電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成22年度(2010年)A問題8で出題された「接地変圧器(Y-開放Δ結線)と抵抗の一次換算」について、はじめての方でも理解できるように、結線の仕組みから計算まで一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単相変圧器3台を一次Y・二次「開放三角(オープンΔ)」結線にした接地変圧器を題材に、二次側の抵抗を一次側へ換算した値を求める問題です。少し特殊な結線ですが、「巻数比 \( n \)」と「抵抗を3等分して \( n^2 \) 倍する」という2つのポイントを押さえれば確実に解けます。三相結線の基礎は【機械】平成27年度A問題8・【機械】平成21年度A問題7もあわせてどうぞ。
平成22年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成22年度 A問題8
単相変圧器3台が図に示すように 6.6 [kV] 電路に接続されている。一次側は星形(Y)結線、二次側は開放三角結線とし、一次側中性点は大地に接続され、二次側開放端子には図のように抵抗 \( R_0 \) が負荷として接続されている。三相電圧が平衡している通常の状態では、各相が打ち消しあうため二次側開放端子には電圧は現れないが、電路のバランスが崩れ不平衡になった場合や電路に地絡事故などが発生した場合には、二次側開放端子に電圧が現れる。このとき、二次側の抵抗負荷 \( R_0 \) は各相が均等に負担することになる。いま、各単相変圧器の定格一次電圧が \( 6.6/\sqrt{3} \) [kV]、定格二次電圧が \( 110/\sqrt{3} \) [V] で、二次接続抵抗 \( R_0 = 10 \) [Ω] の場合、一次側に換算した1相当たりの二次抵抗 [kΩ] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、変圧器は理想変圧器であり、一次巻線、二次巻線の抵抗及び損失は無視するものとする。(1) 4.00 (2) 6.93 (3) 12.0 (4) 20.8 (5) 36.0

出題のポイント:抵抗を3等分してから n² 倍する
接地変圧器(GPT)の問題です。特殊な結線に見えますが、計算で使うのは2つの操作だけ——「抵抗を3等分」と「巻数比の2乗を掛ける」です。
問題文が「二次側の抵抗負荷 R0 は各相が均等に負担する」とはっきり書いてくれています。3台の変圧器が直列に開放三角を作っており、そこに R0 が1個つながっている——だから1台あたりの負担は R0/3 です。

巻数比を求める
各単相変圧器の定格は「一次 6.6/√3 kV、二次 110/√3 V」——どちらも √3 で割られているので、比を取れば √3 が約分されて消えます。
√3 が分子・分母で約分される
きれいに60
「6.6/√3 kV」という書き方に身構える必要はありません。一次も二次も同じように √3 で割られているので、比を取った瞬間に消えます——実質は6 600/110=60という単純な話です。
抵抗を換算する
3台が均等に負担する
インピーダンスは n2 倍
選択肢の12.0に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(5) 36.0 kΩは3等分するのを忘れたときの値(3 600×10=36 000 Ω)です。問題文が「各相が均等に負担する」と書いているのは、この3等分をさせるため——読み飛ばすとちょうど3倍の答えになります。
(1) 4.00 kΩは逆に9で割ったような値、(2) 6.93 kΩは12.0/√3——√3 の扱いを誤った値です。
☝️ ひっかけの作り方:「6.6/√3 kV」という定格表記に惑わされて √3 を持ち込むのが、(2) 6.93 kΩ に落ちる原因です。一次も二次も同じ √3 で割られているのだから、比には影響しない——約分できるものは先に約分するのが安全です。
接地変圧器は何のためにあるのか
接地変圧器(GPT/EVT)は、地絡事故を検出するための装置です。非接地系統では地絡電流がごく小さく、電流では検出しにくい——そこで「零相電圧」を検出します。
| 状態 | 三相の電圧 | 開放端子に現れる電圧 |
| 正常 | 平衡(3つのベクトルの和が0) | 0 V |
| 1線完全地絡 | 不平衡(零相電圧が発生) | 110 V(定格) |
3台の二次巻線を開放三角に接続すると、3相の電圧の「和」が開放端子に現れます。正常時は3つのベクトルの和が0なので電圧は出ません——地絡すると平衡が崩れて電圧が現れるという仕組みです。
各相の二次定格が110/√3 Vなのは、完全地絡時に開放端子へちょうど110 V が現れるようにするためです。3相分が足し合わさって √3 倍になるので、1相あたりは110/√3 V にしておく——定格表記に意味があるのです。
抵抗 R0 は制限抵抗と呼ばれ、地絡時に適度な電流を流して継電器を確実に動作させる役目を持ちます。また間欠地絡による異常電圧(消弧現象)を抑える効果もあります——単なる負荷ではなく、系統保護の一部です。
なぜ地絡すると開放端子に電圧が現れるのか
問題文は「通常は電圧が現れず、地絡すると現れる」と書いていますが、その理由まで踏み込むと、この結線の巧みさが分かります。
3台の変圧器の二次巻線は、直列につながって開放三角を作っています。開放端子に現れるのは、3つの二次電圧のベクトル和——この和が0か0でないかが分かれ目です。
| 状態 | 各相の一次電圧 | 3つのベクトル和 | 開放端子の電圧 |
| 正常(平衡) | 大きさが等しく120°ずつずれる | 0 | 0 V |
| 1線完全地絡 | 地絡相が0、他の2相が √3 倍に上昇 | 0でない(零相電圧) | 110 V |
正常時は、3つの相電圧を足すとちょうど0になります。120°ずつずれた同じ大きさのベクトル3つの和は0——正三角形が閉じるのと同じ理屈です。
ところが1線が地絡すると、その相の対地電圧が0になります。中性点の電位がずれ、健全な2相の対地電圧は √3 倍に上昇——3つのベクトルの和が0でなくなります。
この「和」が零相電圧です。完全地絡時には、一次側の零相電圧が相電圧の3倍になり、二次側では 110/√3×3=110√3……ではなく、巻線が直列なので単純に3倍して110 V——定格が110/√3 V に設定されている理由がここにあります。
制限抵抗 R0 の役目
開放端子に抵抗をつなぐのは、電圧を測るためだけではありません。間欠地絡による異常電圧を抑えるという重要な役目があります。
非接地系統では、地絡点でアークが点いたり消えたりする間欠地絡が起こり得ます。そのたびに線路の静電容量とインダクタンスが共振し、正常時の何倍もの過電圧が発生する——これを消弧現象(アーキンググラウンド)と呼びます。
制限抵抗を入れると、そのエネルギーが抵抗で消費されて振動が減衰します。また地絡時に適度な電流を流すことで、地絡継電器を確実に動作させる——検出と保護の両方を担っているのです。
本問で計算した「一次換算12 kΩ」は、この抵抗が系統から見てどれくらいの大きさに見えるかを表しています。10 Ω という小さな抵抗が、一次側では12 kΩ の大きな抵抗として働く——巻数比の2乗の効果です。
⏱️ 本番での進め方
① 巻数比は 6 600/110=60。√3 は約分で消える。
② 1相の負担は R0/3=3.33 Ω。
③ 一次換算は n2=3 600 倍。3.33×3 600=12 000 Ω。
④ 3等分を忘れると36.0 kΩ。「均等に負担」の一文を見落とさない。
💡 覚え方
「3等分してから n2 倍」——順番はどちらでも同じですが、2つの操作があることを忘れないのが肝心です。そして「√3 は約分で消える」——定格表記の √3 に惑わされないこと。


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