電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で出題される、変圧器の保護継電器。本記事では、平成20年度 A問題8で問われた、油入変圧器を保護・監視する電気的・機械的・熱的な3種類の継電器に関する穴埋め問題を解説します。
カギは電気的保護=比率差動継電器(差電流で動作)。一次側と二次側の変流器(CT)の電流差で内部故障を検出します。機械的保護は油圧・ガス圧継電器と放圧装置、熱的保護は油温・巻線温度の監視です。
平成20年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成20年度 A問題8
変圧器の異常を検出し、油入変圧器を保護・監視する装置としては、大別して電気的、機械的及び熱的な3種類の継電器(リレー)が使用される。
電気的保護装置としては、 (ア) 継電器を用いるのが一般的である。この継電器の動作コイルは、変圧器の一次巻線側と二次巻線側に設置されたそれぞれの変流器の二次側の (イ) で動作するように接続される。
機械的保護装置としては、変圧器内部の油圧変化率、ガス圧変化率、油流変化率で動作する継電器が用いられる。また、変圧器内部の圧力の過大な上昇を緩和するために、 (ウ) が取り付けられている。
熱的保護・監視装置としては、 (エ) 温度や巻線温度を監視・測定するために、ダイヤル温度計や (オ) 装置が用いられる。
空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる語句の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 過電圧 | 和電流 | 放圧装置 | 油 | 絶縁監視 |
| (2) | 比率差動 | 差電流 | 放圧装置 | 油 | 巻線温度指示 |
| (3) | 過電圧 | 差電流 | コンサベータ | 鉄心 | 巻線温度指示 |
| (4) | 比率差動 | 和電流 | コンサベータ | 鉄心 | 絶縁監視 |
| (5) | 電流平衡 | 和電流 | 放圧装置 | 鉄心 | 巻線温度指示 |
出題のポイント:検出するものが何かで3つに分ける
油入変圧器の保護装置は数が多く、名前だけを並べて覚えようとすると混乱します。「何の変化を検出しているか」で3つに分類すると、一気に整理できます。
| 分類 | 検出するもの | 代表的な装置 | 何を守るか |
| 電気的保護 | 電流の差 | 比率差動継電器 | 巻線の短絡・地絡などの内部故障 |
| 機械的保護 | 油圧・ガス圧・油流の変化 | ブッフホルツ継電器、衝撃圧力継電器、放圧装置 | アークによるガス発生、タンクの破裂 |
| 熱的保護・監視 | 温度 | ダイヤル温度計、巻線温度指示装置 | 過負荷による絶縁の劣化 |
問題文が「大別して電気的、機械的及び熱的な3種類」と最初に書いてくれています。空欄も、この3分類の順に並んでいる——どの分類の話をしているかを意識しながら読めば、入る語は自然に決まります。

(ア)(イ)電気的保護:比率差動継電器と差電流
変圧器の内部故障を検出する主力が比率差動継電器です。一次側と二次側に変流器(CT)を置き、その二次電流を比べます。
| 状態 | 一次CT電流と二次CT電流 | 差電流 | 動作 |
| 正常運転 | 釣り合う(打ち消し合う) | ほぼ0 | しない |
| 外部(系統)故障 | 大きくなるが釣り合いは保つ | ほぼ0(誤差分のみ) | しない |
| 内部故障 | 釣り合いが崩れる | 大きい | する |
だから(イ)は「差電流」です。「和電流」では、正常時にも大きな値になってしまい保護になりません。
「比率」差動と呼ばれる理由も押さえておきましょう。外部故障のときは電流が非常に大きくなり、CT の飽和や誤差で差電流が0にならないことがあります——そこで「通過電流に対する比率が一定を超えたときだけ動作する」という抑制を掛けます。これが比率差動です。
☝️ ひっかけの作り方:(ア)に「過電圧」や「電流平衡」を入れる肢があります。過電圧継電器は電圧の異常を見るもので、内部故障の検出には向きません。問題文が「動作コイルは一次・二次の変流器の二次側に接続される」と電流で動くことを明示しているので、電圧系の肢はそこで消えます。
(ウ)機械的保護:放圧装置
内部でアークが発生すると絶縁油が分解してガスが出ます。タンク内の圧力が急上昇し、放置すればタンクが破裂して火災につながります——それを防ぐために圧力を逃がすのが放圧装置です。
☝️ ひっかけの作り方:「コンサベータ」を入れる肢がありますが、コンサベータは油の温度変化による体積変化を吸収する装置(呼吸作用への対応)で、保護装置ではありません。問題文が「圧力の過大な上昇を緩和するため」と目的を書いているので、常時の呼吸を扱うコンサベータは当てはまりません。
ブッフホルツ継電器も機械的保護の代表です。本体とコンサベータをつなぐ管の途中に取り付け、発生したガスや油の流れを検出します。軽微な故障では警報、重大な故障では遮断という2段の動作をするのが特徴です。
(エ)(オ)熱的保護:油温と巻線温度
変圧器の寿命を決めるのは絶縁物の劣化で、その劣化速度は温度で決まります——だから温度の監視が保護になるのです。
| 測るもの | 装置 | 特徴 |
| 油の温度 | ダイヤル温度計 | タンク上部の油温を直接測る |
| 巻線の温度 | 巻線温度指示装置 | 油温に、負荷電流から推定した温度上昇分を加えて表示する |
巻線の内部に温度計を差し込むことはできません——高電圧がかかっているからです。そこで油温に、CT から取った負荷電流で作った熱量を加算して巻線温度を模擬します。だから「巻線温度指示装置」という独立した名前が付いているのです。
☝️ ひっかけの作り方:(エ)に「鉄心」を入れる肢がありますが、実際に監視するのは油温です。鉄心の温度を直接測る仕組みは一般的ではありません。(オ)の「絶縁監視」も、油入変圧器の標準的な監視項目としては温度が主——問題文が「温度や巻線温度を監視・測定するために」と書いているので、温度に関わる装置名が入るはずだと読めます。

