電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成28年(2016年)A問題8で出題された「変圧器の巻線抵抗の温度補正」について、初心者の方でも理解できるように基礎から丁寧に解説します。
変圧器の効率を計算する際、巻線の抵抗値は温度によって変化するため、基準温度での値に補正する必要があります。この問題を通じて、銅導体の抵抗と温度の関係性、そして温度補正の計算方法をマスターしましょう。
出題のポイント:なぜ温度補正が必要なのか?
金属導体(特に変圧器の巻線に用いられる銅)は、温度が上昇すると電気抵抗も大きくなる性質を持っています。そのため、室温(例えば20℃)で測定した抵抗値をそのまま定格状態(高温状態)での損失計算に用いると、実際の損失を過小評価してしまいます。正確な定格効率を求めるためには、基準温度(通常は75℃)における抵抗値に補正する計算が不可欠です。
平成28年 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 【変圧器】 平成28年 A問題8
変圧器の定格効率を計算する場合、巻線の抵抗値は基準温度 75℃における値に補正する。
ある変圧器の巻線の温度と抵抗値を測定したところ、20℃において 1.0 Ωであった。
この変圧器の巻線の抵抗値 [Ω] として、最も近いものを、次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、巻線は銅導体であり、抵抗の温度 \( T \) [℃] と \( t \) [℃] における比は、次式で与えられるものとする。抵抗の比:\( (235 + T) : (235 + t) \)
(1) 0.27 (2) 0.82 (3) 1.22 (4) 3.75 (5) 55.0
問題の解説:温度補正の公式と計算手順
それでは、問題を順を追って解いていきましょう。

ステップ1:銅の抵抗の温度係数と公式の理解
問題文で与えられている「抵抗の比」の式は、銅導体の抵抗と温度の関係を表す非常に重要な公式です。
銅の抵抗は温度によって変化し、0℃における銅の温度係数は \( \dfrac{1}{235} \) であることが知られています。このことから、異なる温度 \( T \) [℃] と \( t \) [℃] における抵抗値 \( R(T) \) と \( R(t) \) の比は、次式で表されます。
$$\frac{R(T)}{R(t)} = \frac{235 + T}{235 + t}$$
この式は、「抵抗値は、摂氏温度に 235 を加えた値(絶対温度のような基準値からの目盛)に比例する」ということを示しています。
ステップ2:与えられた条件の整理
問題文から、以下の条件が与えられています。
| 条件 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 初期温度(測定時) | \( t \) | 20 [℃] |
| 初期抵抗(20℃における抵抗) | \( R(20) \) | 1.0 [Ω] |
| 最終温度(基準温度) | \( T \) | 75 [℃] |
| 求める抵抗(75℃における抵抗) | \( R(75) \) | ? [Ω] |
ステップ3:温度補正の公式を適用して計算
ステップ1で確認した公式に、ステップ2で整理した数値を代入します。
$$\frac{R(75)}{R(20)} = \frac{235 + 75}{235 + 20}$$
$$\frac{R(75)}{1.0} = \frac{310}{255}$$

ステップ4:最終抵抗値の算出
上記の式から \( R(75) \) を求めます。
$$R(75) = 1.0 \times \left( \frac{310}{255} \right)$$
$$R(75) = \frac{310}{255} \approx 1.2157 \text{ [Ω]}$$
四捨五入すると、約 1.22 [Ω] となります。
したがって、正解は (3) 1.22 Ω です。
計算結果の妥当性チェック
試験本番では、計算ミスを防ぐために結果の妥当性を確認する癖をつけましょう。今回は温度が 20℃ から 75℃ へと 55℃ 上昇しています。金属導体の場合、温度が上がれば抵抗も増加するはずです。計算結果の 1.22 Ω は、初期の 1.0 Ω よりも大きくなっているため、直感的な感覚と一致しており、妥当な結果であると判断できます。
初心者向けポイント解説:なぜ抵抗は温度で変わるのか?
計算自体は公式に代入するだけでシンプルですが、その背景にある物理現象を理解しておくことで、応用問題にも対応しやすくなります。
1. 抵抗が温度で変わる理由
温度が上がると、金属を構成している原子の熱振動が激しくなります。電流とは電子の流れですが、原子の振動が激しくなると、移動する電子が原子にぶつかる回数が増え、流れが妨げられやすくなります。その結果として、電気抵抗が大きくなるのです。銅のような一般的な金属導体では、日常的な温度範囲において、抵抗は温度に対してほぼ直線的に増加します。
2. 公式中の定数「235」の意味
公式に出てくる「235」という数字は、銅に固有の定数(温度係数の逆数)です。これは理論上、グラフを直線で外挿していくと「−235℃ で抵抗が 0 になる」とみなせることを意味しています(実際の極低温では超伝導などの別現象が起きますが、実用上の近似として扱います)。式 \( (235 + T) \) は、この −235℃ を基準点(0)とした絶対温度目盛のような役割を果たしています。金属の種類が変わればこの定数も異なり、例えばアルミニウムの場合は約 228 となります。
3. 実際の変圧器設計における利用
変圧器の効率計算において、なぜ 75℃ という温度が基準としてよく使われるのでしょうか。変圧器は運転中、鉄損や銅損によって発熱し、周囲温度よりも高い温度で安定して動作します。この定格負荷時の標準的な巻線温度として 75℃(絶縁階級によっては他の温度の場合もあります)が規定されています。工場での試験は室温で行われるため、実運用時の損失を正確に評価するためには、今回のような温度補正計算が必須となるわけです。
まとめ:温度補正の比較表と解法の流れ
今回の計算結果をわかりやすく表にまとめました。
| 温度(\( T \)) | 抵抗(\( R \)) | 比の計算(\( 235 + T \) の値) |
|---|---|---|
| 20℃(基準) | 1.0 Ω(基準) | 235 + 20 = 255 |
| 75℃(求める温度) | 1.22 Ω(求める値) | 235 + 75 = 310 |
| 比(75℃ / 20℃) | 1.22 倍 | 310 ÷ 255 = 1.2157 |
変圧器の巻線抵抗の温度補正は、電験3種で頻出の計算パターンです。公式 \( \dfrac{R(T)}{R(t)} = \dfrac{235 + T}{235 + t} \) をしっかりと暗記し、確実に得点できるようにしておきましょう!

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