電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成27年度(2015年)A問題8で出題された「三相変圧器のΔ-Y結線と巻数比」について、はじめての方でも確実に解けるように、三相結線の基礎から一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単相変圧器3台を組み合わせて三相で使うときの「巻数比」を求める問題です。一見ややこしく見えますが、「線間の値」と「1相(巻線)の値」を区別するというコツさえつかめば、確実に得点できる典型パターンです。Δ結線・Y結線の関係をマスターしましょう。
出題のポイント:なぜ「線間」と「1相」を区別するのか?
変圧器の巻数比は、あくまで巻線1相あたりの電圧の比で決まります。ところが三相回路で与えられる電圧・電流は、ふつう「線間電圧」や「線電流」です。Δ結線とY結線では、この線間(線)の値と巻線1相の値の関係が異なるため、ここを取り違えると \( \sqrt{3} \) 倍の誤差が生じて不正解になります。まずは結線ごとの関係式を正確に押さえることが、この問題を解くカギになります。
平成27年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 【変圧器】 平成27年度 A問題8
一次側の巻数が \( N_1 \)、二次側の巻数が \( N_2 \) で製作された、同一仕様3台の単相変圧器がある。これらを用いて一次側を Δ結線、二次側を Y結線として抵抗負荷、一次側に三相発電機を接続した。発電機を電圧 440 V、出力 100 kW、力率 1.0 で運転したところ、二次電流は三相平衡の 17.5 A であった。この単相変圧器の巻数比 \( N_1/N_2 \) の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、変圧器の励磁電流、インピーダンス及び損失は無視するものとする。(1) 0.13 (2) 0.23 (3) 0.40 (4) 4.3 (5) 7.5
問題の解説:Δ-Y結線の巻数比を求める手順
それでは、順を追って解いていきましょう。方針は「①巻数比=巻線電圧の比 であることを思い出す → ②二次巻線電圧 \( V_2 \) を求める → ③一次巻線電圧 \( V_1 \) を求める → ④比をとる」です。


ステップ1:Δ結線・Y結線の電圧・電流の関係を確認
三相結線における「線間(線)の値」と「巻線1相の値」の関係は、次のとおりです。これは丸暗記しておきましょう。
Δ(デルタ)結線:
巻線電圧 \( = \) 線間電圧 / 巻線電流 \( = \dfrac{\text{線電流}}{\sqrt{3}} \)
Y(スター)結線:
巻線電圧 \( = \dfrac{\text{線間電圧}}{\sqrt{3}} \) / 巻線電流 \( = \) 線電流
ポイントは、Δは電圧がそのまま(電流が \( 1/\sqrt{3} \))、Yは電流がそのまま(電圧が \( 1/\sqrt{3} \))という対称的な関係です。今回は一次がΔ、二次がYなので、それぞれ都合のよい量がそのまま使えます。
ステップ2:与えられた条件の整理
問題文から、以下の条件が読み取れます。
| 条件 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 一次側の線間電圧(発電機電圧) | \( V_{L1} \) | 440 [V] |
| 三相出力(力率1.0) | \( P \) | 100 [kW] |
| 二次側の線電流 | \( I_{L2} \) | 17.5 [A] |
| 求める巻数比 | \( N_1 / N_2 \) | ? |
そして、解くうえで最も大切な考え方が、「3台の単相変圧器が、全体の電力を3等分して受け持つ」という点です。1台あたりが扱う電力 \( P_1 \) は、次のようになります。
$$P_1 = \frac{P}{3} = \frac{100 \times 10^3}{3} \fallingdotseq 33.3 \times 10^3 \text{ [W]}$$
ステップ3:二次巻線電圧 V₂ を求める
二次側はY結線なので、巻線電流 \( = \) 線電流 \( = 17.5 \) [A] がそのまま使えます。1台の変圧器が受け持つ電力 \( P_1 \) を、この巻線電流で割れば、二次巻線電圧 \( V_2 \) が求まります(力率1.0の抵抗負荷なので、皮相電力=有効電力です)。