1つの変圧器に、なぜこれだけの保護が要るのか
変圧器は回転部分のない静止機器で、故障率は低い機器です。それでもこれだけ多くの保護装置を付けるのはなぜでしょうか。
理由は、いったん壊れたときの影響が大きいからです。大形変圧器は製作に何か月もかかり、代替品をすぐには用意できません——故障を小さいうちに見つけて止める価値が、それだけ大きいのです。
| 保護の段階 | 担当する装置 | ねらい |
| 予兆をつかむ | 温度計、油中ガス分析 | 劣化の進行を早期に把握して計画的に対処する |
| 軽微な異常で警報 | ブッフホルツ継電器(第1段) | 運転を続けながら点検の機会を作る |
| 重大故障で遮断 | 比率差動継電器、ブッフホルツ継電器(第2段)、衝撃圧力継電器 | 被害の拡大と波及事故を防ぐ |
| 最後の砦 | 放圧装置 | タンクの破裂と火災を防ぐ |
電気的・機械的・熱的という3分類は、検出の原理による分け方でした。それに対してこの表は、異常の程度による段階の分け方です。同じ装置群を2通りの軸で整理しておくと、どんな問われ方でも対応できます。
比率差動継電器は速いが、検出できるのは電流の不平衡を伴う故障だけです。層間短絡のように電流変化が小さい故障は、ガスの発生で見つけるほうが確実——だから原理の違う保護を重ねるのです。「多重化」ではなく「原理の異なる保護の組合せ」だという点が重要になります。
⏱️ 本番での進め方
①(イ)が「差電流」と決まれば、その時点で(1)(4)(5)が消える。
②(ア)は電流で動くので「過電圧」は不可。比率差動に確定。
③(ウ)は「圧力を逃がす」=放圧装置。コンサベータは呼吸用。
④ 5つの空欄のうち2つ決まれば選択肢は1つに絞れる。全部埋める必要はない。
💡 覚え方
「電気は差電流、機械は圧力、熱は温度」——3分類と検出対象の対応さえ言えれば、装置名は後からついてきます。そして「コンサベータは保護装置ではない」——これは繰り返し問われる引っかけなので、単独で覚えておく価値があります。
比率差動継電器を使うときの実務上の工夫
変圧器の一次と二次では、電圧も電流も結線も違います。だから「そのまま比べれば釣り合う」わけではなく、いくつかの補正が要ります。
| 問題 | 対処 |
| 一次と二次で電流の大きさが違う | CT の変流比を巻数比に合わせて選ぶ/補助CTで調整する |
| Δ-Y 結線では一次と二次で30°の位相差がある | CT の二次側を逆の結線(Y側CTをΔに)にして位相を合わせる |
| 投入時の励磁突入電流で誤動作する | 第2調波を多く含むことを利用して、その成分で動作を抑制する |
とくに3番目が重要です。変圧器を投入した瞬間には、定格の数倍〜十数倍の励磁突入電流が一次側だけに流れます——二次側には流れないので、差電流としては内部故障と区別がつきません。
そこで励磁突入電流が第2調波を多く含むという性質を使い、その成分が多いときは動作をロックします。本問の角変位や励磁突入電流は、他の年度で単独に出題されるテーマでもあります——保護継電器の問題から、変圧器全体の理解に広げておくとよいでしょう。


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