今回は令和7年度上期 理論科目 A問題13を解説します。エミッタ接地トランジスタの静特性(I_C-V_CE特性)グラフから、電流増幅率h_fe(β)と出力インピーダンス1/h_oe(r₀)を読み取る問題です。
h_feは電圧V_CEを一定にしたときのコレクタ電流変化÷ベース電流変化(ΔI_C/ΔI_B)、出力インピーダンス1/h_oeはベース電流I_Bを一定にしたときのV_CE変化÷I_C変化(ΔV_CE/ΔI_C)としてグラフから読み取ります。
令和7年度上期 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和7年度上期 A問題13
図はあるエミッタ接地トランジスタの静特性を示す。この特性より、ベース電流IB=40μA、コレクタ・エミッタ間の電圧VCE=6Vにおける電流増幅率hfe(又はβ)の値及び出力インピーダンス1/hoe(又はr0)の値[Ω]の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
動作点をI_B=40μA、V_CE=6Vとしたときの電流増幅率h_fe(又はβ)と出力インピーダンス1/h_oe(又はr₀)[Ω]の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
hfe 1/hoe [Ω] (1) 80 30000 (2) 100 10000 (3) 100 20000 (4) 200 10000 (5) 200 20000

ポイント解説:VCEを固定してhfe=ΔIC/ΔIBを縦に読む

まずグラフの読み方を分けます。電流増幅率hfeはVCEを6Vに固定し、IBが20μAから40μAへ20μA増えたとき、ICが2.0mAから4.0mAへ2.0mA増えることを縦方向に読みます。したがってhfe=ΔIC/ΔIB=2.0mA/20μA=100です。一方、出力抵抗1/hoeはIB=40μAの同じ特性曲線に沿って読み、VCEが4Vから8Vへ4V増えたときICが3.8mAから4.2mAへ0.4mA増えるので、1/hoe=ΔVCE/ΔIC=4V/0.4mA=10kΩ=10000Ωです。よって組合せは選択肢(2)です。
解説①:VCE=6Vの縦線上で電流増幅率hfe=100を求める

\(V_{CE}=6\ \mathrm{V}\) の縦線を引き、各曲線との交点を読みます。
| \(I_B\) | \(V_{CE}=6\ \mathrm{V}\) での \(I_C\) |
| \(20\ \mathrm{\mu A}\) | 約 \(2.0\ \mathrm{mA}\) |
| \(40\ \mathrm{\mu A}\) | 約 \(4.0\ \mathrm{mA}\) |
| \(60\ \mathrm{\mu A}\) | 約 \(6.0\ \mathrm{mA}\) |
| \(80\ \mathrm{\mu A}\) | 約 \(7.9\ \mathrm{mA}\) |
\(V_{CE}\) は 6 V に固定
無次元
\(I_B\) が 20 µA 増えると \(I_C\) が 2 mA 増える——その比が100倍です。単に \(4.0\ \mathrm{mA}/40\ \mathrm{\mu A}=100\) としても同じ値になります(原点を通る直線的な特性のため)。
解説②:\(1/h_{oe}\) は曲線に沿って読む
今度は \(I_B=40\ \mathrm{\mu A}\) の曲線1本だけを見ます。水平ではなく、右上がりにわずかに傾いている——この傾きが \(h_{oe}\) です。
幅を大きく取ると誤差が減る
逆数を取る
読み取り幅はできるだけ大きく取ります。\(V_{CE}\) を 2 V→10 V と 8 V 分取れば、目盛りの読み誤差が8分の1に薄まります——グラフ問題の基本テクニックです。
問題の解説:IBを固定して出力抵抗を曲線に沿って読み、選択肢(2)を選ぶ

