電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、平成30年度(2018年)A問題9で出題された「単巻変圧器の自己容量」について、はじめての方でも確実に解けるように、単巻変圧器の仕組みから計算まで一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単巻変圧器が負荷に供給する電力(線路容量)に対して、変圧器自身に必要な容量(自己容量)がどれだけかを求める問題です。ポイントは、自己容量=直列巻線が受け持つ容量=(V₂−V₁)×電流という関係。これさえ押さえれば、計算はとてもシンプルです。
出題のポイント:自己容量と線路容量を区別する
単巻変圧器は1つの巻線を一次側と二次側で共用する変圧器です。巻線は「分路巻線(共通部分)」と「直列巻線(差分の電圧を受け持つ部分)」に分けられます。負荷に供給する見かけの電力が線路容量、そのうち実際に変圧作用で電力を分担する直列巻線の容量が自己容量(固有容量)です。一次電圧と二次電圧が近いほど自己容量は小さくて済み、これが単巻変圧器の最大の利点になります。
平成30年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 【変圧器】 平成30年度 A問題9
定格一次電圧 6000 V、定格二次電圧 6600 V の単相単巻変圧器がある。消費電力 200 kW、力率 0.8(遅れ)の単相負荷に定格電圧で電力を供給する。単巻変圧器として必要な自己容量の値 [kV·A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、巻線のインピーダンス、鉄心の励磁電流及び鉄心の磁気飽和は無視できる。(1) 22.7 (2) 25.0 (3) 160 (4) 200 (5) 250
問題の解説:自己容量を求める手順
方針は「①負荷(二次)電流 \( I \) を求める → ②自己容量 = 直列巻線電圧 \( (V_2 – V_1) \) × \( I \) を計算する」の2ステップです。


ステップ1:単巻変圧器の自己容量とは
単巻変圧器では、巻線の一部(分路巻線)を一次・二次で共用し、残りの直列巻線で一次と二次の電圧差を生み出します。負荷に届ける電力すべてを変圧器の鉄心経由で変成しているわけではなく、直列巻線が分担する分だけが「変圧器としての仕事」です。この直列巻線が受け持つ容量が自己容量であり、次式で表されます。
$$P_{\text{自}} = (V_2 – V_1) \times I$$
ステップ2:与えられた条件の整理
| 項目 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 定格一次電圧 | \( V_1 \) | 6000 V |
| 定格二次電圧 | \( V_2 \) | 6600 V |
| 負荷の消費電力 | \( P \) | 200 kW |
| 負荷の力率 | \( \cos\varphi \) | 0.8(遅れ) |
| 求める自己容量 | \( P_{\text{自}} \) | ? kV·A |
ステップ3:二次(負荷)電流 I を求める
負荷へ定格電圧 6600 V で 200 kW(力率0.8)を供給するときの電流を求めます。
$$I = \frac{P}{V_2 \cos\varphi} = \frac{200 \times 10^3}{6600 \times 0.8} \fallingdotseq 37.9 \text{ [A]}$$
ステップ4:自己容量を計算する
直列巻線が受け持つ電圧は \( V_2 – V_1 = 6600 – 6000 = 600 \) V。これに二次電流をかけたものが自己容量です。
$$P_{\text{自}} = (V_2 – V_1) \times I = 600 \times 37.9 \fallingdotseq 22700 \text{ [V·A]} = 22.7 \text{ [kV·A]}$$
したがって、正解は (1) 22.7 です。
計算結果の妥当性チェック
負荷に供給する線路容量は \( P/\cos\varphi = 200/0.8 = 250 \) kV·A です。自己容量と線路容量の比をとると、 \( \dfrac{P_{\text{自}}}{P_{\text{線}}} = \dfrac{V_2 – V_1}{V_2} = \dfrac{600}{6600} = \dfrac{1}{11} \)。 \( 250 \times \dfrac{1}{11} \fallingdotseq 22.7 \) kV·A となり、ステップ4の結果と一致します。250 kV·A の電力を、わずか 22.7 kV·A の変圧器容量で送れるのが単巻変圧器の強みです。
ポイント解説:単巻変圧器を理解する
自己容量の考え方が分かれば、単巻変圧器の長所・短所も理解できます。
1. 自己容量が小さくて済む理由
単巻変圧器では、負荷電力の一部が分路巻線を通じてそのまま(変成されずに)二次側へ伝わります。鉄心を介して変成されるのは直列巻線が受け持つ \( (V_2-V_1) \) の分だけ。だから自己容量は線路容量より小さく、 \( (V_2-V_1)/V_2 \) の割合になります。一次・二次の電圧差が小さいほど、この利点は大きくなります。
2. 単巻変圧器の長所と短所
自己容量が小さいことから、単巻変圧器は小型・軽量・低損失(高効率)・低コストという長所があります。一方で、一次と二次が電気的に絶縁されていないため高圧側の異常が低圧側に及びやすいこと、短絡時のインピーダンスが小さく短絡電流が大きくなりやすいことが短所です。電圧比が1に近い用途(始動補償器や配電電圧の調整など)でよく使われます。
3. 力率は計算に効くのか
本問では力率0.8が与えられていますが、自己容量は「容量(皮相電力)」として求めるため、最終的な \( P_{\text{自}} = (V_2-V_1)\times I \) は皮相容量です。力率は二次電流 \( I \) を求める段階で必要になります( \( I = P/(V_2\cos\varphi) \) )。「消費電力(有効電力)から電流を出すときに力率を使う」という流れを押さえておきましょう。
まとめ:単巻変圧器の自己容量
今回の計算結果を表にまとめます。
| 量 | 式 | 値 |
|---|---|---|
| 線路容量(負荷) | \( 200 \div 0.8 \) | 250 kV·A |
| 二次電流 | \( 200\times10^3 \div (6600\times0.8) \) | 37.9 A |
| 自己容量 | \( (6600-6000) \times 37.9 \) | 22.7 kV·A |
単巻変圧器の自己容量は、「(V₂−V₁)× 電流」で求めるのが鉄則です。線路容量との比 \( (V_2-V_1)/V_2 \) も覚えておくと、検算や応用問題に役立ちます。ほかの変圧器記事もあわせて、変圧器を得点源にしましょう。直前の変圧器29(並行運転と循環電流)もぜひご覧ください。

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