今回は平成19年度 理論科目 B問題16を解説します。(a)可動コイル形計器の動作原理に関する空欄、(b)アイルトン分流器で150mAと1Aの2レンジをもつ多重範囲電流計の抵抗R1・R2を求める問題です。
可動コイル形は電流の1乗に比例するトルクで動き、平均値を指示します。多重範囲電流計は、電流計に流せる最大電流(ここでは10mA)を基準に、各レンジで分流の式を立てて連立します。
平成19年度 理論科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題16
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成19年度 B問題16
可動コイル形計器について、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 可動コイル形計器の駆動トルクは、コイルに流れる電流の(ア)に比例する。脈流を加えたとき、可動部の(イ)が大きいと指針の振動は抑えられ、計器は電流の(ウ)を指示する。この計器を電圧計として使うときは(エ)を直列に接続して測定範囲を拡大する。
(b) 内部抵抗ra=2Ω、最大目盛Im=10mAの可動コイル形計器に抵抗R1・R2を組み合わせ、最大目盛150mAと1Aの多重範囲電流計を作る。R1[Ω]とR2[Ω]の値を求める。
(a) 可動コイル形計器の原理に関する空欄(ア)(イ)(ウ)(エ)の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 1乗 慣性 平均値 倍率器 (2) 2乗 慣性 実効値 倍率器 (3) 1乗 摩擦 平均値 分流器 (4) 2乗 慣性 平均値 倍率器 (5) 1乗 慣性 実効値 分流器 (b) 内部抵抗ra=2Ω・最大目盛10mAの可動コイル形計器で150mAと1Aを測る多重範囲電流計の抵抗(R1[Ω]、R2[Ω])の組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(R1) (R2) (1) 0.12 0.021 (2) 0.021 0.12 (3) 0.14 0.020 (4) 0.12 0.14 (5) 0.020 0.021
出題のポイント:1乗に比例するから平均値、範囲拡大は倍率器
(a)は可動コイル形の性質を4つ並べた穴埋めです。「1乗・慣性・平均値・倍率器」——どれも可動コイル形の基本です。
(b)はアイルトン分流器(多重範囲電流計)の計算。2つのレンジそれぞれで「計器側の電圧=分流側の電圧」の式を立てて連立します。

解説(a):4つの空欄を順に埋める
| 空欄 | 答え | 理由 |
| (ア) | 1乗 | 永久磁石の磁界中の電流に働く力=電流に比例 |
| (イ) | 慣性 | 可動部が重いほど細かい変動に追従できない |
| (ウ) | 平均値 | 1乗に比例するから、時間平均が指示される |
| (エ) | 倍率器 | 電圧計にするには直列抵抗 |
(ア)と(ウ)はセットです。トルクが電流の1乗に比例するなら、指示は電流の平均値——2乗に比例するなら実効値になります。
(イ)の「慣性」がポイントです。脈流を加えると力も脈動しますが、可動部が重ければ細かい変動に追従できず、平均の位置で止まります——だから振動が抑えられます。
(エ)は「電圧計にするなら直列」。電流計にするなら並列に分流器——(b)で使う知識でもあります。
解説(b):2つのレンジで式を立てる
アイルトン(ユニバーサル)分流器は、\(R_1\) と \(R_2\) の直列を計器に並列にし、入力端子のタップを切り替えてレンジを変えます。
150 mA レンジ:計器側が \(r_a\)、分流側が \(R_1+R_2\)
1 A レンジ:計器側が \(r_a+R_1\)、分流側が \(R_2\)
検算:150 mA レンジは \(0.010\times2=0.020\)、\(0.140\times0.1429=0.020\) ✓。1 A レンジは \(0.010\times2.12=0.0212\)、\(0.990\times0.0214=0.0212\) ✓——両方合います。
誤答の正体:\(R_1\) と \(R_2\) の入れ替え
| 選択肢 | \(R_1\) | \(R_2\) | 判定 |
