今回は平成19年度 理論科目 A問題14を解説します。電圧計(内部抵抗Rv)と電流計(内部抵抗Ra)で負荷の直流電力を測るとき、計器の接続方法(図1・図2)によって生じる誤差を比較する問題です。
図1は電圧計を負荷と並列(電流計の外側)、図2は電流計を負荷と直列(電圧計の内側)に接続。図1では電圧計の消費電力、図2では電流計の消費電力が誤差になります。Rv=10kΩ、Ra=2Ω、R=160Ω。
平成19年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成19年度 A問題14
電圧計(内部抵抗Rv)と電流計(内部抵抗Ra)を用いて負荷抵抗Rの直流電力を測定する。図1では電圧計を負荷と並列(電流計の外側)に、図2では電流計を負荷と直列(電圧計の内側)に接続する。電圧計と電流計の指示値の積を電力の測定値とする。Rv=10kΩ、Ra=2Ω、R=160Ωとして、各接続での誤差と誤差率を比較する。
図1の測定電力の誤差(ア)、図2の測定電力の誤差(イ)、及び誤差率が小さい回路(ウ)の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) V12/Rv I22Ra 図2 (2) V12/Rv I22Ra 図1 (3) I12Ra V22/Rv 図2 (4) I12Ra V22/Rv 図1 (5) V12/Rv I22Ra 両方で等しい
出題のポイント:どちらの計器の損失が混ざるかは接続で決まる
電圧計を負荷だけに並列にすると、電流計は「負荷電流+電圧計電流」を読みます——余分なのは電圧計の損失 \(V_1^2/R_v\)。
電流計を負荷に直列にして電圧計をその外側に置くと、電圧計は「負荷+電流計」の電圧を読みます——余分なのは電流計の損失 \(I_2^2R_a\)。

解説:それぞれの接続で何が余分になるか
(ア) 図1の誤差
電圧計は負荷 \(R\) の電圧だけを正しく読みます。ところが電流計は、負荷を流れる電流に加えて電圧計を流れる電流も読んでいます。
電圧計の電流が余分
電圧計の消費電力
(イ) 図2の誤差
電流計は負荷の電流だけを正しく読みます。ところが電圧計は、負荷の電圧に加えて電流計の電圧降下も読んでいます。
電流計の降下が余分
電流計の消費電力
(ウ) どちらの誤差率が小さいか
誤答の正体:(ア)(イ)の入れ替えと(ウ)の判定
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | \(V_1^2/R_v\) | \(I_2^2R_a\) | 図2 | ◎ 正解 |
| (2) | \(V_1^2/R_v\) | \(I_2^2R_a\) | 図1 | (ウ)が誤り |
| (3) | \(I_1^2R_a\) | \(V_2^2/R_v\) | 図2 | (ア)(イ)が逆 |
| (4) | \(I_1^2R_a\) | \(V_2^2/R_v\) | 図1 | 3つとも誤り |
| (5) | \(V_1^2/R_v\) | \(I_2^2R_a\) | 両方で等しい | (ウ)が誤り |
(ア)(イ)が正しいのは(1)(2)(5)の3つです。あとは(ウ)を計算するだけ——\(1.25\ \% < 1.60\ \%\) なので図2です。
(5)の「両方で等しい」は、\(R=\sqrt{R_aR_v}\) のときだけ成り立ちます。\(\sqrt{2\times10\,000}\fallingdotseq141\ \Omega\)——本問の \(R=160\ \Omega\) はこれより大きいので等しくありません。
⚠️ よくある間違い
「電圧計が負荷に並列だから電圧計の損失は混ざらない」と考えてしまうのが典型的な誤りです。混ざるのは【電流計の読み】のほう——電圧計に流れた電流も電流計を通っているからです。どちらの計器が「余分なものを読んでいるか」で考えてください。
深掘り①:接続の使い分けの境目
| 負荷抵抗 | 有利な接続 | 理由 |
