今回は平成29年度 機械科目 A問題5を解説します。百分率同期インピーダンスと短絡特性から無負荷で定格電圧を出すのに必要な界磁電流を求める、応用度の高い計算問題です。
一見複雑ですが、「単位法で短絡電流→起電力を出す」「起電力は界磁電流に比例する」の2段構えで整理すれば素直に解けます。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
定格出力10 MV・A,定格電圧6.6 kV,百分率同期インピーダンス80 %の三相同期発電機がある。三相短絡電流700 Aを流すのに必要な界磁電流が50 Aである場合,この発電機の定格電圧に等しい無負荷端子電圧を発生させるのに必要な界磁電流の値[A]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,百分率同期インピーダンスの抵抗分は無視できるものとする。
(1) 50.0 (2) 62.5 (3) 78.1 (4) 86.6 (5) 135.3
出題のポイント:%Z から短絡比を作り、2段で界磁電流を出す
本問は3つの量を順につないでいく問題です。%Z → 短絡比 → 定格電流に等しい短絡電流の界磁 → 定格電圧の界磁——1つずつ確実に進めれば難しくありません。
| 段階 | 求めるもの | 使う関係 |
| ① | 短絡比 Ks | \( K_s=100/\%Z_s \) |
| ② | 定格電流 In | \( I_n=S/(\sqrt{3}V_n) \) |
| ③ | In を流す界磁 If2 | 短絡曲線が直線なので比例 |
| ④ | 定格電圧を出す界磁 If1 | \( I_{f1}=K_s I_{f2} \) |

短絡比と定格電流を出す
%Zs=80 %の逆数×100
10 MV・A、6.6 kV
約875 A
「6.6 kV の三相なら容量[kVA]÷11.43」という暗算が使えます。10 000÷11.43≒875——電卓のない試験では、この形で覚えておくと速いです。
界磁電流を2段で求める
700 A で50 A なら、875 A では?
定格電流に等しい短絡電流を流す界磁
定格電圧側は短絡比倍だけ大きい
選択肢の78.1に一致

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(2) 62.5 Aは途中で止めた値——「定格電流に等しい短絡電流を流す界磁電流」であって、問われている「定格電圧を出す界磁電流」ではありません。1.25 を1回しか掛けていない状態です。
(1) 50.0 Aは与えられた値そのまま、(4) 86.6 Aは50×√3、(5) 135.3 Aは正解の √3 倍にあたります。
☝️ ひっかけの作り方:「どちらの界磁電流を聞かれているか」が本問最大の分岐です。If1(定格電圧側)は If2(定格短絡側)より必ず大きい——短絡比が1より大きい機械ではそうなります。だから答えは62.5 A より大きいはず——この向きを確認するだけで(1)(2)が消えます。
別解:定格電圧を出す短絡電流から考える
順序を変えて、先に「定格電圧の界磁で短絡したときの電流」を求める道もあります。
定格電圧の界磁で短絡したときの電流
700 A で50 A の直線関係を使う
こちらは比例計算を1回で済ませる道筋です。「短絡曲線は直線なので、電流と界磁電流はどこでも比例する」——この一言さえ押さえていれば、どの順序でも同じ答えにたどり着けます。
2通りの道筋で同じ78.1 A が出たことで、答えの確からしさが裏づけられました。B問題ほど時間はかかりませんから、A問題でも余裕があれば別ルートで検算する価値があります。
⏱️ 本番での進め方
① Ks=100/80=1.25。
② In=10 000/11.43≒875 A。
③ If2=50×875/700=62.5 A(ここで止めない)。
④ If1=1.25×62.5=78.1 A。答えは62.5 より大きいはず。
💡 覚え方
「定格電圧を出すほうが、強い界磁が要る」——だから If1 > If2。短絡はわずかな界磁でも定格電流に達してしまうと考えれば、大小関係を取り違えません。
関連問題:同じ関係を別の量で問う年もある
短絡曲線の比例関係は、界磁電流を求めさせたり短絡電流を求めさせたりと形を変えて出題されます(同期機7:短絡曲線から界磁電流を求める/同期機15:持続短絡電流の求め方)。
本問はそこに %Z からの短絡比の換算が1段加わった形です。使う道具は「短絡曲線は直線」と「%Z×Ks=100」の2つだけ——この2本を持っていれば、どの組合せで問われても対応できます。

短絡比を大きくするには、どこをいじるのか
本問の機械は %Zs=80 %、短絡比1.25でした。では設計で短絡比を大きくしたいとき、何を変えるのでしょうか。答えは「空隙を広げる」です。
| 設計変更 | 直接の効果 | 結果として |
| 空隙を広げる | 電機子磁束が通りにくくなる | 電機子反作用リアクタンスが小さくなる |
| ↓ | 同期リアクタンスが小さくなる | %Z が小さく、短絡比が大きくなる |
| ただし | 同じ磁束を作るのに強い界磁が要る | 界磁巻線が大きくなり、機械全体が大形・高価になる |
空隙を広げると、電機子電流が作る磁束が回転子まで届きにくくなります——電機子反作用が弱まるのです。同期インピーダンスの主成分は電機子反作用リアクタンスでしたから、それが小さくなれば %Z も小さくなり、短絡比が大きくなります。
代償は界磁側の負担です。空隙が広ければ磁気抵抗も大きく、同じ磁束を作るのに大きな起磁力が要ります——界磁巻線の巻数か電流を増やすしかありません。本問で求めた界磁電流78.1 A という値も、この設計の結果です。
「短絡比が大きい機械=鉄機械」と呼ばれる理由も、ここにあります。空隙を広げ、界磁を強くし、磁気回路に余裕を持たせる——そのために鉄心を大きく取る必要があるからです。短絡比という1つの数字の背後に、空隙・界磁・寸法・価格のすべてがつながっていると理解しておくと、論説問題でも自信を持って選べるようになります。
まとめ
| 基準電流 | \(I_n=S/(\sqrt{3}V_n)=874.8\,\mathrm{A}\) |
| 短絡時の起電力 | \(E_0=Z_sI_s=0.8\times0.80=0.640\,\mathrm{p.u.}\) |
| 比例配分 | \(I_f=50\times1/0.640\fallingdotseq78.1\,\mathrm{A}\) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・短絡比の基本計算:【機械】平成21年度A問題5
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