電子回路21【電験3種 理論】エミッタホロワ回路のバイアス設計と入力インピーダンスを計算する!平成30年度 B問題16 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成30年度 B問題16 エミッタホロワの入力インピーダンス!なぜ高い?

今回は平成30年度 理論科目 B問題16を解説します。エミッタホロワ(コレクタ接地)回路について、(a)エミッタ電流を1mAにする抵抗RE、(b)交流等価回路(図2)の入力インピーダンスを求める問題です。

ベース電圧は分圧R1・R2で決まり、VE=VB−VBE。エミッタホロワは入力インピーダンスが高いのが特徴で、hパラメータの等価回路で計算します。

目次

平成30年度 理論科目 B問題16:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成30年度 B問題16 問題文
平成30年度 理論科目 B問題16 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題16

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成30年度 B問題16

 エミッタホロワ回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。(a) 図1の回路でVCC=10V、R1=18kΩ、R2=82kΩとする。動作点におけるエミッタ電流を1mAとしたい。抵抗RE[kΩ]を求める(ベース電流はR2を流れる直流電流より十分小さく無視でき、ベース-エミッタ間電圧は0.7V)。(b) 図2は交流等価回路で、hie=2.5kΩ、hfe=100、REは(a)の値。入力インピーダンスvi/ii[kΩ]を求める。

(a) VCC=10V、R1=18kΩ、R2=82kΩで動作点のエミッタ電流を1mAにするときの抵抗RE[kΩ](VBE=0.7V、ベース電流は無視)として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)1.3 (2)3.0 (3)7.5 (4)13 (5)75 kΩ

(b) 図2の交流等価回路(hie=2.5kΩ、hfe=100、REは(a)の値)の入力インピーダンスvi/ii[kΩ]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)2.5 (2)15 (3)80 (4)300 (5)750 kΩ

図1 エミッタホロワ回路(VCC=10V・R1=18kΩ・R2=82kΩ)(問題図)
図1 エミッタホロワ回路(VCC=10V・R1=18kΩ・R2=82kΩ)(問題図)
図2 エミッタホロワの交流等価回路(hie・hfe・RE)(問題図)
図2 エミッタホロワの交流等価回路(hie・hfe・RE)(問題図)

解説(a):分圧電圧からエミッタ抵抗を求める

GPT Image 2で作成した分圧回路からエミッタ抵抗7.5kΩを求める導出
V_B=8.2V、V_E=7.5VよりR_E=7.5kΩです。

分圧によりV_B=8.2V、V_E=7.5Vとなるので、I_E=1mAからR_E=7.5kΩで(a)は(3)です。トランジスタ側の入力はh_ie+(1+h_fe)R_E=760kΩですが、入力端子にはR_1とR_2も交流的に接地へつながります。全体は14.76kΩ∥760kΩ≈15kΩで(b)は(2)です。

解説(b):エミッタ抵抗がベース側で大きく見える理由

GPT Image 2で作成したエミッタ抵抗がベース側で101倍に見える導出
トランジスタ側の入力インピーダンスは760kΩです。
$$V_B=V_{CC}\frac{R_2}{R_1+R_2}=10\times\frac{82}{18+82}=8.2\ \mathrm{V}$$
❶ 分圧
ベース電流は無視してよいと明記
$$V_E=V_B-V_{BE}=8.2-0.7=7.5\ \mathrm{V}$$
❷ エミッタ電位
\(V_{BE}=0.7\ \mathrm{V}\)
$$R_E=\frac{V_E}{I_E}=\frac{7.5}{1\times10^{-3}}=7.5\ \mathrm{k\Omega}$$
❸ オームの法則
\(I_E=1\ \mathrm{mA}\)
答え(a) \(R_E=7.5\ \mathrm{k\Omega}\) → 選択肢(3)

「ベース電流は \(R_2\) を流れる直流電流より十分小さく無視できる」という条件が効いていますこれがあるから、単純な分圧の式が使えます

解説(b):ベース側と分圧側の並列合成

$$Z_b=h_{ie}+(1+h_{fe})R_E=2.5+101\times7.5=760\ \mathrm{k\Omega}$$
❶ ベースから右
\(R_E\) が101倍に見える
$$R_1\parallel R_2=\frac{18\times82}{18+82}=14.8\ \mathrm{k\Omega}$$
❷ バイアス分圧
交流的には両方とも接地へ
$$\frac{v_i}{i_i}=\frac{14.8\times760}{14.8+760}\fallingdotseq14.5\ \mathrm{k\Omega}$$
❸ 並列合成
小さいほうに引きずられる
答え(b) \(v_i/i_i\fallingdotseq15\ \mathrm{k\Omega}\) → 選択肢(2)

760 kΩ と 14.8 kΩ の並列は、ほぼ 14.8 kΩ そのものです。せっかくエミッタホロワで入力インピーダンスを高くしても、バイアス抵抗が並列に入ると台無しになる——実務でも重要な事実です。

解説(b):3経路を並列合成して入力インピーダンスを求める

GPT Image 2で作成した3経路の並列合成と入力インピーダンス15kΩの導出
R_1、R_2、トランジスタ側760kΩを並列合成して約15kΩです。
(b)の選択肢何を計算した値か
(1)\(2.5\ \mathrm{k\Omega}\)\(h_{ie}\) だけ(\(R_E\) を忘れた)
(2)\(15\ \mathrm{k\Omega}\)◎ 正解
(3)\(80\ \mathrm{k\Omega}\)\(h_{fe}\) を10倍間違えた等
(4)\(300\ \mathrm{k\Omega}\)桁の取り違え
(5)\(750\ \mathrm{k\Omega}\)★\(R_1\parallel R_2\) を忘れて \(Z_b\) だけを答えた