| 選択肢 | \(h_{fe}\) | \(1/h_{oe}\) | 判定 |
| (1) | 80 | \(30\,000\ \Omega\) | \(h_{fe}\) を \(I_B=80\mathrm{\mu A}\) の値と混同 |
| (2) | 100 | \(10\,000\ \Omega\) | ◎ 正解 |
| (3) | 100 | \(20\,000\ \Omega\) | \(h_{fe}\) は合っているが傾きの読みが半分 |
| (4) | 200 | \(10\,000\ \Omega\) | \(1/h_{oe}\) は合っているが \(h_{fe}\) が2倍 |
| (5) | 200 | \(20\,000\ \Omega\) | 両方とも誤り |
(3)と(4)は「片方だけ正しい」形です。両方を独立に確かめないと、片方の自信でもう片方を引っぱられます——必ず2回グラフを読んでください。
⚠️ よくある間違い
\(h_{oe}\) と \(1/h_{oe}\) の取り違えが起こりがちです。\(h_{oe}\) はコンダクタンス(S)、\(1/h_{oe}\) は抵抗(Ω)——問題が「出力インピーダンス [Ω]」と聞いているので、逆数まで取って終わりです。
深掘り①:h パラメータの4つを整理する
| 記号 | 定義 | 意味 | 単位 | 典型値 |
| \(h_{ie}\) | \(v_{be}/i_b\)(\(v_{ce}=0\)) | 入力インピーダンス | \(\Omega\) | 数 kΩ |
| \(h_{re}\) | \(v_{be}/v_{ce}\)(\(i_b=0\)) | 電圧帰還率 | 無次元 | \(10^{-4}\) 程度(普通は無視) |
| \(h_{fe}\) | \(i_c/i_b\)(\(v_{ce}=0\)) | 電流増幅率 | 無次元 | 100〜300 |
| \(h_{oe}\) | \(i_c/v_{ce}\)(\(i_b=0\)) | 出力アドミタンス | S | \(10^{-4}\ \mathrm{S}\) |
試験でよく使うのは \(h_{ie}\) と \(h_{fe}\) の2つだけです。\(h_{re}\) はほぼ常に無視され、\(h_{oe}\) は「出力抵抗 \(1/h_{oe}\) が十分大きいので無視」とされることが多い——本問はその \(h_{oe}\) を正面から問うた珍しい出題です。
添字の2文字目 \(e\) は「エミッタ接地」を表します。ベース接地なら \(h_{ib},h_{fb}\)——接地方式が変わればパラメータの値も変わります。
深掘り②:なぜ曲線は水平ではないのか
理想的には、活性領域の \(I_C\) は \(V_{CE}\) によらず一定(完全に水平)のはずです。ところが実際は右上がりに少し傾きます。
原因はアーリー効果です。\(V_{CE}\) を上げるとコレクタ・ベース接合の空乏層が広がり、実効的なベース幅が狭くなります。ベースが薄くなるほど正孔と電子の再結合が減り、\(I_C\) が増えるのです。
この傾きの逆数が出力抵抗 \(1/h_{oe}\)——傾きが緩やかなほど出力抵抗は大きく、理想に近い電流源になります。
💡 覚え方
水平に近い=出力抵抗が大きい=良い電流源。\(1/h_{oe}=10\ \mathrm{k\Omega}\) は、負荷抵抗(数 kΩ)と比べて十分大きいので、多くの問題では「無視できる」と扱われます。
深掘り③:等価回路のどこに入るのか
簡易 h パラメータ等価回路は、入力側が抵抗 \(h_{ie}\)、出力側が電流源 \(h_{fe}i_b\) の2つだけです。\(1/h_{oe}\) は、その電流源に並列に入る抵抗として描かれます。
出力抵抗と負荷の並列
並列は小さいほうに寄る
だから \(h_{oe}\) は消える
いつも使う \(|A_v|=h_{fe}R_L/h_{ie}\) は、\(1/h_{oe}\) を無視した近似式だった——本問を解くと、その前提が見えてきます。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(h_{fe}\) は縦に読む:\(V_{CE}=6\ \mathrm{V}\) の縦線と曲線の交点。
❷ \(1/h_{oe}\) は横に読む:\(I_B=40\ \mathrm{\mu A}\) の曲線の傾き。
❸ 読み取り幅は大きく取る——誤差が幅の分だけ薄まる。
❹ 最後に逆数を取る:\(h_{oe}\) は S、\(1/h_{oe}\) は Ω。
★2つの数字は独立に確かめる。片方の自信でもう片方を決めない。
出題履歴:静特性の読み取りは形を変えて頻出
同じ静特性のグラフから、動作点・\(h_{fe}\)・出力抵抗・電圧増幅度と、いろいろな量が問われます。令和2年度B問題18、令和6年度下期A問題13なども同じ図の読み方です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| h_fe | ΔI_C/ΔI_B=2mA/20μA=100 |
| 1/h_oe | ΔV_CE/ΔI_C=2/0.2m=10000Ω |
| 動作点 | I_B=40μA・V_CE=6V |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・理論科目の過去問一覧(ハブ):【理論】単元別・年度別まとめ

コメント