| \(R>\sqrt{R_aR_v}\)(大きい) | 図2(電流計を負荷に直列) | \(R_a/R\) が小さくなる |
| \(R<\sqrt{R_aR_v}\)(小さい) | 図1(電圧計を負荷だけに) | \(R/R_v\) が小さくなる |
本問の \(R=160\ \Omega\) は境目の 141 Ω より大きいので、図2が有利です。ぎりぎりの値なので、必ず両方計算して比べるのが確実です。
覚え方は「大きい抵抗は電流計を内側、小さい抵抗は電圧計を内側」。大きい抵抗なら電流計の 2 Ω は無視できる、小さい抵抗なら電圧計の 10 kΩ は無視できる——直感とも合います。
深掘り②:誤差は補正で消せる
電圧計の損失を引く
電流計の損失を引く
計器の内部抵抗が分かっていれば、誤差はすべて計算で除けます。系統誤差だからです——偶然誤差と違って、大きさも向きも予測できます。
それでも接続を選ぶ意味があるのは、内部抵抗自体にも誤差があるからです。補正量が小さいほど、補正の誤差も小さくなります。
深掘り③:計器に求められる性質
| 計器 | つなぎ方 | 理想の内部抵抗 | 実際の値 | 理由 |
| 電流計 | 直列 | 0 Ω | 本問は 2 Ω | 電圧降下を作らないため |
| 電圧計 | 並列 | \(\infty\) | 本問は 10 kΩ | 電流を取らないため |
理想からのずれがそのまま誤差の原因です。電流計の 2 Ω、電圧計の 10 kΩ——どちらも「理想からどれだけ離れているか」を表しています。
ディジタル電圧計なら入力抵抗が 10 MΩ 以上あります。そうすると \(\varepsilon_1=R/R_v=160/10^7=0.0016\ \%\)——実質ゼロです。計器の性能が誤差を決めます。
💡 覚え方
電圧計が負荷だけ → 電流計が余分を読む → 誤差は \(V^2/R_v\)。電流計が負荷に直列 → 電圧計が余分を読む → 誤差は \(I^2R_a\)。「もう一方の計器が余分を読む」——この関係を押さえてください。
深掘り④:電力測定の全体像
| 方法 | 測るもの | 力率の扱い | 誤差の原因 |
| 電圧降下法(\(V\times I\)) | 皮相電力 | 含まれない | 計器の内部抵抗 |
| 電力計(電流力計形) | 有効電力 | 自動的に含まれる | 計器のコイル損失 |
| 二電力計法 | 三相の有効電力 | 自動的に含まれる | 同上 |
直流や純抵抗なら \(V\times I\) でよいのですが、交流で力率のある負荷では \(VI\cos\theta\) が必要——電圧計と電流計だけでは測れません。
本問は直流電力なので \(V\times I\) で正しい。問題文が「直流電力を測定する」と明記しているのはそのためです。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「もう一方の計器が余分を読む」と考える——電圧計が負荷だけなら電流計が余分。
❷ 誤差率は \(R/R_v\) と \(R_a/R\)——どちらも抵抗の比で出る。
❸ 必ず両方計算して比べる——境目 \(\sqrt{R_aR_v}\) の近くだと直感では決まらない。
❹ (ア)(イ)が正しい肢だけで3つに絞れる——あとは(ウ)の計算だけ。
出題履歴:電圧降下法の誤差は計測の定番
令和3年度B問題16・令和5年度下期B問題16では、電流計側の誤差率 \(R_a/R\) を計算させています。本問はその2通りを比較させる発展形——セットで理解しておくと確実です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (ア)図1誤差 | V1²/Rv(電圧計の消費) |
| (イ)図2誤差 | I2²Ra(電流計の消費) |
| 図1誤差率 | R/Rv=160/10000=1.6% |
| 図2誤差率 | Ra/R=2/160=1.25% |
| (ウ) | 図2が小→(1) |
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