今回は令和6年度下期 機械科目 A問題6を解説します。テーマは短絡比の考え方を使った界磁電流の計算です。
「短絡曲線は直線」――この一点を押さえれば、界磁電流と短絡電流が比例することから比例計算で解けます。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
定格出力11 000 kV・A,定格電圧6 600 Vの三相同期発電機がある。三相短絡電流750 Aを流すのに必要な界磁電流が54 Aである場合,この発電機の定格電流に等しい三相短絡電流を流すのに必要な界磁電流[A]の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 69 (2) 96 (3) 120 (4) 208 (5) 289
出題のポイント:短絡曲線が直線だから比例計算だけ
三相短絡曲線は、界磁電流を横軸・短絡電流を縦軸に取ったグラフです。そしてこの曲線は、無負荷飽和曲線と違ってほぼ直線になります。直線ということは、界磁電流と短絡電流が比例している——本問はその比例関係を使うだけの問題です。
| 曲線 | 形 | 理由 |
| 無負荷飽和曲線 | 途中で寝てくる(飽和する) | 鉄心の磁束密度が高く、磁気飽和が起きる |
| 三相短絡曲線 | ほぼ直線 | 短絡電流の強い減磁作用で磁束が抑えられ、鉄心が飽和しない |
短絡時の電流はほぼ純粋な遅れ電流です。遅れ電流は減磁作用を持つので、界磁を強めても内部の磁束はあまり増えず、鉄心が飽和領域に入りません——だから直線のままなのです。

まず定格電流を求める
11 000 kV・A を V・A に直して入れる
√3×6600=1.732×6600≒11 431
この電流を短絡電流として流したい
6600 V・11 000 kV・A の機械で定格電流が約962 A——この組合せは電験で頻出なので、「6.6 kV で 11 MV・A なら約960 A」と体で覚えておくと速いです。
比例配分で界磁電流を出す
750 A で 54 A、では 962 A では?
962÷750=1.283
選択肢の 69 に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(3) 120 Aは、定格電流を求めるときに √3 を忘れたときの答えです(11 000×103÷6600=1667 A → 54×1667/750=120)。三相の容量計算で最も多い誤り——「三相の容量には必ず √3」を反射にしてください。
(4) 208 Aは、√3 を掛けるべきところで割った(相電圧 \( 6600/\sqrt{3} \) を使った)ときの答えです。√3 の位置を間違えると、正解の3倍の値になります。
正解69に対して、120は約1.7倍、208は約3倍——選択肢が √3 倍ずつ並んでいたら、それは √3 の扱いを問う問題だという合図です。この並びに気づけたら、自分の計算のどこに √3 を入れたか見直す価値があります。
別解:短絡比を経由して考える
短絡比の定義の分母は、まさに「定格電流に等しい三相短絡電流を流すのに必要な界磁電流」です。つまり本問は、短絡比を求める計算の前半部分を単独で問うていることになります。
短絡比を求める問題では、この 69 A を出したあとに「無負荷で6600 V を出すのに必要な界磁電流」で割る——本問はその一歩手前で止めた形です。だから本問が解ければ、短絡比の問題の半分は解けていることになります。
⏱️ 本番での進め方
① 三相の定格電流は S/(√3 V)。6.6 kV・11 MV・A ≒ 962 A。
② 短絡曲線は直線=比例。あとは比の計算だけ。
③ 962/750=1.28 → 54×1.28≒69。概算で十分決まる。
④ 選択肢に √3 倍・3倍の値が並んでいたら、√3 の位置を再確認する。
💡 覚え方
「短絡曲線は直線、だから比例配分」。直線である理由は「短絡電流=純遅れ=強い減磁=飽和しない」——電機子反作用の知識がそのまま根拠になっていることを押さえておくと、論説問題でも同じ理屈が使えます。
出題履歴と関連テーマ
短絡比・短絡曲線は同期機の頻出テーマで、計算問題としても論説問題としても繰り返し出題されています。本問のように「比例配分だけ」で終わる年は、確実に取りたい回です。
| 出題パターン | 問われ方 | 難度 |
| 本問の型 | 短絡曲線の比例だけを使う | やさしい |
| 短絡比を求める型 | 無負荷飽和曲線側の界磁電流も与えられ、比を取る | 標準 |
| 同期インピーダンスを求める型 | 短絡比の逆数から %Z を出す | 標準 |
| 論説型 | 短絡比が大きい機械の特徴(鉄機械)を問う | やさしい |

短絡比が大きい機械・小さい機械
本問で求めた界磁電流は、短絡比を計算するときの分母にあたる値でした。では短絡比が大きいと、その機械はどんな性格になるのでしょうか。
| 短絡比が大きい(鉄機械) | 短絡比が小さい(銅機械) | |
| 同期インピーダンス | 小さい | 大きい |
| 電機子反作用 | 小さい | 大きい |
| 電圧変動率 | 小さい(安定) | 大きい |
| 短絡電流 | 大きい(遮断器の負担大) | 小さい |
| 安定度 | 高い | 低い |
| 寸法・重量・価格 | 大きい・重い・高い | 小さい・軽い・安い |
| 代表例 | 水車発電機(0.9〜1.2程度) | タービン発電機(0.5〜0.7程度) |
「鉄機械」「銅機械」という呼び名の由来もここにあります。短絡比を大きくするには、界磁を強くして磁気回路に余裕を持たせる必要があり、鉄心が大きくなる——だから鉄機械です。逆に短絡比が小さい機械は、巻線(銅)に頼って小型に作られているので銅機械と呼ばれます。
水車発電機が鉄機械なのは、水力発電所が系統の末端にあり、安定度が求められるからです。低速で極数が多く、もともと直径が大きい構造なので、鉄を増やす余地もあります。一方タービン発電機は高速回転(2極・3000/3600 min-1)で、遠心力の制約から直径を大きくできません——だから必然的に銅機械になります。
本問の11 000 kV・A・6600 V という規模と、定格電流962 A に対して短絡電流750 A という関係から、この機械の短絡比はおよそ 750/962≒0.78 の界磁電流比で表される領域にあると見当がつきます。数値の背後にある機械の姿を想像できると、計算間違いにも気づきやすくなります。
まとめ
| 定格電流 | \(I_n=P/(\sqrt{3}V)=962.3\,\mathrm{A}\) |
| 短絡曲線 | 原点を通る直線=界磁電流に比例 |
| 界磁電流 | \(I_f’=(I_n/I_s)I_f=69\,\mathrm{A}\) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・短絡比の定義から計算:【機械】令和4年度下期A問題5
・図から%同期インピーダンスの式:【機械】平成27年度A問題5

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