電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成21年度(2009年)A問題7で出題された「三相変圧器のY-Δ結線と変圧比」について、はじめての方でも確実に解けるように、三相結線の基礎から一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単相変圧器3台を一次側Y(星形)・二次側Δ(三角)結線で組み合わせ、抵抗負荷をつないだときの「変圧比」を求める問題です。前回の変圧器25(Δ-Y結線)とちょうど逆のパターンになっており、「線間の値と1相(巻線)の値の区別」+「負荷から電圧を逆算する」という2つのコツがカギになります。
出題のポイント:電圧が直接与えられない二次側をどう攻めるか
変圧比(巻数比)は、あくまで巻線1相あたりの電圧の比 \( n = V_1 / V_2 \) で決まります。一次側は線間電圧3300 Vが与えられているので巻線電圧をすぐ求められますが、二次側は電圧が直接与えられていません。そこで、二次側につながれた負荷(星形20Ω)と負荷電流から、二次側の電圧を逆算するのがこの問題の最大のポイントです。Y結線・Δ結線で線間と1相の関係が変わる点に注意して進めましょう。
平成21年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 【変圧器】 平成21年度 A問題7
同一仕様である3台の単相変圧器の一次側を星形結線、二次側を三角結線にして、三相変圧器として使用する。20 [Ω] の抵抗器3個を星形に接続し、二次側に負荷として接続した。一次側を 3300 [V] の三相高圧母線に接続したところ、二次側の負荷電流は 12.7 [A] であった。この単相変圧器の変圧比として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、変圧器の励磁電流、インピーダンス及び損失は無視するものとする。(1) 4.33 (2) 7.50 (3) 13.0 (4) 22.5 (5) 39.0
問題の解説:Y-Δ結線の変圧比を求める手順
方針は「①変圧比=巻線電圧の比 を思い出す → ②二次巻線電圧 \( V_2 \) を負荷から求める → ③一次巻線電圧 \( V_1 \) を求める → ④比をとる」です。


ステップ1:Y結線・Δ結線の電圧・電流の関係を確認
三相結線における「線間(線)の値」と「巻線1相の値」の関係は、次のとおりです。丸暗記しておきましょう。
Y(スター)結線:
巻線電圧 \( = \dfrac{\text{線間電圧}}{\sqrt{3}} \) / 巻線電流 \( = \) 線電流
Δ(デルタ)結線:
巻線電圧 \( = \) 線間電圧 / 巻線電流 \( = \dfrac{\text{線電流}}{\sqrt{3}} \)
今回は一次がY、二次がΔです。一次側は「巻線電圧=線間÷√3」、二次側は「巻線電圧=線間電圧」がそのまま使えます。
ステップ2:与えられた条件の整理
問題文から、以下の条件が読み取れます。
| 条件 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 一次側の線間電圧 | \( V_{L1} \) | 3300 [V] |
| 負荷抵抗(星形に3個) | \( R \) | 20 [Ω] |
| 二次側の線電流(負荷電流) | \( I_{L2} \) | 12.7 [A] |
| 求める変圧比 | \( n = V_1 / V_2 \) | ? |
ステップ3:二次巻線電圧 V₂ を負荷から求める
二次側の電圧は直接与えられていないので、負荷から逆算します。負荷は星形に接続された20 Ωの抵抗なので、各抵抗を流れる相電流 \( = \) 線電流 \( = 12.7 \) [A]。抵抗1個にかかる電圧(負荷の相電圧)は次のとおりです。
$$V_R = R \, I_2 = 20 \times 12.7 = 254 \text{ [V]}$$
星形負荷なので、負荷の線間電圧は相電圧の \( \sqrt{3} \) 倍。これが二次側の線間電圧であり、二次側はΔ結線なので二次巻線電圧 \( V_2 \) = 二次線間電圧となります。
$$V_2 = \sqrt{3} \, V_R = \sqrt{3} \times 254 = 254\sqrt{3} \fallingdotseq 440 \text{ [V]}$$
ステップ4:一次巻線電圧 V₁ を求める
一次側はY結線なので、巻線電圧 \( = \) 線間電圧 \( \div \sqrt{3} \)。高圧母線の線間電圧3300 Vから求めます。
$$V_1 = \frac{V_{L1}}{\sqrt{3}} = \frac{3300}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 1905 \text{ [V]}$$
ステップ5:変圧比 n を計算
変圧比は巻線電圧の比なので、ステップ3・4の結果を代入します。
$$n = \frac{V_1}{V_2} = \frac{1905}{440} \fallingdotseq 4.33$$
したがって、正解は (1) 4.33 です。
計算結果の妥当性チェック
√3を残したまま計算しても、同じ値になることを確認できます。
$$n = \frac{V_1}{V_2} = \frac{3300/\sqrt{3}}{254\sqrt{3}} = \frac{3300}{254 \times 3} \fallingdotseq 4.33$$
一次1905 V を二次440 V へと下げる降圧の使い方なので、変圧比が1より大きい(≒4.33)という結果は直感とも一致し、妥当だと判断できます。
ポイント解説:Y-Δ結線でつまずかないために
計算自体は掛け算・割り算だけですが、三相結線と「負荷からの逆算」でつまずく人が多いところです。考え方を押さえておきましょう。
1. 電圧が無ければ「負荷」から逆算する
二次側の電圧が与えられていなくても、負荷(抵抗)と電流が分かれば \( V = R\,I \) で電圧を作り出せます。今回は「相電流→相電圧→線間電圧」の順にたどることで、二次側の電圧を確定させました。この「負荷から電圧を逆算する」発想は、他の変圧器・三相回路の問題でも頻繁に使います。
2. YとΔで「そのまま使える量」を見抜く
Y結線は巻線電圧が線間の \( 1/\sqrt{3} \)、Δ結線は巻線電圧がそのまま線間電圧です。今回は一次Yなので \( V_1 = 3300/\sqrt{3} \)、二次Δなので \( V_2 = \) 二次線間電圧、と機械的に処理できました。前回のΔ-Y結線(変圧器25)と見比べると、YとΔの役割が入れ替わっているのが分かります。
3. 「変圧比」と「巻数比」は同じもの
励磁電流・インピーダンス・損失を無視できる理想変圧器では、変圧比(電圧比)=巻数比 \( N_1/N_2 \) =電流の逆比 が厳密に成り立ちます。つまり、巻線1相の電圧の比を求めれば、それがそのまま巻数比になります。問題文で「変圧比」と問われても「巻数比」と問われても、やることは同じです。
まとめ:Y-Δ結線と変圧比の解法フロー
今回の計算結果を表にまとめます。
| 量 | 一次側(Y結線) | 二次側(Δ結線) |
|---|---|---|
| 結線の効果 | 巻線電圧 = 線間 ÷ √3 | 巻線電圧 = 線間電圧 |
| 巻線電圧 | \( V_1 = 3300/\sqrt{3} \fallingdotseq 1905 \) V | \( V_2 = 254\sqrt{3} \fallingdotseq 440 \) V |
| 変圧比 \( n = V_1/V_2 \) | 1905 / 440 ≒ 4.33 | |
三相変圧器のY-Δ結線・変圧比は、「①変圧比=巻線電圧の比 → ②電圧が無い側は負荷から逆算 → ③Yは線間÷√3・Δは線間そのまま」という流れで攻略できます。変圧器25のΔ-Y結線とセットで覚えて、三相結線の問題を確実に得点源にしましょう!

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