(5)が最頻誤答です。\(h_{fe}R_E=100\times7.5=750\)——公式を知っている人ほど落ちる罠になっています。図2にバイアス抵抗が描かれていることを見落とさないでください

⚠️ よくある間違い
「エミッタホロワは入力インピーダンスが大きい」という知識だけで(5)を選ぶのが典型的な失敗です。大きいのは「ベースから右を見た値」であって、「入力端子から見た値」ではありませんどこから見た抵抗かを必ず確認してください。

深掘り①:なぜ \(R_E\) が \((1+h_{fe})\) 倍に見えるのか

エミッタホロワでは、ベースに \(i_b\) が流れると、エミッタには \((1+h_{fe})i_b\) が流れますベース電流の101倍がエミッタ抵抗を通るということです。

$$i_e=(1+h_{fe})i_b$$
❶ 電流の関係
\(i_e=i_b+i_c\)
$$v_i=h_{ie}i_b+R_Ei_e=h_{ie}i_b+(1+h_{fe})R_Ei_b$$
❷ 入力電圧
2つの電圧降下の和
$$\frac{v_i}{i_b}=h_{ie}+(1+h_{fe})R_E$$
❸ ベースから見た抵抗
\(R_E\) が101倍に増幅される

入力側から見ると「わずかな電流しか取られないのに、大きな電圧がかかっている」——だから抵抗が大きく見えますこれがインピーダンス変換の正体です。

逆に出力側から見ると、\(h_{ie}\) が \(1/(1+h_{fe})\) 倍に小さく見えます——出力インピーダンスが小さい理由です。入力は大きく、出力は小さく——バッファに理想的な性質です。

深掘り②:エミッタホロワの性格を1枚で

項目エミッタホロワ(コレクタ接地)エミッタ接地
電圧増幅度約1倍大きい
電流増幅度大きい大きい
位相同相逆相(180°)
入力インピーダンス大きい
出力インピーダンス小さい
用途バッファ・出力段電圧増幅段

エミッタホロワは帰還率100 %の負帰還回路でもあります。出力電圧がそのまま入力に戻るので、ひずみが小さく、周波数特性も広い——「電圧利得だけを差し出して、他をすべて手に入れた回路」です。

オペアンプのボルテージホロワとまったく同じ役割です。令和2年度A問題13の(5)で問われているのがそれ——素子は違っても考え方は共通です。

深掘り③:バイアス抵抗を大きくできない理由

入力インピーダンスを上げたいなら \(R_1\)・\(R_2\) を大きくすればよい——理屈ではそうですが、実際には限界があります

分圧抵抗を大きくすると、そこを流れる電流が小さくなり、ベース電流を「無視できる」条件が崩れますすると動作点が \(h_{FE}\) のばらつきや温度で動いてしまいます

目安として、分圧抵抗に流す電流はベース電流の10倍以上とされます。本問なら \(I_B=I_E/(1+h_{fe})\fallingdotseq10\ \mathrm{\mu A}\)、分圧電流は \(10/100\mathrm{k}=100\ \mathrm{\mu A}\)——ちょうど10倍で、設計として理にかなっています。

💡 覚え方
「ベースから右を見た抵抗」と「入力端子から見た抵抗」は別物バイアス抵抗は必ず並列に入るので、入力インピーダンスは \(R_1\parallel R_2\) を超えられません

⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は分圧 → \(V_{BE}\) を引く → オームの法則の3行。
❷ (b)はまず \(Z_b=h_{ie}+(1+h_{fe})R_E\) を出す。
❸ 図2に \(R_1R_2/(R_1+R_2)\) が描かれているか確認——描かれていれば並列にする。
❹ 並列合成は小さいほうに寄る:760 と 15 なら答えはほぼ 15。
★選択肢に「並列を忘れた値」が必ず置いてあると思って臨む。

出題履歴:エミッタホロワはB問題の常連

エミッタホロワは、バイアス設計(直流)と等価回路(交流)の両方を一度に問えるため、B問題の題材として好まれます平成20年度A問題13でも接地方式の比較として登場しています。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

★同型問題:【理論】令和7年度上期 B問題18でそのまま再出題された

この問題は 【理論】令和7年度上期 B問題18 として、数値と \(h_{fe}\) だけを変えて再出題されています。回路の形も、問われ方も、仕掛けられた罠もまったく同じです。

項目平成30年度 B問題16令和7年度上期 B問題18
\(V_{CC}\)10 V9 V
\(R_1,R_2\)18 kΩ、82 kΩ3 kΩ、6 kΩ
\(I_E\)1 mA2 mA
\(h_{fe}\)100300
(a) \(R_E\)7.5 kΩ2.7 kΩ
(b) 入力Z15 kΩ2.0 kΩ

どちらも(b)の選択肢に「\(R_1\parallel R_2\) を忘れた値(750 kΩ)」が用意されていますさらに令和7年度版では、平成30年度版の正解「15 kΩ」が選択肢(2)に置かれている——過去問の答えを数字で覚えていると引っかかる作りです。

手順で覚えてください❶分圧 → ❷\(V_{BE}\) を引く → ❸\(R_E=V_E/I_E\) → ❹\(Z_b=h_{ie}+(1+h_{fe})R_E\) → ❺\(R_1\parallel R_2\) と並列この5ステップはどちらの年度でも同じです。

▼あわせて解きたい同型問題:【理論】令和7年度上期 B問題18

まとめ

VB10×82/100=8.2V
VE8.2−0.7=7.5V
(a)RE7.5/1mA=7.5kΩ→(3)
ベース側Zhie+(1+hfe)RE=760kΩ
(b)入力Z14.76∥760≒15kΩ→(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・NAND ICパルス回路(電子回路20):【理論】令和元年度 B問題17

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