電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の、三相電源に接続する変圧器の論説問題。本記事では、平成27年度 A問題7で問われた第3次高調波・Δ結線の循環電流・角変位・三相鉄心形・スコット結線に関する記述から誤っているものを選ぶ問題を解説します。
カギは角変位(位相変位)。Δ-Y結線・Y-Δ結線では、一次電圧と二次電圧の間に30°(π/6)の位相差が生じます。問題文(3)はこれを「45°」としており、ここが誤りになります。
平成27年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成27年度 A問題7
三相電源に接続する変圧器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 変圧器鉄心の磁気飽和現象やヒステリシス現象は、励磁電流高調波の発生要因となる。変圧器のΔ結線は、励磁電流の第3次高調波を、巻線内を循環電流として流す働きを担っている。
(2) Δ結線がないY-Y結線の変圧器は、第3次高調波の流れる回路がないため、相電圧波形がひずみ、これが原因となって、近くの通信線に雑音などの障害を与える。
(3) Δ-Y結線又はY-Δ結線は、一次電圧と二次電圧との間に角変位又は位相変位と呼ばれる位相差45°がある。
(4) 三相内鉄形変圧器は、単相変圧器3台に比べて据付け面積の縮小と軽量化が可能である。
(5) スコット結線変圧器は、三相3線式の電源を二つの単相(二相)に変換し、大容量の単相負荷に電力を供給する場合に用いる。三相を二相に位相数変換して二相側の負荷を平衡させると、三相側の不平衡を緩和できる。
出題のポイント:角変位は30°、これだけで答えが出る
5つの記述はいずれも三相変圧器の重要事項ですが、誤りを1つ見つけるだけなら、角変位の数値を覚えているかどうかで決まります。Δ-Y および Y-Δ の角変位は30°(π/6)——45°ではありません。
なぜ30°なのか——Y結線では線間電圧が巻線電圧より30°進むのに対し、Δ結線では線間電圧と巻線電圧が同相だからです。一次と二次で結線が違えば、この30°が片側にだけ現れて残ります。
45°という数値は、三相回路のどこにも出てきません。三相で現れる角度は120°(相どうしのずれ)と30°(線間と相のずれ)——この2つ以外の値が出てきたら疑ってよいのです。

正しい4つの記述を確認する
(1) Δ結線は第3次高調波を循環させる
鉄心の磁気飽和とヒステリシスのせいで、励磁電流は正弦波になりません——とくに第3次高調波を多く含みます。三相の第3次高調波は、3相とも同じ位相(同相)になるという特徴を持っています。
同相の電流は、Δ結線の閉ループの中をぐるぐる回ることができます——これが循環電流です。外部には出ていかず、Δの中だけで完結するので、磁束を正弦波に保ちつつ外部への悪影響を防げます。
(2) Δ結線がないY-Y は波形がひずむ
Y-Y結線には循環路がありません。第3次高調波の励磁電流が流れられないと、磁束のほうがひずみます——結果として相電圧の波形がひずみ、第3次高調波電圧が現れます。
この高調波は同相なので、三相の線路をまとめて見ると打ち消し合わずに残ります——だから並走する通信線に誘導障害を与えます。対策として第3の巻線(安定巻線)をΔに組むのが一般的で、これが三巻線変圧器のΔ巻線の役目です。
(4) 三相内鉄形は3台より小さく軽い
三相分の磁路を1つの鉄心にまとめるので、鉄心の量が減り、据付け面積も小さくなります。三相の磁束は合計すると0になるので、共通の磁路を省略できるのが原理です。
ただし1相が故障すると全体を交換することになるため、重要な系統では単相変圧器3台(+予備1台)を使うこともあります。経済性と信頼性のトレードオフです。
(5) スコット結線は三相を二相に変換する
大容量の単相負荷(電気鉄道など)を三相系統から取ると、三相が不平衡になります。スコット結線は三相を平衡した二相に変換するので、二相側の2つの負荷を均等にすれば、三相側の不平衡を緩和できます。

第3次高調波はなぜ「三相そろって同相」になるのか
本問の(1)(2)は、どちらも第3次高調波が主役です。Δ結線が循環路になったり、Y-Y結線で波形がひずんだりするのは、第3次高調波が三相で同相になるという性質から来ています。ここを納得しておくと、2つの記述が1つの理屈でつながります。
三相の基本波は、互いに120°ずつずれています。U相を基準にすると、V相は−120°、W相は−240°——この3つを足し合わせると0になります。だから中性線には基本波電流が流れません。
ところが第3次高調波は、周波数が3倍です。基本波で120°の位相差は、3倍の周波数から見れば360°の差に見えます——360°ずれているということは、位相がそろっているのと同じ。つまり第3次高調波は、U相もV相もW相もまったく同じ波形になります。
| 基本波 | 第3次高調波 | 第5次高調波 | |
| U相を基準にしたV相のずれ | −120° | −360°=0°(同相) | −600°=−240° |
| 三相を足し合わせると | 0 | 3倍になって残る | 0 |
| 三相のバランス | 平衡(正相) | 零相 | 平衡(逆相) |
三相そろって同相の成分を零相分と呼びます。零相分は、行き先を用意してやらないと流れられません——普通の三相3線式では、3本の線に同じ向きの電流が同時に流れる回路が存在しないからです。
Δ結線が「逃げ道」になる仕組み
Δ結線は3つの巻線が閉じた三角形を作っています。三相そろって同相の起電力が生じると、この閉ループの中では打ち消し合わずに足し算になります——だから三角形の中をぐるぐる回る電流が流れます。
この循環電流は外部の3本の線には出ていきません。閉ループの中で完結するので、系統や通信線には影響を与えずに、鉄心の磁束を正弦波に保つ役目だけを果たします。「Δ結線は第3調波の逃げ道」と言われるのはこのためです。
Y-Y結線で何が起きるか
Y結線は中性点で3本が集まりますが、中性点を接地しなければ零相電流は流れられません。励磁電流に含まれるはずの第3次高調波が流せないと、そのしわ寄せが磁束のほうに出ます——磁束が正弦波でなくなり、結果として相電圧の波形がひずみます。
ひずんだ相電圧に含まれる第3次高調波は、やはり三相そろって同相です。線間電圧では打ち消し合って現れませんが、大地との間には現れ、静電結合で近くの通信線に誘導障害を与えます。これが(2)の記述が言っている内容です。
だから実際のY-Y結線には、ほぼ必ず第3の巻線をΔに組んで安定巻線とします。本問の(2)が「Δ結線がないY-Y結線の変圧器は」とわざわざ断っているのは、純粋なY-Yがまれだからです。この一言まで読めれば、三巻線変圧器の存在理由も同時に理解できます。
⏱️ 本番での進め方
① 角変位=30°。この1点を覚えていれば5秒で解ける。
② 三相で出てくる角度は120°と30°だけ。45°は要注意。
③ 他の4肢はすべて正しい記述なので、知識の確認に使うとよい。
④ 論説の誤り探しは「数値を書き換える」型が最も多い。数値に線を引いて読む。
💡 覚え方
「Δは第3調波の逃げ道、Y-Yは逃げ道なしでひずむ、異種結線は30°ずれる」——この3点セットで、三相変圧器の論説問題の大半が処理できます。
関連問題:角変位は結線図から読ませる年もある
角変位そのものを結線図から判定させる問題も出ています(変圧器44:三相変圧器の結線と角変位(Y-Δは30°遅れ))。本問は数値を覚えているかを問い、あちらは図を読めるかを問う——同じテーマの2つの問われ方です。


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