変圧器29【電験3種 機械】変圧器の並行運転と循環電流とは?令和元年度 A問題8 完全解説

電験3種 機械科目 令和元年度 A問題8 変圧器の並行運転と循環電流

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、令和元年度(2019年)A問題8で出題された「変圧器の並行運転と循環電流」について、はじめての方でも確実に解けるように、基礎から一歩ずつ丁寧に解説します。

この問題は、巻数比がわずかに異なる2台の変圧器を並列運転したときに流れる循環電流を求める問題です。「二次側が無負荷なのに、なぜ電流が流れるのか?」という点さえ理解できれば、計算は「起電力差 ÷ 合成インピーダンス」だけで解けます。

出題のポイント:無負荷でも電流が流れる理由

変圧器を並列運転するとき、理想的には2台の二次電圧が完全に一致していれば電流は流れません。しかし巻数比がわずかでも異なると、二次側の誘導起電力に差 \( \Delta E \) が生じます。2台の二次巻線は互いにループを形成しているため、二次側が無負荷でも、この \( \Delta E \) が2台の内部インピーダンスを通じて循環電流を流すのです。これが本問のポイントです。

目次

令和元年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和元年度 A問題8 問題文(変圧器の並行運転と循環電流)
令和元年度 機械科目 A問題8 問題文

電験3種 機械科目 【変圧器】 令和元年度 A問題8

2台の単相変圧器があり、それぞれ、巻数比(一次巻数/二次巻数)が 30.1、30.0、二次側に換算した巻線抵抗及び漏れリアクタンスからなるインピーダンスが (0.013+j0.022) Ω、(0.010+j0.020) Ω である。この2台の変圧器を並列接続し二次側を無負荷として、一次側に 6600 V を加えた。この2台の変圧器の二次巻線間を循環して流れる電流の値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、励磁回路のアドミタンスの影響は無視するものとする。

(1) 4.1  (2) 11.2  (3) 15.3  (4) 30.6  (5) 61.3

問題の解説:循環電流を求める手順

方針は「①2台の二次起電力の差 \( \Delta E \) を求める → ②ループの合成インピーダンス \( Z \) を求める → ③ \( I_c = \Delta E / |Z| \) を計算する」です。

令和元年度 A問題8 解説1/2 循環電流が流れる理由と条件整理
解説(1/2):循環電流が流れる理由と与えられた条件の整理
令和元年度 A問題8 解説2/2 起電力差・合成インピーダンス・循環電流の計算
解説(2/2):起電力差・合成インピーダンス・循環電流の計算

ステップ1:循環電流が流れる理由

2台の変圧器の二次側を並列に接続すると、2つの二次巻線で閉ループができます。巻数比が等しければ両者の二次起電力は一致し、ループ内に電位差はありません。ところが本問のように巻数比が 30.1 と 30.0 でわずかに異なると、二次起電力に差 \( \Delta E \) が生じ、これがループを一周する向きに循環電流 \( I_c \) を流します。負荷をつないでいなくても流れるのが特徴です。

ステップ2:与えられた条件の整理

項目変圧器1変圧器2
巻数比(一次/二次)30.130.0
二次換算インピーダンス0.013 + j0.022 Ω0.010 + j0.020 Ω
一次電圧6600 V(二次側 無負荷)

ステップ3:二次起電力の差 ΔE を求める

二次側の無負荷起電力は「一次電圧 ÷ 巻数比」で求められます。2台の差をとります。

$$\Delta E = \frac{6600}{30.0} – \frac{6600}{30.1} = 220.0 – 219.27 \fallingdotseq 0.731 \text{ [V]}$$

ステップ4:ループの合成インピーダンス

循環電流はループを一周するので、2台のインピーダンスは直列に加わります。

$$Z = (0.013+0.010) + j(0.022+0.020) = 0.023 + j0.042 \text{ [Ω]}$$

$$|Z| = \sqrt{0.023^2 + 0.042^2} \fallingdotseq 0.0479 \text{ [Ω]}$$

ステップ5:循環電流 I_c を計算

起電力差を合成インピーダンスの大きさで割れば、循環電流が求まります。

$$I_c = \frac{\Delta E}{|Z|} = \frac{0.731}{0.0479} \fallingdotseq 15.3 \text{ [A]}$$

したがって、正解は (3) 15.3 です。

ポイント解説:並行運転を理解する

循環電流は並行運転の代表的なテーマです。背景を押さえておきましょう。

1. 変圧器の並行運転の条件

変圧器を並行運転するには、極性が一致していること、巻数比(変圧比)が等しいこと、%インピーダンスが等しいことなどの条件があります。本問は「巻数比が等しい」条件が崩れた場合に相当し、その結果として循環電流が生じます。条件が満たされないと、無負荷でも電流が流れたり、負荷が不均等に分担されたりします。

2. 循環電流の何が問題か

循環電流は負荷に寄与しないムダな電流です。巻線を余計に流れるため銅損( \( I^2 R \) 損)が増えて効率が下がり、巻線の温度上昇も招きます。わずか 0.1 の巻数比差でも 15 A 程度の電流が流れることが、本問の数値からも実感できます。

3. なぜ「二次換算」のまま計算してよいのか

問題ではインピーダンスが「二次側に換算した値」で与えられ、求めるのも二次巻線を流れる循環電流です。電圧(起電力差)も二次側の値で求めているため、すべて二次側の量で統一されています。基準をそろえれば、一次側に換算し直す必要はありません。電気回路を解くときは「どの側の量で計算しているか」を常に意識しましょう。

まとめ:循環電流の解法フロー

今回の計算結果を表にまとめます。

ステップ
二次起電力の差\( 6600/30.0 – 6600/30.1 \)0.731 V
合成インピーダンス\( |0.023 + j0.042| \)0.0479 Ω
循環電流\( 0.731 \div 0.0479 \)15.3 A

変圧器の並行運転で生じる循環電流は、「二次起電力の差 ÷ 合成インピーダンス」で求めるのが鉄則です。並行運転の条件とあわせて理解しておけば、確実に得点できます。三相結線の変圧器28など、ほかの変圧器記事もぜひご覧ください。

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