電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成22年度(2010年)A問題8で出題された「接地変圧器(Y-開放Δ結線)と抵抗の一次換算」について、はじめての方でも理解できるように、結線の仕組みから計算まで一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単相変圧器3台を一次Y・二次「開放三角(オープンΔ)」結線にした接地変圧器を題材に、二次側の抵抗を一次側へ換算した値を求める問題です。少し特殊な結線ですが、「巻数比 \( n \)」と「抵抗を3等分して \( n^2 \) 倍する」という2つのポイントを押さえれば確実に解けます。三相結線の基礎は変圧器25・変圧器26もあわせてどうぞ。
出題のポイント:係数「1/3」を見落とさない
この問題の最大のヤマは、二次側の抵抗 \( R_0 \) を一次側へ換算するときに係数 \( \dfrac{1}{3} \) がつく点です。開放Δ結線では、3つの二次巻線が直列につながって \( R_0 \) を均等に分担します。そのため1巻線あたりが受け持つ抵抗は \( R_0/3 \) となり、これを巻数比の2乗 \( n^2 \) で一次側へ換算します。この「1/3」を忘れると、誤った選択肢(36 kΩ)を選んでしまう仕掛けになっています。
平成22年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 【変圧器】 平成22年度 A問題8
単相変圧器3台が図に示すように 6.6 [kV] 電路に接続されている。一次側は星形(Y)結線、二次側は開放三角結線とし、一次側中性点は大地に接続され、二次側開放端子には図のように抵抗 \( R_0 \) が負荷として接続されている。三相電圧が平衡している通常の状態では、各相が打ち消しあうため二次側開放端子には電圧は現れないが、電路のバランスが崩れ不平衡になった場合や電路に地絡事故などが発生した場合には、二次側開放端子に電圧が現れる。このとき、二次側の抵抗負荷 \( R_0 \) は各相が均等に負担することになる。いま、各単相変圧器の定格一次電圧が \( 6.6/\sqrt{3} \) [kV]、定格二次電圧が \( 110/\sqrt{3} \) [V] で、二次接続抵抗 \( R_0 = 10 \) [Ω] の場合、一次側に換算した1相当たりの二次抵抗 [kΩ] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、変圧器は理想変圧器であり、一次巻線、二次巻線の抵抗及び損失は無視するものとする。(1) 4.00 (2) 6.93 (3) 12.0 (4) 20.8 (5) 36.0
問題の解説:接地変圧器の抵抗を一次換算する手順
方針は「①接地変圧器(Y-開放Δ)の仕組みを押さえる → ②巻数比 \( n \) を相電圧から求める → ③ \( R_0 \) を3等分して \( n^2 \) 倍で一次換算する」です。


ステップ1:接地変圧器(Y-開放Δ結線)の仕組み
接地変圧器は、地絡や電圧の不平衡で生じる零相(ぜろそう)電圧を取り出すための変圧器です。一次側はY結線で中性点を接地し、二次側は3つの巻線を直列にして一部を開いた開放三角(オープンΔ)結線とし、その開放端に抵抗 \( R_0 \) を入れます。
三相が平衡している平常時は、3相の電圧がちょうど打ち消し合うため \( R_0 \) には電圧が現れません。ところが、地絡などで不平衡が生じると零相電圧が現れ、3つの二次巻線が直列に \( R_0 \) を均等に負担します。この「3巻線が直列で1つの \( R_0 \) を分け合う」点が、後の係数 \( 1/3 \) につながります。
ステップ2:与えられた条件の整理
問題文から、以下の条件が読み取れます。電圧はいずれも「1相(巻線1個)あたり」の定格値で与えられている点に注意します。
| 条件 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 定格一次電圧(1相) | \( E_1 \) | \( 6.6/\sqrt{3} \) [kV] |
| 定格二次電圧(1相) | \( E_2 \) | \( 110/\sqrt{3} \) [V] |