$$V_2 = \frac{P_1}{I_2} = \frac{\,100 \times 10^3 / 3\,}{17.5} = \frac{100000}{3 \times 17.5} \fallingdotseq 1905 \text{ [V]}$$
ステップ4:一次巻線電圧 V₁ を求める
一次側はΔ結線なので、巻線電圧 \( = \) 線間電圧。発電機の線間電圧がそのまま1相の巻線にかかります。
$$V_1 = V_{L1} = 440 \text{ [V]}$$
ステップ5:巻数比 N₁ / N₂ を計算
巻数比は巻線電圧の比に等しいので、ステップ3・4の結果を代入します。
$$\frac{N_1}{N_2} = \frac{V_1}{V_2} = \frac{440}{1905} \fallingdotseq 0.231$$
四捨五入すると約 0.23 となります。したがって、正解は (2) 0.23 です。
計算結果の妥当性チェック
試験本番では、求めた答えが妥当かを別の視点で確認する習慣をつけると、ケアレスミスを大きく減らせます。巻数比は電流の比(逆比)でも確認できます。一次巻線電流 \( I_1 \) は、Δ結線なので \( I_1 = P_1 / V_1 = 33.3 \times 10^3 / 440 \fallingdotseq 75.8 \) [A]。これを用いると、
$$\frac{N_1}{N_2} = \frac{I_2}{I_1} = \frac{17.5}{75.8} \fallingdotseq 0.23$$
電圧から求めた値と一致しました。巻数比が1より小さい(=二次の巻数が多い昇圧)という結果も、440 V を約1905 V に昇圧していることと矛盾せず、妥当だと判断できます。
ポイント解説:三相結線でつまずかないために
計算自体は割り算だけでシンプルですが、三相結線の考え方でつまずく人が多いところです。背景を理解しておくと、応用問題にも対応しやすくなります。
1. 「1台あたり」で考えるのが最大のコツ
三相の問題でも、単相変圧器1台に注目すれば、結局は「巻線電圧 × 巻線電流 = その変圧器が扱う電力」という単相の関係に落とし込めます。3台で対称に分担しているので、1台あたりの電力は全体の \( 1/3 \)。この発想ができれば、Δ-Y でも Y-Δ でも同じ手順で解けます。
2. ΔとYで「そのまま使える量」を見抜く
Δ結線は電圧がそのまま(線間=巻線)、Y結線は電流がそのまま(線電流=巻線電流)です。今回は一次Δなので電圧 \( V_1 = 440 \) V がそのまま、二次Yなので電流 \( I_2 = 17.5 \) A がそのまま使えました。「どちらがそのまま使えるか」を最初に見抜くと、 \( \sqrt{3} \) を掛けるか割るかで迷わなくなります。
3. なぜ励磁電流やインピーダンスを無視できるのか
問題文に「励磁電流、インピーダンス及び損失は無視する」とあるのは、変圧器を理想変圧器として扱ってよいという意味です。これにより「入力電力=出力電力」「巻数比=電圧比=電流の逆比」が厳密に成り立ち、巻線電圧と巻線電流だけで巻数比が決まります。実際の変圧器では多少の損失や電圧降下がありますが、巻数比を問う問題では理想化して考えるのが定石です。
まとめ:Δ-Y結線と巻数比の解法フロー
今回の計算結果を表にまとめます。
| 量 | 一次側(Δ結線) | 二次側(Y結線) |
|---|---|---|
| 巻線電圧 | \( V_1 = 440 \) V(=線間) | \( V_2 \fallingdotseq 1905 \) V |
| 巻線電流 | \( I_1 \fallingdotseq 75.8 \) A | \( I_2 = 17.5 \) A(=線電流) |
| 1台あたりの容量 | \( 100\,\text{kW} \div 3 \fallingdotseq 33.3 \) kV·A(力率1.0) | |
| 巻数比 \( N_1/N_2 \) | 440 / 1905 ≒ 0.23 | |
三相変圧器のΔ-Y結線・巻数比は、電験3種で繰り返し問われる重要パターンです。「①1台あたりで考える → ②Δは電圧そのまま・Yは電流そのまま → ③巻線電圧の比をとる」という流れをマスターして、確実に得点できるようにしておきましょう!

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