今回は平成30年度 理論科目 A問題6を解説します。3つの抵抗器Ra・Rb・Rcから2つずつ選んで直列回路をつくり、流れる電流を測った3つの実験結果からRbの値を求める問題です。
各実験では、電源電圧Eを2つの抵抗の直列合成で割ったものが電流I。E/Iから2抵抗の和が分かるので、3つの式を連立してRbを求めます。
平成30年度 理論科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題6
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成30年度 A問題6
Ra、Rb及びRcの三つの抵抗器がある。これら三つの抵抗器から二つの抵抗器(R1及びR2)を選び、図のように直流電流計及び電圧E=1.4Vの直流電源を接続し、次のような実験を行った。実験I:R1=Ra、R2=Rbのとき電流I=56mA。実験II:R1=Rb、R2=Rcのとき電流I=35mA。実験III:R1=Ra、R2=Rcのとき電流I=40mA。これらからRbの抵抗値を求める。ただし、直流電源及び直流電流計の内部抵抗は無視できるものとする。
Rbの抵抗値[Ω]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)10 (2)15 (3)20 (4)25 (5)30 Ω

出題のポイント:3つの式を全部足すと一気に解ける
3回の実験から \(R_a+R_b\)、\(R_b+R_c\)、\(R_a+R_c\) の3つが分かります。この3つを全部足すと \(2(R_a+R_b+R_c)\)——2で割れば3本の合計が出ます。
あとは \(R_b\) を含まない式(\(R_a+R_c\))を引くだけです。連立方程式を1つずつ解く必要はありません——対称性を使った定番のテクニックです。

解説:まず各実験の合成抵抗を出す
| 実験 | つないだ抵抗 | 電流 | 合成抵抗 \(E/I\) |
| I | \(R_a+R_b\) | 56 mA | \(1.4/0.056=25\ \Omega\) |
| II | \(R_b+R_c\) | 35 mA | \(1.4/0.035=40\ \Omega\) |
| III | \(R_a+R_c\) | 40 mA | \(1.4/0.040=35\ \Omega\) |
各抵抗が2回ずつ出てくる
\(R_b\) を含まない式
検算:\(R_a=50-40=10\ \Omega\)、\(R_c=50-25=25\ \Omega\)。\(R_a+R_b=10+15=25\) ✓、\(R_b+R_c=15+25=40\) ✓、\(R_a+R_c=10+25=35\) ✓——3つとも合います。
誤答の正体:どの抵抗を求めたか
| 選択肢 | 値 | その正体 |
| (1) | \(10\ \Omega\) | ★\(R_a\) の値(求めるのは \(R_b\)) |
| (2) | \(15\ \Omega\) | ◎ \(R_b\) |
| (3) | \(20\ \Omega\) | 計算途中の値 |
| (4) | \(25\ \Omega\) | ★\(R_c\) の値、または実験Iの合成抵抗 |
| (5) | \(30\ \Omega\) | — |
(1)と(4)は、他の抵抗の値がそのまま置いてあります。3本すべてを求めてから、どれが \(R_b\) かを確認するのが安全です——本問は全部求めても30秒です。
(4)の \(25\ \Omega\) は実験Iの合成抵抗そのものでもあります。\(E/I\) を計算した時点で満足してしまうと引っかかります。
⚠️ よくある間違い
\(1.4/0.056\) の計算で単位を間違えるのが唯一の計算リスクです。mA を A に直す(\(56\ \mathrm{mA}=0.056\ \mathrm{A}\))——または \(1.4\ \mathrm{V}/56\ \mathrm{mA}=25\ \Omega\)(V÷mA=kΩ ではなく、\(1400\ \mathrm{mV}/56\ \mathrm{mA}=25\ \Omega\))と換算します。
深掘り①:3変数の対称な連立方程式
「2つずつの和が3組わかっている」という形は、電気の問題で何度も出てきます。Δ結線の線間抵抗、Y結線の端子間抵抗など——すべて同じ手が使えます。
これが鍵
自分を含まない式を引く
覚え方は「全体から、自分がいない組を引く」です。\(R_b\) を求めたいなら、\(R_b\) が入っていない実験III(\(R_a+R_c\))を引く——これだけです。
1つずつ代入して解こうとすると3〜4行かかります。この手なら2行——本番での時間差は大きいです。
深掘り②:この測定法は「間接測定」
抵抗計で直接測るのではなく、電流を測って計算で抵抗を求めています——これを間接測定と呼びます。
| 分類 | 説明 | 本問での例 |
| 直接測定 | 測りたい量を直接読む | 抵抗計を当てて読む |
| 間接測定 | 他の量から計算で求める | \(E\) と \(I\) から \(R=E/I\) |
間接測定では、元になる量の誤差がすべて伝わってきます。\(R=E/I\) なら \(\varepsilon_R=\varepsilon_E-\varepsilon_I\)——誤差率の合成則です。
本問はさらに「2本ずつ測って3本の値を分離する」という工夫をしています。1本だけ取り外して測れない状況でも、組合せを変えるだけで個別の値が出せる——実務でも使える発想です。
深掘り③:直列と並列で同じ問題が作れる
本問は直列接続なので「和」で式が立ちました。もし並列なら「逆数の和」になります。
そのまま足す
コンダクタンスで足す
並列の場合も、コンダクタンス \(G=1/R\) で考えれば同じ手が使えます。\(G_a+G_b\)、\(G_b+G_c\)、\(G_a+G_c\) が分かれば、全部足して2で割る——まったく同じ流れです。
「並列は逆数で足す」=「コンダクタンスなら素直に足せる」——この視点を持つと、並列回路の問題がぐっと楽になります。
💡 覚え方
2つずつの和が3組 → 全部足して2で割る → 自分がいない組を引く。3行で終わるので、連立方程式を立てて解く必要はありません。
⏱️ 本番での進め方
❶ 各実験の合成抵抗を \(E/I\) で出す:25、40、35 Ω。
❷ 全部足して2で割る:\((25+40+35)/2=50\ \Omega\)。
❸ \(R_b\) がいない実験III(35 Ω)を引く:\(50-35=15\ \Omega\)。
❹ 検算:3本すべて求めて3つの式に代入——30秒でできる。
★選択肢に他の抵抗の値が置いてある——何を聞かれたか最後に確認。
出題履歴:連立を対称性で解く問題は定番
「複数回の測定から個別の値を分離する」問題は、計測分野でも回路分野でも出題されます。全部足して2で割るという手筋を知っているかどうかで、解答時間が大きく変わります。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 実験I | Ra+Rb=1.4/0.056=25Ω |
| 実験II | Rb+Rc=1.4/0.035=40Ω |
| 実験III | Ra+Rc=1.4/0.040=35Ω |
| 合計 | Ra+Rb+Rc=50Ω |
| Rb | 50−35=15Ω→(2) |
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