| (1) | \(0.12\) | \(0.021\) | ◎ 正解 |
| (2) | \(0.021\) | \(0.12\) | ★\(R_1\) と \(R_2\) が逆 |
| (3) | \(0.14\) | \(0.020\) | \(R_1+R_2\) を \(R_1\) にした |
| (4) | \(0.12\) | \(0.14\) | \(R_2\) が合計値 |
| (5) | \(0.020\) | \(0.021\) | 桁の取り違え |
(2)がいちばん危険です。値は両方とも正しいのに、割り当てが逆——どちらのレンジでどちらの抵抗が分流側になるかを、図で確認する必要があります。
大きいレンジ(1 A)ほど分流側の抵抗は小さくなります。たくさん分流させたいからです——1 A レンジの分流側が \(R_2=0.021\ \Omega\)、150 mA レンジの分流側が \(R_1+R_2=0.143\ \Omega\)。ちゃんと大小関係が合っています。
⚠️ よくある間違い
普通の分流器(レンジごとに独立した抵抗)と、アイルトン分流器(直列につないでタップで切り替え)は別物です。アイルトン形では、レンジを切り替えると計器側の抵抗も変わります——だから単純に \(R_s=r_a/(m-1)\) では計算できません。
深掘り①:分流器と倍率器の公式
並列だから電圧が等しい
直列だから電流が等しい
どちらも「\(m-1\)」が出てきます。分流器は割り、倍率器は掛ける——並列と直列の違いがそのまま式に表れています。
10倍にするなら、分流器は \(r_a/9\)、倍率器は \(9r_v\)。「9」が共通して出てくるのが特徴です。
深掘り②:アイルトン分流器の利点
普通の分流器では、レンジ切替の瞬間に接点が離れると、計器に全電流が流れて焼損する危険があります。
アイルトン形は分流抵抗が常に計器に並列につながったままで、タップの位置だけが変わります——切替中も計器が保護されます。
だから「ユニバーサル分流器」とも呼ばれます。実用の多重範囲電流計はほぼこの方式です。
代償は計算が少し面倒になること。レンジごとに計器側の抵抗が変わるので、連立方程式を解く必要があります。
深掘り③:脈流と可動部の慣性
脈流(直流に交流が重なった波形)を可動コイル形で測ると、トルクも脈動します。可動部が軽ければ針が細かく振動して読めません。
可動部の慣性(回転モーメント)が大きいと、高い周波数の変動に追従できません。結果として平均の位置で静止——読みやすくなります。
| 可動部の慣性 | 脈流での挙動 | 読み取り |
| 小さい | 針が激しく振動 | 読めない |
| 大きい | 平均の位置で静止 | 平均値が読める |
ただし慣性が大きすぎると、応答が遅くなります。測定値が変わってから針が落ち着くまで時間がかかる——ここにもトレードオフがあります。
💡 覚え方
分流器は並列(電流を分ける)、倍率器は直列(電圧を分け合う)。どちらも \(m-1\) が出てきて、分流器は割る・倍率器は掛ける——「並列は割り算、直列は掛け算」と覚えてください。
⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は「1乗=平均値」「電圧計は倍率器」の2点で決まる。
❷ (b)は各レンジで「計器側の電圧=分流側の電圧」の式を立てる。
❸ アイルトン形はレンジごとに計器側の抵抗が変わる——連立で解く。
❹ 検算:両レンジで式が成り立つか確かめる——30秒でできる。
★大きいレンジほど分流側の抵抗は小さい——大小関係で割り当てを確認。
出題履歴:分流器と倍率器は計測の基本
測定範囲の拡大は、計測分野でもっとも計算問題になりやすいテーマです。単純な分流器なら \(R_s=r_a/(m-1)\) で1行——本問のようなアイルトン形が出たら連立に切り替えます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (a) | 1乗/慣性/平均値/倍率器→(1) |
| 150mA | 10×2=140×(R1+R2)→R1+R2=1/7 |
| 1A | 10×(2+R1)=990×R2→R1=99R2−2 |
| (b) | R2≒0.021Ω、R1≒0.12Ω→(1) |
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