなのでずれない) | \( +\pi/6 \)(Yなので進む) | 二次が \( \pi/6 \) 進む |
| Y-Δ | \( +\pi/6 \) | 0 | 二次が \( \pi/6 \) 遅れる |
| Δ-Δ/Y-Y | 同じ | 同じ | 0(相殺) |
一次側だけが30°進む変換を受ければ、一次を基準に見た二次は30°遅れて見える——これが Y-Δ が「遅れ」になる理屈です。Δ-Y はその逆で「進み」になります。
各図を判定する
| 図 | 一次 − 二次 | 種類 | 二次の角変位 |
| 図1 | Δ − Y | 異種 | 進み \( \pi/6 \) |
| 図2 | Δ − Δ | 同種 | 0 |
| 図3 | Y − Δ | 異種 | 遅れ \( \pi/6 \) |
| 図4 | V − V | Δ相当(同種) | 0 |

☝️ ひっかけの作り方:図4のV-V結線を「別の結線だから角変位がある」と考えてしまうのが罠です。V-V は Δ-Δ から1台の変圧器を取り除いた形——残った2台の巻線の位相関係は Δ-Δ のときと変わりません。だから角変位は0です。選択肢(2)(4)(5)は図4を0以外にしているので、この1点だけで3肢が落ちます。
選択肢の絞り込み方
4つの図をすべて判定する必要はありません。判定しやすい図から順に当てて、選択肢を落としていくのが速い進め方です。
| 絞り込みの順 | 判定 | 落ちる選択肢 |
| ① 図4(V-V)は0 | 同種なので0 | (2)(4)(5) が落ちる |
| ② 図2(Δ-Δ)は0 | 同種なので0 | (4) はすでに落ちている |
| ③ 図1(Δ-Y)は進み | Y側が二次なので進み | (3) が落ちて (1) が残る |
V-V が0だと分かるだけで3肢が消える——最も判定しやすいところから手をつけるのが鉄則です。残る(1)と(3)は図1と図3が逆になっているだけですから、どちらか一方の向きを決めれば決着します。
角変位には国際的な記号表示がある
本問では角変位を「進み π/6」「遅れ π/6」と日本語で表しましたが、実務では時計の文字盤になぞらえた記号で表すのが一般的です。
一次側の線間電圧を時計の12時の位置に置き、二次側の対応する線間電圧がどの時刻を指すか——これで角変位を表します。1時間=30°ですから、12個の目盛りで360°を表せるわけです。
| 記号 | 結線 | 角変位 | 意味 |
| Dd0 | Δ-Δ | 0° | 0時=ずれなし |
| Yy0 | Y-Y | 0° | 同上 |
| Dy1 | Δ-Y | 30°遅れ | 1時=時計回りに30° |
| Dy11 | Δ-Y | 30°進み | 11時=反時計回りに30° |
| Yd11 | Y-Δ | 30°進み | 同上 |
大文字が高圧側、小文字が低圧側の結線を表します。D はΔ結線、Y はY結線、末尾の n は中性点引き出しあり——「Dyn11」なら「高圧側Δ、低圧側Y(中性点あり)、角変位30°進み」という意味です。
日本の配電用変圧器では Dyn11 や Yyn0 がよく使われます。低圧側をY結線にして中性点を接地すれば、単相の低圧が取り出せる——記号を読めば、その変圧器がどう使われるかまで分かるのです。
本問の図1は Δ-Y で二次が進みですから、記号で書けば Dy11。図3は Y-Δ で二次が遅れなので Yd1 にあたります。同じ内容を別の記法で表しているだけ——2つの表し方を行き来できると、実務資料も読めるようになります。
電験3種で記号表示そのものが問われることはまれですが、「角変位は30°の倍数で表される」という感覚は共通です。時計の文字盤を思い浮かべれば、45°のような中途半端な角度があり得ないことも腑に落ちます——平成27年度の「45°」という誤りの選択肢も、この感覚で見抜けます。
⏱️ 本番での進め方
① 同種は0、異種は π/6。ルールはこれだけ。
② V-V は Δ の仲間なので0。ここで3肢が落ちることが多い。
③ Δ-Y は二次が進み、Y-Δ は二次が遅れ。
④ 全部の図を判定しなくてよい。落としやすい図から当てる。
💡 覚え方
「Y側が二次なら進み、Y側が一次なら遅れ」——Y結線のほうが30°進むのだから、それが二次側にあれば二次が進み、一次側にあれば相対的に二次が遅れる。Y がどちら側にあるかで向きが決まると考えれば、丸暗記が要りません。
関連問題:角変位は繰り返し問われる
角変位は結線図から読み取らせる形、数値を答えさせる形、並行運転の条件として問う形と、さまざまな角度から出題されています(変圧器44:三相変圧器の結線と角変位(Y-Δは30°遅れ)/変圧器45:三相電源に接続する変圧器/変圧器42:並行運転の条件(角変位))。
いずれも「同種0・異種30°」という1つのルールで対応できます——これほど費用対効果の高い知識は、機械科目でも数えるほどです。


コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 変圧器の並行運転で生じる循環電流は、「二次起電力の差 ÷ 合成インピーダンス」で求めるのが鉄則です。並行運転の条件とあわせて理解しておけば、確実に得点できます。三相結線の変圧器28など、ほかの変圧器記事もぜひご覧ください。 […]