| 二次の接続抵抗 | \( R_0 \) | 10 [Ω] |
| 求める一次換算1相抵抗 | \( R_1 \) | ? [kΩ] |
ステップ3:巻数比 n を求める
巻数比 \( n \) は、定格の相電圧(巻線1相あたりの電圧)の比です。分母・分子の \( \sqrt{3} \) が約分され、シンプルな値になります。
$$n = \frac{E_1}{E_2} = \frac{6.6 \times 10^3 / \sqrt{3}}{110 / \sqrt{3}} = \frac{6600}{110} = 60$$
ステップ4:R₀ を3等分して一次側へ換算
開放Δの3巻線が \( R_0 \) を均等に分担するので、1巻線あたりが受け持つ抵抗は \( R_0/3 \)。これを巻数比の2乗 \( n^2 \) で一次側へ換算したものが、求める1相当たりの抵抗 \( R_1 \) です。
$$R_1 = n^2 \times \frac{R_0}{3} = \frac{1}{3}\,n^2 R_0$$
ステップ5:数値を代入して計算
ステップ3・4の結果を代入します。
$$R_1 = \frac{1}{3} \times 60^2 \times 10 = \frac{36000}{3} = 12000 \text{ [Ω]} = 12 \text{ [kΩ]}$$
したがって、正解は (3) 12.0 です。
計算結果の妥当性チェック
もし「1/3」を忘れて \( n^2 R_0 = 60^2 \times 10 = 36000 \) [Ω] \( = 36 \) [kΩ] としてしまうと、選択肢(5)の 36.0 になります。これは出題者が用意した典型的なひっかけです。開放Δでは「3巻線で \( R_0 \) を分担する=1/3」という構造を思い出せば、正しく 12 kΩ にたどり着けます。
ポイント解説:接地変圧器を理解する
計算自体は巻数比と割り算だけですが、結線の意味を理解しておくと応用問題にも強くなります。
1. 接地変圧器(GVT)の役割
高圧の非接地系統では、地絡(1線地絡)が起きても線間電圧はほぼ保たれるため、地絡の検出が難しくなります。そこで接地変圧器を使い、地絡時に現れる零相電圧を開放Δの端子から取り出して、地絡継電器の動作信号や検出に利用します。 \( R_0 \) は、検出回路を安定させたり過電圧を抑えたりするための制限抵抗の役割を持ちます。
2. なぜ「1/3」がつくのか
開放Δ結線では、零相電圧に対して3つの二次巻線が直列につながり、1つの \( R_0 \) を共有します。各巻線から見ると、負担する抵抗は \( R_0 \) を3等分した \( R_0/3 \)。1巻線(1相)あたりの等価回路で考えるため、一次換算抵抗にも \( 1/3 \) が残るのです。
3. √3 が消えるのはなぜか
巻数比は巻線1相あたりの電圧の比で決まります。今回は一次・二次の定格電圧がどちらも「相電圧( \( \div\sqrt{3} \) した値)」で与えられているため、比をとると \( \sqrt{3} \) が約分されて消えます。結果として \( n = 6600/110 = 60 \) ときれいな値になります。線間で与えられているのか相電圧で与えられているのかを毎回確認する習慣をつけましょう。
まとめ:接地変圧器の抵抗換算フロー
今回の計算結果を表にまとめます。
| ステップ | 式 | 値 |
|---|---|---|
| 巻数比 | \( 6600 \div 110 \) | \( n = 60 \) |
| 1巻線の負担 | \( R_0 \div 3 \) | \( 10/3 \) Ω |
| 一次換算( \( \times n^2 \) ) | \( (1/3)\times 60^2 \times 10 \) | 12 kΩ |
接地変圧器(Y-開放Δ結線)の抵抗換算は、「巻数比 \( n \) を相電圧から求める → \( R_0 \) を3等分して \( n^2 \) 倍する(係数1/3)」という流れがすべてです。少し珍しい結線ですが、構造を理解すれば確実に得点できます。あわせて変圧器25(Δ-Y結線)・変圧器26(Y-Δ結線)で三相結線の基礎を固めておきましょう!

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